簡単すぎず難しすぎない問題を混ぜる:やる気と実力を保つ問題の選び方

問題集を解くときは、1回のセット(まとめて解く問題のかたまり)に、「解けそうな問題」「迷う問題」「まだ解けない問題」を混ぜます。当サイトの基本形は、10問なら6・3・1です。ねらいは、10問中7〜8問の正解です。

結果を見て、次の回の割合を変えます。9問以上の正解が2回続いたら、まだ解けない問題を増やします。6問以下なら減らします。「正答率85%のときに一番よく学べる」という研究もありますが、これは機械学習のモデルで計算した理論です。人の勉強にそのまま当てはまるとは言えないので、目安の一つとして使います。

簡単すぎる・難しすぎると、何が起きるのか

問題集の解き方は、どちらにも崩れます。

  • 簡単すぎる場合:前に解いた問題ばかりだと、正解が続きます。でも、その中には「答えの番号を覚えているだけ」の問題が混ざります。正解数が増えるほど「もう大丈夫」と感じて、本番で初めて見る言い回しの肢(し=選択肢)に対応できません。30分使っても、新しく覚えたことがほとんどない、ということも起きます。
  • 難しすぎる場合:読み終えていない単元や、解説を読んでも分からない問題ばかりだと、1問に時間がかかり、10問のつもりが3問で終わります。✕が並ぶと、仕事のあとの疲れた頭では続ける気がなくなります。

働きながら勉強する人は、1回に使える時間が30〜60分ほどです。その時間を「確かめるだけ」にも「止まるだけ」にもしないように、難しさを混ぜて組みます。

「正答率85%」の研究は何を言っているのか

「85%くらい正解できる難しさが一番いい」という話を見かけることがあります。もとになっているのは、Wilson ら(2019年)の論文です。

どんな研究か:この論文が調べたのは、人ではなく、機械学習のモデルです。2つのうちどちらかに分ける課題(二値分類)を、間違いを少しずつ減らす方法(勾配降下法)で学ぶモデルについて、練習の難しさをどう決めると一番速く学べるかを計算しました。そして、人工のニューラルネットワークや、サルの見る力の学習を説明するモデルを使った計算機の上の実験(シミュレーション)で確かめています。

何が分かったか:論文の前提のもとでは、練習中の誤答率が約15.87%、つまり正答率がおよそ85%のときに、学習が一番速く進むという結果でした。

注意すること:人や動物で実験して測った数字ではありません。著者自身も、もっと複雑な場面では論文の前提が成り立たないことがあり、前提を変えると最適な正答率も変わると書いています。法律の試験勉強は「2つに分ける課題」ではありませんし、問題集の正答率は、論文の誤答率と同じものでもありません。

試験勉強ではこう使う:「85%ちょうどを狙う」のではなく、「全部解ける」と「ほとんど解けない」の両端を避ける、という目安の一つにとどめます。当サイトが10問中7〜8問の正解をねらいにしているのは、この両端を避けるための幅で、85%という数字から計算したものではありません。

解けない問題を混ぜてよい理由

「まだ解けない問題を解いても、間違えるだけでむだでは」と思うかもしれません。これについては、人を対象にした実験があります。

Kornell・Hays・Bjork(2009年)は、架空の一般知識の問題や、関係の弱い単語の組み合わせを使い、2つのやり方を比べました。1つは「答えを見る前に答えようとして、そのあと正解を見る」。もう1つは「問題と答えを最初から一緒に読む」。結果は、答えようとして失敗しても、そのあと正解を見たほうが、あとのテストでよく覚えていました。ただしこれは、失敗のすぐあとに正解を見た場合の話です。

一方で、どんな難しさでもよいわけではありません。Bjork と Bjork(2011年)は、間をあける・混ぜる・テストするなど、その場では難しく感じるやり方が長く残る学習につながることを「望ましい困難」と呼びました。そのうえで、学ぶ人にその難しさに応えるための前提の知識がなければ、その難しさは望ましくないとも書いています。試験勉強に置きかえると、「基本書でまだ読んでいない単元の問題」は、まだ解けない問題として混ぜる対象に入れない、ということです。

