ひとことで言うと、国土利用計画法(国土法)は、地価の上がり方に合わせて3つの区域を用意しています。規制区域では、土地の取引の契約の前に知事の許可が要り、許可のない契約は効力を生じません(14条)。注視区域(ちゅうしくいき)と監視区域では、契約の前に事前届出をし、届出から6週間は原則として契約を結べません(27条の4・27条の7)。どの区域でもない土地は、契約の後の事後届出(23条)です。
この記事では、3つの区域を「指定の要件・手続・面積・違反したとき」で並べ、ふつうの事後届出とどこが違うかを整理します。事後届出の面積と期限は国土法の届出の記事、事後届出がいるかの判定は20の事例の記事に任せます。どこが区域に指定されているかは、知事の指定で決まり、変わることがあるので扱いません。条文は、令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめています。
身近な例で考えると
登場人物は、土地を売るしおりさん、土地を買う不動産会社のみなとさん、もう一社の買い手のつばさ社です(架空の話です)。
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| しおりさん | 売る人 | 3,000平方メートルの土地を2つに分けて売る |
| みなとさん | 買う人 | 1,500平方メートルを買う |
| つばさ社 | 買う人 | 残りの1,500平方メートルを買う |
| 県知事 | 届出を受ける人 | 価格と利用目的を確かめる |
- しおりさんの土地は、市街化区域にあり、県知事が注視区域に指定した区域の中にある。
- しおりさんは、土地を1,500平方メートルずつに分け、みなとさんとつばさ社に、別々の売買契約で売ろうとしている。
- 1件ずつ見ると、市街化区域の線(2,000平方メートル)に届かない。しかし、売るしおりさんの側から見ると、合わせて3,000平方メートルのひとまとまりの土地(一団の土地)を手放すことになる。
- 注視区域では、売る側から見て一団の土地が線を超えれば、届出が要る。そこで、契約を結ぶ前に、しおりさんとみなとさん、しおりさんとつばさ社が、それぞれ市長を経由して県知事に届け出る。
- 届け出た日から数えて6週間は、契約を結べない。知事が「勧告しない」と通知してくれば、その時点で結べる。
- 知事は、予定の価格が近くの取引の価格に照らして著しく適正を欠くと認めるときなどは、契約の締結をやめるよう勧告できる。
同じ土地が、どの区域でもない場所にあったとしたらどうでしょう。ふつうの事後届出では、一団の土地かどうかを買う側(権利取得者)だけで見ます。みなとさんもつばさ社も1,500平方メートルしか手に入れないので、届出は要りません。
たとえると、事後届出は「買ったあとで、使い道を報告する」仕組みで、事前届出は「売り買いの前に、値段と使い道を見せて待つ」仕組みです。ただし本物のルールでは、事前届出をしても許可を受けるわけではありません。契約を止める強い効果があるのは、規制区域の許可だけです。
条文ではこう決まっている
だれが・どんなとき区域を指定するか(12条・27条の3・27条の6)
- 規制区域(12条):知事は、土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われ(そのおそれがあり)、地価が急激に上昇し(そのおそれがある)と認められる区域を、期間を定めて「指定するものとする」。都市計画区域の外では、その事態を緊急に除去しなければ適正な土地利用の確保が著しく困難となる区域に限る。
- 注視区域(27条の3):地価が一定の期間内に、社会的経済的事情の変動に照らして「相当な程度を超えて上昇し、又は上昇するおそれがある」ものとして国土交通大臣が定める基準に当たり、適正な土地利用の確保に「支障を生ずるおそれ」がある区域。知事は「指定することができる」。
- 監視区域(27条の6):地価が「急激に上昇し、又は上昇するおそれ」があり、適正な土地利用の確保が困難となるおそれがある区域。知事は「指定することができる」。
- 期間:規制区域は、公告の日から起算して5年以内(12条2項)。注視区域・監視区域にもこの項が準用されるので、同じく5年以内です。
- 指定の手続:注視区域と監視区域は、指定の前に、土地利用審査会と関係市町村長の意見を聴きます。規制区域は、指定の公告の日から2週間以内に、土地利用審査会の確認を求め、確認されなければ、指定は指定の時にさかのぼって効力を失います(12条6項〜9項)。
