令和8年度の行政書士試験の試験案内には、「令和8年4月1日現在施行されている法令に関して出題します。」と書かれています。施行(しこう)とは、法律が実際に効き始めることです。4月1日までに効き始めた改正は、範囲に入ります。4月2日以降に効き始めた改正は、試験日の11月8日より前でも範囲に入りません。
科目は大きく2つです。法令等(46題)は、憲法・行政法・民法・商法・基礎法学です。基礎知識(14題)は、一般知識・行政書士法等の業務関連法令・情報通信と個人情報保護・文章理解の4分野です。令和8年度に特に注意したい改正は2つあります。行政書士法(2026年1月1日施行)と、民法(令和6年改正のうち2026年4月1日施行分)です。どちらも範囲に入ります。
「4月1日現在施行」とはどういう意味か
試験概要には、毎年のルールとして「試験を実施する日の属する年度の4月1日現在施行されている法令に関して出題します。」とあります。かみくだくと「試験がある年度の4月1日の時点で、効き目のある法律から出す」という意味です。読み方のポイントは3つです。
- 基準は「施行」で、「公布」ではありません。公布(こうふ)は、新しい法律を世の中に発表することです。4月1日より前に発表されていても、効き始めるのが4月2日以降なら範囲外です。
- 4月1日に施行されたものは入ります。民法の令和6年改正のうち、2026年4月1日施行の部分がこれに当たります。この日の時点で効いているので、範囲です。
- 法令等と基礎知識の両方に当てはまります。基礎知識で出る法律も同じ基準です。たとえば行政書士法や、個人情報の保護に関する法律です。
たとえば、はるかさんが令和8年度の試験を受けるとします。民法の財産分与(離婚のとき夫婦の財産を分けること)を家庭裁判所に求められる期間は、4月1日施行の改正で「5年」になりました。この改正は範囲に入るので、はるかさんは「5年」で覚えます。逆に、4月2日以降に効き始める改正は、その年の試験のためには追いかけなくてかまいません。
法令等の科目は、それぞれどこまでか
試験案内では、法令等は「憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学の中からそれぞれ出題し」とされています。科目ごとの細かい範囲は示されていません。たとえば「憲法のどの章まで」「民法のどの部分まで」といった線引きはありません。
| 科目 | 試験案内の書き方 |
|---|---|
| 憲法 | 「憲法」 |
| 行政法 | 一般的な法理論と5つの法律を「中心とする」 |
| 民法 | 「民法」 |
| 商法 | 「商法」 |
| 基礎法学 | 「基礎法学」 |
科目ごとの問題数は、公式には発表されていません。当サイトが令和3年度の問題で数えた結果は、次のとおりでした。基礎法学2問、憲法5問、行政法19問(問8〜26)、民法9問(問27〜35)、商法・会社法5問(問36〜40)です。これは公式の内訳ではなく、年度によって変わることがあります(形式ごとの配点は科目と配点の記事)。なお、試験案内の科目名は「商法」です。それでも、この数え方のとおり会社法の分野も出ています。
行政法の「中心とする」は、どこまでを指すか
行政法の範囲は、次の6つが「中心」です。
- 行政法の一般的な法理論(どの法律にも共通する基本の考え方。たとえば役所の決定「行政行為」や、役所が力ずくで従わせる「行政上の強制」など)
- 行政手続法
- 行政不服審査法
- 行政事件訴訟法
- 国家賠償法
- 地方自治法
「中心とする」は「これだけ」という意味ではありません。文言の上では、ほかの法律が出ないとはされていません。それでも、点を取る準備としては、まずこの6つを固めるのが筋です。
このうち行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法は、条文の数が比較的少なめです。そのため、条文を最初から最後まで読む価値があります。地方自治法は条文が多いので、先に読む制度を絞ります。たとえば直接請求や住民監査請求です。それから条文に当たります。法律ごとの優先順位は行政法の勉強法に、覚える期間や数字は期間・数字の一覧にまとめています。
基礎知識の4分野は、どこまでか
基礎知識は「一般知識、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令、情報通信・個人情報保護及び文章理解の中からそれぞれ出題し」とされています。この形は「令和6年度試験から適用」です。
- 一般知識:試験案内に細かい範囲が書かれていません。4分野の中で、いちばん範囲がつかみにくい分野です。
- 行政書士法等の業務関連法令:「行政書士法等」と名前が挙がっています。だから行政書士法は、外せない準備の対象です。2026年1月1日施行の改正後の条番号で覚えます。
- 情報通信・個人情報保護:分野名に「個人情報保護」とあります。だから個人情報の保護に関する法律は、準備の対象です。
- 文章理解:法律の知識ではなく、文章を読み取る力を見る分野です。
基礎知識には足切り(この点に届かないと、合計点が高くても不合格になる基準)があります。令和7年度の合否判定基準では24点以上でした。どの分野で点を取るかの考え方は基礎知識の記事で扱っています。
令和8年4月1日までに施行された主な改正(範囲に入る)
施行日は、e-Gov法令検索の改正履歴(いつ、どの改正が効き始めたかの記録)で確かめました。
| 法令 | 改正のもとになった法律 | 施行日 |
|---|---|---|
| 行政書士法 | 令和7年法律第65号 | 2026年1月1日 |
| 民法 | 令和6年法律第33号 | 2026年4月1日(主な部分) |
| 民法・行政不服審査法・地方自治法など | 令和4年法律第68号(刑法等の改正に伴う整理) | 2025年6月1日 |
