株式の併合・株式の分割・株式無償割当ての違い:決める機関・株主への影響・反対する株主の手段

ひとことで言うと、3つとも株主が持つ株の数を、持株の割合に応じて一斉に変えるしくみです。株式の併合(へいごう)は、10株を1株にまとめるように数を減らします。株式の分割は、1株を2株に分けるように数を増やします。株式無償割当て(むしょうわりあて)は、払込みをさせずに新しく株を割り当てて、数を増やします。

決める機関が違います。併合は、いつも株主総会の特別決議です(会社法180条2項・309条2項4号)。分割と無償割当ては、取締役会設置会社なら取締役会の決議で決めます(183条2項・186条3項)。併合だけに、取締役の理由の説明、差止め、反対する株主の買取請求がそろっています。この記事は、上場廃止のような実務の話は扱わず、試験の論点として3つを比べます。条文は令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめました。議決権の10分の9以上を持つ株主が、残りの株式を取得するもう一つの手続は株式等売渡請求の記事にあります。

身近な例で考えると

舞台は、取締役会を置く「ひかり精工株式会社」です。株はだれでも自由に買える(公開会社である)会社で、発行している株は1種類だけです。株主のまなさんは、15株を持っています。

  1. 併合の場合:ひかり精工が10株を1株にする。まなさんの15株は1.5株分になる。1株はそのまま株として残るが、0.5株は1株に満たない端数(はすう)になる。端数は全員分を合わせて売られ、まなさんは代金を受け取る(182条1項・235条1項)。
  2. 分割の場合:ひかり精工が1株を2株にする。まなさんの15株は30株になる。持株の割合は変わらない。
  3. 無償割当ての場合:ひかり精工が、1株につき1株を払込みなしで割り当てる。まなさんは15株を新しく受け取り、30株になる。ただし、会社自身が持つ自分の株(自己株式)には割り当てない(186条2項)。

たとえると、併合は「10円玉10枚を100円玉1枚に両替する」こと、分割は「100円玉を10円玉10枚に両替する」ことです。ただし本物のルールでは、両替で余った端数は手元に残らず、売ったお金で受け取ります。併合では、持株が少ない株主は株主でなくなることもあります。ここがたとえと違う点で、併合の手続が重い理由でもあります。

条文ではこう決まっている

株式の併合(180条〜182条の6・309条2項4号)

  • 併合をするたびに、株主総会の決議で、併合の割合、効力発生日、(種類株式発行会社では)併合する株式の種類、効力発生日の発行可能株式総数を定める(180条2項)。
  • この決議は特別決議(309条2項4号)。取締役会設置会社でも、取締役会では決められない。
  • 公開会社では、効力発生日の発行可能株式総数を、効力発生日の発行済株式の総数の4倍を超える数にできない。公開会社でない会社には、この制限はない(180条3項)。
  • 取締役は、その総会で、併合をする必要がある理由を説明しなければならない(180条4項)。
  • 会社は、効力発生日の2週間前までに、株主と登録株式質権者に知らせるか公告する(181条)。この2週間は、182条の4第3項で20日に読み替えられる。
  • 併合の内容を書いた書面などを本店に備え置き、株主は閲覧などを請求できる(182条の2)。
  • 併合が法令または定款に違反し、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は会社に併合をやめるよう請求できる(182条の3)。
  • 端数が出るとき、反対株主は、端数になる株式の全部を公正な価格で買い取るよう請求できる。請求は、効力発生日の20日前の日から前日までにする(182条の4第1項・4項)。
  • 反対株主は、総会の前に反対する旨を会社に知らせ、かつ総会で反対した株主(議決権を使える人)と、その総会で議決権を使えない株主(182条の4第2項)。
  • 株主は、効力発生日に、併合後の数の株主になる。会社は、その日に、発行可能株式総数について定款を変更したものとみなす(182条)。

182条の2〜182条の6でいう「株式の併合」は、単元株式数を定款で定めている会社では、単元株式数に併合の割合をかけて1に満たない端数が出るものに限られます(182条の2第1項のかっこ書)。単元株式数を定めていない会社では、どの併合も当たります。

株式の分割(183条・184条)