規制区域は「指定するものとする」、注視区域と監視区域は「できる」と、条文の言い方も違います。地価の上がり方の言葉は、注視区域が「相当な程度を超えて」、監視区域が「急激に」です。
契約の前の届出(27条の4・27条の7)
- だれが・いつ・どこへ:契約の当事者(売る側と買う側)が、あらかじめ、土地のある市町村の長を経由して、知事に届け出る(27条の4第1項)。
- やり直しの届出:届け出た予定対価(予定の価格)を変えるときも届出が要る。ただし、額を減らす変更は除かれる。取得後の利用目的を変えるときも同じ。
- 注視区域の面積:事後届出と同じ線(市街化区域2,000、そのほかの都市計画区域5,000、区域外10,000平方メートル)に満たない土地なら要らない。ただし、契約の当事者の「一方又は双方」が、その土地を含む一団の土地で線以上のものについて権利を移したり設定したりするときは要る(27条の4第2項1号)。
- 監視区域の面積:都道府県の規則で、事後届出の線に満たない範囲で定めた面積以上なら要る(27条の7第1項)。知事は、監視区域を指定するとき、この規則を定めなければならない(同条2項)。
- 要らない場合:民事調停による場合、当事者の一方か双方が国などの場合、そのほか政令で定める場合(27条の4第2項2号)。
- 6週間の待ち:届出をした日から起算して6週間を経過する日までは、その契約を結んではならない。ただし、勧告か、勧告しない旨の通知を受けたときは、この限りでない(27条の4第3項)。
勧告(27条の5・27条の8)
- 注視区域の勧告の理由(27条の5第1項):①予定対価が、近くの類似の土地の取引価格などに照らして著しく適正を欠く、②利用目的が土地利用基本計画などの計画に合わない、③利用目的が、公共施設の整備の予定や自然環境の保全に照らして明らかに不適当、のどれかに当たり、周辺の適正な土地利用に著しい支障があるとき。
- 中身と期限:知事は、土地利用審査会の意見を聴いて、契約の締結の中止などを勧告できる。勧告は、届出があった日から起算して6週間以内(同条2項)。勧告の必要がないと認めたときは、遅滞なく届け出た人に通知する(同条3項)。
- 従わないとき:事後届出の規定(25条〜27条)が準用され、知事は、勧告に従わなかったことを公表できる(26条)。
- 監視区域の勧告(27条の8):上の理由に加えて、売る人が売買などで手に入れてから政令で定める期間(2年を超えない範囲)のうちの届出で、その土地を自分で使わないまま移すなど、条文に並ぶ条件(27条の8第1項2号イ〜ヘ)のすべてに当たり、適正な地価の形成に著しい支障を及ぼすおそれがあるときも、中止などを勧告できる。
規制区域の許可(14条・19条)
- 規制区域の土地売買等の契約(対価のある所有権・地上権・賃借権などの移転や設定。予約を含む)は、当事者が知事の許可を受ける。予定対価の変更(減額を除く)や利用目的の変更も同じ(14条1項)。面積の線はない。
- 許可を受けないで結んだ契約は、その効力を生じない(14条3項)。
- 許可の申請をして不許可の処分を受けた人は、知事に、その権利を買い取るよう請求できる(19条1項)。
違反したとき(46条〜48条)
- 許可を受けないで契約を結んだ人:3年以下の拘禁刑(こうきんけい)か200万円以下の罰金(46条)。
- 事前届出をしないで契約を結んだ人:6か月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(47条2号)。
- 6週間の待ちの間に契約を結んだ人:50万円以下の罰金(48条)。
罰則があっても、事前届出をしなかった契約を無効にする定めは、国土法にはありません。契約の効力がなくなるのは、規制区域で許可を受けなかった場合(14条3項)です。
3つの区域と事後届出を1枚で比べる
| 区域 | 地価の要件・指定 | 手続 | 面積の線 |
|---|---|---|---|
| 規制区域 | 投機的取引の集中と急激な上昇。知事が指定するものとする | 契約の前に許可(当事者) | なし |
| 注視区域 | 相当な程度を超えた上昇。指定できる | 契約の前に届出(当事者)、6週間待つ | 事後届出と同じ。当事者の一方か双方で一団を見る |
| 監視区域 | 急激な上昇。指定できる | 契約の前に届出(当事者)、6週間待つ | 規則で事後届出より小さく |
