ひとことで言うと、前面道路の幅が6メートル以上12メートル未満で、その道路が幅員15メートル以上の道路(特定道路)につながり、敷地が特定道路から70メートル以内の部分で接しているときは、容積率を計算するときの道路の幅を広く扱えるルールです(建築基準法52条9項)。加える数値は、政令の式 Wa=(12−Wr)(70−L)/70 で求めます(建築基準法施行令135条の18)。
この記事では、この緩和の要件と計算の手順を、検算つきの例題で扱います。前面道路の幅による容積率の基本(×4/10・×6/10)と、建ぺい率の緩和は建ぺい率と容積率の記事にあります。条文は令和8年4月1日時点の建築基準法と施行令を e-Gov 法令検索で確かめています。
身近な例で考えると
登場人物は、マンションを建てる計画を立てているゆいさん(土地の持ち主)と、計算を頼まれた建築士のけんたさんです。
- ゆいさんの土地は第一種住居地域にあり、広さは300平方メートル。都市計画で決められた容積率は50/10。
- 土地が面している道(前面道路)の幅は8メートル。前面道路は12メートル未満なので、ふつうに計算すると 8×4/10=32/10 にとどまる。
- この前面道路は、35メートル先で幅20メートルの大通りにつながっている。けんたさんが測ると、大通りから、ゆいさんの土地が前面道路に接する部分のいちばん近い端までは35メートルだった。
- 大通りは幅15メートル以上なので特定道路。前面道路は6メートル以上12メートル未満、距離は70メートル以内なので、52条9項の緩和が使える。
- 加える数値は(12−8)×(70−35)÷70=2メートル。道路の幅を10メートルとして、10×4/10=40/10。都市計画の50/10より小さいので、容積率の上限は40/10。延べ面積の上限は 300×40/10=1,200平方メートルになる(緩和がなければ960平方メートル)。
広い道路のすぐそばの土地は、前面道路が少し狭くても、まわりの道路の状況は広い道路の沿いに近い、という考え方です。大通りから離れるほど加える数値は小さくなり、70メートルでゼロになります。たとえるなら、駅に近いほど「駅前」の扱いに近づき、ある距離を越えると駅前とは扱われない、という形です。ただし本物のルールでは、距離は大通りからのまっすぐの距離ではなく、前面道路にそって、特定道路から敷地が接する部分の近い端まで測った延長です。
条文ではこう決まっている
- 52条2項:前面道路(2以上あるときは幅が最大のもの)の幅員が12メートル未満の建築物の容積率は、前面道路の幅員のメートルの数値に、次の数値をかけたもの以下でなければならない。低層住居専用地域・田園住居地域は4/10。中高層住居専用地域・第一種・第二種住居地域・準住居地域は4/10(特定行政庁が指定する区域では6/10)。その他の建築物は6/10(指定する区域では4/10か8/10)。
- 52条9項(特定道路):敷地が、「幅員十五メートル以上の道路(以下この項において「特定道路」という。)に接続する幅員六メートル以上十二メートル未満の前面道路のうち当該特定道路からの延長が七十メートル以内の部分において接する場合」は、2項の「幅員」を、その幅員に政令で定める数値を加えたものとして計算する。
- 施行令135条の18:加える数値は「Wa=(12-Wr)(70-L)/70」。Waは加える数値(メートル)、Wrは前面道路の幅員(メートル)、Lは「特定道路からその建築物の敷地が接する前面道路の部分の直近の端までの延長」(メートル)。
要件は3つに分けると読みやすくなります。
- つながる先の道路が幅員15メートル以上(特定道路)。
- 前面道路の幅員が6メートル以上12メートル未満。
- 敷地が、前面道路のうち特定道路から70メートル以内の部分で接している。
式の形から、L=0(特定道路の角)なら Wa=12−Wr で、道路の幅は12メートルとして扱われます。L=70 なら Wa=0 で、緩和はありません。Waを足した幅を2項の計算に入れ、最後に都市計画の容積率と比べて小さいほうを使う、という順番は、ふつうの計算と同じです。
例題で計算してみる(検算つき)
例題1(住居系):上のゆいさんの土地。第一種住居地域、都市計画の容積率50/10、敷地300平方メートル、前面道路8メートル、L=35メートル。
- 要件:特定道路20メートル(15以上)、前面道路8メートル(6以上12未満)、L=35(70以内)。使える。
- Wa=(12−8)(70−35)/70=4×35÷70=2.0。
- 道路の幅として使う数値:8+2=10。住居系なので 10×4/10=40/10。
- 都市計画の50/10と比べて小さいほう:40/10。延べ面積の上限は300×4.0=1,200平方メートル。
