市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)は、「市街化を抑制すべき区域」です(都市計画法7条3項)。建物や街が広がるのを、おさえる区域です。そのため、宅建試験の法令上の制限では、法律ごとに「調整区域だけ扱いが違う」ルールがいくつもあります。
ひとことで言うと、調整区域では開発許可は面積にかかわらず必要(ただし農林漁業用の建物と農家の住宅などは不要)、開発区域の外で建物を建てるにも知事の許可がいります。用途地域は原則として定めません。国土法の事後届出は5,000平方メートル以上、農地法の市街化区域の届出の特例は使えません。
この記事は、1つの区域を軸に、各法律のルールを横に並べるものです。区域区分そのものは都市計画区域と区域区分、開発許可の面積と例外の全体は開発許可をわかりやすくで説明しています。
身近な例で考えると
愛知県のある市の郊外、田んぼと集落が広がる市街化調整区域での話です。
| 人物 | 立場 | やりたいこと |
|---|---|---|
| りょうさん | 農家 | 畑のそばに自分の家を建てる |
| かおりさん | 会社員 | 安い土地を買って家を建てる |
| たくやさん | 商店の店主 | 集落の中の宅地に店を建てる |
- りょうさんは、農業を営む人の住む家を建てるため、2,000平方メートルの土地を造成する。調整区域でも、農業を営む人の居住用の建物のための開発行為は、開発許可がいらない。
- かおりさんは、田んぼを買って自宅を建てたい。農地を宅地にするので、まず農地法5条の許可がいる。調整区域なので、農業委員会への届出だけで済ませる特例は使えない。造成をするなら、面積にかかわらず開発許可もいる。
- たくやさんは、すでに平らな宅地に店を建てる。造成をしないので開発行為ではない。それでも調整区域の開発区域の外なので、建てる前に知事の許可(43条)がいる。
たとえるなら、調整区域は「原則として建物を増やさない、静かなまま残す所」です。ただし本物のルールでは、「何も建てられない」わけではありません。農業のための建物や、条文の基準に合う建物には、許可が出る道が用意されています。
条文ではこう決まっている
都市計画法:区域と用途地域
- 市街化区域は「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」、市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」(7条2項・3項)。
- 市街化区域には少なくとも用途地域を定め、市街化調整区域には「原則として用途地域を定めないものとする」(13条1項7号)。
- 市街地開発事業(土地区画整理事業など)は、市街化区域か、区域区分が定められていない都市計画区域の中で定める(13条1項13号)。調整区域には定めません。
- 地区計画は、調整区域でも定められる。その場合は、周辺の市街化を促進することがないなど、計画的な市街化に支障がないように定める(13条1項15号イ)。
都市計画法:開発許可と建築の許可
- 面積の例外がない:開発許可がいらない小さな規模の例外(29条1項1号)は、市街化区域(1,000平方メートル未満)、区域区分のない都市計画区域と準都市計画区域(3,000平方メートル未満)だけです(施行令19条1項)。調整区域は入っていません。
- 農林漁業の例外(29条1項2号):市街化調整区域・区域区分のない都市計画区域・準都市計画区域では、農業・林業・漁業の用に供する政令で定める建築物、またはこれらの業務を営む者の居住用の建築物のための開発行為は、許可がいらない。市街化区域はこの号に入っていません。
- 公益上必要な建築物(29条1項3号):駅舎、図書館、公民館、変電所などは、区域を問わず許可がいらない。
- 許可の基準が1段多い(34条):調整区域の開発行為は、33条の基準に合うほか、34条の各号のどれかに当たらないと許可されない。たとえば、周辺の住民の日常生活に必要な物品を売る店舗(1号)、調整区域でとれた農産物の処理・貯蔵・加工に必要な建物(4号)、地区整備計画が定められた地区計画の区域で、その計画に合う建物(10号)など。
- 開発区域の外での建築(43条1項):何人も、調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域では、知事の許可を受けなければ、29条1項2号・3号の建築物以外の建築物を新築できない。改築や用途の変更で、それ以外の建築物にすることもできない。都市計画事業として行うもの、非常災害の応急措置、仮設建築物などは除かれます(同項ただし書)。
