社会人の資格勉強がしんどいとき:やる気が出ない・続かない日の心の立て直し方

働きながらの資格勉強がしんどいとき、まず止めたいのは勉強ではなく、「予定が崩れた → どうせ今日はダメだ → 明日から → 週明けから」という流れです。この流れは、気合いではなく、崩れたときにやることを先に決めておくことで断てます。

やることは4つです。崩れた日は「今日の残り」を1問だけ救う。毎日の目標に、使ってよい予備日を週2日つけて、完璧でなくても計画どおりと数えられるようにする。自分を責める言葉を、事実と次の一手の言葉に書き直す。止まったあとは、前回の続きの1問から再開する。この記事では、この4つを行政書士試験・宅建試験の勉強の場面に落として説明します。

「しんどい」「やる気が出ない」は、どこから来ているのか

同じ「しんどい」でも、原因によって先にやることが違います。まず、自分がどれに近いかを見分けます。

状態よくあるサイン先にやること
体が疲れている机に向かうと眠い。残業の週に止まる量を減らす日を決める(疲れた日の最低ライン)
計画が重すぎる予定の半分もできない日が続き、自分を責めるこの記事の基準のゆるめ方と再開の手順
何のためか見えない時間はあるのに手が伸びない目標の置き方を変える(モチベーションの記事)
点が伸びないやっているのに問題が解けないやり方の見直し(受かる気がしないときの記事)

この記事が中心に扱うのは、2つ目の「計画が重すぎて、崩れるたびに自分を責め、そのうち止まる」型です。働きながら勉強する人は、自分では動かせない予定(残業、出張、家族の用事)で計画が崩れます。崩れること自体は防げません。防げるのは、崩れたあとに全部やめてしまうことです。

「どうせ今日はダメだ」から全部やめてしまう流れは、どう断つか

架空の例で考えます。宅建を受けるAさんは、平日の夜に60分勉強する計画です。ある日、残業で帰宅が22時になりました。「今日はもう60分は無理だ。どうせ今日はダメだから、明日2時間やろう」。翌日は疲れが残って2時間は取れず、「今週はもう崩れた。月曜から立て直そう」。月曜には、1週間分の遅れが重く見えて、問題集を開く気になれません。

この流れには、3つの切れ目があります。どこか1つで止めれば、全部やめるところまでは行きません。

  1. 「今日はダメ」と思った瞬間:その日を0か100かで見ているときです。ここで「今日の残りを1問だけ救う」と決めておきます。前の日に間違えた肢(し=選択肢の一つ一つ)を1つ見る、宅建業法の○✕を1問解く、どちらかで今日は終わりにします。
  2. 「明日まとめてやる」と思った瞬間:取り返す量を翌日に足すと、翌日も崩れやすくなります。翌日は「いつもどおり」から始め、遅れは週末の空きに回すか、翌週以降に配り直します。
  3. 「週明けから」「来月から」と思った瞬間:区切りのいい日を待つと、待っている間の日数がそのまま空白になります。再開は「次に問題集を開ける時間」からにします。月曜を待たずに、今夜1問でかまいません。

この3つは、崩れてから考えると間に合いません。疲れた夜の頭は、たいてい「やめる」ほうを選ぶからです。スマホのメモに、次の3行をそのまま書いておきます。

  • 今日はダメだと思ったら、✕の肢を1つ見て終わりにする。
  • 抜けた分は明日に足さない。週末の空きに回す。
  • 区切りの日を待たない。次に開ける時間から再開する。

「もし◯◯したら、△△をする」の形で前もって決めておく方法そのものは、やる気に頼らない続け方で研究とあわせて説明しています。この記事では、それを「崩れた瞬間」に絞って使います。

完璧主義をゆるめるには、どんな基準にすればよいか

計画が崩れるたびに強く落ち込むときは、計画の基準が「毎日、全部できて当たり前」になっていないかを確かめます。この基準だと、1日抜けただけで「失敗」になります。そこで、基準の置き方を変えます。

