勉強中の眠気は、やる気や意志の弱さだけで起こるものではありません。昼食のあとの眠気は、昼食をとらなくても起こりうる体のリズムだとする研究があります。眠くなったら、自分を責めるより、やり方を切りかえます。
切りかえ方は3つです。①テキストを読む勉強を、○✕や問題を解く勉強に替える。②立ち上がって少し歩き、場所を変える。③それでも眠いなら、眠っている時間で10分前後の仮眠をとる。仮眠は30分を超えると、起きた直後にかえってぼんやりしやすくなります。この記事では、昼と夜の眠気について研究で分かっていることを紹介し、行政書士試験・宅建試験の勉強での使い方に落とします。カフェインや薬の使い方は扱いません。眠気だけでなく、仕事終わり・寝不足・読むだけの勉強で頭に入らないときの見直し方は勉強が頭に入らないときの記事にあります。
昼食のあとに眠くなるのはなぜか
昼食のあとの眠気は、英語で「ポストランチ・ディップ(昼食後の落ち込み)」と呼ばれます。これを整理したのが、Monk の2005年の論文です。
- 何が分かっているか:一部の作業と一部の人では、午後のなかばに作業の成績が落ちることがあり、それはその時間に眠りやすさが高まることと結びついています。この落ち込みは、昼食をとらず、時刻が分からない状態でも起こりうるもので、人の体のリズムに根っこがあるとされています。
- 食事との関係:炭水化物の多い昼食で、落ち込みは強まるとされています。また、極端な朝型の人で起こりやすい可能性も挙げられています。
ここから言えるのは、昼すぎの眠気は「たるんでいるから」ではなく、体のしくみとして起こりうるものだということです。昼休みや休日の午後に勉強していて眠くなるのは、ふしぎなことではありません。眠気が出ること自体は止められなくても、その時間に何をするかは選べます。
食事の中身を変えるかどうかは、健康にかかわることなので、この記事では勧めません。休日に昼食後すぐの時間に勉強の予定を入れているなら、その時間は「解く勉強」に回す、という予定の組み方で対応します。
夜に眠くなるときは、どう考えるか
働く人の勉強は、夜が中心になりがちです。朝から働いて帰ってきたあとなので、夜に眠いのは当然のことです。夜の眠気には、昼とは違う考え方をします。
- 寝る時刻が近いなら、仮眠より寝る:この記事で紹介する仮眠の研究は、主に昼の仮眠を調べたものです。夜遅くの仮眠は、その外にあります。当サイトの目安として、寝る時刻まで1時間を切っているなら、仮眠はとらず、その日の締めの勉強だけをして寝ます。
- 眠る時間を削って延ばさない:一晩眠らないと、次の日に新しいことを覚える力が落ちたという実験があります(Yoo ら、2007年)。勉強のために眠る時間を削るのは、覚えるという目的から見ても得ではありません。この研究と、寝る前の15分の使い方は寝る前の15分の記事で紹介しています。
- 眠い夜は、最低ラインに下げる:机に向かっても目が閉じそうな夜は、○✕を5問だけ、のように量を下げて終わりにします。下げ方は疲れた日・残業の日の最低ラインで扱っています。
ここからは、主に昼休みや休日の昼の眠気への対策を説明します。
対策1:読む勉強を、解く勉強に切り替える
テキストや条文を読んでいるときは、目で文字を追うだけでも時間が進みます。眠くなると、同じ行を何度も読んでいることに気づく、ということが起こります。一方、○✕を解く勉強は、1問ごとに「○か✕か」を決めて手を動かす必要があります。答えを出さないと先に進めません。
そこで、眠くなったら、その場で勉強の種類を替えます。これは研究で確かめられた眠気の対策ではなく、当サイトの組み立て方です。ただ、解く勉強は、見ないで思い出す練習として、それ自体に効果のあるやり方です。眠い時間を、読み返しより効果のある練習に回すことになります。
| 眠くなる前 | 眠くなったら |
|---|---|
| 行政手続法の条文を読む | 同じ範囲の○✕を10問解く |
| 宅建業法のテキストを読む | 読んだ所の数字を、見ないで紙に書く |
| 民法の判例の解説を読む | 判例の結論を、自分の言葉で1行ずつ書く |
このサイトの行政書士の○✕ドリルと宅建の○✕ドリルは、スマホで5分から解けます。眠くなったときの切りかえ先として、ブックマークしておくとすぐに始められます。
対策2:立ち上がって少し歩き、場所を変える
解く勉強に替えても眠いときは、いったん席を立ちます。トイレまで歩く、飲み物を取りに行く、窓ぎわの席に移る、といった短い動きで十分です。休日の家なら、机からダイニングのテーブルに移るだけでもかまいません。
1回の運動と頭の働きの研究をまとめた Chang ら(2012年)のメタ分析では、運動の直後に解いた課題でも、小さなプラスの効果が出ていました。ただし、この分析は、数分歩く程度の動きで眠気が取れるかを調べたものではありません。「少し歩けば眠気が取れる」とまでは言えないので、場所を変えるのは、研究の裏づけというより、手軽で損のない切りかえ方として勧めるものです。
対策3:短い仮眠をとる(何分がよいか)
切りかえても眠気が取れないなら、短く眠ってしまうほうが早いこともあります。仮眠の長さを比べた実験に、Brooks と Lack(2006年)があります。
- どんな実験か:ふだんよく眠れていて、昼寝の習慣のない若い大人24人が、前の晩の睡眠を約5時間に減らしたうえで、午後3時に仮眠をとりました。眠った時間を5分・10分・20分・30分に分け、仮眠なしの場合と比べました。そのあと3時間、眠気や作業の成績を調べています。
- 何が分かったか:5分では、仮眠なしとあまり差がありませんでした。10分の仮眠は、起きてすぐにすべての測定でよくなり、効果は長いもので155分続きました。20分の仮眠は、起きて35分ほどたってからよくなりました。30分の仮眠は、起きた直後に眠気と成績がかえって悪くなる時間があり(睡眠慣性(すいみんかんせい)と呼ばれる、寝起きのぼんやりです)、よくなったのはそのあとでした。著者たちは、10分がもっとも効果的な長さだったとまとめています。