ほかの法律
- 国土利用計画法23条2項1号:事後届出がいらない面積は、市街化区域は2,000平方メートル未満、市街化区域を除く都市計画区域は5,000平方メートル未満、それ以外は1万平方メートル未満。調整区域は「市街化区域を除く都市計画区域」なので、5,000平方メートル以上で届出がいります(一団の土地の扱いは別)。
- 農地法4条1項7号・5条1項6号:市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会に届け出れば、4条・5条の許可がいらない。調整区域の農地は、この特例がなく、都道府県知事等の許可がいります。
- 土地区画整理法:土地区画整理事業は「都市計画区域内の土地」で行う(2条1項)。都道府県・市町村が施行できるのは「施行区域の土地」(3条4項)で、施行区域は、都市計画法12条2項により土地区画整理事業について都市計画に定められた区域です(2条8項)。市街地開発事業は調整区域には定めない(都市計画法13条1項13号)ので、調整区域の土地で都道府県・市町村が施行することはありません。一方、個人・組合・区画整理会社の施行(3条1項〜3項)には、都市計画区域内であること(2条1項)のほかに「施行区域の土地」という限定がありません。「調整区域では区画整理は一切できない」と覚えると、言い過ぎになります。
市街化区域と並べると違いが見える
| ルール | 市街化区域 | 市街化調整区域 |
|---|---|---|
| 用途地域 | 少なくとも定める | 原則として定めない |
| 開発許可の面積 | 1,000㎡以上で必要 | 面積にかかわらず必要 |
| 農家の住宅の開発 | 1,000㎡以上なら許可必要 | 許可不要 |
| 開発区域外の建築 | 43条の許可なし | 43条の許可が必要 |
| 国土法の事後届出 | 2,000㎡以上 | 5,000㎡以上 |
| 農地の転用・転用目的の売買 | 農業委員会に届出で足りる | 知事等の許可 |
| 市街地開発事業 | 定められる | 定めない |
表の「農家の住宅」の行は、逆転して見えるので注意します。街にしていく市街化区域のほうが、農家の住宅でも許可がいります。市街化区域では農業の建物を特別扱いする理由がなく、ふつうの面積の基準(1,000平方メートル)で判断するからです。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:調整区域で、会社が分譲住宅のために300平方メートルの造成をする。→小さくても開発許可がいります(29条1項1号の例外が調整区域にない)。
- 当てはまらない例:調整区域で、町が図書館を建てるために造成する。→公益上必要な建築物として、開発許可はいりません(29条1項3号)。
- ひっかけやすい例:調整区域で、農家が、この調整区域でとれた野菜を加工する工場を建てる。→「農業の用に供する建築物」(29条1項2号)とは別に、農産物の加工に必要な建物は34条4号の「許可できる」場合として書かれています。許可がいらないのではなく、許可を受けて建てる側です。
- ひっかけやすい例:調整区域で、4,000平方メートルの土地を1回の売買で買った(一団の土地でもない)。→国土法の事後届出はいりません(5,000平方メートル未満)。市街化区域なら届出がいる面積です。
- 当てはまらない例:調整区域の畑を、耕作を続ける人に売る。→農地のまま権利を動かすので農地法3条の許可(農業委員会)。3条には、もともと市街化区域の届出の特例がありません。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の宅建試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、開発許可が主な論点の問は56問で、40回すべてに出ていました。国土利用計画法は38問(37回)、農地法は40問(40回)で、どちらも直近10回は毎回出ています(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。調整区域は、これらの問の中で「区域を入れ替える」材料として出てくる区域です。
- 面積の例外を調整区域に広げる型:「調整区域でも1,000平方メートル未満なら開発許可不要」は誤り。
- 農家の住宅の区域を入れ替える型:許可不要は調整区域・非線引き区域・準都市計画区域。市街化区域は入らない。
