変更の登録・登録の移転・変更の届出の違いをわかりやすく

宅建業法には、名前の似た手続きがいくつもあります。見分けるこつは、まず「宅建士の手続きか、業者の手続きか」で二つに分けることです。宅建士の側には「変更の登録」「登録の移転」「宅建士証の書換え」が、業者の側には「変更の届出」「免許換え」があります。

宅建士の変更の登録は、登録している事項が変わったら遅滞なく申請する義務です(20条)。登録の移転は、ほかの都道府県の事務所で働くときに「申請することができる」任意の手続きです(19条の2)。業者の変更の届出は、商号や役員、事務所、専任の宅建士の氏名などが変わったら30日以内に免許権者へ届け出ます(9条)。この記事では、5つの手続きを「だれが・いつまでに・どこへ・任意か義務か」の1枚の表にし、事例で当てはめます。

身近な例で考えると:転職したあやさんと、役員が替わったいろは不動産

登場人物を紹介します。

人物立場したこと
あやさん宅建士(愛知県知事の登録)名古屋の会社から岐阜の会社へ転職
いろは不動産宅建業者(愛知県知事の免許)あやさんの前の勤め先。役員が交代
やまぶき住宅宅建業者(岐阜県知事の免許)あやさんの新しい勤め先

あやさんは、愛知県で宅建試験に合格し、愛知県知事の登録を受けました。名古屋のいろは不動産で働いていましたが、岐阜県のやまぶき住宅に転職し、岐阜市の事務所で働くことになりました。このとき、あやさんの手続きは次のとおりです。

  1. 勤め先が変わった。→ 登録している事項(勤めている業者の名前と免許証番号)が変わるので、「変更の登録」を遅滞なく申請します。これは義務です。
  2. 働く事務所が岐阜県になった。→ 登録を岐阜県知事に移す「登録の移転」を申請することができます。申請先は岐阜県知事で、今登録している愛知県知事を経由します。これは任意なので、愛知県知事の登録のままでも違反ではありません。
  3. 登録の移転をして、宅建士証の交付も一緒に申請した。→ 愛知県の宅建士証は効力を失い、岐阜県知事から新しい宅建士証が交付されます。その有効期間は、前の宅建士証の残りの期間です。

一方、いろは不動産でも手続きがあります。あやさんが専任の宅建士だったなら、専任の宅建士の氏名が変わります。また、同じ時期に役員の一人が交代しました。どちらも、30日以内に愛知県知事へ「変更の届出」をします。

条文ではこう決まっている

宅建士の側(20条・19条の2・22条の2・施行規則)

  • 変更の登録(20条):「登録を受けている事項に変更があつたときは、遅滞なく、変更の登録を申請しなければならない。」申請書は、その人が「登録をしている都道府県知事」に出します(施行規則14条の7第1項)。
  • 登録されている事項:氏名・生年月日・住所(18条2項)のほか、本籍・性別、合格の年月日、宅建業者の業務に従事しているときはその業者の商号・名称と免許証番号などです(施行規則14条の2の2第1項)。
  • 登録の移転(19条の2):登録している知事の都道府県以外にある、宅建業者の事務所の業務に従事し、または従事しようとするときに、その事務所の所在地の知事に対し、登録している知事を経由して、「申請をすることができる」。ただし、事務禁止の処分を受けて、その期間が終わっていないときはできません。
  • 移転後の宅建士証(22条の2第4項・5項):登録の移転があると、前の宅建士証は効力を失います。移転の申請とともに交付を申請したときは、移転後の知事が、前の宅建士証の有効期間が経過するまでの期間を有効期間とする宅建士証を交付します。
  • 宅建士証の書換え(施行規則14条の13):氏名か住所を変えたときは、変更の登録の申請と「あわせて」書換え交付を申請しなければなりません。住所だけの変更なら、今の宅建士証の裏に新しい住所を書くことで代えられます。

業者の側(9条・7条)

