法令上の制限の「許可」と「届出」の見分け方:だれに・いつ出すかの一覧

許可は「申請して、認められてから行う」もので、許可なしに行えば違反です。届出は「知らせればよい」もので、相手の答えを待たずに行えます(ただし勧告を受けることがある)。宅建試験の法令上の制限では、この2つと、出す先(知事・市町村長・農業委員会)と期限(30日前・21日以内・14日・2週間)の組み合わせが、法律ごとに違います。

この記事では、各法律の許可と届出を1枚の表に並べ、取り違えやすい組み合わせを事例で確かめます。一つひとつの法律の中身(面積の基準や例外)は、それぞれの記事に任せます。

身近な例で考えると

不動産会社の新人のえみさんが、先輩のひろとさんに、お客さんの相談を3つ持ってきました。

  1. 地区計画(地区整備計画が定められている)の区域で家を建てたい人がいる。ひろとさん「工事に着手する30日前までに、市町村長に届け出る。許可ではないよ」。
  2. 市街化区域で3,000平方メートルの土地を買う契約をした会社がある。ひろとさん「国土法の事後届出。契約を結んだ日から2週間以内に、市町村長を経由して知事へ。出すのは買った側」。
  3. 宅地造成等工事規制区域で、高さ1.5メートルの崖ができる盛土をしたい人がいる。ひろとさん「着手する前に知事の許可。届出では済まない」。

たとえるなら、許可は「先生にプリントを出して、はんこをもらってから帰る」、届出は「職員室の箱にプリントを入れておけば帰ってよい」です。ただし本物のルールでは、届出にも期限があり、出さなければ罰則がある場合があります。届出だから軽い、とは限りません。

条文ではこう決まっている(1枚の表)

「知事等」は、都道府県知事のほか、条文が定める市の長(指定都市・中核市など)を含む言い方です。表は令和8年4月1日時点の条文で確かめました。

都市計画法

場面許可か届出か出す先いつ
開発行為(29条)許可知事等あらかじめ
都市計画施設の区域・市街地開発事業の施行区域での建築(53条)許可知事等建築の前
都市計画事業の事業地内での建築など(65条)許可知事等事業の認可などの告示の後
調整区域の開発区域外での新築など(43条)許可知事等新築などの前
地区計画の区域での建築など(58条の2)届出市町村長着手の30日前まで

宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)

場面許可か届出か出す先いつ
宅地造成等工事規制区域での工事(12条)許可知事着手する前
規制区域の指定の時にすでに工事中(21条1項)届出知事指定の日から21日以内
擁壁などに関する政令の工事(21条3項)届出知事着手の14日前まで
公共施設用地を宅地などに転用(21条4項)届出知事転用した日から14日以内
特定盛土等規制区域での工事(27条)届出知事着手の30日前まで
同じ区域で政令の大規模な工事(30条)許可知事着手する前

土地区画整理法・農地法・国土利用計画法

場面許可か届出か出す先いつ
区画整理の施行地区内での建築など(76条)許可知事等(大臣施行は大臣)公告の後、換地処分の公告まで
農地のまま権利を移す(3条)許可農業委員会―
農地の転用・転用目的の権利移動(4条・5条)許可知事等―
上の4条・5条で、市街化区域内の農地届出農業委員会あらかじめ
相続などで3条の許可なく権利を取得(3条の3)届出農業委員会遅滞なく
土地売買等の契約(国土法23条)事後届出市町村長を経由して知事契約の日から2週間以内
注視区域・監視区域の契約(27条の4・27条の7)事前届出市町村長を経由して知事契約を結ぶ前
規制区域の契約(14条)許可知事契約を結ぶ前

表から読み取る3つの見分け方

1.「市町村長に届出」は地区計画だけ

表の中で、市町村長に「届出」して終わるのは地区計画(58条の2)だけです。国土法の事後届出も市町村長に出しますが、それは「経由」で、届出の相手は知事です。盛土規制法の届出は、どれも知事です。届出があると、市町村長は、地区計画に合わない行為に設計の変更などを勧告できます(58条の2第3項)。

2.「前」の届出と「後」の届出を分ける

  • 前に出す届出:地区計画(着手の30日前)、特定盛土等規制区域(着手の30日前)、擁壁などに関する政令の工事(着手の14日前)、農地法の市街化区域の特例(あらかじめ)、国土法の注視区域・監視区域(契約の前)。
  • 後に出す届出:規制区域の指定の時に工事中(指定から21日以内)、公共施設用地の転用(転用から14日以内)、農地法3条の3(遅滞なく)、国土法の事後届出(契約から2週間以内)。

「後」の届出は、すでに起きたこと(区域の指定、転用、相続、契約)を知らせるものです。指定の前から続いている工事に、あとから許可を取り直させるのは酷なので、届出にしている、と理由とセットで覚えると崩れにくくなります。

3.同じ法律の中で「許可」と「届出」が分かれる所

  • 盛土規制法:宅地造成等工事規制区域は許可、特定盛土等規制区域は原則として届出(大規模なものは許可)。
  • 農地法:4条・5条は許可が原則で、市街化区域なら届出。3条には市街化区域の特例がない。
  • 国土法:ふつうの区域は契約の後の届出、注視区域・監視区域は契約の前の届出、規制区域は許可。