  • 分割をするたびに、株主総会の決議(取締役会設置会社では取締役会の決議)で、分割の割合と基準日、効力発生日、(種類株式発行会社では)分割する株式の種類を定める(183条2項)。
  • 基準日の株主名簿にのっている株主は、効力発生日に、基準日に持っていた株式の数に分割の割合(183条2項1号)をかけた数の株式を取得する(184条1項)。1株を2株にする分割(割合は1)なら、15株の株主は15株を新しく取得し、30株になる。
  • 現に2種類以上の株式を発行している会社でなければ、株主総会の決議によらずに、効力発生日の発行可能株式総数を、前日の数に分割の割合をかけた数の範囲で増やす定款変更ができる(184条2項)。ふつう定款変更には株主総会の特別決議がいるので(466条・309条2項11号)、その例外です。

株式無償割当て(185条〜187条)

  • 株主に、新たに払込みをさせないで、その会社の株式を割り当てる(185条)。
  • 割当てのたびに、割り当てる株式の数(種類株式発行会社では種類と数)と、効力発生日などを定める(186条1項)。
  • 割当ては、株主の持株の数に応じたものでなければならない。会社自身(自己株式)は、割当てを受ける株主から除かれる(186条2項)。
  • 決める機関は、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)。ただし、定款で別の定めができる(186条3項)。
  • 株主は効力発生日に株主となり、会社は遅滞なく、割り当てた数を株主に知らせる(187条)。

1株に満たない端数が出たときは、併合でも分割でも、端数の合計の数の株式を競売し、代金を端数に応じて株主に渡します(235条1項)。競売に代えて、市場価格のある株式は市場価格で、市場価格のない株式は裁判所の許可を得て、競売以外の方法で売ることもできます(235条2項・234条2項)。

3つの違いを表で比べる

取締役会設置会社を前提に並べます(会社法180条〜187条・309条2項4号)。

比べる点株式の併合株式の分割株式無償割当て
決める機関株主総会の特別決議取締役会取締役会(定款で別に定められる)
株の数減る増える増える
取締役の理由の説明いる(180条4項)専用の定めなし専用の定めなし
差止めできる(182条の3)専用の定めなし専用の定めなし
反対株主の買取請求端数が出るときできる(182条の4)なし※なし※
発行可能株式総数総会で定める(公開会社は4倍まで)総会なしで割合の範囲で増やせる184条2項のような特例なし

※種類株式発行会社で、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがある場合など、116条1項3号の場面は別です。

分割と無償割当ては、どちらも数が増えるので結果が似ています。違いは、無償割当てでは自己株式に割り当てないこと(186条2項)、決める機関を定款で変えられること(186条3項)、分割のような発行可能株式総数の特例がないことです。

単元株式数の要点(188条〜195条)

  • 定款で、一定の数の株式を「1単元」とし、1単元について議決権1個とすることができる(188条1項)。
  • 1単元の数の上限は、1,000株と、発行済株式の総数の200分の1(188条2項、会社法施行規則34条)。
  • 単元未満の株式しか持たない部分については、株主総会で議決権を使えない(189条1項)。定款で他の権利を制限しても、株式無償割当てを受ける権利、単元未満株式の買取りの請求、残余財産の分配を受ける権利などは残る(189条2項)。
  • 単元株式数を増やす・新しく設ける定款変更は、ふつう株主総会の特別決議がいる。ただし、株式の分割と同時にし、各株主の議決権の数が減らないときは、株主総会の決議なしにできる(191条)。
  • 単元株式数を減らす・やめる定款変更は、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会の決議)でできる(195条1項)。

株式の種類ごとの違いや、種類株主総会が要る場面は種類株式の記事、株主の権利と自己株式の基本は株式と株主の権利の記事で扱っています。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:ひかり精工が、1株を2株にする分割を取締役会で決めた。取締役会設置会社なので、取締役会の決議で足ります(183条2項)。
  2. 当てはまらない例:ひかり精工が、10株を1株にする併合を取締役会だけで決めた。併合は株主総会の特別決議がいるので(180条2項・309条2項4号)、この決め方はできません。
  3. 当てはまらない例:ひかり精工が1株につき1株の無償割当てをし、会社が持つ自己株式にも割り当てた。割当てを受ける株主から会社自身は除かれるので(186条2項)、自己株式には割り当てません。
  4. ひっかけやすい例:普通株式と優先株式の2種類を発行している会社が分割をし、発行可能株式総数を増やす定款変更を取締役会だけでした。184条2項の特例は、現に2種類以上の株式を発行している会社には使えません。原則どおり、株主総会の特別決議がいります。
  5. ひっかけやすい例:ひかり精工が併合をし、効力発生日の発行可能株式総数を、発行済株式の総数の5倍と定めた。公開会社は4倍までなので(180条3項)、この定めはできません。

