宅建業者名簿(たっけんぎょうしゃめいぼ)は、国土交通省と各都道府県が備える、宅建業者の台帳です(宅地建物取引業法8条1項)。免許を出した国土交通大臣や都道府県知事が、免許証番号、商号、役員の氏名、事務所の名称と所在地などを載せます。名簿は、一般の人が閲覧できます(10条)。免許証の交付・書換え・返納は宅建業の免許証で扱っています。
名簿の中身が変わったら、業者は30日以内に免許権者へ変更の届出をし(9条)、届出を受けた大臣や知事が名簿を直します(施行規則5条の3)。ここで2つの「ずれ」があります。一つは、専任の宅建士の氏名は、令和7年4月1日から名簿に載らなくなったのに、変わったときの届出は今も必要なこと。もう一つは、宅建業以外に行っている事業の種類は、名簿に載るのに、変わっても9条の届出は要らないことです。
この記事では、名簿に載る事項を「9条の届出が要るか」で分けて表にし、宅建士の資格登録簿と並べます。変更の届出・変更の登録・登録の移転の手続の違いそのものは変更の登録・登録の移転・変更の届出の記事で扱っています。条文は令和8年4月1日時点のものです。
身近な例で考えると:かえで不動産の1年
登場人物を紹介します。
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| かえで不動産 | 宅建業者(甲県知事の免許) | 名簿に載っている会社 |
| なかむらさん | かえで不動産の社長 | 届出をする |
| たけださん | 宅建士 | 新しく専任の宅建士になった |
| あんどうさん | 取引を考えている人 | 名簿を閲覧したい |
- かえで不動産が甲県知事の免許を受けると、甲県知事は、甲県に備える宅建業者名簿に、免許証番号と免許の年月日、商号、役員の氏名、事務所の名称と所在地などを載せます。
- 4月、取締役の一人が退任し、新しい取締役が入りました。役員の氏名は名簿に載る事項です。なかむらさんは、30日以内に甲県知事へ変更の届出をします。届出を受けた甲県知事は、名簿を直します。
- 6月、本店の専任の宅建士が辞め、たけださんが専任の宅建士になりました。専任の宅建士の氏名は、いまは名簿に載りません。それでも、免許の申請書に書く事項(4条1項5号)なので、30日以内の変更の届出が必要です。
- 9月、かえで不動産は、宅建業のほかに建物のリフォームの事業も始めました。ほかに行っている事業の種類は名簿に載る事項ですが、9条の届出の対象(4条1項1号〜5号)には入っていません。
- 取引を考えているあんどうさんは、甲県の閲覧所で、かえで不動産の名簿を見ました。指示処分などを受けたことがあれば、その年月日と内容も名簿に載っています。
名簿は、町の「お店の登録台帳」のようなものです。お店の名前や責任者が変われば届け出て、台帳が書き直されます。ただし本物のルールでは、台帳に載る事項と、届け出る事項が完全に同じではありません。ずれのある所が覚えどころです。
条文ではこう決まっている
名簿を備える所と、載る事項(8条)
- 8条1項:国土交通省と都道府県に、それぞれ宅建業者名簿を備えます。
- 8条2項(載せる人):国土交通大臣は、自分が免許を出した業者について載せます。都道府県知事は、自分が免許を出した業者と、国土交通大臣の免許を受けた業者で、その都道府県の区域内に主たる事務所(本店など)があるものについて載せます。
- 8条2項1号:免許証番号と免許の年月日。
- 8条2項2号:4条1項各号に掲げる事項。ただし5号(専任の宅建士の氏名)を除きます。残るのは、商号または名称(1号)、法人の役員と政令で定める使用人の氏名(2号)、個人の業者本人と政令で定める使用人の氏名(3号)、事務所の名称と所在地(4号)、ほかに事業を行っているときはその事業の種類(6号)です。政令で定める使用人は、事務所の代表者である使用人(支店長など)です(施行令2条の2)。
- 8条2項3号:50条の2第1項の認可(取引一任代理等の認可)を受けているときは、その旨と認可の年月日。
- 8条2項4号:65条の処分(指示処分・業務停止処分)を受けたことがあるときは、その年月日と内容。
令和7年4月1日の施行前の8条2項は、商号から事務所までを1号ずつ並べ、6号に「前号の事務所ごとに置かれる第三十一条の三第一項に規定する者の氏名」(専任の宅建士の氏名)を置いていました(e-Gov で、令和7年3月31日時点の版〔8つの号〕と令和7年4月1日時点の版〔4つの号〕を比べて確かめました。改正は令和6年法律第53号)。古い教材の「名簿には専任の宅建士の氏名が載る」は、いまの条文と合いません。
変更の届出と名簿の訂正(9条・施行規則5条の2・5条の3)
- 9条:4条1項1号〜5号の事項に変更があったら、30日以内に、変更の事項を書いた届出書を、免許を受けた国土交通大臣か都道府県知事に出します。
- 施行規則5条の2:届出は、別記様式第三号の四の変更届出書で行います。
- 施行規則5条の3:届出があったら、大臣や知事は名簿のその事項を訂正します。
- 83条1項1号:9条の届出をしない、またはうその届出をした者は、50万円以下の罰金です。
