行政書士試験の過去問は、行政書士試験研究センター(試験を行っている機関。以下「センター」)のサイトで見られます。令和2年度から令和7年度までの6年分の問題(PDF)と正解が、無料で公開されています(過去の試験問題と正解)。解説は付いていません。また、著作権の関係で、どの年度にも載っていない問題があります。
当サイトのすすめは、次の使い分けです。公式の6年分は3時間通しの練習に使い、それより前の年度は分野ごとに並べた過去問集で単元ごとに使う。どちらも、「正解できたか」では判断しません。「5つの肢(し=選択肢)それぞれについて、正しいか誤りかの根拠を条文で言えるか」で判断します。なお、試験問題の著作権はセンターにあります。書籍やホームページなどに載せるには、センターの許諾(きょだく=許可)が必要です。このサイトでも問題文は載せません。年度と問題番号を示して、公式のPDFにリンクするだけにしています。
公式の過去問はどこで、何が見られるか
センターの「過去の試験問題と正解」のページには、6年度分が並んでいます。令和7年度、令和6年度、令和5年度、令和4年度、令和3年度、令和2年度です。それぞれに「試験問題」(PDF)と「試験問題の正解」へのリンクがあります。
- 正解のページ:問題ごとに、正解の番号が一覧になっています。多肢選択式は、空欄(ア〜エ)ごとに番号が示されます。記述式は「正解例」と字数が載っています(令和3年度の正解ページで確認)。
- 解説はない:なぜその肢が正しいのか、なぜ誤りなのかの説明はありません。記述式の採点基準(どの要素に何点を配るか)も示されていません。
- 載っていない問題がある:6年分のどの年度も、問題1と問題58〜60は著作権の関係で載っていません。年度によっては、ほかにも載っていない問題があります。たとえば令和3年度は問題7、令和2年度は問題5も載っていません。令和3年度のPDFでは、その問題の部分は、欠番(けつばん=ぬけている番号)だという注意書きもなく、とばされています。
つまり、公式の過去問で練習できるのは、年度によって60問のうち54〜56問です。本番は60問を3時間で解きます。通しで練習するときは、載っていない問題の分だけ時間を引いて考えます。
令和8年度の問題は、試験のあと、令和8年11月16日(月)以降に公表される予定です(著作権に関係するものはのぞく)。正解などは、令和9年1月27日(水)の合格発表日以降です。どちらもセンターのホームページに出ます。
過去問を使うときに気をつけること(著作権)
センターの「著作権について」のページには、次のように書かれています。
- 「平成12年度以降実施された行政書士試験の問題は、当センターが作成したものであり、その著作権は当センターに帰属しております。」
- 「行政書士試験問題の書籍・ホームページ等への掲載には、当センターの許諾が必要です。」
つまり、問題を作ったのはセンターで、問題の権利もセンターのものです。本やホームページに載せるなら、センターの許可がいります。許可を求める手続は「センターまでお問い合わせください」とされています。書類の形や費用は、公式ページに書かれていません。過去問のページにも、同じ意味の注意(「書籍・ホームページ等への登載は、当センターの許諾が必要です」)があります。
受験生が気をつけたいのは、自分の勉強の記録を外に出すときです。ブログやSNS、公開のノートに、問題文や選択肢を書き写して載せたとします。これは「ホームページ等への掲載」に当たるおそれがあります。勉強仲間と問題を共有するときは、「令和3年度 問題10」のように年度と番号だけを伝え、公式のPDFをそれぞれが開く形にすると安全です。令和8年度の試験案内でも、試験問題をSNSに投稿するなど、インターネットに載せることは控えるよう求められています。
何年分やればよいか
何年分で足りるかについて、公式の目安はありません。当サイトでは、目的で2つに分けて考えることをすすめます。
| 使い方 | 使う材料 | 目的 |
|---|---|---|
| 年度ごとの通し練習 | 公式の6年分(令和2〜7年度) | 3時間の時間配分と、3つの合格基準のどれが危ないかを知る |
| 分野ごとの演習 | 分野ごとに並べた過去問集(もっと前の年度もふくむ) | 単元ごとに、問われ方と根拠の条文を覚える |
