行政法の一問一答:ひっかけの形で解く○✕20問と、まちがえる理由の見分け方

この記事は、行政書士試験の行政法の○✕を20問、ひっかけの型ごとに並べた一問一答です。問題はすべて、このサイトのオリジナルです(過去問の文は使っていません)。正誤は、令和8年4月1日に施行されている法令で確かめています。

行政法の肢は、内容を理解していても「どの一語を入れ替えたか」で落とすことが多い分野です。そこで20問を、①期間・起算点、②主語・行き先、③義務・努力義務・規定なし、④例外の消去と創作、⑤似た制度の効果、の5つの型に分けました。20問のうち18問は、人物や役所が出てくる事例の形です。各問の解説は、1文目に「分かれ目」(正誤を決める一語)を書き、最後に取り違えやすい相手を示しています。

この20問の使い方

  1. 答えを見る前に、○か✕かを決める。✕なら「どの言葉を何に直せば正しくなるか」を一言で言ってみる。
  2. 答えを見て、正誤だけでなく、自分の言った直し方が解説の分かれ目と合っているかを確かめる。正解でも、理由が違ったらまちがえた問題として数える。
  3. まちがえた問題の型に印をつける。同じ型に2問以上あれば、記事の終わりの表で、その型の直し方を確かめる。

一問一答で鍛えられる力と、それだけでは足りない所は行政書士の一問一答の使い方の記事にまとめています。

型1:期間・起算点のすり替え(問1〜4)

数字そのものより、「いつから数えるか」を入れ替える型です。期間をまとめて見直すなら期間・数字の一覧が使えます。

問1(このサイトのオリジナル問題)
B県知事から、法律で再調査の請求ができると定められた処分を受けたAは、先に再調査の請求をし、棄却の決定を受けた。Aがその後に審査請求をするときの期間は、決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月である。

答え:✕ 分かれ目は、再調査の請求をした後の期間です。行政不服審査法18条1項は、審査請求の期間を原則3か月とし、かっこ書きで、再調査の請求をしたときは「決定があったことを知った日の翌日から起算して一月」としています。正しくは1か月です。3か月は、再調査の請求をしないで直接審査請求をするときの期間です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
C市の住民Dさんは、市長の公金の支出について住民監査請求をし、監査委員から監査の結果の通知を受けたが、不服である。Dさんが住民訴訟を起こせるのは、その通知があった日から30日以内である。

答え:○ 分かれ目は、住民訴訟の期間の起算点です。地方自治法242条の2第2項1号は、監査の結果に不服があるときは「通知があつた日から三十日以内」に訴えを起こすとしています。住民監査請求の「1年」(242条2項)と混ぜると✕に見えます。1年は監査請求をするまでの期間で、30日は訴訟を起こすまでの期間です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
E市議会が、市長の反対する条例の改正を議決した。市長がこの議決を再議に付すことができるのは、議決の送付を受けた日から10日以内である。

答え:○ 分かれ目は、再議の期間の起算点です。地方自治法176条1項は、異議のある議決は「議決の日」から10日以内に再議に付せるとしつつ、条例の制定・改廃と予算の議決は「その送付を受けた日」から数えるとしています。一律に議決の日から数えると考えると✕に見えます。議決が違法だと認めるときの再議(176条4項)は、長が再議に付さなければならない別の規定です。

問4(このサイトのオリジナル問題)
Fさんは、県知事の処分について審査請求をし、棄却の裁決を受けた。Fさんが処分の取消訴訟を起こす場合、出訴期間は、処分があったことを知った日から6か月で数える。

答え:✕ 分かれ目は、審査請求をした後の起算点です。行政事件訴訟法14条3項は、審査請求をした者については「裁決があつたことを知つた日から六箇月」としています。正しくは、裁決を知った日から6か月です。処分を知った日から数えるのは、審査請求をしないで訴えるとき(14条1項)です。

