復代理人(ふくだいりにん)は、代理人が自分の権限で選ぶ「本人の代理人」です。復代理人がした契約は、代理人ではなく、直接本人に効きます(民法106条1項)。
選べる条件は、代理の種類で違います。本人から頼まれた代理人(任意代理人)は、本人の許諾があるか、やむを得ない事由があるときだけ選べます(104条)。親などの法定代理人は、自分の責任でいつでも選べます(105条)。代理権が消える事由も、任意代理と法定代理で違います(111条)。
この記事は、代理の基本(顕名・無権代理・表見代理)の次に押さえる部分として、復代理、代理権の消滅、自己契約・双方代理・利益相反、代理権の濫用を扱います。代理の基本は代理をわかりやすくで説明しています。
身近な例で考えると
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| あやかさん | 本人 | 実家の土地の持ち主。海外に転勤した |
| けいたさん | 代理人(友人) | 土地の売却を任された |
| のりこさん | 復代理人 | けいたさんが選んだ不動産会社の社員 |
| だいすけさん | 買主 | のりこさんと契約した |
- あやかさんは、友人のけいたさんに「実家の土地を売ってほしい」と頼み、代理権を与えた。これは任意代理(にんいだいり=本人が頼んで与えた代理)です。
- けいたさんは仕事が忙しくなり、知人ののりこさんに手続きを任せたくなった。任意代理人なので、あやかさんの許諾(きょだく=前もって認めること)をメールでもらってから、のりこさんを復代理人に選んだ。
- のりこさんは「あやかさんの代理人です」と示して、だいすけさんと売買契約を結んだ。契約は、あやかさんとだいすけさんの間で成り立つ。
- のりこさんを選んだあとも、けいたさんの代理権はなくならない。けいたさんも、のりこさんも、あやかさんの代理人です。
たとえるなら、クラスの係の仕事を、先生の許しを得て友だちに手伝ってもらうようなものです。手伝った友だちの仕事も「クラスの係の仕事」として扱われます。ただし本物のルールでは、復代理人ができるのは、もとの代理人に与えられた権限の範囲の中だけです(106条2項)。
条文ではこう決まっている
復代理人を選べるとき(104条・105条)
- 任意代理人(104条):「委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。」本人が信頼して選んだ人だからです。
- 法定代理人(105条):「自己の責任で復代理人を選任することができる」。許諾もやむを得ない事由もいりません。そのかわり、選んだ復代理人の行為について、原則として自分の責任を負います。やむを得ない事由があって選んだときは、本人に対して「その選任及び監督についての責任のみ」を負います。
法定代理人(親権者や成年後見人など)は、本人が選んだ人ではなく、仕事の範囲も広いので、自由に人を頼める。そのかわり責任は重い、という組み立てです。
任意代理人が復代理人を選んだときの責任については、令和2年4月施行の改正で、特別の規定がなくなりました。改正前の105条は「その選任及び監督について」責任を負うとしていました。今は、本人と代理人の間の契約(委任など)の責任の問題として考えます。改正前の知識で「任意代理人は選任・監督の責任だけ」と覚えていると、ずれます。
復代理人の立場(106条)
- 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する(1項)。代理人の代理人ではなく、本人の代理人です。
- 復代理人は、本人と第三者に対して、その権限の範囲内で、代理人と同じ権利を持ち、義務を負う(2項)。
復代理人の権限は、もとの代理人の代理権の範囲から切り出されたものです(106条2項の「その権限の範囲内において」)。そのため、もとの代理人の代理権が消えれば復代理人の代理権も消える、と一般に説明されています。ただし、これを直接定めた条文はありません。試験の判断は、条文で決まる104条〜106条と、次の111条の組み合わせを先に固めてください。
代理権が消える事由(111条・653条)
- どの代理にも共通(111条1項):①本人の死亡。②代理人の死亡、代理人が破産手続開始の決定を受けたこと、代理人が後見開始の審判を受けたこと。
- 任意代理だけの追加(111条2項):委任による代理権は、委任の終了によっても消える。委任は、委任者か受任者の死亡、委任者か受任者の破産手続開始の決定、受任者の後見開始の審判で終わります(653条)。
| 起きたこと | 任意代理 | 法定代理 |
|---|---|---|
| 本人の死亡 | 消える | 消える |
| 本人の破産手続開始 | 消える(委任の終了) | 消えない |
| 本人の後見開始 | 消えない | 消えない |
| 代理人の死亡 | 消える | 消える |
| 代理人の破産手続開始 | 消える | 消える |
| 代理人の後見開始 | 消える | 消える |
表で目立つのは、「本人の後見開始」がどちらでも消えないことです。本人の判断の力が落ちたときこそ代理人が必要なので、代理権を残しておく、と覚えると筋が通ります。代理権が消えた後に、それを知らない相手と契約した場合は、表見代理(112条)の問題になります。
