盛土規制法の許可の前後:住民への周知・標識・中間検査・完了検査・定期報告と届出の期限

宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の許可は、とって終わりではありません。工事主(工事を注文する人や、自分で工事をする人)は、許可の申請の前に周辺の住民に工事の内容を知らせ、許可の後は標識を掲げ、決められた工事では途中で中間検査を受け、定期的に工事の状況を報告し、工事が終わったら完了検査を受けます(11条・14条・17条〜19条・49条)。

ひとことで言うと、「申請の前に周知、着手は許可証の後、途中で検査と報告、終わったら検査」です。手順を飛ばした工事や土地には、知事が工事の停止や土地の使用の禁止などを命じられます(20条)。許可がいらない場面にも、届出の期限があります。区域の指定のときに工事中なら指定から21日以内、擁壁(ようへき=土どめの壁)などの工事は着手の14日前まで、特定盛土等規制区域の工事は着手の30日前までです(21条・27条)。

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、宅地造成・盛土等規制法(旧法の宅地造成等規制法を含む)が主な論点の問題は35問で、35回に出ていました。直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月と12月の2回ずつ)では毎回1問です(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。今の名前の法律になってからの令和6年度と令和7年度の問を読むと、どちらも4つの肢が、許可がいる規模の数字ではなく、住民への周知・標識の掲示・知事の勧告・立入り・届出のような手続を扱っていました。

許可がいる工事の規模と、3つの区域の違いは宅地造成及び特定盛土等規制法をわかりやすくで扱っています。この記事は、許可の前後の手続を1本の時系列にすることに絞ります。

身近な例で考えると

舞台は、知事が宅地造成等工事規制区域に指定した、ある町の丘の上です。

人物立場したこと
ひろみさん工事主(宅地を造る会社の担当者)丘を切り盛りして宅地を造る
ゆうじさん工事施行者(工事を請け負った建設会社)工事をする
となりの住民周辺の地域の住民説明会で工事の話を聞く
  1. 許可の申請の前:ひろみさんは、説明会を開いて、周辺の住民に工事の内容を知らせた(11条)。
  2. 申請:ひろみさんは、知事に許可を申請した。工事をする土地の所有者など、権利を持つ人全員の同意も集めた(12条)。
  3. 許可:知事は遅滞なく許可し、許可証を交付した。工事は、許可証の交付を受けた後でなければ着手できない(14条)。
  4. 着手:ひろみさんは、工事をする土地の見やすい所に、氏名や名称などを書いた標識を掲げた(49条)。
  5. 途中:この工事は政令で定める規模で、特定工程(途中で検査する工程)を含む。ひろみさんは、その工程の工事を終えるたびに知事の中間検査を申請し、中間検査合格証の交付を受けてから、次の工程に進んだ(18条)。決められた期間ごとに、工事の状況を知事に報告した(19条)。
  6. 計画の変更:擁壁の位置を変えることになった。軽い変更ではないので、知事の変更の許可を受けた(16条)。
  7. 完了:工事を終え、決められた期間内に知事の完了検査を申請した。基準に合っていたので、検査済証の交付を受けた(17条)。
  8. その後:造った宅地の所有者は、土地を常に安全な状態に保つよう努める(22条1項)。

たとえるなら、許可の工事は「出発前の届け、出発の合図、途中の検問、到着の確認がある長い旅」です。ただし本物のルールでは、途中の検問(中間検査)と定期の報告は、政令で定める規模の工事だけにかかります。すべての工事で途中の検査があるわけではありません。

条文ではこう決まっている

許可の前と許可のとき(11条・12条・14条・16条)

  • 住民への周知(11条):工事主は、許可の申請をするときは、あらかじめ、説明会の開催その他の措置を講じて、工事の施行地の周辺の地域の住民に工事の内容を周知させなければならない。「努めなければならない」ではなく義務。
  • 許可(12条1項):規制区域内の宅地造成等の工事は、工事主が、工事に着手する前に知事の許可を受ける。
  • 許可証(14条):知事は、申請があったら遅滞なく許可か不許可の処分をする。許可なら許可証を交付し、不許可なら文書で通知する。工事は、許可証の交付を受けた後でなければ着手できない(3項)。
  • 変更(16条):許可を受けた人が工事の計画を変えるときは、知事の変更の許可を受ける。省令で定める軽い変更なら、変更の後、遅滞なく届け出ればよい。

工事の途中(49条・18条・19条)

  • 標識(49条):12条1項・30条1項の許可を受けた工事主と、27条1項の届出をした工事主は、許可や届出にかかる土地の見やすい場所に、氏名や名称など省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。
  • 中間検査(18条):政令で定める規模の宅地造成か特定盛土等の工事で、政令で定める工程(特定工程)を含むものは、許可を受けた人が、特定工程の工事を終えるたびに、決められた期間内に知事の検査を申請する。合格すると中間検査合格証が交付され、その後の工程の工事は、合格証の交付を受けた後でなければ行えない。中間検査で合格した特定工程の部分は、完了検査で検査をし直す必要はない(5項)。都道府県は、条例で、対象の規模を小さくしたり、工程を追加したりできる(4項)。
  • 定期の報告(19条):政令で定める規模の工事の許可を受けた人は、省令で定める期間ごとに、工事の実施の状況などを知事に報告する。都道府県は、条例で、規模を小さくしたり、期間を短くしたり、報告事項を加えたりできる。

