持分会社(もちぶんがいしゃ)とは、合名会社・合資会社・合同会社の3つをまとめた呼び名です(会社法575条1項)。3つの違いは、社員(しゃいん=会社にお金などを出した持ち主。従業員の意味ではありません)の責任の重さです。全員が無限責任なら合名会社、無限責任と有限責任がまざれば合資会社、全員が有限責任なら合同会社です。
株式会社との大きな違いは、持ち主と経営する人が原則として同じことです。社員は原則として自分で業務を執行し、会社を代表します。そのかわり、持分を人にゆずる、定款を変えるといった大事なことには、原則として社員全員の同意が要ります。この記事は、持分会社の3つの種類と、株式会社との違いを扱います。株式会社の設立や株式は、株式会社の設立の記事と株式の記事で扱っています。
身近な例で考えると:3人で始めるカフェ
なおきさん、ゆかさん、しんじさんの3人が、カフェを始めるために会社をつくります。
- 3人で定款をつくり、全員が署名して、本店の所在地で設立の登記をする。これで会社が成立する(575条1項・579条)。
- 3人とも「出したお金の範囲でしか責任を負わない」形にしたいので、全員を有限責任社員とする。これは合同会社です(576条4項)。会社の名前は「そらカフェ合同会社」。
- 合同会社なので、設立の登記をするまでに、出資するお金を全額払い込む(578条)。
- 定款に特に決めがないので、3人ともが業務を執行し、会社を代表する。業務は3人の過半数で決める(590条・599条1項)。
- 2年後、しんじさんが引っ越すので、持分を友人に売りたい。ほかの2人全員の承諾が要る(585条1項)。
もし、なおきさんだけが「会社の借金を全部背負ってもよい」と考え、無限責任社員になるなら、無限と有限がまざるので合資会社になります(576条3項)。全員が無限責任社員なら合名会社です(576条2項)。
たとえるなら、株式会社は「株という券を持つ人が多数いて、運営は雇った店長(取締役)に任せる店」、持分会社は「仲間うちで出し合い、自分たちで切り盛りする店」です。ただし本物のルールでは、持分会社も定款で業務を執行する社員を一部に絞れますし(591条)、株式会社も株主が取締役を兼ねることがあります。
条文ではこう決まっている
3つの種類と社員の責任(576条・578条・580条)
- 576条2項〜4項:合名会社は社員の全部を無限責任社員、合資会社は一部を無限責任社員・その他を有限責任社員、合同会社は全部を有限責任社員とする旨を定款に書く。
- 576条1項6号:定款には社員の出資の目的と価額などを書く。有限責任社員の出資の目的は「金銭等に限る」。
- 578条:合同会社の社員になろうとする人は、設立の登記をする時までに、出資の全額を払い込むか、全部を給付する。
- 580条1項:社員は、会社の財産で債務を完済できないときなどに、連帯して会社の債務を弁済する責任を負う。
- 580条2項:有限責任社員は、出資の価額(すでに会社に履行した分を除く)を限度として責任を負う。
業務の執行と代表(590条・591条・594条・595条・598条・599条)
- 590条:社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する。社員が2人以上なら、業務は社員の過半数で決める。
- 591条1項:業務を執行する社員を定款で決めたときは、その社員の過半数で決める。
- 594条1項:業務を執行する社員が競業をするには、ほかの社員の全員の承認が要る(定款で別に定められる)。
- 595条1項:業務を執行する社員が会社と取引するなど利益が相反する取引をするには、ほかの社員の過半数の承認が要る(定款で別に定められる)。
- 598条1項:法人が業務を執行する社員になったときは、その職務を行う人を選び、ほかの社員に通知する。
- 599条:業務を執行する社員は会社を代表する。定款などで代表社員を決めることもできる。代表社員は、業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を持つ。
持分の譲渡・退社・定款の変更(585条〜612条・637条〜641条)
- 585条1項・2項:持分の譲渡には、ほかの社員の全員の承諾が要る。ただし、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾で譲渡できる(定款で別に定められる)。
- 587条1項:会社は自分の持分を譲り受けることができない。
- 606条:存続期間を定款で決めていないときなどは、各社員は事業年度の終わりに退社できる。6か月前までに予告する。やむを得ない事由があれば、いつでも退社できる。