閲覧(10条・施行規則5条)
- 10条:大臣や知事は、宅建業者名簿と、免許の申請書に付けた一部の書類(特定書類)またはその写しを、一般の閲覧に供しなければなりません。
- 施行規則5条:そのために宅地建物取引業者名簿閲覧所を設け、閲覧規則を定めて、閲覧所の場所と閲覧規則を告示します。
- 国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、閲覧の趣旨を、名簿と特定書類を一般の閲覧に供して業者の事業の状態に関する情報を提供すること、と説明しています。
宅建士の資格登録簿(18条2項・20条)
- 18条2項:宅建士の登録は、都道府県知事が、宅地建物取引士資格登録簿に、氏名・生年月日・住所その他省令で定める事項と、登録番号・登録年月日を載せてします。
- 施行規則14条の2の2:省令で定める事項は、本籍(日本の国籍がない人は国籍)と性別、試験の合格年月日と合格証書番号、実務経験の期間と内容、宅建業者の業務に従事する人は、その業者の商号・名称と免許証番号などです。
- 20条:登録を受けている事項に変更があったら、遅滞なく、変更の登録を申請します。
当てはまる例・当てはまらない例
当てはまる例(30日以内の届出が要る)
- 会社の商号を変えた。→ 4条1項1号の事項なので、9条の届出が要ります。名簿も直されます。
- 支店長(事務所の代表者)が交代した。→ 政令で定める使用人の氏名(4条1項2号)が変わったので届出が要ります。
- 新しく支店を出した(同じ県の中)。→ 事務所の名称と所在地(4条1項4号)が変わったので届出が要ります。県をまたぐなど事務所の置き方が変わったときは、届出ではなく免許換えの話になります。
当てはまらない例(9条の届出は要らない)
- 宅建業のほかに、新しく建設業を始めた。→ 事業の種類は4条1項6号の事項で、名簿には載りますが、9条の届出の対象(1号〜5号)ではありません。
- 個人の業者が、自宅の住所を変えた(事務所は同じ)。→ 業者本人の住所は4条1項1号〜5号に入っていないので、9条の届出の対象ではありません。
ひっかけやすい例
- 専任の宅建士が交代した。→ 名簿には載りませんが、4条1項5号の事項なので30日以内の届出が要ります。名簿に載らないから届出も要らない、は誤りです。
- 専任の宅建士が辞めて、人数が足りなくなった。→ 届出(30日以内)とは別に、2週間以内に補う措置が要ります(31条の3第3項)。
- 大臣免許の業者の名簿。→ 国土交通省の名簿に載るほか、主たる事務所のある都道府県の名簿にも載ります(8条2項)。
似ているルールとの違い
名簿に載るか・9条の届出が要るか
| 事項 | 業者名簿 | 9条の届出 | 条 |
|---|---|---|---|
| 免許証番号・免許の年月日 | 載る | 対象外 | 8条2項1号 |
| 商号・名称 | 載る | 30日以内 | 4条1項1号 |
| 役員・政令で定める使用人の氏名 | 載る | 30日以内 | 4条1項2号・3号 |
| 事務所の名称・所在地 | 載る | 30日以内 | 4条1項4号 |
| 専任の宅建士の氏名 | 載らない | 30日以内 | 4条1項5号 |
| ほかに行う事業の種類 | 載る | 対象外 | 4条1項6号 |
| 指示・業務停止の処分 | 載る | 対象外 | 8条2項4号 |
覚え方は、「届出は4条1項の1号〜5号」「名簿は4条1項の5号以外」と、それぞれの範囲を号で言えるようにすることです。重なりは1号〜4号で、5号は届出だけ、6号は名簿だけです。
業者名簿と、宅建士の資格登録簿
| 比べる点 | 宅建業者名簿 | 宅建士資格登録簿 |
|---|---|---|
| だれの台帳か | 宅建業者(会社・個人) | 宅建士の登録を受けた人 |
| 備える所 | 国土交通省と都道府県(8条1項) | 登録をした都道府県知事(18条2項) |
| 主な事項 | 免許証番号・商号・役員・事務所・兼業・処分 | 氏名・生年月日・住所・本籍・合格・勤務先の業者 |
| 変わったら | 変更の届出(30日以内・9条) | 変更の登録(遅滞なく・20条) |
| 一般の閲覧 | 10条で閲覧に供する | 10条の対象に入っていない |
主語で分けると混ざりません。名簿と「届出」は業者、登録簿と「変更の登録」は宅建士です。宅建士の勤務先が変わると、宅建士の側は変更の登録、業者の側は(専任の宅建士なら)変更の届出、と両方が動きます。免許そのものの基本は宅建業の免許の記事、業者が廃業や合併をしたときの届出は廃業等の届出の記事で確かめてください。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが機構の公開問題(昭和63年度〜令和7年度の40回・2,000問)を1問ずつ読んで分けた集計では、「免許」を主な論点とする問は全40回で22問・直近10回で6問、「変更の登録・登録の移転・変更の届出」は全40回で11問・直近10回で1問(副の論点としては全40回で6問)でした(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。名簿だけの数は数えていません)。取り違えやすいのは次の組み合わせです。
