行政書士試験の難易度を公式の数字で言うと、令和7年度の合格率は14.54%です(受験者50,163人のうち合格者7,292人)。直近10年(平成28年度〜令和7年度)では9.95%〜15.72%です。ただし、この試験は「上位◯%を合格にする」やり方ではありません。令和7年度の基準では、300点満点の60%にあたる180点を取れば合格です。法令等122点・基礎知識24点の足切りも超えていれば、何人でも合格になります。
難しさの正体は、合格率の低さそのものではありません。①範囲が広い、②40字の記述式がある、③基礎知識に足切りがあるの3つです。反対に、思われているほど高い壁ではないこともあります。受験資格がないこと、満点の6割で受かること、配点の8割が選んで答える問題であること、公式の過去問が6年分無料で見られることです。この記事では、公式の数字だけを使って、どこが難しく、どこはそうでもないかを分けて示します。
公式の数字で見ると、どのくらい難しいのか
行政書士試験研究センター(試験を行っている機関。以下「センター」)が公表している、直近5年の結果です。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和7年度 | 50,163人 | 7,292人 | 14.54% |
| 令和6年度 | 47,785人 | 6,165人 | 12.90% |
| 令和5年度 | 46,991人 | 6,571人 | 13.98% |
| 令和4年度 | 47,850人 | 5,802人 | 12.13% |
| 令和3年度 | 47,870人 | 5,353人 | 11.18% |
直近5年は11.18%〜14.54%で、令和7年度がいちばん高い数字です。公式の数字から言えるのは、受験した人のおよそ7〜9人に1人が合格している、ということです。合格率は、申し込んだ人ではなく、実際に受験した人を元に計算しています。10年分の動きや、何を元に計算するかで数字がどう変わるかは合格率の推移と読み方にまとめています。
もう一つ公式に出ている手がかりが、合格者の平均得点です。令和7年度の結果概要では197点(前年度は198点)でした。合格基準の180点より17点高いところに、合格者の平均があります。5肢択一式(1問4点)なら4〜5問分です。受験者全体の平均点や、点の散らばり方は、結果概要などの公式資料には載っていません。
「偏差値」や「難易度ランキング」は当てになるか
「行政書士 難易度」で調べると、資格を偏差値で並べた表やランキングが出てくることがあります。しかし、センターは偏差値のような数字を出していません。国家試験どうしを一つの物差しで並べた公式の資料もありません。どの数字を元に、どう計算したのかが示されていない数字は、当サイトでは使いません。
公式に確かめられるのは、次の5つです。合格率・合格基準・配点・合格者の平均得点・出題の範囲。難しさを判断する材料は、この5つで足ります。以下では、「合格の決め方」「何が難しいか」「何はそれほどでもないか」に分けて見ていきます。
合格の決め方は「上位◯%」ではなく「満点の◯%」
難易度を考えるうえでいちばん大事なのが、合格の決め方です。センターの合格基準では、次の3つを「いずれも」満たした人が合格です。
| 基準 | 満点に対する割合 | 令和7年度の点数 |
|---|---|---|
| 法令等 | 50%以上 | 244点中122点以上 |
| 基礎知識 | 40%以上 | 56点中24点以上 |
| 試験全体 | 60%以上 | 300点中180点以上 |
基準は、満点に対する割合で決まっています。これを絶対評価(ほかの人と比べず、決まった点で判断するやり方)といいます。だから、ほかの受験者の出来は、自分の合否に直接は関係しません。受験者が増えても、まわりがよくできても、基準を超えれば合格です。合格率は、基準を超えた人の割合が、結果としてその数字になったものです。
たとえば、学校のテストで「80点以上なら全員A」と決まっているのと同じ考え方です。クラスの上位何人がA、という決め方ではありません。ただし本物の試験では、次のような調整があります。問題の難しさが過去と比べて大きく変わったと認められた年には、合格基準点を見直すことがあります。これを「補正的措置(ほせいてきそち)」といいます。基準点を「毎年180点」と言い切れないのはこのためです。また、令和8年度の配点は前もって公表されず、合格発表のときに「合否判定基準」で公表されます。上の点数は令和7年度のものです。補正のしくみと基準点の計算は合格点と足切りの仕組みでくわしく扱っています。
この決め方から言えるのは、次のことです。難しさは「何人に勝つか」ではなく、「300点中180点を本番で取れる状態にできるか」で考える。そのうえで、180点を取るのを難しくしている要素を、次に分けて見ます。
何が難しいのか:範囲・記述式・足切り
範囲が広い