| どれでもない区域 | 指定なし | 契約から2週間以内に届出(権利取得者) | 2,000・5,000・10,000㎡。取得者側で一団を見る |
| 区域 | 勧告の期限と中身 | 守らないと |
|---|---|---|
| 規制区域 | 勧告ではなく許可・不許可 | 契約は効力を生じない。罰則 |
| 注視区域 | 届出から6週間以内。契約の中止など | 罰則。契約を無効にする定めはない |
| 監視区域 | 同上。短期の転売なども理由になる | 罰則。契約を無効にする定めはない |
| どれでもない区域 | 届出から3週間以内。利用目的だけ | 罰則。契約は有効 |
当てはまる例・当てはまらない例
特に書いていないときは、土地は市街化区域にあり、当事者に国などはいないものとします。
例1:売る側が分けて売る(当てはまる例)
注視区域で、しおりさんが3,000平方メートルを1,500平方メートルずつ2社に売る。売る側の一団で線を超えるので、どちらの契約も事前届出が要ります。事後届出の数え方(買う側だけ)で考えると、届出は要らないと誤ります。
例2:小さな土地を1件だけ売る(当てはまらない例)
注視区域で、しおりさんが1,500平方メートルの土地だけを売り、買う側もまわりの土地を手に入れない。線に満たないので、事前届出は要りません。
例3:監視区域の小さな土地(ひっかけやすい例)
監視区域で、1,500平方メートルの土地を売る。仮に、県の規則で定めた面積が500平方メートルなら、2,000平方メートルに満たなくても、事前届出が要ります。監視区域の面積は、事後届出の線ではなく、規則で決まります。
例4:贈与(当てはまらない例)
注視区域で、しおりさんが3,000平方メートルの土地を親類に贈与する。事前届出の対象は、対価のある「土地売買等の契約」です(14条1項の言葉を使っています)。対価がないので届出は要りません。
例5:値下げの変更(当てはまらない例)
事前届出をした後で、予定の価格を下げることになった。額を減らす変更は、やり直しの届出から除かれています(27条の4第1項)。反対に、価格を上げるなら、契約の前にもう一度届け出ます。
例6:規制区域の小さな土地(当てはまる例)
規制区域で、100平方メートルの土地を売る。規制区域の許可には面積の線がないので、許可が要ります。許可がなければ契約は効力を生じません。
似ているルールとの違い
事前届出と事後届出は、名前が似ていても、数え方・待つ期間・勧告の中身が違います。届出の面積と2週間の期限そのものは国土法の届出の記事で確かめてください。
| 比べる点 | 事前届出(注視・監視) | 事後届出(23条) |
|---|---|---|
| 一団の土地の数え方 | 当事者の一方か双方 | 権利取得者だけ |
| 届け出た後 | 6週間は契約を結べない | 契約は届出の前に済んでいる |
| 勧告の期限 | 届出から6週間以内 | 届出から3週間以内 |
| 勧告の中身 | 契約の中止など。価格も理由になる | 利用目的の変更だけ |
法令上の制限には、ほかにも「許可か届出か」「前か後か」が分かれる手続があります。地区計画・盛土規制法・農地法と並べた一覧は、許可と届出の見分け方の記事にあります。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、国土利用計画法が主な論点の問題は38問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では10問でした。ほかの論点が主な問題に副の論点として含むものが3問あります。区域ごとの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。
- 一団の土地を買う側だけで見る形:注視区域・監視区域の事前届出は、当事者の「一方又は双方」で見ます。買う側だけで見るのは事後届出です。
- 監視区域も事後届出と同じ面積とする形:監視区域は、都道府県の規則で、事後届出の線より小さく決めます。同じ線なのは注視区域です。
- 6週間の数字を混ぜる形:「届出から6週間は契約できない」と「勧告は届出から6週間以内」は、どちらも6週間です。勧告か、勧告しない旨の通知を受ければ、待たずに契約できます。
- 届出をしない契約を無効とする形:契約が効力を生じないのは、規制区域で許可を受けなかった場合だけです。届出の違反は罰則です。