目標に「予備日」をつける

参考になる研究があります。

どんな研究か:Sharif と Shu(2021年)は、目標に「予備」(いざというときに使ってよい余裕)をつけると、つまずいたあともあきらめにくくなるかを、1つの現場の研究と4つの実験で調べました。現場の研究では、アメリカの大学の学生と職員273人が4週間、1日の歩数の目標(ふだんの歩数の2割増し)に取り組みました。「週5日達成する」(やさしい目標)、「毎日達成する」(難しい目標)、「毎日達成する。ただし週2日までは予備を使ってよい」(予備つきの目標)などに分けて比べています。

何が分かったか:週に目標を達成した日の平均は、予備つき(週2日)のグループが約4.0日で、やさしい目標(約3.1日)や難しい目標(約2.8日)のグループより多くなりました。目標に届かなかった翌日に達成し直す割合も、予備つきのグループのほうが高かったと報告されています。研究者は、つまずいても予備を使えば「まだ目標に向かって進んでいる」と感じられることが、続ける気持ちを保つと説明しています。

注意すること:調べたのは歩数や短い実験の課題で、資格試験の勉強そのものではありません。また、論文は予備を「必要なときに使えるが、使うと少しだけ心の負担がある余裕」と定めています。いつでも好きに休める日として扱うと、同じ結果になるとは限りません。

試験勉強ではこう使う:「平日は毎晩60分」という目標なら、「平日は毎晩60分。ただし週2日までは予備日(15分以下でよい)」にします。予備日を使った日は、カレンダーに「予」と書きます。予備日を使った週も、使い切っていなければ計画どおりです。予備日を使い切っていない限り、「今週は崩れた」とは考えません。

疲れた日の記事で書いた「5分の日」や「決めておく休み」と組み合わせてもかまいません。違いは、あちらが「どんな日を短くするか」を決めるのに対し、予備日は「週に何回までなら計画どおりと数えるか」を決める点です。

1日を「満点・合格・最低」の3段階で数える

もう一つは、1日の基準を1つにしないことです。

段階中身の例(平日)数え方
満点の日予定の60分。新しい単元と問題計画どおり
合格の日20〜30分。✕の肢の見直しと問題10問計画どおり
最低の日1問か、✕の肢を1つ見る流れを切らなかった日

「満点の日」だけを数えると、忙しい週はほとんどが失敗の日になります。「合格の日」も計画どおりと数えると、週の中で崩れたと感じる日が減ります。満点の日を増やすことより、0の日を2日続けないことを優先します。

勉強の中身で出やすい完璧主義

基準のほかに、勉強の中身で完璧を求めて止まることもあります。行政書士・宅建の勉強でよく起きるのは次の3つです。

  • テキストを最初から全部読み終えてから問題に入ろうとする:行政法の総論を完全に理解してから、と思うと進みません。1つの単元を読んだら、その単元の問題をすぐ解きます。
  • 全問正解するまで次の単元に進まない:基準は「✕だった肢の、どこが違うかを言えるか」にします。言えたら次へ進み、その肢は数日後にもう一度解きます。言えるかどうかの確かめ方は「できたつもり」を防ぐ記事で説明しています。
  • ノートをきれいに作り直す:まとめノートを作る時間が、問題を解く時間を食います。書くのは、間違えた肢の「どこが違ったか」の1行だけで足ります。

自分を責めすぎないのは、甘えにならないのか

「自分に甘くすると、もっとサボるのでは」と心配する人もいます。この点を調べた研究があります。

どんな研究か:Wohl、Pychyl、Bennett(2010年)は、カナダの大学で心理学入門の授業を受ける1年生を、2回ある中間試験の期間にわたって調べました(3回の調査すべてに答えたのは134人、分析したのは119人)。1回目の試験の前に、試験勉強をどれだけ先延ばしにしたか、そしてその先延ばしについて自分をどれだけ許せているかを答えてもらいました。2回目の試験の前に、もう一度先延ばしの程度を答えてもらっています。

何が分かったか:1回目の試験の前に先延ばしが多かった学生では、その先延ばしについて自分を許せていた人ほど、2回目の試験の前の先延ばしが少ない傾向がありました。1回目の試験について感じていた嫌な気持ちが少なかったことが、そのつながりを説明する一つの要因と考えられています。

注意すること:これは、許すよう働きかけた実験ではなく、学生の答えを追った調査です。許したから先延ばしが減った、とまでは言えません。先延ばしの程度も本人の答えで、対象は1つの大学の1年生だけです。

