仮換地が指定されたら:使う土地・売る土地・抵当権・建物を建てるときはどうなるか

仮換地(かりかんち)が指定されると、土地を「使う」場所と、土地を「持っている」場所が分かれます。使う(住む・建てる・貸す)のは仮換地、売る・抵当に入れる・登記するのは従前の宅地(じゅうぜんのたくち=もとの自分の土地)です。仮換地の指定で動くのは、使う権利だけだからです(土地区画整理法99条1項)。

この記事では、1人の土地の持ち主の話で、仮換地が指定されてから換地処分までの間に「何を、どの土地で、だれの許可を受けて行うか」を1行ずつ当てはめます。区画整理の全体(施行者、組合の設立、換地処分の効果)は、土地区画整理法をわかりやすくで説明しています。

身近な例で考えると

ある市の住宅地で、組合が区画整理をしています。

人物立場土地
あきこさん従前の宅地の持ち主甲地を持つ。仮換地は乙地
だいきさん乙地の持ち主乙地を持つ。自分の仮換地は丙地
まなぶさん買主あきこさんから買う
みなと銀行貸し手あきこさんにお金を貸す
  1. 組合は、あきこさんの甲地の仮換地として、だいきさんの持っている乙地を指定した。効力が生じる日は4月1日と通知された。
  2. 4月1日から、あきこさんは乙地を使う。甲地は使えない。
  3. 乙地の持ち主のだいきさんは、4月1日から乙地を使えない。だいきさんは、自分の仮換地の丙地を使う。
  4. あきこさんは、みなと銀行からお金を借り、甲地に抵当権を設定して、甲地に登記した。
  5. あきこさんは、甲地をまなぶさんに売り、甲地について所有権移転の登記をした。まなぶさんが使うのは乙地。
  6. まなぶさんは、乙地に家を建てたい。換地処分の公告まではこの区域の建築に76条の許可がいるので、市長の許可を受けてから建てる。

たとえるなら、仮換地は工事のあいだの「仮の席」です。席を替わっても、出席簿(登記簿)に書いてある名前と番号は元のまま。だから名前の書き換え(売買)や、出席簿への書き込み(抵当権の登記)は、元の番号のほうで行います。ただし本物のルールでは、仮の席に座る人は、もとの席でできた使い方と「同じ使用又は収益」ができる、と条文が決めています。

条文ではこう決まっている

  • 指定(98条):施行者は、換地処分の前に、工事や換地計画のため必要なら仮換地を指定できる(1項)。従前の宅地を借りている人などがいれば、その人のために仮換地の中の土地や部分も指定する(1項)。組合が施行者なら、指定の前に総会などの同意を得る(3項)。指定は、仮換地の位置・地積と、指定の効力が生じる日を、従前の宅地と仮換地の持ち主に通知して行う(5項)。
  • 使う土地(99条1項):従前の宅地を権原にもとづいて使えた人は、指定の効力が生じる日から換地処分の公告の日まで、仮換地を、従前の宅地と同じように使用・収益できる。そのかわり、従前の宅地は使用・収益できない。
  • 使い始める日(99条2項):仮換地に使用・収益の障害になる物があるなど特別の事情があるときは、施行者は、仮換地を使い始められる日を、指定の効力が生じる日と別に定められる。
  • 仮換地の持ち主(99条3項):仮換地を権原にもとづいて使えた人は、指定の効力が生じる日(使い始める日を別に定めたときはその日)から換地処分の公告の日まで、その仮換地を使用・収益できない。
  • 空いた土地(100条の2):仮換地の指定で、だれも使えなくなった従前の宅地は、換地処分の公告の日まで施行者が管理する。
  • 補償(101条):使い始める日を別に定めたために従前の宅地を使えなくなった人(1項)、99条3項で仮換地を使えなくなった人(2項)が通常受ける損失は、施行者が補償する。
  • 建築などの制限(76条1項):事業の公告の後、換地処分の公告がある日までは、施行地区内で、事業の障害になるおそれがある土地の形質の変更や建築物の新築・改築・増築などをするには、知事等の許可がいる。市の区域内で個人・組合・区画整理会社が施行する事業などでは、その市の長の許可。
  • 換地処分の後(104条1項):換地は、換地処分の公告の日の翌日から従前の宅地とみなされる。

何を、どの土地で行うか(1行ずつ当てはめる)

したいことどの土地で理由・根拠
住む・使う・人に貸す仮換地(乙地)99条1項
従前の宅地を使うできない99条1項
売る(所有権を移す)従前の宅地(甲地)所有権は動かない。99条が移すのは使用収益だけ
抵当権を設定し登記する従前の宅地(甲地)同じ。登記簿も甲地のまま
仮換地に家を建てる仮換地(76条の許可を受けて)76条1項
乙地の持ち主が乙地を使うできない99条3項

換地処分の公告があると、換地は翌日から従前の宅地とみなされます(104条1項)。たとえば乙地がそのまま換地になれば、甲地についていた所有権や抵当権は、翌日から乙地の上のものとして扱われます。工事中に甲地で登記した売買や抵当権が、ここで新しい土地につながるわけです。