型2:主語・行き先のすり替え(問5〜8)

だれが・だれに・どこへ、の一語を入れ替える型です。行政不服審査法と行政事件訴訟法の主語の違いは行審法と行訴法の違いの記事で一覧にしています。

問5(このサイトのオリジナル問題)
G市長が、自治事務として、法律にもとづく処分をHさんにした。個別の法律に審査請求先の特別の定めはない。この場合、Hさんは、G市長に対して審査請求をする。

答え:○ 分かれ目は、処分庁に上級行政庁があるかです。行政不服審査法4条1号は、処分庁に上級行政庁がない場合は、処分庁に審査請求をするとしています。市長には上級行政庁がないので、市長自身が審査庁になります。県知事に出すと考えると✕に見えますが、県知事に出すのは、市町村長の法定受託事務の処分です(地方自治法255条の2第1項2号)。

問6(このサイトのオリジナル問題)
I県の職員Jさんが、公権力の行使にあたる職務中の軽い過失で、Kさんに損害を与えた。I県がKさんに賠償したときは、I県はJさんに求償できる。

答え:✕ 分かれ目は、求償できる過失の程度です。国家賠償法1条2項は、公務員に「故意又は重大な過失」があったときに限って、国や公共団体が求償できるとしています。正しくは、軽い過失のJさんには求償できません。会社が社員に求償する民法715条3項は、条文上こうした限定を置いていない点と取り違えないようにします。

問7(このサイトのオリジナル問題)
L県知事は、Mさんに対する営業停止処分の前に聴聞を行う。知事は、Mさんの妻であるL県の職員Nさんを、その聴聞の主宰者に指名することはできない。

答え:○ 分かれ目は、主宰者になれない人の範囲です。行政手続法19条2項2号は、当事者の「配偶者、四親等内の親族又は同居の親族」は聴聞を主宰できないとしています。県の職員なら指名できる(19条1項)と考えると✕に見えます。審査請求の審理員にも、なれない人の定めが別にあります(行政不服審査法9条2項)。

問8(このサイトのオリジナル問題)
O市の有権者が、市の事務の執行について監査を求める直接請求をする。有権者の総数の50分の1以上の連署を集め、その代表者から市長に対して請求する。

答え:✕ 分かれ目は、請求先です。地方自治法75条1項は、事務の監査の請求を、50分の1以上の連署で「監査委員に対し」するとしています。正しくは、市長ではなく監査委員に請求します。50分の1で長に請求するのは、条例の制定・改廃の請求(74条1項)です。

型3:義務・努力義務・規定なし(問9〜12)

「しなければならない」か「努めなければならない」か、そもそも規定がないかを入れ替える型です。行政手続法がどこまで地方公共団体に適用されるかは行政手続法の適用除外の記事で確かめられます。

問9(このサイトのオリジナル問題)
P県知事は、法律にもとづく飲食店の営業停止処分について、処分基準を定めていなかった。このこと自体が、行政手続法に違反する。

答え:✕ 分かれ目は、処分基準が義務か努力義務かです。行政手続法12条1項は、処分基準を定めて公にしておくよう「努めなければならない」としています。正しくは、定めていないことだけで同法違反にはなりません。申請に対する処分の審査基準は、定めるものとされ(5条1項)、原則として公にしておかなければなりません(5条3項)。

問10(このサイトのオリジナル問題)
国の出先機関の職員が、Qさんに口頭で行政指導をした。Qさんがその趣旨・内容・責任者を書いた書面を求めたときは、職員は、行政上特別の支障がない限り、交付しなければならない。

答え:○ 分かれ目は、口頭の行政指導でも書面の交付が義務になるかです。行政手続法35条3項は、口頭の行政指導で相手方から書面を求められたときは、行政上特別の支障がない限り交付しなければならないとしています。行政指導は従う義務のないお願いなので、書面も任意と考えると✕に見えます。その場で終わる行為を求めるものなどは除かれます(35条4項)。

