勉強が頭に入らないとき:仕事終わり・寝不足・読むだけの勉強を分けて見直す(研究から)

勉強が頭に入らないとき、原因はやる気や頭のよさだけではありません。当サイトでは、原因を次の3つに分けて考えます。①寝不足が続いている、②仕事終わりで疲れている、③読むだけの勉強で終わっている。どれに当たるかで、今夜やることが変わります。

①については、寝床にいる時間を毎晩6時間以下に削り続けると、眠気の感じ方はあまり増えないまま、成績が落ち続けたという実験があります。寝る時間を削って勉強を増やすと、かえって頭に入らない時間を増やしてしまうことがあります。この記事では、3つの見分け方と、それぞれの対処を、行政書士試験・宅建試験の勉強の場面で説明します。カフェインや薬の使い方は扱いません。

頭に入らないとき、まず何を見分けるか

3つの原因は重なることもあります。次の問いに順に答えると、どこから手をつけるかが決まります。問いと対処は、研究と既存の記事をもとにした当サイトの組み立てです。

原因見分ける問い今夜やること
①寝不足が続いているこの1週間、ふだんより短い睡眠の夜が何日もあったか勉強を短く切り上げ、いつもの時刻に寝る
②仕事終わりの疲れ休日の昼なら頭に入る内容か読む勉強をやめ、○✕など解く勉強に替える
③読むだけで終わっているテキストを閉じて、今読んだ所を一言で言えるか読んだ範囲の問題を解き、言えなかった所だけ読み直す

①に当てはまるなら、①を先にします。睡眠が足りないまま②や③の工夫を重ねても、本人が気づかないうちに成績が落ちている可能性があるからです(次の節の研究)。①に当てはまらず、休日なら頭に入るなら②、休日でも同じなら③を疑います。

寝不足が続くと、なぜ頭に入りにくいのか

働きながら勉強する人の寝不足は、一晩徹夜するより、「少し短い睡眠が何日も続く」形が多いはずです。その形を調べた実験が、Van Dongen ら(2003年)です。

  • どんな実験か:健康な21〜38歳の大人48人が、ベッドにいる時間を一晩4時間・6時間・8時間のどれかにして、14日間続けました。比べるため、3晩続けて眠らない条件も調べています。起きている間の注意を保つ課題や計算の課題などと、眠気の感じ方を測りました。
  • 何が分かったか:4時間と6時間の条件では、すべての課題で成績の低下が日を追って積み重なり、短いほど大きくなりました。6時間以下の条件では、最大で、2晩続けて眠らなかったときに相当する低下になっていました。
  • 本人の感じ方:眠気の感じ方は、削り始めの日に上がったあとは少ししか増えませんでした。著者たちは、参加者が成績の低下が進んでいることにほとんど気づいていなかったとしています。

ここで大事なのは、「そこまで眠くないから大丈夫」は当てにならないということです。6時間は「眠った時間」ではなく「ベッドにいた時間」なので、実際の睡眠はそれより短くなります。また、この実験は実験室で決められた時間だけ眠った人のもので、ふだんの生活でどのくらい眠れば足りるかには個人差があります。

では、寝不足でとくに崩れやすいのは何でしょうか。短い断眠(まったく眠らない時間が48時間まで)の実験をまとめた Lim と Dinges(2010年)のメタ分析では、70の論文・147の課題を調べ、影響がいちばん大きかったのは、単純な注意を保ち続ける課題での「注意の途切れ」でした。推論の課題の正確さへの影響は小さく、はっきりした差になっていませんでした。

勉強に当てはめると、寝不足の夜にまず崩れやすいのは、長い条文や解説を集中して読み続けるような作業だと読めます。「同じ行を何度も読んでいる」「読んだはずの所が残っていない」と感じるのは、このためかもしれません。ただし、この研究はまったく眠らない状態(48時間まで)を調べたもので、毎晩少しずつ短い睡眠とは条件が違い、試験勉強そのものを調べたものでもありません。なお、眠らないと翌日に新しいことを覚える力が落ちたという実験もあり、寝る前の15分の記事で紹介しています。

寝不足の日の勉強は、意味がないのか

「寝不足で勉強しても意味がない」とまでは言えません。Lim と Dinges のまとめでも、寝不足の影響の大きさは作業の種類で違っていました。崩れやすいのは、同じ作業に長く注意を保ち続けることです。そこで寝不足の日は、勉強をやめるか続けるかの二択ではなく、短く区切れる作業に替えると考えます。

  • 短く区切る:○✕を5問ずつ解き、そのつど答え合わせをする。1回ごとに区切りがあるので、注意が途切れても、どこまでできたかが分かります。
  • 新しい範囲を始めない:行政法の新しい章や、宅建の法令上の制限の新しい法律に入るのは、よく眠れた日に回す。
  • 翌日に確かめる:寝不足の日に解いた問題のうち、✕だったものに印をつけ、翌日に解き直す。寝不足の日の答えを、そのまま「覚えた」と数えない。