試験ではここをまちがえやすい

  • 決める機関の入れ替え:併合は、取締役会設置会社でも株主総会の特別決議。分割と無償割当ては、取締役会設置会社なら取締役会です。無償割当てだけは、定款で別の定めができます。
  • 4倍の制限の範囲:公開会社だけ。公開会社でない会社の併合には、4倍の制限はありません(180条3項ただし書)。
  • 買取請求と差止めがあるのは併合:分割や無償割当てで端数が出ても、反対株主の買取請求(182条の4)は使えません。分割の端数は、235条の競売と代金の交付で処理します。
  • 184条2項の特例の条件:現に2種類以上の株式を発行していないこと。増やせるのは分割の割合の範囲までです。
  • 自己株式:無償割当ては自己株式に割り当てない(186条2項)。

決議の要件(特別決議の3分の2など)は会社法で覚える数字の一覧で並べています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
公開会社でないつばさ工業は、10株を1株にする株式の併合をする。株主総会では、効力発生日の発行可能株式総数を、効力発生日の発行済株式の総数の4倍を超える数に定めることはできない。

答え:✕ 分かれ目は、4倍の制限がかかる会社です。180条3項は、効力発生日の発行可能株式総数を発行済株式の総数の4倍以下にするよう定めていますが、ただし書で「公開会社でない場合は、この限りでない」としています。正しくは、公開会社でないつばさ工業は、4倍を超える数に定めることもできます。4倍の数字と制限の中身は正しく、かかる会社だけを公開会社から入れ替えた形です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
取締役会を置き、1種類の株式だけを発行しているひかり精工が、1株を3株にする株式の分割をする。ひかり精工は、株主総会の決議によらずに、効力発生日の発行可能株式総数を分割前の3倍まで増やす定款変更ができる。

答え:○ 分かれ目は、分割に伴う定款変更の特例です。184条2項は、現に2種類以上の株式を発行している会社を除き、466条(定款変更には株主総会の決議がいる)にかかわらず、前日の発行可能株式総数に分割の割合をかけた数の範囲で、株主総会の決議によらずに増やせるとしています。ここでの割合は、分割で増える株式の数の、分割前の発行済株式の総数に対する割合です(183条2項1号)。1株を3株にするなら割合は2で、前日の数の2倍まで増やせるので、合計は分割前の3倍までになります。定款を変えるなら特別決議がいる、と考えると✕に見えます。2種類以上を発行している会社なら、原則どおり株主総会の特別決議です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
1種類の株式だけを発行しているひかり精工が、1株を1.5株にする株式の分割をした。15株を持つまなさんには0.5株の端数が出る。まなさんは、端数になる株式を公正な価格で買い取るよう会社に請求できる。

答え:✕ 分かれ目は、買取請求ができる行為です。反対株主が端数になる株式の買取りを請求できるのは、株式の併合の場合です(182条の4第1項)。正しくは、分割で出た端数は、端数の合計の株式を会社が競売し、その代金をまなさんに渡す形で処理されます(235条1項)。併合の買取請求と、分割にも併合にも共通する235条の端数の処理を取り違えた形です。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」で続けて解けます。

まとめ

  • 併合は株主総会の特別決議。取締役の理由の説明・差止め・反対株主の買取請求がある。公開会社は発行可能株式総数を4倍まで。
  • 分割は取締役会設置会社なら取締役会。1種類だけを発行する会社は、分割の割合の範囲で、総会なしに発行可能株式総数を増やせる。
  • 無償割当ては取締役会設置会社なら取締役会(定款で別に定められる)。自己株式には割り当てない。
  • 端数は、併合でも分割でも、競売して代金を渡す(235条)。
  • 単元株式数の上限は1,000株と発行済株式の総数の200分の1。減らす・やめるのは取締役会でできる。

このサイトで次に読むなら、募集株式の発行の記事です。払込みをさせて株を増やす場合に、決める機関と株主の争い方がどう変わるかを、この記事の3つと比べられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索で令和8年4月1日時点の法令を確かめました。

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