勉強に飽きたときの気分転換は、①10分以内の短い休憩をとる、②休憩中はスマホを見ない、③戻ったら科目か解く形を変える、の3つで組み立てます。短い休憩は、疲れを下げ、活力を上げる効果が研究でまとめられています。一方、休憩中にスマホを使うと、紙やパソコンで休憩したときより、そのあとの作業の成績が下がったという実験があります。
この記事では、休憩と気分転換の研究を条件つきで紹介し、行政書士試験・宅建試験の勉強で「何分・何をする・何をしない」を表にします。時間の区切り方(ポモドーロ)は集中できる環境の作り方、運動は運動と記憶の記事、音楽は勉強中の音楽の記事で扱っているので、ここでは「飽きたとき・嫌になったとき」の休憩に絞ります。
短い休憩で、疲れや気分は戻るのか
数分〜10分の休憩の効果をまとめたのが、Albulescu ら(2022年)のメタ分析です。
- どんな研究か:作業の合間にとる10分以内の休憩(マイクロブレイク)を調べた19本の論文(22の研究の組、参加者は合わせて2,335人)をまとめ、活力・疲れ・作業の成績への効果を調べました。
- 何が分かったか:短い休憩は、活力を上げ、疲れを下げていました。どちらも効果の大きさは小さめです。作業の成績は、全体ではっきりした効果になっていませんでした。成績への効果が見られたのは、頭への負担が軽い作業(事務的な作業や、創造的な課題)で、頭を強く使う作業では見られませんでした。また、休憩が長いほど、成績のよくなり方が大きい傾向でした。
ここから言えるのは、短い休憩は「気分と疲れ」には効きやすいが、「条文を理解する力」まで短い休憩だけで戻るとは言いにくい、ということです。飽きた・嫌になったという気分を戻すのに、短い休憩は使えます。ただし、頭を使う勉強で成績まで戻したいなら、休憩のあとに勉強のやり方も変える、と組み合わせて考えます。
同じ勉強を長く続けると、なぜ集中が落ちるのか
集中の落ち込みは、休憩をとらなくても、作業を少し切り替えるだけで防げる場合があります。Ariga と Lleras(2011年)の実験です。
- どんな実験か:参加者は、画面を見張る単調な課題を50分続けました。一部の組は、始める前に4つの数字を覚え、「その数字が画面に出たら反応する」と言われました。そのうち、課題の途中で実際に2回数字が出て反応した組(見張りの課題を短く離れた組)と、数字が一度も出なかった組を比べました。見張りだけの組と、出てきた数字を無視するよう言われた組もありました。
- 何が分かったか:ほかの組は、時間とともに見張りの成績が大きく落ちました。途中で2回だけ数字に反応した組では、成績の落ち込みが起きませんでした。
著者たちは、同じ目標をずっと続けていると、その目標への注意が薄れていく(慣れてしまう)と考えました。目標をいったん離れて戻ると、また注意が向くということです。これは画面を見張る単純な課題の実験で、試験勉強を調べたものではありません。それでも、「飽きたら、同じことを続けるより、短く別のことをはさんで戻る」と考える根拠の一つになります。
休憩中にスマホを見ると、何が起きるか
休憩というと、まずスマホを手に取る人も多いはずです。休憩に使う道具で、そのあとの作業が変わるかを調べたのが、Kang と Kurtzberg(2019年)です。
- どんな実験か:大学生414人が、文字を並べ替えて単語を作る問題を解きました。途中の休憩で、決まった予算の中で店の特売品から3つを選ぶ買い物の作業を、スマホ・パソコン・紙のどれかでしました。休憩なしの組もありました。休憩のあと、後半の問題にかかった時間と、解けた数を比べています。
- 何が分かったか:スマホで休憩した組は、ほかの休憩の組より、後半にかかった時間が長く、解けた数も少なくなりました。ただし、休憩をとらなかった組よりは多く解けていました。
「スマホで休むくらいなら休まないほうがよい」という結果ではありません。休憩はとったほうがよく、とるならスマホ以外のほうがよい、という結果です。この実験の休憩は特売品選びで、SNSや動画を見た場合を調べたものではない点にも注意します。スマホが近くにあるだけで集中が落ちるかについては、集中できる環境の作り方で研究を紹介しています。
外を歩くと、注意は戻るのか
「散歩で気分転換」はよく聞きます。Berman・Jonides・Kaplan(2008年)は、自然の中と町の中で、そのあとの注意の働きが違うかを2つの実験で調べました。自然の中を歩くか、自然の写真を見たあとは、町の中を歩くか町の写真を見たあとより、注意の課題(聞いた数字を逆の順に言う課題など)の成績がよくなっていました。
著者たちは、町の中は注意を強く引きつける刺激が多く、自然は注意をおだやかに引くので、注意が休まりやすいと説明しています。ただし、この研究の散歩は「数分の休憩」として調べたものではありません。平日の短い休憩でまねするなら、窓から木や空を眺める、近くの公園や緑の多い道を少し歩く、くらいの使い方になります。歩いた時間で効果が決まるとまでは言えないので、休日のまとまった勉強の合間に取り入れるのが現実的です。
何分休んで、何をして、何をしないか
4本の研究をもとに、休憩の長さごとの使い方を表にしました。分数は当サイトの目安です。
| 休憩の長さ | すること | しないこと |
