借家の更新と終わり方:期間満了の通知・解約の申入れ・正当事由・法定更新

借家(建物の賃貸借)は、貸主が何もしなければ続いていく契約です。期間を決めた借家では、期間が終わる1年前から6か月前までに「更新しない」と通知しないと、同じ条件で更新したものとみなされ、更新後は「期間の定めがない」契約になります(借地借家法26条1項)。通知をしても、期間が終わった後に借主が住み続け、貸主が遅滞なく異議を述べなければ、やはり更新です(26条2項)。期間の定めがない借家を貸主から終わらせるには、解約の申入れをして6か月を待ちます(27条1項)。貸主の通知と申入れには、どちらも正当の事由が要ります(28条)。

この記事では、2年契約のアパートを例に、「いつ・だれが・何をすれば終わるか」を時系列で追います。借地と借家の全体の比べ、定期建物賃貸借の要件は借地借家法の記事で扱っています。

身近な例で考えると:りくさんのアパートの2年契約

登場人物を紹介します。

人物立場したこと
なつみさん貸主(アパートの持ち主)自分の子を住ませたくなった
りくさん借主2026年4月1日から2年の契約で部屋を借りた
そうたさん転借人(りくさんの弟)なつみさんの承諾を得て、りくさんから部屋を借りた

契約は2026年4月1日から2年なので、2028年3月31日に期間が終わります。「満了の1年前から6か月前まで」は、この例ではおよそ2027年4月から2027年9月末までです。なつみさんの動き方で、結果が次のように分かれます。

  1. なつみさんが何もしなかった。→ 2028年4月1日から、同じ条件で更新したものとみなされます。ただし、更新後は期間の定めがない契約です(26条1項)。「また2年」にはなりません。
  2. なつみさんが2027年11月に「更新しません」と通知した。→ 6か月前を過ぎているので、通知の期間に間に合っていません。1と同じく更新です。
  3. なつみさんが2027年6月に、正当の事由のある「更新しません」の通知をした。→ 期間の満了で終わるのが原則です。ただし、2028年4月以降もりくさんが住み続け、なつみさんが遅滞なく異議を述べなかったときは、更新したものとみなされます(26条2項)。
  4. 1の後(期間の定めがない契約になった後)、なつみさんが2029年1月10日に解約を申し入れた。→ 正当の事由があれば、申入れの日から6か月たった時に終わります(27条1項・28条)。6か月たった後もりくさんが住み続け、なつみさんが遅滞なく異議を述べないと、やはり更新です(27条2項で26条2項を準用)。
  5. 1の後、りくさんのほうから解約を申し入れた。→ 借主からの申入れには、借地借家法の定めはなく、民法617条1項2号で、申入れの日から3か月で終わります。正当の事由も要りません。

部屋に住んでいるのが、りくさんではなく転借人のそうたさんでも、3の「使い続け」は同じように扱われます。そうたさんが使い続けていることが、りくさんが使い続けていることとみなされるからです(26条3項)。

たとえると、借家の契約は「自動で延長される定期券」です。ただし本物のルールでは、延長された後の定期券には有効期限が書かれておらず(期間の定めなし)、貸主が止めるには、正当の事由と6か月の予告が要ります。

条文ではこう決まっている

  • 26条1項:期間の定めがある借家で、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に、相手方に「更新しない」または「条件を変えなければ更新しない」と通知しなかったときは、同じ条件で更新したものとみなします。ただし、その期間は定めがないものとします。
  • 26条2項:通知をした場合でも、期間が満了した後に借主が使い続け、貸主が遅滞なく異議を述べなかったときは、同じく更新したものとみなします。
  • 26条3項:転貸されているときは、転借人が使い続けることを、借主が使い続けることとみなします。
  • 27条1項:貸主が解約の申入れをしたときは、申入れの日から6か月たつと借家は終わります。27条2項:解約の申入れで終わった後の使い続けにも、26条2項・3項を準用します。
  • 28条:貸主の「更新しない」通知と解約の申入れは、正当の事由があると認められる場合でなければできません。考えるのは、①貸主と借主(転借人を含む)が建物を使う必要がある事情を中心に、②これまでの経過、③建物の使い方、④建物の今の状態、⑤立退料など、明渡しと引換えにお金などを渡すという申出です。
  • 29条1項:期間を1年未満とする借家は、期間の定めがない借家とみなします。
  • 30条:26条〜29条などに反する特約で、借主に不利なものは無効です。
  • 34条:適法な転貸があるとき、借家が期間の満了か解約の申入れで終わる場合は、貸主は転借人に通知しなければ、終わったことを転借人に主張できません。通知したときは、転貸借は通知の日から6か月で終わります。
  • 民法617条1項2号:期間の定めがない建物の賃貸借は、解約の申入れの日から3か月で終わります。借地借家法27条は貸主からの申入れの定めなので、借主からの申入れはこちらによります。

時系列で並べると

場面だれが期限・待つ期間正当の事由
更新しない通知(期間あり)貸主・借主満了の1年前〜6か月前貸主の通知だけ要る
満了後の使い続けへの異議貸主遅滞なく―
解約の申入れ(期間なし)貸主申入れから6か月要る
解約の申入れ(期間なし)借主申入れから3か月(民法)要らない
転借人への通知貸主通知から6か月で転貸借が終わる―