問11(このサイトのオリジナル問題)
Rさんは、法律にもとづく届出を、形式上の要件をすべて満たした書面で、法令で定められた提出先の役所に出した。窓口の担当者が受理しないと言った場合でも、届出の義務は、書面が役所に届いた時に果たされたことになる。

答え:○ 分かれ目は、届出の義務がいつ果たされるかです。行政手続法37条は、形式上の要件に適合した届出は、提出先の機関の事務所に「到達したときに」義務が履行されたものとすると定めています。受理されないと届出にならないと考えると✕に見えます。役所の応答が必要な「申請」(2条3号)と取り違えないようにします。

問12(このサイトのオリジナル問題)
S市長は、違法な看板の除却をTさんに命じたが、Tさんは従わない。非常の場合ではないが、S市長は、電話で期限を告げて戒告し、その期限の後に代執行をした。戒告を口頭でした点は、行政代執行法に反しない。

答え:✕ 分かれ目は、戒告の方式です。行政代執行法3条1項は、相当の履行期限を定め、代執行をする旨を「予め文書で戒告しなければならない」としています。正しくは、戒告は文書でします。戒告などの手続を省けるのは、非常の場合や危険が切迫していて、手続をとる暇がないとき(3条3項)です。

型4:例外の消去と創作(問13〜16)

ただし書を消して言い切ったり、ありそうな例外を足したりする型です。

問13(このサイトのオリジナル問題)
Uさんが処分の取消訴訟を起こし、処分の執行で生じる重大な損害を避ける緊急の必要がある。この場合、執行の停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあっても、裁判所は、執行停止をすることができる。

答え:✕ 分かれ目は、執行停止ができない場合の定めです。行政事件訴訟法25条4項は、執行停止は「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるとき」はできないとしています。正しくは、この場合は執行停止をすることができません。2項の要件(重大な損害・緊急の必要)だけで決まると考えた取り違えです。

問14(このサイトのオリジナル問題)
V県知事は、法律にもとづき、Wさんに不利益処分をする。理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要があるときは、処分と同時に理由を示さなくてよいが、原則として処分後相当の期間内に理由を示さなければならない。

答え:○ 分かれ目は、例外の後にさらに義務が残るかです。行政手続法14条1項ただし書は差し迫った必要がある場合の例外を定め、2項は、その場合も、所在が分からなくなったときなどを除き、処分後相当の期間内に理由を示すとしています。例外なら理由は要らないと考えると✕に見えます。書面でする処分なら、理由も書面で示します(14条3項)。

問15(このサイトのオリジナル問題)
日本に住む外国人Xさんが、県警の警察官の違法な職務行為で損害を受けた。Xさんは、国籍に関係なく、国家賠償法にもとづいて県に賠償を求めることができる。

答え:✕ 分かれ目は、外国人が被害者のときの条件です。国家賠償法6条は、外国人が被害者である場合は「相互の保証があるときに限り」同法を適用するとしています。正しくは、Xさんの国が日本人に同じような賠償を認めているときに限られます。国籍に関係なく使える、という例外のない言い切りが誤りです。

問16(このサイトのオリジナル問題)
Y市長が処分をした際、審査請求先を誤って別の行政庁と教示した。Zさんが教示どおりその行政庁に審査請求書を出し、正しい審査庁に送付された。この場合、初めから正しい審査庁に審査請求がされたものとみなされる。

答え:○ 分かれ目は、誤った教示に従った人が救われるかです。行政不服審査法22条1項は、誤って教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、その行政庁が審査請求書を処分庁か審査庁となるべき行政庁に送付するとし、5項は、送付されたときは初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなすとしています。出し先をまちがえたら却下される、と考えると✕に見えます。

型5:似た制度の効果の入れ替え(問17〜20)

