問題を解いたら、正解したかどうかではなく、肢(し=選択肢)ごとに印を付けます。○は「なぜ正しいか、なぜ誤りかの根拠を言える」。△は「たぶん合っているが、根拠は言えない」。✕は「分からない、または間違えた」です。
決まりは1つです。正解していても、根拠を言えない肢は△にします。消去法で当たった問題は、選んだ肢が△なので「できた」に数えません。自分の実力は、問題の正解数ではなく、○の肢の数で測ります。こうすると、本番で初めて「分かっていなかった」と気づく事態を減らせます。
なぜ「できたつもり」になるのか
原因は大きく2つあります。
選択式は、分からなくても当たる
行政書士試験の択一式は5つの肢から1つを選ぶ形(5肢択一式)で、令和7年度の合否判定基準では1問4点です。宅建試験は4つの肢から選ぶ形(4肢択一式)で50問です。どちらも、答えを選べば点になります。
5肢択一式で何も分からずに選んでも、5回に1回は当たります。3つの肢を消せれば、残り2つのどちらかなので2回に1回です。宅建の4肢択一式なら、勘でも4回に1回です。問題集で「正解」の数だけを数えていると、この当たりも実力に入ってしまいます。
消去法も同じです。ほかの肢を消して、残った1つを選んで正解した。このとき、選んだ肢の内容を分かっているとは限りません。同じ論点が、別の問題で、消す手がかりのない形で出たら判断できません。
答えを見ながらだと、分かった気になる
もう1つは、解説を読んだ直後の「分かった」です。
どんな研究か:Koriat と Bjork(2005年)は、2つの単語の組(手がかりの語と、答えの語)を覚える課題で、「あとで手がかりの語だけを見て答えを思い出せそうか」を判断してもらう実験をしました。
何が分かったか:判断するときには答えの語が目の前にあります。でも、テストのときには答えがありません。答えが見えている状態で判断すると、その情報を差し引けず、学んでいる間は「覚えた」と感じても、テストではその感覚が当てにならないことがあると示しました。論文の題名では、これを「有能さの錯覚」(illusions of competence)と呼んでいます。
試験勉強ではこう使う:解説を開いたまま「なるほど、分かった」と思っても、それは答えが見えている状態の判断です。印は、解説を閉じてから、自分の言葉で根拠を言えるかで付けます。読むより思い出すほうが覚えるという話は、「思い出す」練習の記事でくわしく扱っています。
○・△・✕は何を基準に付けるか
| 印 | 状態 | 例 |
|---|---|---|
| ○ | 正しいか誤りかと、その根拠を言える | 「審査基準は公にする義務がある。だからこの肢は正しい」 |
| △ | たぶん合っているが、根拠を言えない | 「なんとなく正しい気がした」「ほかを消したら残った」 |
| ✕ | 分からない、または間違えた | 「見たことがない」「誤りの肢を正しいと思った」 |
「根拠を言える」とは、次のどちらかができることです。
- 正しい肢:決め手になる要件・数字・例外を一言で言える。
- 誤りの肢:どの言葉がずれていて、どう直せば正しくなるかを言える。
条番号まで言えなくても、決め手の言葉を言えれば○にします。目安の時間は1つの肢につき10〜20秒です。それ以上考えないと出てこないなら△にします。
混同しやすい点があります。肢そのものが「正しい」か「誤り」かと、自分の理解の印(○△✕)は別のものです。誤りの肢を「誤り」と根拠つきで見抜けたら、その肢の印は○です。
なお、過去問の使い方の記事では、通し練習用に4段階(◎○△×)で判定しています。この記事の3段階は、毎日の問題集でも回せるように縮めたものです。過去問の記事の○と△(合っていたが根拠があいまい・勘で選んだ)がこの記事の△に、×が✕にあたります。過去問の記事の◎は「根拠の条番号まで言える」状態で、この記事の○より一段厳しい基準です。毎日の問題集では決め手の言葉が言えれば○、週末に過去問を見直すときは条番号まで確かめて◎、と使い分けてください。どちらも「2回続けて最上位の印なら外す」は同じです。
実際に付けてみる(オリジナル問題)
次の肢は、このサイトで作ったものです(このサイトのオリジナル問題)。過去問の文章ではありません。
行政書士試験の例:行政手続法
次のア〜ウのうち、正しいものはどれか(このサイトのオリジナル問題)。
- ア 行政庁は、審査基準を定めたときは、行政上特別の支障があるときを除き、これを公にしておかなければならない。
- イ 行政庁は、申請に対する処分について、標準処理期間を定めなければならない。
- ウ 行政庁は、標準処理期間を定めたときは、これを公にしておくよう努めなければならない。