公式の6年分は、本番と同じ形で解ける練習材料です。全部を一度は、3時間通しで解く価値があります。それより前の年度は、年度ごとに解くより、分野ごとに並べ直した形で解くほうが向いています。単元ごとに解くと、知識の穴を見つけやすいからです。
古い年度ほど注意がいるのが、法改正(法律が変わること)です。試験は毎年度、その年度の4月1日現在施行されている法令から出題されます。つまり、その日に効力がある法律が範囲です。過去の問題も、それぞれの年度の基準日の法律で出されています。その後の改正で、今の条文では答えが変わっていることがあります。たとえば行政書士法は、2026年1月1日施行の改正で変わりました。仕事の内容を決めた条文は、第1条の2から第1条の3に移りました。第1条の見出しも、「目的」から「行政書士の使命」に変わっています(行政書士法の改正の記事)。基礎知識の時事(その時々のできごと)に関わる問題も、古い年度のものは今の状況と合わないことがあります。
分野ごとの過去問集を選ぶときは、次の2点を確かめます。令和8年4月1日現在の法律に合わせた注意書きがあるか。解説に根拠の条文が書いてあるか(教材の選び方は独学の進め方の記事)。
いつ、どの順番で使うか
試験日(毎年11月の第2日曜日)から逆算した、当サイトのすすめる使い方です。
- 勉強を始めた週:公式のPDFで1年分をながめます。解かなくてかまいません。問題文の長さ、条文の言葉づかい、記述式の聞き方を見て、ゴールの姿を知っておきます。
- 1周目〜2周目の時期:基本書(教科書)で1単元を読んだら、その単元の過去問を分野ごとの問題集で解きます。読んだ直後に解くと、どこまで覚えればよいかが分かります。
- 全科目に一度手が付いたら(試験の3か月前ごろが目安):公式の令和2〜6年度を、古い年度から1年分ずつ3時間通しで解きます。週末に1年分を解き、平日にその見直しをする。この間隔だと組みやすいです。
- 最後の1か月:いちばん新しい令和7年度は、本番と同じ午後1時〜4時に解く練習用に残しておくのも一つの方法です。解く順番と時間配分を最後に確かめられます(試験当日の記事)。
残りの期間が短い人は、2と3の期間を短くします。分野ごとの演習は、行政法と民法にしぼります。期間ごとの組み方は勉強スケジュールの記事でも扱っています。
1問を「肢ごとに根拠を言えるか」で判定する
5肢択一式(5つの中から1つ選ぶ問題)は、正解の肢が1つ分かれば点になります。しかし本番では、同じ論点(問われるテーマ)が別の肢の形で出ます。そこで、過去問は1問ごとではなく肢ごとに、次の4段階で印をつけます。
| 印 | 状態 | 次にやること |
|---|---|---|
| ◎ | 正誤と根拠の条文を言える | 次の周回で確かめるだけ |
| ○ | 正誤は合ったが根拠があいまい | 条文を開いて根拠を書く |
| △ | 迷った・勘で選んだ | 条文と基本書に戻る |
| × | まちがえた | どこが違うかを一言で書く |
大事なのは、問題として正解していても、○と△の肢は「できていない」側に数えることです。正解の肢がたまたま◎で、ほかの4つが△だったとします。同じ論点が別の肢で出たら、落としてしまいます。たとえば会社員のみさきさんが1問を正解したとします。でも5つの肢のうち、根拠を言えたのは正解の1つだけでした。この場合、みさきさんの記録は「◎が1つ、△が4つ」です。「1問正解」とは数えません。
×の肢に書く「一言」は、条文の要件のどこがずれているかで書きます。肢の誤りの多くは、どこかが入れ替えられた形です。主語(誰が)、要件(どんなときに)、効果(どうなる)、数字(期間・人数)のどれかです。次の例で、書き方を示します。
例(このサイトのオリジナル問題):「行政書士試験に合格した者は、行政書士名簿への登録を受ける前であっても、行政書士と名乗ることができる。」
判定:誤り。一言で書くと「合格は資格(2条1号)。行政書士になるのは登録を受けてから(6条1項)。行政書士でない者は名乗れない(19条の2第1項)」。要件(登録を受けたかどうか)がずらされた形です。このように、根拠の条番号まで書けたら◎です。
解き直しはどう回すか
解き直すのは、×の肢だけではありません。○と△の肢もふくめます。当サイトがすすめる回し方は次のとおりです。