問題を3つの箱に分ける:解けそう・迷う・まだ解けない

混ぜるためには、問題を難しさで分けておく必要があります。分ける材料は、前回解いたときの印です。当サイトでは、肢ごとに○(根拠を言える)・△(たぶん合っているが根拠は言えない)・✕(分からない・間違えた)を付ける方法をすすめています(「できたつもり」を防ぐ記事)。この印を使うと、次のように分けられます。

箱入れる問題解いたあと
解けそう前回、選んだ肢が○だった問題間をあけて確かめる
迷う前回△があった問題。前回✕で、解説を読み直した問題根拠を1行で書く
まだ解けない前回✕のままの問題。読み終えたばかりの単元の、初めて解く問題解説を読み、次は「迷う」へ

まだ印がない問題集なら、今日から付け始めれば十分です。最初の1周は、読み終えた単元の問題をそのまま解き、付いた印で箱に分けます。2周目から、箱を使ってセットを組みます。

なお、「同じ分野をまとめて解くか、分野を混ぜて解くか」は、この記事とは別の話です。分野の混ぜ方は混ぜて解く記事で扱います。この記事で混ぜるのは、難しさです。

1回のセットは何対何で混ぜるか

当サイトの基本形は、解けそう6・迷う3・まだ解けない1(10問の場合)です。

この割合にしている理由を、仮の数字で示します。解けそうな問題を9割、迷う問題を6割、まだ解けない問題を3割くらい正解できるとします。すると、6問×0.9+3問×0.6+1問×0.3で、10問中およそ7〜8問の正解になります。ねらいの幅に入る計算です(割合は説明のための仮の数字で、人によって違います)。

使える時間ごとの例です。

時間問題数解けそう・迷う・まだ解けないねらいの正解
平日のすき間15分5問3・2・04問前後
平日30分10問6・3・17〜8問
平日60分20問12・6・214〜16問
休日3時間通し演習割合は変えない結果で箱を入れ替える
  • すき間の15分には「まだ解けない」を入れない:解けない問題は、解説を読む時間が要ります。電車の中で解説を読み切れずに終わると、失敗しただけで正解を見ないことになり、先ほどの研究の条件から外れます。
  • 休日の通し演習は難しさを選ばない:本番と同じ形で解く練習なので、問題は選びません。そのかわり、結果の印で箱を入れ替えます。休日の時間の使い方は休日の記事で扱います。
  • 並べ方:最初の1〜2問は解けそうな問題にして、始める負担を軽くします。まだ解けない問題は最後に回さず、前半から中ごろに入れます。最後に置くと、時間切れで解説を読まずに終わりやすいからです。

行政書士試験の例:平日30分で行政手続法の10問。前回○だった「申請に対する処分」の問題を6問、△が残る「不利益処分」の問題を3問、先週読み終えたばかりの「聴聞」の初めての問題を1問。

宅建試験の例:平日30分で宅建業法の10問。前回○だった「クーリング・オフ」の問題を6問、△が残る「手付」の問題を3問、前回✕のままの「重要事項説明」の問題を1問。

解けそうな問題の6問は、「確かめるだけでむだ」ではありません。間をあけて解き直すことで、覚えたことを長く残す役目があります。どれくらい間をあけるかは復習の間隔の記事で扱います。

結果を見て、次の回の割合をどう変えるか

1回解いたら、10問中の正解数を数えます。ここでの正解数は、△の肢で当たった問題も含めた、ふつうの正解数です(理解の判定は○△✕で別に行います)。そして、次の決まりで次の回の割合を変えます。

10問中の正解状態次の回
9〜10問が2回続いた簡単すぎ解けそうを1減らし、まだ解けないを1増やす(6・3・1→5・3・2)
7〜8問ちょうどいいそのまま
5〜6問少し難しいまだ解けないを1減らし、解けそうを1増やす(6・3・1→7・3・0)
4問以下難しすぎその単元は問題を止め、基本書を読み直す回を1回入れる