検算:緩和なしは 8×0.4=3.2、300×3.2=960。差の240平方メートルは、Wa の2メートル分(2×0.4=0.8、300×0.8=240)と一致します。
例題2(商業系):商業地域、都市計画の容積率80/10(特定行政庁が指定する区域ではない)、敷地250平方メートル、前面道路9メートル、特定道路は幅25メートル、L=14メートル。
- Wa=(12−9)(70−14)/70=3×56÷70=2.4。
- 道路の幅として使う数値:9+2.4=11.4。商業地域は「その他の建築物」なので 11.4×6/10=68.4/10。
- 都市計画の80/10と比べて小さいほう:68.4/10。延べ面積の上限は250×6.84=1,710平方メートル。
検算:緩和なしは 9×0.6=5.4、250×5.4=1,350。Waの分は 2.4×0.6×250=360。1,350+360=1,710で一致します。
例題3(緩和で都市計画の数値を超えるとき):第二種住居地域、都市計画の容積率40/10、敷地200平方メートル、前面道路8メートル、L=21メートル。Wa=4×49÷70=2.8、道路の幅として使う数値は10.8、10.8×4/10=43.2/10。都市計画の40/10のほうが小さいので、上限は40/10(延べ面積800平方メートル)。緩和はあくまで52条2項の数値を上げるもので、都市計画で決めた容積率(52条1項)を超えられるわけではありません。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまらない(前面道路が狭い):前面道路が5メートルなら、特定道路から10メートルの所でも緩和は使えません。9項は「幅員六メートル以上」の前面道路だけが対象です。5×4/10=20/10のままです。
- 当てはまらない(つながる道が15メートル未満):前面道路8メートルが幅12メートルの道路につながっているだけなら、その道路は特定道路ではありません。12メートル以上の道路そのものに接する敷地なら、52条2項の計算がそもそもかかりません。
- 当てはまらない(遠すぎる):敷地が前面道路に接する部分が、特定道路から80メートルの地点から始まるなら、70メートル以内の部分で接していないので緩和はありません。
- ひっかけやすい(70メートルをまたぐ敷地):敷地が前面道路に接する部分が、特定道路から60メートルの地点から80メートルの地点まで続く場合、60〜70メートルの部分で接しているので緩和の対象です。Lは近い端の60メートルで、Wa=(12−Wr)×10÷70と小さな数値になります。
- ひっかけやすい(Lをどこまで測るか):Lは、特定道路から敷地が接する部分の「直近の端」まで。敷地の奥の端や、敷地の中心までではありません。遠いほうの端で測るとWaが小さくなり、上限を少なく出してしまいます。
似ているルールとの違い
前面道路にかかわる容積率のルールを並べます。
| 場面 | 計算 | 条文 |
|---|---|---|
| 前面道路が12m以上 | 都市計画の容積率だけ | 52条1項 |
| 前面道路が12m未満 | 道路の幅×4/10か6/10と、都市計画の小さいほう | 52条2項 |
| 6m以上12m未満で、特定道路から70m以内 | 道路の幅にWaを足してから2項の計算 | 52条9項・令135条の18 |
| 前面道路が2本以上 | 幅が最大の道路で計算 | 52条2項 |
建ぺい率の角地の緩和(53条3項2号)は、特定行政庁が指定した角地に1/10を加えるもので、容積率には効きません。反対に、特定道路の緩和は容積率の計算の中の「道路の幅」を変えるもので、建ぺい率には関係しません。特定道路の緩和には特定行政庁の指定も要りません。だれが何を指定するかは特定行政庁の記事で整理しています。道路の幅の測り方の前提になる2項道路は道路と接道義務の記事にあります。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、建蔽率・容積率が主な論点の問題は9問、副の論点として含む問題は12問でした。直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では、主な論点は0問、副の論点は3問です。副の論点の数(12問)が主な論点の数(9問)より多く、建築基準法の「総合」型の1肢として入る形もあるため、副の数も示しました。特定道路だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。取り違えやすい形は次のとおりです。
- 数字の入れ替え:特定道路は幅員15メートル以上、前面道路は6メートル以上12メートル未満、距離は70メートル以内。12メートルと15メートル、6メートルと4メートルを入れ替えた形に気をつけます。