- 値下げにも届出が要るとする形:予定対価の変更で届出が要るのは、額を減らす場合を除いたときです。
- 区域の性格を入れ替える形:「急激に上昇」は監視区域と規制区域、「相当な程度を超えて上昇」は注視区域の言葉です。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
注視区域に指定された市街化区域内で、しおりさんは、自分の3,000平方メートルの一団の土地を1,500平方メートルずつに分け、みなとさんとつばさ社に、別々の売買契約で売ろうとしている。この場合、どちらの契約も、国土利用計画法の事前届出が要る。
答え:○ 分かれ目は、一団の土地をだれの側で見るかです。注視区域の事前届出は、面積が事後届出と同じ線(市街化区域は2,000平方メートル)に満たなければ要りませんが、当事者の「一方又は双方」がその土地を含む一団の土地で線以上のものについて権利を移すときは別です(国土利用計画法27条の4第2項1号)。売るしおりさんの側で3,000平方メートルになるので、どちらも届出が要ります。ふつうの区域の事後届出は、権利取得者の側だけで一団を見るので(23条2項1号)、その数え方を当てはめると✕に見えます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
監視区域内にある土地の売買で、契約の前に届出が要るのは、注視区域と同じく、市街化区域なら2,000平方メートル以上の土地の場合である。
答え:✕ 分かれ目は、監視区域の面積の決め方です。監視区域には注視区域の事前届出の規定が準用されますが、届出が要らない面積は、都道府県の規則で、事後届出の線(23条2項1号)に満たない範囲で定めます(国土利用計画法27条の7第1項)。正しくは、2,000平方メートルに満たなくても、規則で定めた面積以上なら届出が要ります。事後届出と同じ線を使うのは注視区域で、それと入れ替えた文です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
注視区域内の土地について事前届出をしたみなとさんは、知事から、勧告をしない旨の通知を受けた。この場合でも、みなとさんは、届出をした日から起算して6週間が過ぎるまでは、その売買契約を結ぶことができない。
答え:✕ 分かれ目は、6週間の待ちが終わる場面です。当事者は、届出をした日から起算して6週間を経過する日まで契約を結んではならないのが原則ですが、勧告か、勧告をしない旨の通知を受けたときは、この限りでありません(国土利用計画法27条の4第3項ただし書、27条の5第3項)。正しくは、通知を受けた時点で契約を結べます。「6週間」は、知事が勧告をする期限(27条の5第2項)にも出てくる数字で、待つ期間をそれと同じに考えた取り違えです。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。
まとめ
- 規制区域は契約の前に知事の許可。面積の線はなく、許可のない契約は効力を生じない(14条)。
- 注視区域・監視区域は契約の前に当事者が事前届出。届出から6週間は、勧告か通知を受けるまで契約できない(27条の4)。
- 注視区域の面積は事後届出と同じ線。ただし一団の土地は当事者の一方か双方で見る。監視区域の面積は都道府県の規則で小さく決める(27条の7)。
- 勧告は届出から6週間以内で、契約の中止なども勧告できる。従わなければ公表されうるが、契約を無効にする定めはない。
- 3つの区域とも指定するのは知事で、期間は5年以内。どの区域でもない土地は事後届出(23条)。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の国土利用計画法を確かめました。出題数は、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験問題を当サイトが数えたものです。
- e-Gov法令検索「国土利用計画法」(12条、14条、19条、23条、24条、26条、27条の3〜27条の8、46条〜48条)
- 一般財団法人 不動産適正取引推進機構(宅建試験の過去の問題。出題数は当サイトが公開問題から数えたもので、公式の内訳ではありません)
このサイトで次に読むなら、国土法の事後届出がいるかを20の事例で判定する記事です。区域・契約の種類・面積の順に判定する練習で、この記事の区域の判定がどこに入るかが分かります。
働く人の法律試験ノート