上げるときは「2回続いたら」、下げるときは「1回で」にしているのには理由があります。1回だけの高い正解数は、たまたま知っている問題が多かっただけのこともあります。一方、難しすぎる回が続くと、やめたくなる気持ちが先に来ます。だから、下げるのは早めにします。

正解数が多いのに安心できないときもあります。同じ問題を短い間隔でくり返すと、答えの番号を覚えてしまい、見かけの正解数が上がるからです。9〜10問正解が続いても、○の肢が少ないなら、それは「簡単すぎ」ではなく「答えを覚えている」状態です。その場合は割合を変えるより、解き直しの間隔を広げ、肢ごとの根拠で判定し直します。

時期によって基準をゆるめる・変える

  • 1周目(読み終えたばかりの単元が多い時期):解けそうな問題がまだ少ないので、正解が5〜6問でもそのまま進めます。4問以下が続くときだけ、基本書に戻ります。
  • 2周目以降:上の表の決まりで回します。
  • 直前の1か月:新しい単元は入れません。まだ解けない問題の箱には、「✕が何度も続く肢」だけを入れます。割合は5・4・1のように迷う問題を増やし、△を○に変えることを優先します。直前期の配分は直前1か月の記事で扱います。

「まだ解けない問題」はどう解くか

まだ解けない問題は、1セットの中で一番時間を食います。扱い方を決めておきます。

  1. 考えるのは3分まで:3分考えて分からなければ、そこで止めます。ただし、何も選ばずに解説へ進むのではなく、いったん答えを選びます。答えようとしてから正解を見るほうが、最初から読むより覚えやすいという、先ほどの実験の形に合わせるためです。
  2. すぐに解説を読む:答えを選んだら、その場で解説を読みます。あとでまとめて読もうとすると、読まずに終わりやすくなります。
  3. 根拠を1行で書く:解説を閉じてから、「どの要件・どの数字が決め手だったか」を1行で書きます。書けたら、この問題は次の回から「迷う」の箱に移します。
  4. 解説を読んでも分からないときは、基本書へ:問題のせいではなく、その単元の理解が足りていないサインです。問題集を進めるのをやめ、基本書のその節に戻ります。そのページ番号を問題の横にメモしておきます。
  5. 3回続けて✕なら、いったん箱から出す:同じ問題で失敗を重ねても、気持ちが下がるだけです。基本書を読み直す日を1回はさんでから、箱に戻します。

今日からやること

  • 今使っている問題集の、前回の印を見て、問題を「解けそう・迷う・まだ解けない」に分ける(印がなければ、今日から肢ごとに○△✕を付ける)。
  • 次の30分で解く10問を、6・3・1で選ぶ。まだ読んでいない単元の問題は入れない。
  • まだ解けない問題は、3分で区切って答えを選び、すぐ解説を読む。
  • 終わったら正解数を記録し、表の決まりで次の回の割合を決めておく。

このサイトで次に読むなら、「できたつもり」を防ぐ○・△・✕の付け方がおすすめです。この記事の3つの箱は、その印をもとに分けています。印の付け方が甘いと、箱の分け方もずれます。毎回のセットを決めた時間に始める工夫は、やる気に頼らない続け方で扱っています。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

  • Wilson, R. C., Shenhav, A., Straccia, M., & Cohen, J. D. (2019). The Eighty Five Percent Rule for optimal learning. Nature Communications, 10, 4646. https://doi.org/10.1038/s41467-019-12552-4(二値分類・勾配降下法のモデル、最適な誤答率約15.87%、前提が成り立たない場合についての著者の注意)
  • Kornell, N., Hays, M. J., & Bjork, R. A. (2009). Unsuccessful retrieval attempts enhance subsequent learning. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 35(4), 989–998. https://doi.org/10.1037/a0015729(PubMed)
  • Bjork, E. L., & Bjork, R. A. (2011). Making things hard on yourself, but in a good way: Creating desirable difficulties to enhance learning. In M. A. Gernsbacher et al. (Eds.), Psychology and the real world: Essays illustrating fundamental contributions to society (pp. 56–64). Worth Publishers. 著者の研究室のPDF

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