工事の後(17条)

  • 完了検査(17条1項・2項):宅地造成か特定盛土等の工事の許可を受けた人は、工事を完了したら、決められた期間内に知事の検査を申請する。基準に合っていれば検査済証が交付される。
  • 土石の堆積(17条4項・5項):土を積んでおく工事は、積んでいた土石を全部取り除いたら、知事の確認を申請する。確認済証が交付される。
  • 開発許可との関係(17条3項):都市計画法の開発許可を受けて、盛土規制法の許可を受けたとみなされた工事(15条2項)では、都市計画法の工事完了の届出と検査済証が、この条の申請と検査済証とみなされる。

手順を飛ばしたとき(20条)

  • 許可の取消し(1項):うそなどの不正な手段で許可や変更の許可を受けた人、許可の条件に違反した人の許可を、知事は取り消せる。
  • 工事の停止など(2項):無許可の工事、許可の条件に違反した工事、基準に合わない工事、中間検査を申請しないで進めた工事について、知事は、工事主・請負人(下請人を含む)・現場管理者に、工事の施行の停止や、災害防止の措置を命じられる。
  • 土地の使用の禁止など(3項):無許可で工事をした土地、完了検査を申請しなかったか基準に合わないとされた土地、中間検査を申請しないで工事をした土地などについて、知事は、土地の所有者・管理者・占有者・工事主に、土地の使用の禁止や制限、災害防止の措置を命じられる。
  • 知事が自分で行う(5項・6項):命じた措置がとられないときや、命じる相手が分からないときなどは、知事が自ら措置をとり、その費用を負担させられる。

区域内の土地の保全と調べる権限(22条〜25条)

  • 土地の保全(22条1項):区域内の土地の所有者・管理者・占有者は、土地を常に安全な状態に保つよう「努めなければならない」。
  • 勧告(22条2項):知事は、災害防止のため必要があれば、土地の所有者・管理者・占有者・工事主・工事施行者に、擁壁の設置などの措置を勧告できる。命令ではない。
  • 改善命令(23条1項):擁壁がないか極めて不完全で、放置すると災害の発生のおそれが大きいときは、知事は、土地の所有者・管理者・占有者に、相当の猶予期限をつけて、擁壁の設置などの工事を命じられる。
  • 立入検査(24条)・報告の徴取(25条):知事が、区域内の土地に立ち入って検査したり、土地の所有者などに報告を求めたりする規定がある。

時系列で見る許可と届出

許可の手続と、許可がいらない場面の届出の期限を、1本の時間の流れに並べます。

いつ宅地造成等工事規制区域特定盛土等規制区域
許可の申請の前住民への周知(11条)住民への周知(29条)
着手の前許可、許可証の後に着手(12条・14条)大規模なら許可(30条)、それ以外は30日前までに届出(27条)
着手の前擁壁などの工事は14日前までに届出(21条3項)擁壁などの工事は14日前までに届出(40条3項)
工事中標識、中間検査、定期の報告(49条・18条・19条)標識、中間検査、定期の報告(49条・37条・38条)
完了完了検査(17条)完了検査(36条)
区域の指定のとき工事中指定の日から21日以内に届出(21条1項)指定の日から21日以内に届出(40条)
  • 特定盛土等規制区域にも、周知(29条)、完了検査(36条)、中間検査(37条)、定期の報告(38条)、監督処分(39条)、工事等の届出(40条)、土地の保全(41条)、改善命令(42条)の条が置かれています。宅地造成等工事規制区域の11条〜23条と、同じ流れで並んでいます。
  • 特定盛土等規制区域の届出(27条):工事主が着手の30日前までに知事に届け出る。知事は、届出を受理した日から30日以内に限り、計画の変更などを勧告でき、正当な理由なく従わないときは命令できる。許可(30条)を受けた工事は、この届出はいらない(30条5項)。
  • 公共施設の用地を宅地などに転用したときは、転用した日から14日以内に届出(21条4項・40条4項)。