|---|---|---|
| 1分 | 問題集から目を離し、窓の外を見る。肩を回す | スマホの通知を確かめる |
| 5分前後 | 席を立って水を飲む、部屋を少し歩く | SNS・動画を開く |
| 10分前後 | 外に出て緑の多い道を歩く、窓を開けて外の空気を吸う | 勉強の続きを頭の中で考え続ける |
| 30分以上 | 食事・家事・仮眠など、その日の区切りにする | 「休んでしまった」と自分を責める |
休憩の前に、戻ってからやることを1行メモしておくと、戻るときに迷いません。たとえば「戻ったら、民法の代理の○✕を問6から」と書いておきます。メモがあると、休憩が長びくのも防げます。
飽きたときは、休憩と「変える」をどう使い分けるか
飽きたと感じたときは、休憩をとる前に「疲れているのか、同じことに飽きたのか」を考えます。疲れなら休憩、同じことに飽きたなら、休憩より先に勉強の中身を変えるほうが早いことがあります。Ariga と Lleras の実験のように、目標をいったん切り替えるだけでも注意が保たれる場合があるからです。ここからは当サイトの組み立てです。
- 科目を変える:行政手続法の○✕に飽きたら、民法の○✕に移る。宅建なら、宅建業法から法令上の制限に移る。
- 解く形を変える:○✕に飽きたら、同じ範囲を記述式の形(40字程度で要件を書く)で答えてみる。宅建なら、一問一答から4つの選択肢の問題に替える。
- 手の動きを変える:読む勉強に飽きたら、読んだ所の数字や要件を、見ないで紙に書き出す。
科目や形を変えながら解くやり方は、本番に近い練習にもなります。分野を混ぜて解く練習のしかたは、問題を「混ぜて解く」練習の記事で扱っています。科目を変えても、形を変えても手が止まるなら、飽きより疲れのほうかもしれないので、表の休憩に切り替えます。
「もう嫌になった」ときは、気分転換で足りるか
その日だけ嫌になったなら、ここまでの休憩と切り替えで戻れることもあります。一方、何日も続けて机に向かうのが嫌になっているなら、短い気分転換では足りません。勉強の量や計画が、今の生活に対して重すぎるのかもしれません。そういうときは、その日の勉強を「○✕を5問だけ」のように下げて、勉強を切らさないことを先にします。下げ方は疲れた日・残業の日の最低ラインにまとめています。
勉強のことを考えるだけで気分が重い、眠れない、体の不調がある、といった状態が何週間も続くときは、勉強のやり方で何とかしようとしなくてかまいません。医療機関や相談窓口に相談するのも一つの方法です。勉強は、少し休んでからでも再開できます。
今日からやること
- 飽きたら、まず「疲れか、同じことへの飽きか」を考える。飽きなら科目か解く形を変える。
- 休憩は10分以内を基本にし、席を立って体を少し動かす。
- 休憩中はスマホを別の場所に置き、通知やSNSを見ない。
- 休憩の前に「戻ったらやること」を1行メモしてから立つ。
- 休日のまとまった勉強の合間に一度、緑の多い所を歩く時間を入れてみる。
参考にした研究・資料(2026年10月確認)
- Albulescu, P., Macsinga, I., Rusu, A., Sulea, C., Bodnaru, A., & Tulbure, B. T. (2022). “Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLOS ONE, 17(8), e0272460. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0272460
- Ariga, A., & Lleras, A. (2011). Brief and rare mental “breaks” keep you focused: Deactivation and reactivation of task goals preempt vigilance decrements. Cognition, 118(3), 439–443. https://doi.org/10.1016/j.cognition.2010.12.007
- Kang, S., & Kurtzberg, T. R. (2019). Reach for your cell phone at your own risk: The cognitive costs of media choice for breaks. Journal of Behavioral Addictions, 8(3), 395–403. https://doi.org/10.1556/2006.8.2019.21
- Berman, M. G., Jonides, J., & Kaplan, S. (2008). The cognitive benefits of interacting with nature. Psychological Science, 19(12), 1207–1212. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02225.x
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