失敗のあとに自分を責めすぎないよう促すと、次のテストに向けて長く勉強したという実験(Breines と Chen、2012年)もあります。その実験の中身は、疲れた日の記事で紹介しています。どちらも、「自分を許す」は「やらなくていいことにする」とは違います。抜けた事実は認めて、次の一手を決めることです。

試験勉強ではこう使う:責める言葉が頭に浮かんだら、それを「事実」と「次の一手」に書き直します。

頭に浮かぶ言葉事実に直すと次の一手
自分は意志が弱い今週は残業が3日あり、2日抜けた予備日を使った週として数える
もう間に合わない民法の予定が2週間遅れている遅れた分を翌月の週末に配り直す
模試がひどい。向いていない権利関係で取れた問題が少なかった✕の問題を分野ごとに数える
昨日もできなかった2日続けて抜けた今日は1問だけ解いて終わりにする

「事実に直すと」の欄は、日記のように長く書く必要はありません。数字と出来事を1行書くだけで、気持ちの大きさと、実際に起きたことの大きさが分けられます。模試の点数の読み方は受かる気がしないときの記事で扱っています。

止まってしまったあと、どこから再開すればよいか

何日も、あるいは何週間も止まってしまったときの再開の最小単位は、「問題集を開いて、前回の続きを1問解く」です。新しい計画を立て直すことから始めないのがポイントです。計画を作り直すのは、それ自体が重い作業で、作っただけで力尽きることがあります。

止まっていた長さ別に、戻り方の例を示します。

止まっていた長さ1日目2〜3日目4日目から
2〜3日前回の続きを1問いつもの半分いつもどおり
1〜2週間前に解けた単元を3問前回の✕の肢を見直すいつもの半分から
1か月以上前に解けた単元を3問1週間は半分の量残り期間で計画を見直す

長く止まったときは、新しい単元からではなく、前に解けた単元から始めます。たとえば行政書士なら、以前に進めた行政手続法の問題、宅建なら宅建業法の問題です。思い出せる問題から入ると、「まだ覚えている」と確かめられて、2日目に戻るのが楽になります。

1か月以上止まったときは、4日目以降に、残りの期間で計画を見直します。そのときも、減らすのは新しく読む範囲のほうです。前に解いた問題の見直しと問題演習の時間は残します。

しんどさが何週間も続くときは、何を変えるか

予備日をつけても、3段階で数えても、しんどさが何週間も続くことがあります。そのときは、気持ちの持ち方より、計画の量か時期を変える合図です。

  • 平日の量を減らす:予備日を毎週使い切る状態が2週続いたら、平日の基準そのものを下げます(疲れた日の記事の「5分の日が週の半分を超える週が2週続いたら」と同じ考え方です)。「60分」を「30分+週末に1時間足す」にする、などです。
  • しばらく「進める」をやめて「保つ」にする:繁忙期は、新しい単元を止めて見直しだけにします。やり方は疲れた日の記事に書いています。
  • 仕事・家族との取り決めを見直す:勉強の時間が毎回まわりの予定に押される場合は、仕事・家族との両立の記事で書いた取り決めを先に作ります。

なお、眠れない日や気分の落ち込みが長く続く、体に強い不調が出ている、というときは、勉強で乗り切ろうとせず、医療機関や身近な相談窓口に相談してかまいません。そういう時期は、勉強の量を減らして体調を戻すことを先にしてよい時期です。

今日からやること

  • スマホのメモに「今日はダメだと思ったら、✕の肢を1つ見て終わりにする」など、崩れた瞬間の3行を書く。
  • 平日の目標に「週2日までの予備日」をつけ、使った日はカレンダーに「予」と書く。
  • 1日の中身を「満点・合格・最低」の3段階で決め、合格の日も計画どおりと数える。
  • 次に自分を責める言葉が浮かんだら、「事実」と「次の一手」を1行ずつ書く。
  • いま止まっている人は、今夜、問題集を開いて前回の続きを1問だけ解く。

このサイトで次に読むなら、資格勉強のモチベーションの上げ方がおすすめです。崩れても戻れる形ができたら、次は「何のために、何を目標に進むか」の置き方を決めると、手が伸びない日が減ります。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)