- 開発行為がなければ自由とする型:調整区域の開発区域の外では、造成をしなくても、建物の新築に43条の許可がいる。
- 用途地域を「定められない」と言い切る型:条文は「原則として定めない」。
- 国土法の面積の取り違え:調整区域は5,000平方メートル。2,000平方メートルは市街化区域、1万平方メートルは都市計画区域の外。
- 農地法の特例を調整区域に広げる型:届出で足りるのは市街化区域の4条・5条だけ。
地区計画が調整区域で定められる条件と、地区整備計画で定められない事項は、地区計画をわかりやすくで整理しています。農地法の3条・4条・5条の違いは農地法をわかりやすく、届出の面積と一団の土地は国土利用計画法の届出で確かめてください。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
市街化調整区域内で、農業を営むりょうさんが、自分が住む家を建てるために2,000平方メートルの開発行為をする。この場合、りょうさんは開発許可を受ける必要はない。
答え:○ 分かれ目は、区域と建物の目的の組み合わせです。市街化調整区域・区域区分のない都市計画区域・準都市計画区域では、農業などを営む者の居住用の建築物のための開発行為は、面積にかかわらず開発許可がいりません(都市計画法29条1項2号)。「調整区域は面積にかかわらず許可が必要」とだけ覚えていると✕にしてしまいます。同じ家でも市街化区域なら2号に入らず、1,000平方メートル以上なので許可がいります。
問2(このサイトのオリジナル問題)
会社員のかおりさんは、市街化調整区域内の田を、自宅を建てる目的で買うことにした。この場合、あらかじめ農業委員会に届け出れば、農地法5条の許可を受ける必要はない。
答え:✕ 分かれ目は、田がある区域です。農業委員会への届出で5条の許可がいらなくなるのは、市街化区域内にある農地の場合です(農地法5条1項6号)。正しくは、市街化調整区域の田を転用目的で買うには、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(5条1項)。市街化区域の届出の特例を、調整区域に広げた取り違えです。4条(自分の農地の転用)の特例も同じく市街化区域だけです(4条1項7号)。
問3(このサイトのオリジナル問題)
たくやさんは、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域にある平らな宅地に、造成をしないで店舗を新築する。この場合でも、たくやさんは、原則として都道府県知事の許可を受けなければならない。
答え:○ 分かれ目は、開発行為がなくても許可がいる区域かどうかです。市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域では、知事の許可を受けなければ、29条1項2号・3号の建築物以外の建築物を新築できません(都市計画法43条1項)。造成をしないので開発許可(29条)はいらない、だから許可は不要、と考えると✕にしてしまいます。指定都市・中核市では、許可するのは市長です(29条1項で「都道府県知事」に含めている)。
まとめ
- 市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」。用途地域は原則として定めない。市街地開発事業は定めない。地区計画は条件つきで定められる。
- 開発許可は面積にかかわらず必要。農林漁業用の建物と農家の住宅、公益上必要な建物は不要。許可には34条の基準も満たす。
- 開発区域の外で建物を新築するには、43条の知事の許可。
- 国土法の事後届出は5,000平方メートル以上。農地法の市街化区域の届出の特例は使えない。
法令上の制限の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。次に読むなら、開発許可をわかりやすくで、区域ごとの面積の例外を市街化区域・非線引き区域・準都市計画区域・都市計画区域外まで広げて確かめるのがおすすめです。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。
- e-Gov法令検索「都市計画法」(7条、13条、29条、34条、43条)
- e-Gov法令検索「都市計画法施行令」(19条)
- e-Gov法令検索「国土利用計画法」(23条)
- e-Gov法令検索「農地法」(3条、4条、5条)
- e-Gov法令検索「土地区画整理法」(2条、3条)
- 不動産適正取引推進機構「宅建試験の問題及び正解番号表」(出題数を数えるのに使った過去の試験問題)
働く人の法律試験ノート