事例で確かめる:当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例:組合が施行する区画整理で、市の区域内の仮換地に家を建てる。→76条の許可。許可するのは組合ではなく、その市の長です。組合は、許可の前に意見を聴かれる側です。
  • 当てはまる例:宅地造成等工事規制区域に指定された日、すでに盛土の工事が進んでいた。→工事主は、指定の日から21日以内に知事に届け出ます(盛土規制法21条1項)。
  • 当てはまらない例:市街化区域の畑を、耕作を続ける人に売る。→農地のままなので3条の許可(農業委員会)。市街化区域の届出の特例は4条・5条の話で、3条には使えません。
  • ひっかけやすい例:国土法の事後届出を、売主と買主の両方がする。→届け出るのは権利を取得する側(買主)だけです(23条1項の「権利取得者」)。
  • ひっかけやすい例:特定盛土等規制区域で、許可がいる大きさに届かない盛土をする。→「許可がいらないから何もしなくてよい」ではなく、着手の30日前までに知事への届出がいります(27条1項)。

似ている数字の取り違え

数字どの場面か前か後か
30日前まで地区計画、特定盛土等規制区域着手の前
21日以内規制区域の指定の時に工事中指定の後
14日前まで擁壁などに関する政令の工事着手の前
14日以内公共施設用地の転用転用の後
2週間以内国土法の事後届出契約の後

「14日」は盛土規制法の中に2回出て、片方は前、片方は後です。国土法の「2週間」も日数は14日ですが、条文の言葉は「二週間以内」です。数字だけで覚えず、「何が起きた後か・何を始める前か」で覚えると取り違えが減ります。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の宅建試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、直近10回(令和7年度〜平成30年度、500問)の法令上の制限は80問で、そのうち開発許可・盛土規制法・土地区画整理法・農地法・国土利用計画法は、それぞれ10問(毎回1問)でした(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。許可と届出は、この5つの法律のどれにも出てくる言葉です。

  • 出す先の入れ替え:地区計画の届出を「知事」、国土法の事後届出を「市町村長に届け出る」(正しくは市町村長を経由して知事)、農地法3条を「知事」とする形。
  • 許可と届出の入れ替え:地区計画を「許可」、特定盛土等規制区域の工事を「許可だけ」とする形。
  • 前と後の入れ替え:国土法の事後届出を「契約の前に」、規制区域の指定の時に工事中の届出を「着手の前に」とする形。
  • 許可する人を施行者にする形:区画整理76条の許可を「施行者」「組合」とする形。

各法律の中身は、開発許可、盛土規制法、土地区画整理法、農地法、国土利用計画法の届出の記事で、面積や例外まで確かめてください。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
地区整備計画が定められている地区計画の区域内で、建築物の建築をしようとする者は、その行為に着手する日の30日前までに、行為の種類や場所などを都道府県知事に届け出なければならない。

答え:✕ 分かれ目は、届け出る相手です。地区計画の区域内の届出は、着手する日の30日前までに「市町村長」にします(都市計画法58条の2第1項)。正しくは、都道府県知事ではなく市町村長です。同じ「着手の30日前まで」の届出でも、特定盛土等規制区域の工事の届出は都道府県知事にする(盛土規制法27条1項)ので、その組み合わせと取り違えた形です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
ある区域が宅地造成等工事規制区域に指定された時に、その区域内ですでに宅地造成の工事をしていた工事主は、指定の日から21日以内に都道府県知事に届け出ればよく、改めて12条の許可を受ける必要はない。

答え:○ 分かれ目は、区域の指定の前から続いている工事かどうかです。宅地造成等工事規制区域の指定の際、その区域内で行われている工事の工事主は、指定があった日から21日以内に知事に届け出なければならないとされています(盛土規制法21条1項)。区域内の工事は着手前に許可(12条1項)と覚えていると✕に見えますが、指定の時点ですでに始まっている工事は、届出の側です。着手の14日前(21条3項)や転用から14日以内(21条4項)の届出とは、数字も前後も違います。

問3(このサイトのオリジナル問題)
特定盛土等規制区域内で、許可を要する規模に届かない特定盛土等の工事をする工事主は、工事に着手した日から14日以内に都道府県知事に届け出ればよい。

答え:✕ 分かれ目は、届出の時期です。特定盛土等規制区域内の工事の工事主は、着手する日の30日前までに知事に届け出なければなりません(盛土規制法27条1項)。正しくは、着手の後ではなく前、30日前までです。「14日以内」は、公共施設用地を宅地などに転用した後の届出(21条4項)の期限で、それを入れ替えた形です。政令で定める大規模な工事なら、届出ではなく着手前の許可がいります(30条1項)。

まとめ

  • 許可は認められてから行う。届出は知らせればよい(勧告や罰則がある場合も)。
  • 市町村長に届け出て終わるのは地区計画(着手の30日前)だけ。国土法は市町村長を「経由」して知事。
  • 盛土規制法の届出:指定時に工事中は21日以内、擁壁などに関する政令の工事は14日前、転用は14日以内、特定盛土等は30日前。すべて知事。
  • 農地法:3条は農業委員会の許可、4条・5条は知事等の許可(市街化区域は農業委員会へ届出)、3条の3は遅滞なく農業委員会へ届出。
  • 国土法:ふつうは契約から2週間以内の事後届出(権利取得者)、注視区域・監視区域は事前届出、規制区域は許可。

法令上の制限の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。表を自分の手で書き写し、空欄の「出す先」と「いつ」を埋める練習をすると、本番で迷う時間が減ります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。

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