保証人の求償権:頼まれた保証人・頼まれていない保証人、払う前に求償できる場合と、通知を怠ったとき(民法459条〜465条)

ひとことで言うと、保証人が借金を代わりに払ったら、本人(主たる債務者)に「払った分を返して」と請求できます。これを求償権(きゅうしょうけん)といいます。本人に頼まれて保証人になった人は、払った額に利息や費用を加えて求償でき(民法459条)、弁済期が来たときなど3つの場合には、払う前にも求償できます(460条)。頼まれずに保証人になった人は、本人が利益を受けた限度でしか求償できません(462条)。自分の土地に抵当権を付けた物上保証人は、払う前の求償はできません(最高裁判例)。

この記事では、①払った後の求償(事後求償)の範囲、②払う前の求償(事前求償)、③通知を怠ったとき、④物上保証人、を扱います。保証と連帯保証の基本は保証の記事、払った保証人が債権者の抵当権を使えるか(弁済による代位)は弁済による代位の記事、連帯債務者の間の求償は連帯債務の記事に任せます。条文は、令和8年4月1日時点の民法を e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

登場人物は、お金を借りたひろきさん、ひろきさんに頼まれて保証人になったゆうこさん、貸したあおば銀行です。ほかに、頼まれずに保証人になったそうたさん、自分の土地に抵当権を付けたともこさんが、例で出てきます(架空の話です)。

人物立場したこと
ひろきさん主たる債務者あおば銀行から300万円を借りた(弁済期10月1日)
ゆうこさん委託を受けた保証人ひろきさんに頼まれて保証人になった
あおば銀行債権者ゆうこさんから300万円を受け取った
  1. 4月1日、ひろきさんがあおば銀行から300万円を借り、ゆうこさんが、ひろきさんに頼まれて保証人になった。
  2. 10月1日の弁済期に、ひろきさんは払わなかった。
  3. ゆうこさんは、払う前にひろきさんへ知らせたうえで、10月15日に300万円をあおば銀行に払った。
  4. ゆうこさんは、ひろきさんにいくら請求できるか。

ゆうこさんは、払った300万円に、10月15日以後の法定利息と、避けることができなかった費用その他の損害を加えて求償できます(459条1項・2項、442条2項)。また、10月1日の弁済期が来た時点で、ゆうこさんは払う前でも、ひろきさんに「あらかじめ」求償できました(460条2号)。

たとえるなら、頼まれた保証人は「頼まれて立て替えた人」で、頼まれていない保証人は「勝手に立て替えた人」です。頼まれた人のほうが手厚く返してもらえます。ただし本物のルールでは、頼まれていない人でも、本人の意思に反しているかどうかで、返してもらえる範囲がさらに分かれます。

条文ではこう決まっている

頼まれた保証人の事後求償(459条・459条の2)

  • 459条1項:委託を受けた保証人が、弁済その他自己の財産で債務を消滅させる行為(債務の消滅行為)をしたときは、そのために支出した財産の額(消えた主たる債務の額を超えるときは、消えた額)を求償できる。
  • 459条2項:442条2項を準用する。求償には、消滅行為の日以後の法定利息と、避けることができなかった費用その他の損害の賠償が含まれる。
  • 459条の2(弁済期前に払ったとき):主たる債務者が「その当時利益を受けた限度」で求償できる(1項)。求償には、弁済期以後の法定利息と、弁済期以後に払っても避けられなかった費用などが含まれる(2項)。求償権は、弁済期以後でなければ行使できない(3項)。

払う前の求償(460条・461条)

委託を受けた保証人は、次の3つのときは、主たる債務者に対して「あらかじめ」求償権を行使できます(460条)。

  1. 主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
  2. 債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許した期限の猶予は、保証人に対抗できない。
  3. 保証人が過失なく、債権者に弁済すべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。

主たる債務者が事前求償に応じて保証人に払う場合、債権者が全部の弁済を受けるまでは、保証人に担保を出させるか、自分を免責させるよう請求できます(461条1項)。主たる債務者は、供託をし、担保を出し、または保証人に免責を得させて、払う義務を免れることもできます(2項)。

頼まれていない保証人(462条)

  • 1項(意思に反しない):459条の2第1項を準用する。主たる債務者が「その当時利益を受けた限度」で求償できる。主たる債務者が、消滅行為の日以前に相殺の原因を持っていたと主張するときは、保証人は、その相殺で消えるはずだった債務の履行を債権者に請求できる。
  • 2項(意思に反する):主たる債務者が「現に利益を受けている限度においてのみ」求償できる。主たる債務者が、求償の日以前に相殺の原因を持っていたと主張するときは、保証人は、その分を債権者に請求できる。
  • 3項:弁済期前に払ったときは、弁済期以後でなければ求償権を行使できない(459条の2第3項の準用)。