- 届出の範囲:9条の届出は4条1項1号〜5号。兼業の種類(6号)の変更に届出を求める形は誤りです。
- 名簿の範囲:令和7年4月から、専任の宅建士の氏名は名簿に載らない。ただし届出は要る。
- 期限の言葉:業者の変更の届出は30日以内、宅建士の変更の登録は遅滞なく。専任の宅建士が足りなくなったときの補充は2週間以内。
- 届出先:免許を受けた大臣か知事(9条)。大臣免許の業者の名簿が都道府県にも備えられること(8条2項)と、届出先とを混ぜないようにします。
- 閲覧:一般の閲覧に供されるのは業者名簿と特定書類。宅建士の資格登録簿は10条に入っていない。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
甲県知事の免許を受けた宅建業者Aは、宅建業のほかに新たに建設業を営むことにした。この場合、Aは、その日から30日以内に、甲県知事に変更の届出をする義務を負う。
答え:✕ 分かれ目は、兼業の種類が9条の届出の対象かです。9条の届出の対象は4条1項1号〜5号の事項で、ほかに行っている事業の種類(同項6号)は入っていません。正しくは、建設業を始めても9条の届出は要りません。兼業の種類は宅建業者名簿には載る事項(8条2項2号)なので、名簿に載る事項はすべて届け出る、と考えると○にしてしまいます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aの事務所に置かれている専任の宅建士BがAを退職し、Cが新たに専任の宅建士となった。専任の宅建士の氏名は宅建業者名簿に登載される事項ではないが、Aは、30日以内に、免許を受けた知事に変更の届出をしなければならない。
答え:○ 分かれ目は、名簿の登載事項と届出の対象のずれです。名簿の登載事項は4条1項各号のうち5号(専任の宅建士の氏名)を除いたものです(8条2項2号)。一方、9条の届出の対象は4条1項1号〜5号なので、専任の宅建士の交代は30日以内に届け出ます。名簿に載らないなら届出も要らない、と考えると✕にしやすい肢です。令和7年4月1日の施行前は名簿にも載っていたので、古い説明と取り違えないようにします。
問3(このサイトのオリジナル問題)
国土交通大臣及び都道府県知事が一般の閲覧に供することとされているものには、宅建業者名簿のほか、同じ条文により、宅地建物取引士資格登録簿も含まれる。
答え:✕ 分かれ目は、閲覧の条文が及ぶ範囲です。10条が一般の閲覧に供するとしているのは、宅建業者名簿と、免許の申請書に付けた一部の書類(特定書類)またはその写しです。正しくは、宅地建物取引士資格登録簿は10条の対象に入っていません。資格登録簿は宅建士の登録の台帳で(18条2項)、業者の台帳である名簿(8条)と並べて同じ扱いだと考えた取り違えです。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「宅建業法」で続けて解けます。
まとめ
- 宅建業者名簿は国土交通省と都道府県に備える。大臣免許の業者は、主たる事務所のある都道府県の名簿にも載る。
- 名簿に載るのは、免許証番号と免許の年月日、4条1項の5号以外の事項(商号・役員・事務所・兼業)、取引一任代理等の認可、65条の処分。
- 9条の届出は4条1項1号〜5号の変更。30日以内に免許権者へ。兼業の種類は届出の対象外。
- 令和7年4月から、専任の宅建士の氏名は名簿に載らない。ただし交代したら30日以内に届け出る。
- 一般の閲覧は名簿と特定書類。宅建士の資格登録簿は別の台帳で、変わったら遅滞なく変更の登録。
このサイトで次に読むなら、宅建業者の標識の記事がおすすめです。事務所の標識も令和7年4月から専任の宅建士の「数」を書く形になり、名簿と同じく「氏名」を外す見直しがされています。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第4条第1項、第8条、第9条、第10条、第18条第2項、第20条、第31条の3第3項、第65条、第83条第1項を、令和8年4月1日時点の条文で確認。第8条は令和7年3月31日時点の版とも比べた)
- e-Gov法令API「宅地建物取引業法」の改正履歴(令和7年4月1日施行の令和6年法律第53号)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行令」(第2条の2)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第5条、第5条の2、第5条の3、第14条の2の2)
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)(第10条関係:閲覧制度の趣旨)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(出題の根拠となる法令は、試験を行う年度の4月1日現在施行のもの)
働く人の法律試験ノート