出題は大きく2つに分かれます。法令等(46題)は、憲法・行政法・民法・商法・基礎法学から出ます。基礎知識(14題)は、一般知識・行政書士法等の業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解から出ます。行政法だけでも、中心とされる法律がたくさんあります。行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法です。法令等の科目が5つ、基礎知識の分野が4つ、さらに行政法の中に法律が6つ。それだけの広さです。
さらに、出題の基準日があります。令和8年度は「令和8年4月1日現在施行されている法令」から出題されます。つまり、その日に効力がある法律が範囲です。法律が改正されたら、覚えた内容を新しい条文に合わせて直す必要があります。たとえば行政書士法は、2026年1月1日施行の改正で、条番号と言葉が変わりました。
ただ、広さは均等ではありません。科目ごとの問題数は、センターが公表しているものではありません。そこで当サイトで令和3年度の問題を数えると、5肢択一式40問のうち、行政法が19問、民法が9問でした(公式の内訳ではなく、年度によって変わることがあります)。広い範囲の中でも、点の多くは行政法と民法に集まっています。科目と配点の全体は科目と配点の全体像で確かめられます。
40字の記述式がある
法令等には、40字程度で答えを書く記述式が3問あります。令和7年度の配点では1問20点、合わせて60点です。満点300点の2割にあたります。選択肢から選ぶ問題なら、うろ覚えでも、ちがうものを消していけば正解に近づけます。記述式はそうはいきません。条文の要件(どんなときに)と効果(どうなるか)を自分の言葉で書く必要があります。しかも、40字に収めなければなりません。
もう一つの難しさは、採点基準が公表されていないことです。センターのサイトには、過去の正解のページがあります。記述式の「正解例」と字数は載っていますが、どの要素に何点を配るかは書かれていません(令和3年度の正解ページで確認)。自己採点で記述式の点を言い切れないのはこのためです。書き方の型と、部分点を計画にどう入れるかは記述式の書き方で扱っています。
基礎知識に足切りがある
足切りとは、ある科目の点が足りないと、合計点に関係なく不合格になるしくみです。基礎知識は14問・56点(令和7年度)で、満点の40%以上が必要です。56点の40%は22.4点です。ただ、1問4点ずつなので、実際の基準点は24点でした。つまり14問中6問の正解が必要です。法令等で高い点を取っても、基礎知識が5問以下なら不合格です。
たとえば、受験生のけんたさんが法令等で150点を取ったとします。それでも基礎知識が5問(20点)なら、合計がいくつでも不合格です。難しいのは、6問という数より、範囲の読みにくさです。一般知識の分野は範囲が決めにくく、勉強した分だけ点になるとは限りません。そこで当サイトでは、準備しやすい分野で6問を固めることをすすめています。行政書士法などの業務関連法令、個人情報保護、文章理解のように、条文や解き方を準備できる分野です(基礎知識の記事)。
3時間で60問を解く
試験は午後1時から4時までの3時間です。令和7年度は、5肢択一式54問(法令等40・基礎知識14)、多肢選択式3問、記述式3問の計60問でした。単純に割ると1問3分です。記述式を書く時間や見直しの時間を取ると、5肢択一式にかけられる時間はもっと短くなります。知識があっても、時間内に解き切る練習をしていないと、点に結びつきません。時間の配り方は、本番前に公式の過去問を3時間通しで解いて決めておきます。
思われているほど難しくないのはどこか
一方で、公式のしくみを見ると、次の点は最初に心配するほどの壁ではありません。
- 受験資格がない:年齢・学歴・国籍に関係なく、誰でも受験できます。法学部を出ていることや、講座を受けたことは条件になっていません。
- 満点の6割で合格できる:全体の基準は60%、法令等は50%です。全問正解をめざす試験ではありません。4割を落としても、全体の基準には届きます。分からない問題が出ても、それだけで合否は決まりません。
- 配点の8割は選んで答える問題:令和7年度の配点で計算します。5肢択一式(法令等160点・基礎知識56点)と多肢選択式(24点)を合わせると240点で、300点の80%です。記述式が0点でも、ほかで180点を取れれば全体の基準は超えます(法令等122点・基礎知識24点も超えている場合)。
- 人数の枠がない:絶対評価なので、受験者が増えても基準点は上がりません。
- 練習の材料が無料で手に入る:センターのサイトで、令和2年度〜令和7年度の6年分の問題と正解が公開されています(著作権の関係で載っていない問題もあります)。条文は、e-Gov法令検索で無料で読めます。
- 点の集まる場所がはっきりしている:行政法と民法に配点が集まっています。どこから手をつけるかで迷う時間は短くて済みます。
まとめると、この試験の難しさは、合格率の数字から想像しがちな「ごく一部しか受からない」種類のものではありません。広い範囲を、配点の重い順に、時間内に解ける形まで仕上げる段取りの難しさです。段取りは、自分で決められます。