462条1項が準用するのは459条の2の「第1項」だけなので、頼まれていない保証人の求償には、459条2項のような法定利息・費用の上乗せはありません。460条の事前求償も、委託を受けた保証人だけの規定です。

通知を怠ったとき(463条)

  • 1項(保証人の事前の通知):委託を受けた保証人が、主たる債務者にあらかじめ通知しないで払ったときは、主たる債務者は、債権者に対抗できた事由(相殺など)を保証人に対抗できる。
  • 2項(主たる債務者の事後の通知):主たる債務者が払ったことを委託を受けた保証人に知らせなかったため、保証人が善意で払ったときは、保証人は自分の弁済を有効であったものとみなすことができる。
  • 3項(保証人の事後の通知):保証人が払った後に主たる債務者が払った場合、保証人が意思に反して保証をしていたとき、または保証人が払ったことを知らせなかったため主たる債務者が善意で払ったときは、主たる債務者は自分の弁済を有効であったものとみなすことができる。

物上保証人・共同保証人(351条・372条・465条)

他人の債務のために質権を設定した人は、その債務を弁済したり、質権の実行で物を失ったりしたときは、「保証債務に関する規定に従い」債務者に求償権を持ちます(351条)。372条がこれを抵当権に準用しているので、自分の土地に抵当権を付けた物上保証人も同じです。保証人が数人いて、一人が自分の負担部分を超えて払ったときの、保証人どうしの求償は465条です。

当てはまる例・当てはまらない例

立場払った後に求償できる範囲払う前の求償
委託あり(弁済期以後に払った)支出額(消えた額が上限)+法定利息・費用など(459条)460条の3つの場合にできる
委託あり(弁済期前に払った)当時利益を受けた限度。行使は弁済期以後(459条の2)同上
委託なし(意思に反しない)当時利益を受けた限度(462条1項)規定がない
委託なし(意思に反する)現に利益を受けている限度(462条2項)規定がない
物上保証人保証債務の規定に従う(351条・372条)できない(平成2年判決)

例1:物上保証人が払う前に求償したい(当てはまらない例)

ともこさんが、ひろきさんに頼まれて、ひろきさんの借金のために自分の土地に抵当権を付けたとします。弁済期が来ても、ともこさんは、払う前にひろきさんへ求償することはできません。最高裁判所第三小法廷平成2年12月18日判決(平成2年(オ)第801号)は、物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来しても、あらかじめ求償権を行使することはできないとしました。

判決の理由は、物上保証の委託は物権を設定する行為の委任にすぎず、債務を負担する行為の委任ではないこと、物上保証人は抵当不動産の価額の限度で責任を負うにすぎず、求償権の範囲はもちろんその存在すらあらかじめ確定できないことなどです。そのため、委託を受けた保証人の事前求償の規定(460条)を、物上保証人に類推適用することはできないとしています。

例2:「当時」と「現に」の違いを計算で確かめる(ひっかけやすい例)

そうたさんが、ひろきさんに頼まれずに、あおば銀行への300万円の借金を保証し、弁済期の後の5月1日に全額を払ったとします。7月1日に、そうたさんがひろきさんに求償しました。ひろきさんは、あおば銀行に50万円の預金(ひろきさんから銀行への債権)を持っていて、これで相殺できたと主張します。

場面ひろきさんの預金そうたさんの求償
意思に反しない保証(462条1項)払った5月1日に、すでにあった300万円-50万円=250万円。50万円は銀行に請求
意思に反しない保証(462条1項)6月1日に初めてできた300万円(「当時」=5月1日には相殺の原因がない)
意思に反する保証(462条2項)6月1日に初めてできた300万円-50万円=250万円(「求償の日以前」の相殺の原因)。50万円は銀行に請求

意思に反しない保証人は、払った時点(消滅行為の日以前)の事情で決まります。意思に反する保証人は、求償する時点(求償の日以前)までの事情で決まるので、払った後に本人が得た相殺の原因でも、求償の額が減ります。どちらの場合も、減った分は、相殺で消えるはずだった債務として、保証人が銀行に請求できます(459条の2第1項後段の準用・462条2項後段)。

例3:頼まれた保証人が、弁済期より前に払った(ひっかけやすい例)

ゆうこさんが、弁済期の10月1日より前の8月1日に、300万円を払ったとします。求償できるのは、ひろきさんがその当時利益を受けた限度で、求償権を使えるのは10月1日以後です(459条の2第1項・3項)。法定利息も、弁済期以後の分です(2項)。期限前に払えば、期限の前でも返してもらえる、とはなりません。

例4:知らせずに払った(当てはまる例)

ゆうこさんが、ひろきさんに知らせずに払い、ひろきさんは銀行に対して相殺できる債権を持っていたとします。ひろきさんは、その相殺をゆうこさんに対抗できます(463条1項前段)。この場合、ゆうこさんは、相殺で消えるはずだった債務の履行を銀行に請求します(同項後段)。冒頭の例で、ゆうこさんが払う前にひろきさんへ知らせていたのは、このためです。