なお、「売買や抵当権の設定は従前の宅地で行う」と直接書いた条文はありません。99条1項が移すのは使用・収益だけで、乙地は指定の後もだいきさんの土地のままです。だから、あきこさんが売ったり抵当に入れたりできるのは自分の甲地で、登記も甲地にする、という整理になります。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例:あきこさんが乙地を駐車場にして、近所の人に月決めで貸す。→「収益」にあたり、仮換地でできます(99条1項)。
  • 当てはまらない例:4月1日の後に、あきこさんが甲地に物置を置こうとする。→従前の宅地はもう使えません(99条1項)。甲地は、だれかの仮換地になっていればその人が使い、だれも使わなければ施行者が管理します(100条の2)。
  • ひっかけやすい例:乙地に、だいきさんの古い倉庫が残っていて、すぐには使えない。施行者は、乙地を使い始められる日を9月1日と別に定めた。→4月1日から8月31日まで、あきこさんは甲地も乙地も使えません。この間の損失は、施行者が補償します(99条2項・101条1項)。
  • ひっかけやすい例:甲地を借りて店を開いていたともやさんがいる場合。→施行者は、乙地の中に、ともやさんの賃借権の目的となる土地や部分を指定します(98条1項)。ともやさんは、そこで店を続けます。
  • 当てはまらない例:まなぶさんが乙地に家を建てるのに、組合の許可をもらった。→許可するのは組合ではありません。この事業は市の区域内で組合が施行しているので、市長の許可です(76条1項)。

ほかの分野ではどう扱われるか

仮換地を使っている間の固定資産税は、仮換地について、それに対応する従前の土地の所有者として登記されている人を所有者とみなして課税されます(地方税法343条7項)。この事例なら、あきこさんが乙地を使えるようになった後の年度の乙地の固定資産税は、甲地の登記上の所有者(売買の登記の後ならまなぶさん)に課されます。だいきさんではありません。固定資産税の台帳と手続きは固定資産税の台帳と手続きで扱っています。

抵当権そのもののルール(効力の範囲・順位)は抵当権をわかりやすくで説明しています。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の宅建試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、土地区画整理法が主な論点の問は40問で、40回すべてに1問ずつ出ていました。直近10回も毎回1問で、問番号は平成30年度だけ問21、ほかの9回は問20でした(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。仮換地は、使う土地と処分する土地を取り違えないよう、区別して覚えます。

  • 処分を仮換地でするとする型:売買・抵当権の設定・登記は従前の宅地で。仮換地で行うのではない。
  • 処分もできなくなるとする型:従前の宅地は「使えない」だけで、売ることはできる。
  • 仮換地の持ち主も使えるとする型:仮換地の持ち主は、指定の効力が生じる日(または別に定めた日)から使えない(99条3項)。
  • 使い始める日を別に定めたら従前の宅地を使えるとする型:従前の宅地は、指定の効力が生じる日から使えない。その間の損失は補償。
  • 76条の許可権者を施行者とする型:知事等(市の区域で個人・組合・区画整理会社などが施行するときは市長)。施行者は意見を聴かれる側。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
組合施行の区画整理で、あきこさんの甲地の仮換地として、だいきさんの乙地が指定された。この場合、乙地の所有者であるだいきさんは、指定の効力が生じる日から換地処分の公告がある日まで、乙地を使用し収益することができない。

答え:○ 分かれ目は、仮換地とされた土地の持ち主が、自分の土地を使えるかどうかです。仮換地について権原にもとづき使用・収益できる者は、指定の効力が生じる日(使い始める日を別に定めたときはその日)から換地処分の公告がある日まで、その仮換地を使用・収益できません(土地区画整理法99条3項)。持ち主なのだから使える、と考えると✕にしてしまいます。だいきさんが使えなくなって損失を受ければ、施行者が補償します(101条2項)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
問1の指定で、乙地に障害となる物件があったため、施行者は、乙地を使い始められる日を、指定の効力が生じる日より後に別に定めた。この場合、あきこさんは、その日までの間は、従前の宅地である甲地を引き続き使用することができる。

答え:✕ 分かれ目は、従前の宅地が使えなくなる時点です。従前の宅地を使えた人は、指定の効力が生じる日から、従前の宅地を使用・収益できなくなります(99条1項)。使い始める日を別に定められるのは仮換地の側の話で(99条2項)、従前の宅地の使用がそれまで延びるわけではありません。正しくは、その間あきこさんは甲地も乙地も使えず、通常生ずべき損失を施行者が補償します(101条1項)。仮換地の使用開始日と、従前の宅地の使用停止日を同じ日と取り違えた形です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
問1の区画整理は、市の区域内で組合が施行している。指定の後、あきこさんから甲地を買ったまなぶさんが、仮換地の乙地で、事業の施行の障害となるおそれがある建築物の新築をしようとするときは、施行者である組合の許可を受けなければならない。

答え:✕ 分かれ目は、76条の許可をするのがだれかです。換地処分の公告がある日までの施行地区内で、事業の施行の障害となるおそれがある建築物の新築などをするには、許可がいります。許可するのは、国土交通大臣が施行する事業なら大臣、それ以外は都道府県知事で、市の区域内で個人・組合・区画整理会社が施行する事業などでは、その市の長です(土地区画整理法76条1項)。正しくは、まなぶさんは組合ではなく市長の許可を受けます。組合は、許可の前に意見を聴かれる側です(76条2項)。仮換地を指定し、工事を進める施行者が許可もする、と取り違えた形です。

まとめ

  • 指定の効力が生じる日から換地処分の公告の日まで、使うのは仮換地。従前の宅地は使えない。
  • 売買・抵当権の設定・登記は従前の宅地で行う。所有権は動かない。
  • 仮換地の持ち主は、その仮換地を使えない。使い始める日を別に定めたときは、その間どちらも使えず、損失は施行者が補償。
  • 仮換地に建物を建てるには、換地処分の公告まで76条の許可(知事等。市の区域の組合施行などは市長)。
  • 換地は公告の翌日から従前の宅地とみなされる。固定資産税は、仮換地を従前の土地の登記上の所有者のものとみなして課す。

法令上の制限の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。次に読むなら、土地区画整理法をわかりやすくで、換地処分の公告の「当日の終わり」と「翌日」の違いを確かめるのがおすすめです。仮換地のあとに来る場面で、同じ問の別の肢として並びやすい所です。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です