答え:アが正しい。行政手続法5条3項は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を公にしておかなければならないとしています。イは誤り。6条は、標準処理期間(申請が届いてから処分までにふつうかかる期間)を「定めるよう努める」としていて、定めることは努力義務です。ウも誤り。6条は、定めたときは「公にしておかなければならない」としていて、こちらは義務です。
ある人がこの問題を解いて、アを選んで正解したとします。振り返ると、次の状態でした。
| 肢 | そのときの頭の中 | 印 |
|---|---|---|
| イ | 標準処理期間を定めるのは努力義務だと言えた | ○ |
| ウ | 「努めなければ」が弱い気がして、なんとなく誤りにした | △ |
| ア | イとウを消したら残った。5条の中身は言えなかった | △ |
問題としては正解ですが、記録は「○1・△2」で、選んだアが△なので、この問題は「できていない」に数えます。このあと、△の肢の根拠を1行で書きます。「審査基準:公にしておく=義務(5条3項)。標準処理期間:定める=努力義務、定めたら公にする=義務(6条)」。審査基準と標準処理期間の全体は、行政手続法の記事で確かめられます。
宅建試験の例:クーリング・オフ
次のエ・オは正しいか、誤りか(このサイトのオリジナル問題)。
- エ クーリング・オフは、申込みの撤回等ができる旨とその方法を告げられた日から起算して8日を経過すると、することができなくなる。
- オ 買主がクーリング・オフをする場合、その効力は、書面が宅建業者に届いた時に生じる。
答え:エは正しい(宅建業法37条の2第1項1号)。オは誤り。クーリング・オフは書面で行い、その効力は書面を「発した時」に生じます(同条2項)。
オを「誤り」と判断して当たっても、理由が「『届いた時』は何か違う気がした」なら△です。「発した時に効力が生じるから誤り」と言えて初めて○です。エも、「8日」という数字だけ覚えていて、どの日から数えるかを言えないなら△にします。クーリング・オフが使える場面の条件は、クーリング・オフの記事で扱っています。
消去法で正解した問題はどう数えるか
決まりは次のとおりです。
- 問題として「できた」に数えるのは、選んだ肢が○のときだけ。選んだ肢が△なら、正解でも「できていない」に数えます。
- 消した肢は、それぞれ別に判定する。根拠を言えて消せた肢は○です。消去法そのものが悪いのではありません。消した肢の判断は、ちゃんと実力として数えます。
- 「誤っているものを選べ」でも同じ。選んだ肢がなぜ誤りかを言えなければ△です。
たとえば、5肢択一式で4つの肢を根拠つきで消し、残った1つを選んで正解したとします。消した4つは○、選んだ1つは△です。問題は「できていない」に数えます。厳しく見えますが、選んだ肢の論点が別の問題で単独で問われたら、答えられないからです。
誤解のないように書いておくと、本番では消去法を使ってかまいません。点になれば同じ1問です。ここで言っているのは、練習のときの「数え方」の話です。練習で消去法の正解を「できた」に入れてしまうと、まだ理解していない肢を、もう勉強しなくていい側に分けてしまいます。
記録は、問題の正解数と、肢の○△✕の数を分けて書きます。たとえば「10問中8問正解。50肢のうち○28・△15・✕7」。実力の目安は、正解の8割ではなく、○の割合の56%(28÷50)のほうです。この差が大きいほど、当たりと消去法に助けられています。
判定が甘くならないようにするには
自分で付ける印なので、甘くなりがちです。判定の正確さが大事だと分かる研究があります。
どんな研究か:Dunlosky と Rawson(2012年)は、大学生に用語の定義を覚えてもらう実験を2つ行いました。学生は練習テストで定義を書き、そのつど自分の答えがどれくらい正しいかを判定しました。そして、自分で「正しい」と判定した回数が3回になるまで、その用語の練習を続けました。つまり、練習を終える時期を、学生自身の判定が決める仕組みです。
何が分かったか:判定が正確だった学生ほど、2日後のテストでよく覚えていました。この関係は、見せられた正解(答え合わせ)の違い、かけた努力、練習の回数の違いでは説明できませんでした。論文の題名は「自信過剰は成績の伸び悩みを生む」です。
試験勉強ではこう使う:この実験のように、自分の判定で「もう練習しなくていい」が決まるなら、甘い○は、まだ覚えていない肢の練習を早く終わらせてしまいます。判定を正確にするために、次の4つを決まりにします。
- 解説を開く前に印を付ける:解いた直後、答え合わせの前に、肢ごとの手ごたえで仮の印を付けます。答え合わせで間違いが分かったら✕に直します。正解でも、根拠が解説と違っていたら△に直します。
- 根拠は声に出すか、書く:頭の中で「分かる」と思うだけでは○にしません。小さな声で言うか、肢の横に一言書けたら○です。
- ○か△かで迷ったら△:迷う時点で、根拠が固まっていません。