似ているルールとの違い

求償の場面求償できる範囲条文
連帯債務者の間支出額のうち各自の負担部分に応じた額+法定利息など442条
委託を受けた保証人支出額(主たる債務者の負担として全額)+法定利息など459条
委託を受けない保証人当時または現に利益を受けている限度462条
共同保証人の間負担部分を超えて払った分465条

保証人と主たる債務者の間では、借金は本来、主たる債務者が全部負うものなので、保証人は払った全額を求償できます。連帯債務者どうしは、それぞれに負担部分があるので、負担部分に応じた額を求償します。連帯債務者の一人のために保証した人は、他の連帯債務者には、その負担部分についてだけ求償できます(464条)。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、保証が主な論点の問題は12問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では3問でした。ほかの論点が主な問題の中に、副の論点として含むものも5問あります。連帯債務が主な論点の問題は10問(直近10回で2問)です。求償だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 物上保証人も事前求償できる、とする形:できません(平成2年判決)。460条は委託を受けた保証人の規定です。
  • 頼まれていない保証人も事前求償できる、とする形:460条は「主たる債務者の委託を受けて保証をした場合」です。
  • 「当時」と「現に」を入れ替える形:意思に反しないときは当時利益を受けた限度、意思に反するときは現に利益を受けている限度です(462条)。
  • 期限前に払えばすぐ求償できる、とする形:弁済期以後でなければ行使できません(459条の2第3項)。
  • 保証人も負担部分だけ求償する、とする形:負担部分で分けるのは連帯債務者の間(442条)や共同保証人の間(465条)です。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
ともこさんは、ひろきさんに頼まれて、ひろきさんのあおば銀行からの借金のために自分の土地に抵当権を設定した。借金の弁済期が来たときは、ともこさんは、委託を受けた保証人と同じく、ひろきさんに対してあらかじめ求償することが認められる。

答え:✕ 分かれ目は、物上保証人に460条が及ぶかです。最高裁判所第三小法廷平成2年12月18日判決は、物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来しても、あらかじめ求償権を行使することはできないとしました。物上保証の委託は債務を負担する行為の委任ではなく、求償権の範囲も存在もあらかじめ確定できないからです。正しくは、ともこさんが求償できるのは、払ったか抵当権の実行で土地を失った後です(351条・372条)。委託を受けた保証人の事前求償(460条2号)と取り違えた文です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
そうたさんは、ひろきさんの意思に反してあおば銀行への借金300万円を保証し、弁済期の後の5月1日に全額を払った。ひろきさんが6月1日に銀行への50万円の預金債権を取得し、7月1日の求償の際にこれによる相殺を主張したので、そうたさんがひろきさんに求償できるのは250万円である。

答え:○ 分かれ目は、相殺の原因を見る時点です。意思に反して保証をした者は、主たる債務者が「現に利益を受けている限度においてのみ」求償でき、主たる債務者が「求償の日以前に」相殺の原因を有していたと主張するときは、その分を債権者に請求することになります(462条2項)。6月1日の預金は求償の日(7月1日)以前なので、求償は300万円-50万円=250万円で、50万円は銀行に請求します。払った5月1日の事情で決まると考えると✕に見えますが、それは意思に反しない保証人の「当時」の基準(462条1項)です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
ゆうこさんは、ひろきさんに頼まれて保証人になり、弁済期の2か月前に、あおば銀行へ300万円を全額払った。この場合、ゆうこさんは、払った日から、ひろきさんに対して求償権を行使することができる。

答え:✕ 分かれ目は、期限前に払ったときの行使の時期です。委託を受けた保証人が弁済期前に払ったときの求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ行使できません(459条の2第3項)。求償できる範囲も、主たる債務者がその当時利益を受けた限度です(同条1項)。正しくは、ゆうこさんが求償権を使えるのは弁済期以後です。弁済期の後に払った場合の459条の求償と取り違えた文です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。

まとめ

  • 委託を受けた保証人は、支出額(消えた額が上限)+法定利息・費用などを求償できる(459条・442条2項)。
  • 事前求償は委託を受けた保証人だけ。破産で配当に加入しない・弁済期にある・過失なく弁済を命じる裁判の3つ(460条)。
  • 期限前に払ったら、当時利益を受けた限度で、行使は弁済期以後(459条の2)。
  • 委託を受けない保証人は、意思に反しなければ「当時」、反すれば「現に」利益を受けている限度(462条)。
  • 物上保証人は保証債務の規定に従って求償するが、事前求償はできない(351条・372条、平成2年判決)。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の民法を確かめました。判例は、裁判所ウェブサイトで裁判年月日・法廷・事件番号・判示事項・裁判要旨を確かめ、判決全文で理由も確かめました。

このサイトで次に読むなら、個人の保証人を守るルールの記事です。保証人になる前と途中に、主たる債務者や債権者から受けられる情報提供を確かめられます。

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