Lack が加わったもう一つの論文(Lovato と Lack、2010年。仮眠の研究を整理した総説)も、5〜15分の短い仮眠はすぐに効果が出て1〜3時間ほど続き、30分を超える仮眠は寝起きのぼんやりのあとに効果が出る、と整理しています。昼すぎの早い時間が仮眠に向くことも書かれています。ただし著者たち自身が、研究がさらに積み重なるまでは結論を慎重に受け取るよう書いています。
11の研究(参加者381人)をまとめた Dutheil ら(2021年)のメタ分析では、昼の仮眠のあとに頭の働きがよくなり、とくに眠気の少なさ(覚醒度)で効果がはっきりしていました。記憶の課題でのはっきりした差は出ていません。仮眠の長さは平均で約55分と長めで、この分析では長さによる違いは見られませんでした。研究はすべて実験室の条件で行われ(そのうち1つは職場の条件の組も含みます)、著者たちは、職場で仮眠を取り入れる前に、実際の職場での研究が必要だとしています。
仮眠をとるときの手順
研究で「10分」とされているのは、実際に眠っている時間です。横になってから眠るまでにも時間がかかるので、次のようにします。アラームの分数は、研究をもとにした当サイトの目安です。
- アラームを15〜20分後にかける。眠れなくても、その時間で起きる。
- 昼休みなら、机に伏せるか、いすにもたれて目を閉じる。
- 起きたら、すぐに○✕を5問解く。頭が働きだしたかを確かめる。
- まだぼんやりするなら、読む勉強ではなく、解く勉強を続ける。
昼休みの仮眠は、勉強の時間をその分減らします。昼休みの中で、仮眠と○✕の時間をどう分けるかは、働く人の1日の勉強の流れの例を参考にしてください。休日の昼に仮眠をとる場合も、長く眠ってしまうと午後の勉強が始めにくくなります。アラームは同じようにかけます。
眠気がずっと続くときは
ここまでの対策は、ふつうの昼すぎや夜の眠気を想定しています。次のようなときは、勉強のやり方の問題ではない可能性があります。医師に相談してください。
- 夜に十分眠っているつもりなのに、昼の強い眠気が何週間も続く。
- 会議中や運転中など、眠ってはいけない場面で眠ってしまう。
- 家族などから、眠っているときのいびきや呼吸の止まりを指摘された。
眠気のほかに、スマホの通知や机の上の物も、集中を切らす原因になります。勉強の環境の整え方は集中できる環境の作り方で扱っています。
今日からやること
- 眠くなったら、自分を責めずに、読む勉強を○✕や問題を解く勉強に替える。
- それでも眠いときは、席を立って少し歩き、場所を変える。
- 昼の仮眠は、アラームを15〜20分後にかけ、起きたらすぐ○✕を5問解く。
- 寝る時刻が近い夜は、仮眠をとらず、締めの勉強だけをして寝る。
- 強い眠気が何週間も続くときは、医師に相談する。
参考にした研究・資料(2026年10月確認)
- Monk, T. H. (2005). The post-lunch dip in performance. Clinics in Sports Medicine, 24(2), e15–e23. https://doi.org/10.1016/j.csm.2004.12.002
- Brooks, A., & Lack, L. (2006). A brief afternoon nap following nocturnal sleep restriction: Which nap duration is most recuperative? Sleep, 29(6), 831–840. https://doi.org/10.1093/sleep/29.6.831
- Lovato, N., & Lack, L. (2010). The effects of napping on cognitive functioning. Progress in Brain Research, 185, 155–166. https://doi.org/10.1016/B978-0-444-53702-7.00009-9
- Dutheil, F., Danini, B., Bagheri, R., Fantini, M. L., Pereira, B., Moustafa, F., Trousselard, M., & Navel, V. (2021). Effects of a short daytime nap on the cognitive performance: A systematic review and meta-analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(19), 10212. https://doi.org/10.3390/ijerph181910212
- Yoo, S.-S., Hu, P. T., Gujar, N., Jolesz, F. A., & Walker, M. P. (2007). A deficit in the ability to form new human memories without sleep. Nature Neuroscience, 10(3), 385–392. https://doi.org/10.1038/nn1851
- Chang, Y. K., Labban, J. D., Gapin, J. I., & Etnier, J. L. (2012). The effects of acute exercise on cognitive performance: A meta-analysis. Brain Research, 1453, 87–101. https://doi.org/10.1016/j.brainres.2012.02.068
働く人の法律試験ノート