- 印には日付を添える:同じ問題集を何周もするので、「10/12△」のように書きます。前の印が見えると、△が○に変わったかが分かります。
印をどう使うか:次に解く順と、外す基準
印は付けて終わりではなく、次に何をするかを決める材料です。
- ✕の肢:基本書か論点の記事に戻り、根拠を1行で書きます。2〜3日あけて解き直します。
- △の肢:根拠を1行で書き、次の問題セットに入れます。難しさの混ぜ方はちょうどいい難しさの記事で、この印をもとに組み立てています。
- ○の肢:すぐには外さず、日をあけてもう一度確かめます。
では、いつ外してよいか。当サイトの基準は、日をあけて2回続けて○なら外すです。1回の○で外さない理由になる研究があります。
どんな研究か:Kornell と Bjork(2008年)は、英語とスワヒリ語の単語の組を単語カードで覚える実験で、「もう覚えた」と思ったカードを束から抜いてよい条件と、抜けない条件を比べました。
何が分かったか:カードを抜いてよい条件のほうが、テストの成績が少し低くなりました。差は小さいものの、一貫してマイナスでした。また、1回正しく思い出せたら抜く、というやり方が一番成績が低く、2回正しく思い出してから抜くと、下がり方は小さくなりました。ただし、この比較は1つの実験の、人数の少ない組どうしの結果です。「2回」という数字が一番よいと示されたわけではありません。
試験勉強ではこう使う:一度○が付いた肢でも、もう一度確かめる価値があります。外すのは2回続けて○になってから。外した肢も、試験の直前にまとめて一度見るだけは残しておきます。
週に1回、分野ごとに○の割合を見ます。たとえば行政手続法は○が7割、行政不服審査法は○が4割なら、次の週は行政不服審査法に時間を回します。正解数で見るより、どこが本当に弱いかがはっきりします。△と✕の肢だけを書き留めておく形にすると、見返しも短くて済みます。書き留め方は間違いノートの記事で扱います。
今日からやること
- 次に解く問題から、肢ごとに○・△・✕を付ける。印は解説を開く前に付け、答え合わせのあとで直す。
- 正解でも根拠を言えない肢は△にする。消去法で当たった問題は「できた」に数えない。
- △と✕の肢は、解説を閉じてから根拠を1行で書く。
- 記録には、正解数と○の数を分けて書く。
- ○の肢は、日をあけて2回続けて○になってから外す。
このサイトで次に読むなら、簡単すぎず難しすぎない問題の混ぜ方がおすすめです。この記事で付けた○△✕を使って、次の30分に解く問題をどう選ぶかを決められます。過去問を3時間通しで解く練習の判定は、過去問の使い方の記事で4段階のやり方を紹介しています。
参考にした研究・資料(2026年10月確認)
- Koriat, A., & Bjork, R. A. (2005). Illusions of competence in monitoring one’s knowledge during study. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 31(2), 187–194. https://doi.org/10.1037/0278-7393.31.2.187(概要はハイファ大学の研究者ページで確認)
- Dunlosky, J., & Rawson, K. A. (2012). Overconfidence produces underachievement: Inaccurate self evaluations undermine students’ learning and retention. Learning and Instruction, 22(4), 271–280. https://doi.org/10.1016/j.learninstruc.2011.08.003(概要はERIC(EJ964388)で確認)
- Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Optimising self-regulated study: The benefits—and costs—of dropping flashcards. Memory, 16(2), 125–136. https://doi.org/10.1080/09658210701763899(著者の研究室のPDF)
- e-Gov法令検索「行政手続法」(5条3項、6条)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(37条の2第1項1号・第2項)
- 行政書士試験研究センター「合否判定基準」(令和7年度、PDF)(5肢択一式の配点)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(宅建試験の出題形式)
働く人の法律試験ノート