自己契約・双方代理・利益相反(108条)
- 自己契約と双方代理(1項):同じ契約で、代理人自身が契約の相手方になること(自己契約。条文の言葉では「相手方の代理人として」した行為)と、両方の当事者の代理人になること(双方代理)は、「代理権を有しない者がした行為とみなす」。ただし「債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為」は別です。
- 利益相反(2項):1項のほか、代理人と本人の利益が相反する行為も、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし「本人があらかじめ許諾した行為」は別です。2項の例外には「債務の履行」が入っていません。
代理権の濫用(107条)
代理人が「自己又は第三者の利益を図る目的で」代理権の範囲内の行為をした場合で、相手方がその目的を知り、または知ることができたときは、その行為は代理権を有しない者がした行為とみなされます。権限の範囲内なのに、中身が本人のためになっていない場面です。令和2年4月施行の改正で条文になりました。
108条も107条も、効果は「無効」ではなく「無権代理とみなす」です。だから本人は追認できますし(113条)、相手方は117条の責任を問える場合があります。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例(104条):けいたさんが急病で長く入院し、あやかさんとも連絡が取れない。期限までに契約しないと話が流れる。→やむを得ない事由があれば、許諾がなくても復代理人を選べます。
- 当てはまらない例(104条):けいたさんが「自分は忙しいから」という理由だけで、あやかさんに聞かずにのりこさんを選んだ。→任意代理人なので、許諾もやむを得ない事由もないまま選んだことになり、のりこさんに代理権はありません。のりこさんの契約は無権代理の問題になります。
- 当てはまる例(105条):未成年のりくさんの母(親権者)が、りくさんの土地の売却を、知人に復代理人として任せた。→法定代理人なので、許諾がなくても選べます。
- 当てはまる例(108条1項ただし書):売買の条件はあやかさんとだいすけさんの間ですでに決まっていて、けいたさんは、決まった代金の受け取りと土地の引渡しの手続きだけを両方から任された。→新しく何かを決めるのではなく、決まった義務を果たすだけの「債務の履行」なので、双方代理でも許されます。
- ひっかけやすい例(108条2項):けいたさんが、あやかさんの代理人として、けいたさん自身の借金の保証人にあやかさんをする契約を、貸主と結んだ。→自己契約でも双方代理でもありませんが、代理人と本人の利益が相反します。あやかさんの許諾がなければ、無権代理とみなされます。
- ひっかけやすい例(111条):あやかさんが破産手続開始の決定を受けた。→任意代理のけいたさんの代理権は、委任の終了で消えます。同じことが親権者の代理(法定代理)で起きても、111条1項には本人の破産がないので消えません。
4つ目の例で、けいたさんが代金の額や引渡しの日を決める交渉まで両方から任されると、債務の履行ではありません。その場合は、本人双方のあらかじめの許諾がなければ無権代理とみなされます。
似ているルールとの違い
| 比べる点 | 任意代理人 | 法定代理人 |
|---|---|---|
| 復代理人を選べるとき | 本人の許諾か、やむを得ない事由 | いつでも(自己の責任で) |
| 選んだ後の責任 | 委任などの契約の責任として考える | 原則は自己の責任。やむを得ない事由なら選任・監督のみ |
| 本人の破産 | 代理権が消える | 消えない |
| 場面 | 条文 | 例外 |
|---|---|---|
| 自己契約・双方代理 | 108条1項 | 債務の履行・本人のあらかじめの許諾 |
| 利益相反 | 108条2項 | 本人のあらかじめの許諾だけ |
| 代理権の濫用 | 107条 | 相手方が目的を知らず、知ることもできなかった |
親が子の財産を処分するときの利益相反には、民法826条の特別代理人のしくみもあります。制限行為能力者と法定代理人の関係は制限行為能力者をわかりやすく、代理権を与えるもとになる委任の契約は請負と委任をわかりやすくで扱っています。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の宅建試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、代理が主な論点の問は28問(26回)、直近10回では主な論点で4問、ほかの論点の問の中に2問でした(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。復代理や代理権の消滅は、任意代理と法定代理を入れ替えて取り違えやすい所です。
- 104条と105条の入れ替え:「法定代理人も、本人の許諾かやむを得ない事由がなければ選べない」は誤り。その条件は任意代理人だけ。
- 復代理人を「代理人の代理人」とする型:復代理人は本人を代表します(106条1項)。契約の効果は直接本人に生じます。