- 行政書士法:1条が「目的」から「使命」に変わりました。業務の条文は、1条の2から1条の3に移りました。19条1項には「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」が加わっています。詳しくは行政書士法の改正の記事。
- 民法:協議上の離婚(話し合いで決める離婚)のとき、親権者(しんけんしゃ。子の世話や財産の管理をする親)を父母の「双方又は一方」と定める形になりました(819条1項)。また、財産分与を家庭裁判所に求められる期間が延びました。離婚の時から2年だったのが、5年です(768条2項)。詳しくは民法の勉強法の親族・相続の章。
- 拘禁刑:刑法などの改正で、多くの法律の「懲役(ちょうえき)」などが「拘禁刑(こうきんけい)」に置き換わりました。たとえば地方自治法14条3項です。条例に「二年以下の拘禁刑」などを科す決まりを設けられる、と定めています。古い教材に「懲役」とあれば、「拘禁刑」と読み替えます。
4月1日より後に施行された改正(範囲に入らない)
e-Govの改正履歴で、2026年4月2日以降に施行された(または施行予定の)主なものは次のとおりです。令和8年度の試験では、これらの改正前の条文で考えます。
| 法令 | 改正のもとになった法律 | 施行日 |
|---|---|---|
| 行政書士法 | 令和5年法律第63号 | 2026年5月21日 |
| 行政手続法・行政不服審査法 | 令和5年法律第63号 | 2026年5月21日 |
| 行政事件訴訟法 | 令和4年法律第48号(民事訴訟法等の改正) | 2026年5月21日 |
| 民法 | 令和8年法律第45号 | 2026年6月24日から段階的に |
| 行政手続法・行政不服審査法 | 令和8年法律第46号 | 2026年6月24日 |
| 個人情報の保護に関する法律 | 令和8年法律第56号 | 2026年7月17日から段階的に |
| 地方自治法 | 令和6年法律第65号の一部 | 2026年9月24日 |
この記事では、これらの改正の中身は扱いません。令和8年度の受験生が覚える必要はないからです。
ここで一つ、実際に困りやすい点があります。いまe-Gov法令検索で条文を開くと、出てくるのは「現在」の条文です。つまり、上の表の改正が入った後のものです。たとえば行政不服審査法の今の版は、2026年6月24日施行の改正が入った版です。令和8年度の対策で条文を確かめるときは、4月1日時点の版かどうかに気をつけてください。
また、一つの改正が何回かに分けて施行されることもあります。地方自治法がその例です。e-Govの改正履歴では、令和6年法律第65号による版が4つあります。2024年6月26日、2024年9月26日、2026年4月1日、2026年9月24日です。このうち4月1日までの3つは範囲に入り、9月24日の分は入りません。「同じ改正だから全部範囲」「全部範囲外」と決めつけないでください。施行日ごとに分けて見ます。
自分の教材と条文が範囲に合っているか、どう確かめるか
- 教材の奥付(おくづけ。本の最後の発行日などが書かれたページ)や、はしがきを見る。何年何月何日現在の法律に合わせて作ったかが書いてあります。令和8年4月1日以降の日付になっているかが目安です。
- 目印になる条文で確かめる。見るのは3か所です。行政書士法の業務が「1条の3」になっているか。民法768条2項の期間が「五年」になっているか。819条1項が「双方又は一方」になっているか。どれかが古ければ、その教材は令和8年4月1日より前の法律で作られています。
- e-Govで改正履歴を見る。法律ごとに、どの改正がいつ施行されたかが一覧で出ます。4月1日を境に、前と後を分けます。
- 迷ったら、4月1日時点の条文で答えを決める。新しい六法や「現行」の条文には、4月1日より後の改正が入っていることがあります。紙の六法を選ぶときの基準は六法の記事にまとめています。
令和9年度に受ける人は、何が変わるか
試験概要のルールが変わらなければ、令和9年度試験の基準日は令和9年(2027年)4月1日です。その場合、上の「範囲に入らない」表のうち、2027年4月1日までに施行された改正は、令和9年度には範囲に入ってきます。基準日は毎年の試験案内で示されます。令和9年度の試験案内が出たら(令和8年度は7月21日から配布)、まず基準日の一文を確かめてください。
来年に向けて今から始める人は、次の順で進められます。まず今年の教材で全体をつかみます。そして令和9年4月以降に、改正が入った箇所だけを新しい資料で差し替えます。
このサイトで次に読むなら、範囲に入る改正の中身を条文で確かめたい人は行政書士法の改正の記事をどうぞ。範囲の中で点の多い行政法から手をつけたい人は、行政法の勉強法が合います。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- 行政書士試験研究センター「令和8年度 試験案内」(出題の基準日、試験科目)
- 行政書士試験研究センター「令和8年度 試験案内」(PDF)
- 行政書士試験研究センター「試験概要」(毎年の基準日の定め、基礎知識の適用年度)
- 行政書士試験研究センター「令和7年度 合否判定基準」
- e-Gov法令検索「行政書士法」(改正履歴)
- e-Gov法令検索「民法」(改正履歴、768条2項)
- e-Gov法令検索「行政手続法」(改正履歴)
- e-Gov法令検索「行政不服審査法」(改正履歴)
- e-Gov法令検索「行政事件訴訟法」(改正履歴)
- e-Gov法令検索「地方自治法」(改正履歴、14条3項)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(改正履歴)
- 総務省「行政書士制度」(令和7年改正の施行日)
働く人の法律試験ノート