- 日付を書く:解いた日と印を、問題番号の横に書きます。何回目でどう変わったかが見えるようにします。
- 間をあけて解き直す:×・△・○の肢は、1週間後と1か月後にもう一度解きます。答えを覚えてしまっていても、練習になります。根拠の条文を言えるかで判断するからです。
- 2回続けて◎なら外す:外した肢は、試験の直前にまとめて一度見るだけにします。
- 年度ごとの通し練習は、点より、どこで落としたかを見る:法令等・基礎知識・全体の3つの基準それぞれと、自分の点との差を書き出します。問題の形ごと(5肢択一・多肢選択・記述)に、落とした点も書き出します。次の1週間にやることは、いちばん差が大きいところから決めます。
「条文に戻る」とは、何をすることか
公式の過去問には解説がありません。根拠は、e-Gov法令検索で条文を開いて確かめます。条文に戻るときにやることは4つです。
- 根拠の条・項を見つける:肢の内容が、どの条の何項の話かを書きます。条番号が分からなければ、基本書の当てはまる所から探します。
- 肢の言葉と条文の言葉を見比べる:文の終わり1つで、正誤が変わることがあります。たとえば「しなければならない」(義務)と「するよう努めなければならない」(努力すればよい)。「できる」と「しなければならない」も違います。
- 同じ条のほかの項と、前後の条も読む:過去に問われた所のまわりは、次に問われてもおかしくない所です。過去問で問われた所だけで、範囲が終わるわけではありません。
- 今の条文と合っているかを見る:e-Govで今の条文を開き、改正で条番号や言葉が変わっていないかを確かめます。たとえば、罰則の「懲役」は「拘禁刑(こうきんけい)」に変わっています。古い年度の問題や解説では、言葉が違うことがあります。
先の例なら、行政書士法の2条・6条・19条の2をe-Govで開きます。そして、まわりまで読んでおきます。2条の各号(試験合格のほかに資格を持つ人)、6条1項(名簿に登録する事項)、19条の2の第2項・第3項(行政書士法人・行政書士会の名前)です。これが「条文に戻る」の中身です。
記述式・多肢選択式・基礎知識の過去問はどう使うか
- 記述式(40字程度で答えを書く問題):公式の正解ページの「正解例」と、自分の答えを要素ごとに比べます。採点基準は示されていません。そこで、「正解例にある要素(誰が・何を・どうなる)が自分の答えにそろっているか」を見ます。40字の型は記述式の書き方で説明しています。
- 多肢選択式(文の空欄に合う語句を選ぶ問題):空欄ごとに正誤を見ます。1問8点(空欄1つ2点、令和7年度の配点)なので、1問の中の一部の空欄だけでも点になります。語句のしぼり方は多肢選択式の解き方で。
- 基礎知識:行政書士法などの業務関連法令と個人情報保護は、法令等と同じく条文に戻る使い方ができます。時事に関わる問題は、古い年度ほど今の状況と合いません。出題の形を知る程度にとどめます。また、どの年度も問題58〜60が載っていません。基礎知識14問のうち最後の3問は、公式のPDFでは練習できないということです。文章理解をどんな材料で練習するかは、文章理解の記事で扱います。
このサイトで次に読むなら、独学の進め方の記事がおすすめです。過去問を、基本書・条文・模試とどう組み合わせるか。1年のどの時期に何をやるか。それをまとめています。通し練習のあとの点の読み方に迷ったら、合格点と足切りの仕組みで3つの基準を確かめてください。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- 行政書士試験研究センター「過去の試験問題と正解」(掲載年度、掲載されていない問題、登載の許諾。令和3年度の問題と正解ページで構成を確認)
- 行政書士試験研究センター「著作権について」
- 行政書士試験研究センター「よくある質問(試験について)」(掲載していない問題、試験問題への問い合わせ)
- 行政書士試験研究センター「令和8年度 試験案内」(試験問題・正解等の公表時期、インターネット上への掲載について)
- 行政書士試験研究センター「試験の概要」(出題の基準日)
- 行政書士試験研究センター「合否判定基準」(令和7年度、PDF)
- e-Gov法令検索「行政書士法」(2条、6条、19条の2)
働く人の法律試験ノート