- 消滅事由を足す型:「本人が後見開始の審判を受けたら代理権は消える」は誤り。消えるのは代理人の後見開始です。
- 任意代理と法定代理で同じとする型:本人の破産で消えるのは、委任の終了による任意代理だけ。
- 例外を移す型:「債務の履行」の例外は108条1項(自己契約・双方代理)だけで、2項(利益相反)にはない。
- 効果を「無効」とする型:107条・108条の効果は「無権代理とみなす」。本人は追認できる。
無権代理になった後の本人と相手方の関係(追認・催告・取消し・117条)は、代理をわかりやすくの表で確かめてください。本人や代理人が亡くなって相続が起きる場面は、無権代理と相続で4つの判例を比べています。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
未成年のりくさんの親権者である母は、りくさんの許諾もやむを得ない事由もないまま、知人を復代理人に選び、りくさんの土地の売却を任せた。この場合でも、母は有効に復代理人を選任することができる。
答え:○ 分かれ目は、任意代理人か法定代理人かです。法定代理人は「自己の責任で復代理人を選任することができる」とされ(民法105条前段)、本人の許諾もやむを得ない事由もいりません。「許諾かやむを得ない事由がなければ選べない」は、委任による代理人(任意代理人)の104条の条件で、それを法定代理人に当てはめると✕にしてしまいます。そのかわり法定代理人は、やむを得ない事由がなければ、復代理人の行為について選任・監督に限られない責任を負います(105条後段の反対の場面)。
問2(このサイトのオリジナル問題)
あやかさんは、友人のけいたさんに土地の売却を頼み、代理権を与えた。その後、まだ売買契約を結ぶ前に、あやかさんが後見開始の審判を受けた。この場合、けいたさんの代理権は消滅する。
答え:✕ 分かれ目は、後見開始の審判を受けたのが本人か代理人かです。111条1項2号で代理権が消えるのは「代理人」が後見開始の審判を受けたときです。任意代理で加わる委任の終了事由(653条)も、後見開始については「受任者」だけで、委任者(本人)は入っていません。正しくは、あやかさんが後見開始の審判を受けても、けいたさんの代理権は消えません。本人の「死亡」や、任意代理での本人の「破産手続開始」なら消えるので、それと取り違えた形です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
けいたさんは、あやかさんから与えられた代理権の範囲内で、あやかさんの土地をだいすけさんに売った。けいたさんは代金を自分の借金の返済に使う目的で、だいすけさんはその目的を知ることができた。この場合、あやかさんは、この売買を追認して自分に効力を生じさせることができる。
答え:○ 分かれ目は、代理権の濫用の効果が「無効」か「無権代理とみなす」かです。代理人が自己の利益を図る目的で権限内の行為をし、相手方がその目的を知ることができたときは、その行為は代理権を有しない者がした行為とみなされます(民法107条)。無権代理なので、本人のあやかさんは追認でき、追認すれば契約の時にさかのぼって効力を生じます(113条1項・116条)。「濫用された契約は無効で、追認の余地はない」と考えると✕を選びます。改正前は、判例(最高裁第一小法廷 昭和42年4月20日判決)が93条(心裡留保)のただし書を類推して「本人は責任を負わない」としていましたが、今は107条で「無権代理とみなす」と決まっています。
まとめ
- 復代理人は本人の代理人。権限は、もとの代理人の権限の範囲内。
- 任意代理人は、本人の許諾かやむを得ない事由があるときだけ選べる。法定代理人は、自己の責任でいつでも選べる(やむを得ない事由なら選任・監督の責任のみ)。
- 代理権は、本人の死亡、代理人の死亡・破産手続開始・後見開始で消える。任意代理は委任の終了(本人の破産など)でも消える。本人の後見開始では消えない。
- 自己契約・双方代理(例外:債務の履行・許諾)、利益相反(例外:許諾だけ)、代理権の濫用(相手方が知り、または知ることができた)は、どれも「無権代理とみなす」。
権利関係の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。次に読むなら、代理をわかりやすくがおすすめです。この記事で「無権代理とみなす」となった後に、本人・相手方・代理人がそれぞれ何をできるかを、催告・取消し・117条の表で確かめられます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。改正前の105条・106条は、同じAPIで基準日2020-03-31の版を確かめました。
- e-Gov法令検索「民法」(93条、104条、105条、106条、107条、108条、111条、112条、113条、116条、653条、826条)
- 裁判所「最高裁判所第一小法廷 昭和42年4月20日判決」(代理人の権限濫用の行為と民法93条。改正前の扱い)
- 不動産適正取引推進機構「宅建試験の問題及び正解番号表」(出題数を数えるのに使った過去の試験問題)
働く人の法律試験ノート