事情裁決と事情判決、却下と棄却、第三者効と拘束力のように、似た効果を入れ替える型です。

問17(このサイトのオリジナル問題)
取消訴訟で事情判決をするとき、裁判所は、判決の主文で処分が違法であることを宣言しなければならない。審査請求で事情裁決をするときは、審査庁は、裁決の主文で処分が違法または不当であることを宣言しなければならない。

答え:○ 分かれ目は、宣言する中身が「違法」だけか「違法又は不当」かです。行政事件訴訟法31条1項は事情判決で「違法であること」を、行政不服審査法45条3項は事情裁決で「違法又は不当であること」を、それぞれ主文で宣言するとしています。両方とも同じ言葉だと考えると、どちらかの文で迷います。取消訴訟は処分の違法を争う裁判なので、判決で宣言するのは「違法」だけです。

問18(このサイトのオリジナル問題)
AAさんは、審査請求の期間を過ぎてから審査請求をした。正当な理由もなかった。この場合、審査庁は、裁決で審査請求を棄却する。

答え:✕ 分かれ目は、却下と棄却の区別です。行政不服審査法45条1項は、法定の期間を過ぎた審査請求など不適法なものは「却下する」としています。正しくは却下です。棄却は、審査請求が適法でも理由がない場合です(45条2項)。

問19(このサイトのオリジナル問題)
BB社がCC県知事から受けた営業の許可について、近くの同業者DDさんが取消訴訟を起こし、許可を取り消す判決が確定した。この取消判決の効力は、訴訟の当事者でないBB社にも及ぶ。

答え:○ 分かれ目は、取消判決の効力が及ぶ範囲です。行政事件訴訟法32条1項は、処分を取り消す判決は「第三者に対しても効力を有する」としています。判決は当事者だけを縛る、という民事訴訟の考え方で✕に見えます。行政庁を縛る効力(拘束力、33条)とは別の効力です。

問20(このサイトのオリジナル問題)
処分を取り消す判決の拘束力は、その事件で処分をした行政庁にだけ及び、ほかの関係行政庁には及ばない。

答え:✕ 分かれ目は、拘束力が及ぶ行政庁の範囲です。行政事件訴訟法33条1項は、取消判決は、その事件について処分をした行政庁「その他の関係行政庁」を拘束するとしています。正しくは、関係行政庁にも及びます。申請の却下・棄却が取り消されたときに、改めて処分をする義務を負うのは処分をした行政庁です(33条2項)。この主語と混ぜないようにします。

まちがえた型から、次にやることを決める

型まちがえる理由直し方
1 期間・起算点数字だけで、いつから数えるかを覚えていない「何の期間で、いつから」をセットで言う
2 主語・行き先制度の中身は分かるが、主語の一語があいまい条文の主語と行き先に線を引いて読み直す
3 義務・努力義務「しなければ」と「努めなければ」を区別していない努力義務の条文だけを一覧にする
4 例外原則だけで覚え、ただし書や2項を落としているただし書の後に何が残るかまで読む
5 似た制度二つの制度を別々に覚え、並べていない似た二つを一つの表で比べる

同じ型に2問以上の✕があれば、その型の直し方を1週間続けてから、もう一度この20問を解きます。行政法全体の進め方は行政法の勉強法で説明しています。この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます(この20問とは別の問題です)。

まとめ

  • 行政法の肢は「どの一語を入れ替えたか」で落としやすい。型ごとに解くと、弱点の型が見える。
  • 期間は「いつから数えるか」まで覚える(再調査の請求の後は1か月、審査請求の後の取消訴訟は裁決を知った日から)。
  • 主語は、審査請求先・監査の請求先・聴聞の主宰者のように、条文の一語で決まる。
  • 処分基準は努力義務、口頭の行政指導の書面交付は義務。
  • 事情判決は「違法」、事情裁決は「違法又は不当」を宣言する。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年度試験の出題の基準日である令和8年4月1日時点の内容を、e-Gov法令検索で確かめています。