- 607条1項:定款で決めた事由、総社員の同意、死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判、除名などで退社する。
- 608条1項:社員が死亡したとき、相続人が持分を受け継ぐことを定款で決められる。
- 611条1項:退社した社員は、出資の種類を問わず、持分の払戻しを受けられる。
- 612条:退社した社員は、退社の登記をする前に生じた会社の債務について、それまでの責任の範囲で弁済する責任を負う。この責任は、登記の後2年以内に請求や請求の予告をしない債権者に対しては、登記の後2年を経過した時に消える。
- 637条:定款の変更は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意による。
- 638条・639条1項:定款の変更で、ほかの種類の持分会社になれる。合資会社の有限責任社員が退社して無限責任社員だけになったときは、合名会社になる定款の変更をしたものとみなす。
- 641条:社員が欠けたこと、総社員の同意などで解散する。
3つの種類を表で見分ける
| 種類 | 社員の責任 | 有限責任社員の出資 |
|---|---|---|
| — | — | — |
| 合名会社 | 全員が無限責任 | いない |
| 合資会社 | 無限責任と有限責任がまざる | 金銭等に限る |
| 合同会社 | 全員が有限責任 | 金銭等に限る。登記までに全額 |
無限責任社員は、労務(働くこと)や信用を出資の目的にすることも禁じられていません。条文で「金銭等に限る」とされているのは、有限責任社員だけです(576条1項6号)。合同会社は全員が有限責任なので、設立の登記までに全額を払い込む決まりがあり(578条)、会社の財産を確保しています。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例(業務を執行しない有限責任社員の譲渡):合資会社で、業務を執行しない有限責任社員が持分をゆずるとき、業務を執行する社員の全員の承諾があれば足ります(585条2項)。業務を執行しない社員全員の承諾までは要りません。
- 当てはまらない例(会社が持分を買い取る):そらカフェ合同会社が、しんじさんの持分を会社自身で買い取ることはできません(587条1項)。株式会社が一定の手続で自己株式を取得できるのとは違います。
- 当てはまる例(法人の社員):別の会社が、そらカフェ合同会社の業務を執行する社員になることもできます。そのときは、職務を行う人を選び、ほかの社員に通知します(598条1項)。
- ひっかけやすい例(死亡と相続):社員が死亡すると、原則として退社になり(607条1項3号)、相続人には持分の払戻しが問題になります。相続人が社員の地位を受け継ぐのは、定款でそう決めたときです(608条1項)。
- ひっかけやすい例(合資会社の変身):合資会社の有限責任社員が全員退社して、無限責任社員だけが残ると、合名会社になる定款の変更をしたものとみなされます(639条1項)。解散するわけではありません。
- ひっかけやすい例(社員が1人もいない):社員が欠けたことは、持分会社の解散の事由です(641条4号)。
似ているルールとの違い:株式会社と並べると
| 比べる点 | 株式会社 | 持分会社 |
|---|---|---|
| — | — | — |
| 業務を執行する人 | 取締役(株主総会で選ぶ) | 社員が原則として自分で |
| 持ち分をゆずる | 株式は自由が原則 | 他の社員全員の承諾が原則 |
| 定款の変更 | 株主総会の特別決議など | 総社員の同意が原則 |
| 会社から抜ける | 株を売る(退社の制度はない) | 退社して持分の払戻し |
もう一つ、取引の承認の違いも取り違えやすいところです。株式会社では、取締役の競業取引も利益相反取引も、同じ機関(株主総会、取締役会設置会社では取締役会)が承認します。持分会社では、競業はほかの社員の全員の承認(594条)、利益相反取引はほかの社員の過半数の承認(595条)と、必要な数が違います。株式会社の側のルールは、取締役の義務と責任の記事で扱っています。
試験ではここをまちがえやすい
持分会社で取り違えやすいのは、株式会社との違いと、「全員」と「過半数」の使い分けです。
- 種類と責任の入れ替え:「合同会社の社員は無限責任」「合資会社は全員が有限責任」とする形。
- 出資の目的:「有限責任社員も労務を出資できる」とする形。有限責任社員は金銭等に限られます。