ほかの国家試験と合格率を比べるときの注意
ほかの資格と比べたい人のために、数字を並べます。それぞれの試験を行う機関などが公表している数字を、当サイトが確かめられた範囲で載せています(2026年10月確認)。
| 試験 | 年度 | 合格率 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 行政書士試験 | 令和7年度 | 14.54% | 行政書士試験研究センター |
| 宅地建物取引士資格試験 | 令和7年度 | 18.7% | 不動産適正取引推進機構 |
| 社会保険労務士試験 | 令和7年度(第57回) | 5.5% | 厚生労働省 |
| 司法書士試験 | 令和7年度 | 約5.2%(注) | 法務省 |
宅地建物取引士資格試験(宅建試験)の数字は、不動産適正取引推進機構の「試験実施概況」に載っている合格率です(受験者245,462人・合格者45,821人)。社会保険労務士試験は、厚生労働省の合格者発表に載っている合格率です(受験者43,421人・合格者2,376人)。(注)法務省の「令和7年度司法書士試験の最終結果について」には、合格率が書かれていません。受験者数14,418人(午前の部と午後の部の両方を受けた人の数)と合格者数751人から、当サイトが計算した数字です。
この表から「どの試験が何倍難しい」とは言えません。理由は3つあります。
- 受ける人が違う:どんな準備をした人が受けているかは、試験ごとに違います。合格率は、その受験者全体の結果です。
- 合格の決め方が違う:行政書士試験の基準は、満点に対する割合で決まっています。一方、宅建試験の合格基準点(一般の受験者)は年度ごとに違います。不動産適正取引推進機構の資料では、令和6年度が50問中37点、令和7年度が33点でした。決め方が違う試験の合格率を並べても、同じ物差しにはなりません。宅建の合格点が毎年変わるしくみは、宅建試験の合格点と合格率の記事で説明しています。
- 試験の形が違う:科目、問題の形、試験の段階が違います(筆記のあとに口述(こうじゅつ=口頭で答える試験)がある試験など)。
合格率の比べ方は、「どの試験も、受けた人の多くは不合格になっている」と確かめる程度にとどめます。自分が受けるかどうかは、次の項の手順で判断するほうが役に立ちます。
自分にとっての難しさは、どう見積もればよいか
合格率は試験全体の結果で、「あなたが受かる確率」ではありません。自分にとっての難しさは、次の手順で見積もれます。
- 公式の問題を1年分、ながめる:センターの「過去の試験問題と正解」から1年分のPDFを開きます。問題文の長さ、条文の言葉づかい、記述式の聞き方を見ます。解けなくてかまいません。「読んで意味がとれるか」を確かめます。使い方は過去問の記事で書いています。
- 目標点を3つの基準から決める:令和7年度の基準(180点・122点・24点)を出発点にします。記述式を何点と見込むか、基礎知識で何問取るかを決めます。
- 試験日までに使える時間を数える:試験は毎年11月の第2日曜日です。センターは勉強時間の目安を公表していません。時間は「何点をどの科目で取るか」から逆算します(勉強時間の考え方)。
- 最初の1か月で行政法の1単元を試す:行政手続法の1章を読み、その範囲の問題を解いてみます。自分の読む速さと、分かるまでの速さがつかめます。その実感で、残りの計画を組み直します。
このサイトで次に読むなら、合格点と足切りの仕組みがおすすめです。合否を実際に決める基準点のしくみを確かめられます。「122点を超えても180点に届かない」のような、計画に直結する計算もまとめています。受けると決めたら、独学で受けるにはで教材と科目の順番を決めてください。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- 行政書士試験研究センター「最近10年間における行政書士試験結果の推移」(PDF)
- 行政書士試験研究センター「結果概要」(令和7年度、PDF)(合格者の平均得点)
- 行政書士試験研究センター「合否判定基準」(令和7年度、PDF)
- 行政書士試験研究センター「試験の概要」(受験資格、試験科目と出題の範囲、試験の方法)
- 行政書士試験研究センター「令和8年度 試験案内」(試験日時、出題の基準日)
- 行政書士試験研究センター「よくある質問(試験について)」(補正的措置、配点の公表時期)
- 行政書士試験研究センター「過去の試験問題と正解」(令和3年度の問題と正解ページで、科目の並びと記述式の正解例の示し方を確認)
- 不動産適正取引推進機構「試験実施概況(令和7年度以前10年間)」(PDF)
- 厚生労働省「第57回社会保険労務士試験の合格者発表」(PDF、社会保険労務士試験オフィシャルサイト掲載)
- 法務省「令和7年度司法書士試験の最終結果について」
働く人の法律試験ノート