この組み立ては研究そのものではなく、研究をもとにした当サイトの目安です。寝不足の日を減らすことが先で、寝不足の日のやり方は、避けられない日のための備えです。

寝る時間を削って勉強する前に、何を考えるか

試験が近づくと、「寝る時間を1時間削れば、その分勉強できる」と考えたくなります。研究から言えるのは、睡眠を削る夜が続くと、本人が気づかないまま頭に入りにくい状態が積み重なるかもしれない、ということです。当サイトでは、次の順に考えることを勧めます。

  1. 削る前に、ほかの時間から探す:通勤・昼休み・家事の合間など、短い時間を○✕に回せないかを先に見る。1日の組み立ての例は働く人の1日の勉強の流れにあります。
  2. 削るなら期間を区切る:「模試の前の3日だけ」のように終わりを決める。何週間も続けない。
  3. 削った日は読む勉強をしない:寝不足で崩れやすいのは集中して読み続ける作業なので、その日は解く勉強と解き直しにする。
  4. 削った分を週末に戻す:週末に勉強を詰めこむ前に、まず睡眠を戻す日を決めておく。

勉強の量を減らしてよい、という意味ではありません。行政書士試験も宅建試験も、合格に要る勉強の量は変わりません。限られた時間のうち、頭に入る時間を増やすための順番です。

仕事終わりに頭に入らないときは、何を変えるか

睡眠は足りているのに、仕事から帰ったあとだけ頭に入らないなら、②の疲れを疑います。仕事で頭を使ったあとに、新しい内容を読んで理解するのは、一日のうちでいちばん重い作業になりがちです。ここからは研究で確かめた対策ではなく、当サイトの組み立てです。

仕事終わりに頭に入らない作業替える作業
行政手続法の新しい章を読む前に読んだ章の○✕を解く
民法の判例の解説を読み込む前の週にまちがえた肢だけを解き直す
宅建業法のテキストを最初から読む数字(期間・面積など)を見ないで紙に書く

新しい内容を読む作業は、休日や朝など、頭が働く時間に移します。仕事終わりの時間は「すでに読んだことを思い出す時間」にすると、頭に入らない時間を減らせます。眠気が強いときの切りかえ方は勉強中に眠くなるときの記事、疲れが特に強い日に量を下げるやり方は疲れた日・残業の日の最低ラインで扱っています。

読むだけの勉強になっていないか

休日の頭が働く時間でも頭に入らないなら、③のやり方を見直します。読み返すより、見ないで思い出す練習のほうが残りやすいことは、学習の研究で繰り返し示されています(くわしくは読むより思い出すほうが覚える)。読むだけの勉強は、読んでいる間は分かった気がしても、あとで思い出せないことが起こります。

見分け方は簡単です。1つの節を読み終えたら、テキストを閉じて、次の3つを紙に書いてみます。

  • この節のルールを一言で言うと何か(例:「審査請求は、処分を知った日の翌日から3か月」)。
  • 例外は何か。
  • 似た制度と、どこが違うか。

書けなかった所が、頭に入っていない所です。そこだけを読み直し、もう一度閉じて書きます。読む時間は短くなりますが、思い出して書けた所は、読んだだけの所より残りやすくなります。

それでも頭に入らない日が続くときは

頭に入らない日があるのは、働きながら勉強している人にとってふつうのことです。1日や2日でやり方を全部変える必要はありません。表の3つの問いで原因を見分け、1週間ほど対処を続けてから様子を見ます。

眠っても疲れが取れない、気分の重さや体の不調が何週間も続く、といったときは、勉強のやり方だけで乗り切ろうとせず、医療機関や相談窓口に相談してかまいません。そういう時期は、勉強を「○✕を5問だけ」のように小さくして、つなぐだけにしてかまいません。

今日からやること

  • 頭に入らない夜は、表の3つの問いに順に答え、原因を1つ決める。
  • この1週間に短い睡眠の夜が続いていたら、今夜は勉強を短く切り上げて、いつもの時刻に寝る。
  • 仕事終わりの時間は、新しい内容を読まず、前に読んだ所の○✕と解き直しに回す。
  • 1つの節を読んだら、テキストを閉じて「ルール・例外・似た制度との違い」を紙に書く。
  • 寝る時間を削るときは、終わりの日を先に決め、削った日は読む勉強をしない。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

  • Van Dongen, H. P. A., Maislin, G., Mullington, J. M., & Dinges, D. F. (2003). The cumulative cost of additional wakefulness: Dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep, 26(2), 117–126. https://doi.org/10.1093/sleep/26.2.117
  • Lim, J., & Dinges, D. F. (2010). A meta-analysis of the impact of short-term sleep deprivation on cognitive variables. Psychological Bulletin, 136(3), 375–389. https://doi.org/10.1037/a0018883
  • e-Gov法令検索「行政不服審査法」第18条(審査請求の期間の例):https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC0000000068

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です