「21日以内・14日前まで・14日以内」の3つの期限は、2つの区域で同じ数字です(21条・40条)。特定盛土等規制区域だけにあるのが、27条の「30日前まで」の届出です。宅地造成等工事規制区域の3つの届出は、盛土規制法の基本の記事でも表にしています。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(周知の時期):ひろみさんは、許可の申請の前に説明会を開いた。11条の「あらかじめ」にあたる。
  2. 当てはまらない(許可の後の周知):許可を受けてから着手の前に説明会を開いても、11条の周知にはならない。周知は申請の前に行う。許可の後に行うのは、標識の掲示(49条)である。
  3. ひっかけやすい(許可証の前の着手):許可の連絡を受けたので、許可証が届く前に工事を始めた。14条3項により、許可証の交付を受けた後でなければ着手できない。
  4. 当てはまる(中間検査を申請しない工事):特定工程を含む工事で、中間検査を申請しないまま次の工程に進んだ。知事は、工事主などに工事の施行の停止を命じられる(18条3項、20条2項4号)。
  5. 当てはまらない(すべての工事に中間検査):規制区域内で許可を受けた小さな盛土の工事が、政令で定める規模に満たない。中間検査と定期の報告は、条例で対象を広げていなければかからない。完了検査はかかる。
  6. ひっかけやすい(監督処分の相手):許可の条件に違反した工事で、工事の停止を命じられるのは工事主だけではない。工事を請け負ったゆうじさんの会社(請負人)や現場管理者も相手になる(20条2項)。

試験ではここをまちがえやすい

  • 周知の時期と性質:許可の申請の「前」に行う義務です。「許可の後」「努力義務」とする形に注意します。
  • 標識:許可を受けた工事主だけでなく、特定盛土等規制区域で27条の届出をした工事主も掲げます。
  • 中間検査・定期の報告の対象:政令で定める規模の工事だけ。都道府県は条例で対象を広げられます。完了検査は、許可を受けた工事すべてにかかります。
  • 検査の申請者:中間検査・完了検査を申請するのは、許可を受けた人(工事主)です。工事施行者ではありません。
  • 勧告と命令の区別:22条2項は勧告(従う義務はない)、23条1項は改善命令です。土地の保全の22条1項は努力義務です。
  • 監督処分の相手:工事の停止は工事主・請負人・現場管理者に、土地の使用の禁止は土地の所有者・管理者・占有者・工事主に命じます。
  • 届出の期限:指定のとき工事中は21日以内、擁壁などは14日前まで、転用は14日以内、特定盛土等規制区域は30日前まで。

宅建試験では、この法律は毎回1問(直近10回は9回が問19、平成30年度は問20)で、直近10回のうち9回が「誤っているもの」を選ぶ形でした。正しい肢を3つ読むことになるので、周知・標識・勧告のような手続の条文を、主語と時期まで正確に覚えておくと判断しやすくなります。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
宅地造成等工事規制区域内で、政令で定める規模の宅地造成の工事について許可を受けた工事主が、特定工程の工事を終えて中間検査に合格した。この特定工程の部分については、工事の完了後の完了検査で、改めて検査を受ける必要はない。

答え:○ 分かれ目は、中間検査で合格した部分と完了検査の関係です。盛土規制法18条5項は、中間検査で基準に適合すると認められた特定工程にかかる工事の部分については、17条1項の完了検査で、その部分の検査をする必要はないとしています。検査は二重に受けるもの、と考えると✕にしてしまいます。完了検査そのものがなくなるわけではなく、ほかの部分は完了検査で確かめます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
宅地造成等工事規制区域内で宅地造成の工事をしようとする工事主は、許可を受けた後、工事に着手するまでの間に、説明会の開催などにより周辺の地域の住民に工事の内容を周知させればよい。

答え:✕ 分かれ目は、住民への周知の時期です。盛土規制法11条は、工事主は「許可の申請をするときは、あらかじめ」周辺の地域の住民に工事の内容を周知させなければならないとしています。正しくは、許可の申請の前に周知します。許可を受けた後に工事の土地で行うのは、標識の掲示(49条)で、その手続と時期を取り違えた文です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
宅地造成等工事規制区域内で、許可に付された条件に違反する宅地造成の工事が行われている場合、知事が工事の施行の停止を命ずることができる相手は、許可を受けた工事主であり、その工事を請け負った建設会社は命令の相手にならない。

答え:✕ 分かれ目は、工事の停止を命じられる相手の範囲です。盛土規制法20条2項は、許可の条件に違反する工事などについて、工事主、請負人(下請人を含む)、現場管理者に対し、工事の施行の停止などを命ずることができるとしています。正しくは、請け負った建設会社も命令の相手になります。許可を受ける人が工事主に限られること(12条1項)と、命令の相手の範囲を取り違えた文です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。

まとめ

  • 許可の申請の前に、工事主が周辺の住民に工事の内容を周知する(義務)。
  • 着手は許可証の交付の後。許可や届出の土地には標識を掲げる。
  • 政令で定める規模の工事は、特定工程ごとの中間検査と、決められた期間ごとの定期の報告がある。完了したら完了検査(土石の堆積は除却の確認)。
  • 無許可・条件違反・基準違反・中間検査の申請なしの工事は、工事主・請負人・現場管理者に停止などを命じられる。
  • 土地の保全は努力義務、22条2項は勧告、23条は改善命令。届出は21日以内・14日前まで・14日以内・30日前まで。

次に読むなら、法令上の制限の「許可」と「届出」の見分け方がおすすめです。盛土規制法の届出の期限を、農地法・国土法・区画整理法などの許可と届出と並べて確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。令和6年度・令和7年度の問の肢の内容は、不動産適正取引推進機構が公開している問題で確かめました(問題文は載せていません)。

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