- 承諾の数:持分の譲渡は全員の承諾(585条1項)、業務の決定は過半数(590条2項)、競業は全員の承認(594条)、利益相反は過半数の承認(595条)。
- 業務を執行しない有限責任社員の譲渡:承諾が要るのは「業務を執行する社員の全員」です。
- 退社の予告:事業年度の終わりに退社するには、6か月前までの予告が要ります。やむを得ない事由があれば、いつでも退社できます。
- 退社後の責任:退社の登記の前に生じた債務の責任は残ります。消えるのは、登記後2年以内に請求などをしない債権者に対してです。
- 自己持分の取得:持分会社は自分の持分を譲り受けられません。
会社法全体の中で持分会社をどこまでやるかは、商法・会社法は捨てていいかの記事で配点と合わせて考えてください。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
なおきさんが無限責任社員、ゆかさんが有限責任社員となる合資会社を設立する。定款で、ゆかさんの出資の目的を、カフェで料理をつくる労務とすることができる。
答え:✕ 分かれ目は、有限責任社員の出資の目的です。576条1項6号は、定款に書く社員の出資の目的について、「有限責任社員にあっては、金銭等に限る」としています。正しくは、ゆかさんの出資は金銭等に限られます。労務を出資できる余地があるのは無限責任社員のほうで、二人の責任の種類を入れ替えると○にしてしまいます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
そらカフェ合同会社の業務を執行する社員なおきさんが、自分の土地を会社に売る。定款に別段の定めがなければ、ほかの社員の過半数の承認を受ければ足りる。
答え:○ 分かれ目は、利益相反取引と競業で承認の数が違うことです。595条1項は、業務を執行する社員が自己のために会社と取引をしようとするときは、その社員以外の社員の過半数の承認を受けるとしています。持分の譲渡(585条1項)や競業(594条1項)と同じく全員が必要だ、と考えると✕に見えます。全員の承認が要るのは、会社と同じ種類の商売をする競業のほうです。
問3(このサイトのオリジナル問題)
合名会社の社員しんじさんが退社し、その登記がされた。しんじさんは、退社の登記の前に生じた会社の債務だけでなく、登記の後2年以内に生じた会社の債務についても、従前の責任の範囲で弁済する責任を負う。
答え:✕ 分かれ目は、退社した社員が責任を負う債務の範囲です。612条1項は、退社した社員は「その登記をする前に生じた」会社の債務について、従前の責任の範囲で弁済する責任を負うとしています。正しくは、責任を負うのは退社の登記の前に生じた債務だけです。「2年」は、その責任が消える時期の定め(612条2項。登記後2年以内に請求や請求の予告をしない債権者に対しては、登記後2年を経過した時に消える)で、責任を負う債務の範囲ではありません。持分を全部ゆずった社員にも、登記前の債務について同じような責任があります(586条)。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「会社法」で続けて解けます。
まとめ
- 持分会社=合名(全員無限)・合資(無限と有限)・合同(全員有限)。有限責任社員の出資は金銭等に限る。合同会社は登記までに全額。
- 社員が原則として業務を執行し、代表する。業務の決定は過半数。
- 持分の譲渡・定款の変更は原則として全員。競業は全員の承認、利益相反は過半数の承認。
- 退社は事業年度の終わりに6か月前の予告で(やむを得ない事由ならいつでも)。死亡は退社、相続は定款で決めたとき。
- 退社後も、登記前の債務の責任は残り、登記後2年で消える。会社は自分の持分を譲り受けられない。
次に読むなら、株式会社の機関の記事がおすすめです。持分会社では社員がそのまま経営しますが、株式会社では株主総会・取締役・監査役に役割が分かれます。比べると両方の仕組みが覚えやすくなります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「会社法」(第575条、第576条、第578条〜第581条、第583条、第585条〜第588条、第590条、第591条、第594条、第595条、第598条、第599条、第604条、第606条〜第608条、第611条、第612条、第637条〜第639条、第641条を確認。令和8年4月1日時点の条文)
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