  • 変更の届出(9条):4条1項1号〜5号の事項に変更があったら、30日以内に、免許を受けた大臣か知事に届け出ます。その事項は、①商号・名称、②法人の役員と政令で定める使用人の氏名、③個人なら本人と政令で定める使用人の氏名、④事務所の名称と所在地、⑤事務所ごとの専任の宅建士の氏名です。
  • 免許換え(7条):事務所の置き方が変わり、今の免許権者では合わなくなったとき(大臣免許の業者が一つの県だけになった、知事免許の業者が別の県に移った・二つ以上の県に事務所を持った)に、新しい免許権者の免許を受けると、前の免許は効力を失います。新しい免許の有効期間は、3条2項により5年です。

1枚の表:だれが・いつまでに・どこへ・任意か義務か

手続きだれが・どこへいつまでに任意か義務か
変更の登録宅建士→登録している知事遅滞なく義務(20条)
登録の移転宅建士→移転先の知事(登録している知事を経由)期限なし任意(19条の2)
宅建士証の書換え宅建士→変更の登録とあわせて変更の登録と同時義務(規則14条の13)
変更の届出業者→免許権者30日以内義務(9条)
免許換え業者→新しい免許権者数字の期限なし引き続き営むなら必要(7条)

表を覚えるときは、次の3つの組を押さえると混ざりにくくなります。

  • 「登録」は宅建士、「届出」と「免許」は業者。
  • 期限の言葉がちがう。宅建士の変更の登録は「遅滞なく」、業者の変更の届出は「30日以内」。
  • 「移転」だけが任意。ほかは、要件にあたればしなければならない手続きです。

宅建士証そのものの有効期間(5年)や法定講習は宅建士の登録と宅建士証の記事で、免許の基本は宅建業の免許の記事で扱っています。

事例で当てはめる:この場面ではどの手続きか

場面宅建士の手続き業者の手続き
宅建士が結婚して姓が変わった変更の登録+宅建士証の書換え専任の宅建士なら変更の届出
宅建士が隣の県に引っ越した(勤め先は同じ)変更の登録+宅建士証の書換え(裏書でも可)なし
宅建士が他県の業者に転職した変更の登録(義務)、登録の移転(任意)前と後の業者で専任なら変更の届出
業者の役員が交代したなし変更の届出(30日以内)
知事免許の業者が他県に支店を出したなし免許換え(大臣免許へ)

2行目に注意します。登録の移転ができるかどうかは、住所ではなく「働く事務所」の場所で決まります。隣の県に引っ越しても、事務所が同じ県なら移転はできません。住所が変わったことは、変更の登録で知事に伝えます。

3行目で、あやさんが専任の宅建士だったときは、業者の側も動きます。いろは不動産では専任の宅建士の氏名が変わるので変更の届出が要ります。専任の宅建士が足りなくなったら、2週間以内に補う措置もとらなければなりません(31条の3第3項)。やまぶき住宅も、あやさんを専任の宅建士にするなら変更の届出をします。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例

  • あやさんが、やまぶき住宅への転職と同時に登録の移転を申請し、岐阜県知事から宅建士証を受け取った。→ 新しい宅建士証の有効期間は、愛知県の宅建士証の残りの期間です(22条の2第5項)。
  • いろは不動産の取締役が一人辞め、新しい取締役が入った。→ 役員の氏名が変わったので、30日以内に愛知県知事へ変更の届出をします。

当てはまらない例

  • あやさんが、勤め先は名古屋のまま、岐阜県に引っ越した。→ 登録の移転はできません。働く事務所が愛知県にあるからです。
  • あやさんが、事務禁止の処分を受けている間に岐阜県の会社に転職した。→ 禁止の期間が終わるまでは、登録の移転を申請できません(19条の2ただし書)。
  • 個人の宅建業者が、自宅の住所だけを変えた。→ 4条1項1号〜5号に業者本人の住所は入っていないので、変更の届出の対象ではありません(事務所の所在地が変わったなら届出が要ります)。