- Lの起点と終点:特定道路から、敷地が接する前面道路の部分の直近の端まで。
- 都市計画の数値と比べ忘れる:緩和で計算した数値が都市計画の容積率を上回れば、都市計画の数値が上限です(例題3)。
- 4/10と6/10の取り違え:Waを足したあとにかける数値は、ふつうの計算と同じく用途地域と特定行政庁の指定で決まります。
計算問題全体の中での位置づけと、時間のかけ方は宅建の計算問題の記事で扱っています。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
第二種中高層住居専用地域(都市計画の容積率30/10、特定行政庁の指定区域ではない)の敷地が、幅7メートルの前面道路に接している。この道路は幅15メートルの道路につながり、そこから敷地が接する部分の近い端までは28メートルである。この敷地の容積率の上限は30/10である。
答え:○ 分かれ目は、緩和で出した数値を都市計画の容積率と比べるかです。幅15メートルの道路は「十五メートル以上」に当たるので特定道路で、加える数値は(12−7)(70−28)/70=3.0、道路の幅は10メートルとして10×4/10=40/10になります(建築基準法52条2項・9項、施行令135条の18)。ただし、容積率は都市計画で定めた数値(52条1項)も超えられないので、小さいほうの30/10が上限です。40/10をそのまま答えると✕にしてしまいます。緩和がなければ7×4/10=28/10なので、緩和で上限は28/10から30/10まで上がりますが、都市計画の数値を超えることはありません。
問2(このサイトのオリジナル問題)
第一種住居地域(都市計画の容積率30/10、特定行政庁が指定する区域ではない)にある敷地は、幅5メートルの前面道路に接し、この道路は30メートル先で幅16メートルの道路につながる。この敷地の容積率の上限は、特定道路による緩和を受けて20/10を超える。
答え:✕ 分かれ目は、前面道路の幅の要件です。特定道路による緩和は、前面道路の幅員が6メートル以上12メートル未満の場合に限られます(建築基準法52条9項)。正しくは、幅5メートルの前面道路には緩和がなく、5×4/10=20/10が上限です。つながる道路が15メートル以上で距離も70メートル以内なので使えそうに見えますが、52条2項の「12メートル未満」の要件だけを見て、12メートル未満ならどの幅でも緩和があると広げた形です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
幅20メートルの道路につながる幅8メートルの前面道路に、敷地が、幅20メートルの道路から60メートルの地点から80メートルの地点までの部分で接している。この敷地は、特定道路による容積率の緩和の対象になる。
答え:○ 分かれ目は、70メートルを越える部分がある敷地の扱いです。緩和は、敷地が前面道路のうち特定道路から70メートル以内の部分で接する場合にかかります(建築基準法52条9項)。この敷地は60〜70メートルの部分で接しているので対象で、Lは直近の端の60メートルです(施行令135条の18)。加える数値は(12−8)×10÷70で小さくなりますが、ゼロではありません。敷地の遠い端(80メートル)で判断すると✕にしてしまいます。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。
まとめ
- 特定道路は幅員15メートル以上の道路。緩和は、6メートル以上12メートル未満の前面道路で、特定道路から70メートル以内の部分で接する敷地だけ(52条9項)。
- 加える数値は Wa=(12−Wr)(70−L)/70。Lは特定道路から敷地が接する部分の直近の端まで(令135条の18)。
- 手順:Waを前面道路の幅に足す → 4/10か6/10をかける → 都市計画の容積率と比べて小さいほう。
- 緩和は容積率だけ。建ぺい率や、都市計画の容積率そのものは上がらない。
このサイトで次に読むなら、敷地面積の最低限度・外壁の後退距離・壁面線の記事です。容積率と同じく建物の大きさや位置を決める制限のうち、都市計画で定めるものと特定行政庁が指定するものを分けて確かめられます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov 法令検索(法令API)で令和8年4月1日時点の建築基準法・建築基準法施行令を確かめました。例題の計算は当サイトで検算しています。
- e-Gov法令検索「建築基準法」(52条1項・2項・9項、53条3項)
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」(135条の18)
- 不動産適正取引推進機構「宅建試験の問題及び正解番号表」(出題数を数えた元の問題)
働く人の法律試験ノート