ひっかけやすい例

  • 登録の移転は、新しい県の知事に直接申請する。→ 誤りです。今登録している知事を経由します。
  • 登録の移転をしないと、他県の事務所で宅建士の仕事ができない。→ 誤りです。移転は任意です。ただし勤め先の変更による変更の登録は義務です。
  • 免許換えをすると、前の免許の残りの期間だけ有効な免許になる。→ 誤りです。免許換えは新しい免許を受けることなので、有効期間は5年です。「残りの期間」になるのは、登録の移転で交付される宅建士証のほうです。

試験ではここをまちがえやすい

この論点は宅建試験の宅建業法の論点です(行政書士試験の範囲ではありません)。宅建試験では、次のような形で取り違えやすい論点です。

  • 主語のすり替え:宅建士の手続きに「30日以内」、業者の手続きに「遅滞なく」を付ける形。主語と期限をセットで覚えます。
  • 任意と義務の入れ替え:「登録の移転をしなければならない」は誤り。「変更の登録をすることができる」も誤り(義務です)。
  • 行き先・経由:登録の移転は「移転先の知事に、登録している知事を経由して」。変更の届出は「免許権者に」。
  • 住所と勤務地:引っ越しで登録の移転はできない。移転のきっかけは他県の事務所で働くことです。
  • 有効期間の入れ替え:移転後の宅建士証は残りの期間、免許換え後の免許は5年。
  • 2週間と30日:専任の宅建士が欠けたときに補う措置は2週間以内(31条の3第3項)、変更の届出は30日以内(9条)。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの宅建業法(宅建士の試験・登録、免許の更新・免許換え・届出)で続けて解けます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
甲県知事の登録を受けている宅建士Aが、甲県の宅建業者B社を辞め、乙県にある宅建業者C社の事務所で働き始めた。Aは、登録の移転を申請しなくても宅建業法に違反しないが、変更の登録は遅滞なく申請しなければならない。

答え:○ 分かれ目は、任意の手続きと義務の手続きの区別です。登録の移転は「申請をすることができる」とされた任意の手続きです(19条の2)。一方、勤めている業者の商号・名称と免許証番号は登録事項なので(施行規則14条の2の2第1項5号)、転職したら変更の登録が義務になります(20条)。乙県で働くのだから移転も義務と考えると✕にしてしまいます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建士Aが登録の移転の申請とともに宅建士証の交付を申請した場合、移転先の知事が交付する宅建士証の有効期間は、交付の日から5年である。

答え:✕ 分かれ目は有効期間の起算です。正しくは、移転後の宅建士証の有効期間は、前の宅建士証の有効期間が経過するまでの期間です(22条の2第5項)。宅建士証の有効期間の5年(22条の2第3項)や、免許換えで受ける新しい免許の有効期間5年(3条2項)と取り違えないようにします。

問3(このサイトのオリジナル問題)
甲県知事の免許を受けた宅建業者D社が、甲県内の事務所の専任の宅建士を別の宅建士に交代させた。D社は、交代の日から2週間以内に、甲県知事に変更の届出をしなければならない。

答え:✕ 分かれ目は期間です。専任の宅建士の氏名は届出事項なので(4条1項5号)、変更の届出は必要ですが、期限は30日以内です(9条)。正しくは「30日以内に届け出る」です。2週間は、専任の宅建士が足りなくなったときに補う措置の期限(31条の3第3項)で、届出の期限ではありません。

まとめ

  • 宅建士の手続き:変更の登録(遅滞なく・義務)、登録の移転(任意・登録している知事を経由)、宅建士証の書換え(氏名・住所の変更で変更の登録とあわせて)。
  • 業者の手続き:変更の届出(30日以内・免許権者へ)、免許換え(事務所の置き方が変わったとき)。
  • 登録の移転のきっかけは「他県の事務所で働くこと」。引っ越しではできない。事務禁止の期間中もできない。
  • 移転後の宅建士証は前の残りの期間。免許換え後の免許は5年。
  • 専任の宅建士が欠けたときの補充は2週間以内、変更の届出は30日以内。

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参考にした公式の情報(2026年10月確認)

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