26条1項の通知は「当事者が」とあるので、借主から「更新しない」と通知することもできます。正当の事由が要るのは、28条が定める貸主の通知のほうです。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例

  • なつみさんが、期間10か月で部屋を貸した。→ 1年未満なので、期間の定めがない借家とみなされます(29条1項)。なつみさんから終わらせるには、正当の事由のある解約の申入れと6か月が要ります。
  • なつみさんが「子が住む家がほかにない」事情と、立退料の申出をあわせて、満了の8か月前に更新しない通知をした。→ 期間内の通知です。正当の事由があるかは、28条の事情をあわせて判断します。

当てはまらない例

  • 契約書に「期間2年。満了したら更新せずに終わる」と書いた、ふつうの借家。→ 26条に反し借主に不利な特約なので無効です(30条)。更新しない借家にしたいなら、定期建物賃貸借(38条)の要件(書面などでの契約と、事前の書面などでの説明)を満たす必要があります。
  • 定期建物賃貸借で、期間を6か月とした。→ 定期建物賃貸借には29条1項は適用されません(38条1項)。期間の定めがない借家にはなりません。

ひっかけやすい例

  • 立退料:立退料を申し出れば正当の事由がある、とは条文に書かれていません。立退料の申出は、ほかの事情とあわせて考える事情の1つです(28条)。
  • 期間の途中の解約:期間を決めた借家では、途中で解約できる権利を特約で残していなければ、借主からも期間の途中では解約の申入れができません。特約で残したときは、民法617条が準用されます(民法618条)。

似ているルールとの違い

項目借地(建物を建てる土地)借家
更新を拒む方法建物があれば、満了のときに地主が遅滞なく異議(正当の事由が要る)満了の1年前〜6か月前に通知(貸主は正当の事由が要る)
更新後の期間最初の更新は20年、その後は10年(長く決めればその期間)期間の定めなし
貸主からの解約の申入れ期間を決めなくても30年になるので、この場面はない6か月と正当の事由
借主からの解約の申入れ―民法で3か月

一時的に使うだけだとはっきりしている借家(一時使用目的)には、26条〜30条などがかかりません(40条)。どこが外れるかは一時使用目的の賃貸借の記事へ。更新のときに家賃を上げ下げしたいときの請求は賃料の増減額請求の記事、契約が終わるときの造作買取請求は、建物買取請求権の記事の中で借地の建物買取請求と比べています。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、借地借家法の借家が主な論点の問題は40問(38回)、ほかの論点の問題の中に4問でした。直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では、10回すべてに1問ずつ出ています(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。更新と終わり方で取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 更新後の期間:前と同じ期間ではなく、期間の定めなし(26条1項ただし書)。
  • 通知の期間:満了の「1年前から6か月前まで」。6か月前を過ぎた通知は間に合わない。
  • 通知の後の使い続け:通知が有効でも、使い続けに遅滞なく異議を述べないと更新(26条2項)。
  • 6か月と3か月:貸主の解約の申入れは6か月(借地借家法27条)、借主からは3か月(民法617条)。
  • 1年未満:期間の定めなしとみなす(29条1項)。定期建物賃貸借は例外。
  • 転借人:期間の満了や解約の申入れで終わるときは、転借人に通知し、通知の日から6か月で転貸借が終わる(34条)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
AはBに建物を期間2年で貸している。Aは、期間満了の8か月前に、正当の事由のある「更新しない」旨の通知をした。期間満了の後もBが建物を使い続け、Aが遅滞なく異議を述べなかったときは、契約は更新されたものとみなされる。

答え:○ 分かれ目は、通知の後の使い続けです。期間内に正当の事由のある通知をしても、満了後に借主が使い続け、貸主が遅滞なく異議を述べなかったときは、更新したものとみなされます(借地借家法26条2項)。✕に見えるのは「有効な通知をしたから契約は終わった」と考えやすいからです。更新後の期間は定めがないものになります(26条1項ただし書)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
AはBに建物を貸し、BはAの承諾を得てCに転貸している。AB間の賃貸借が期間の満了で終わる場合に、AがCにその旨を通知したときは、BC間の転貸借は、AB間の賃貸借の期間が満了した時に終了する。

答え:✕ 分かれ目は、転貸借が終わる時です。貸主が転借人に通知したときは、転貸借は、その通知がされた日から6か月たった時に終わります(34条2項)。正しくは、満了の時ではなく、通知の日から6か月後です。貸主の解約の申入れの「申入れの日から6か月」(27条1項)と同じ6か月ですが、数え始めは転借人への通知の日です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
AはBに建物を期間3年で貸し、契約書に「期間が満了したら更新せずに終了する」と書いた。定期建物賃貸借の要件は満たしていない。Bがこの内容に合意している以上、この特約は有効である。

答え:✕ 分かれ目は、借主に不利な特約の効力です。26条の更新の定めに反し、借主に不利な特約は、借主が合意していても無効です(30条)。正しくは、Aが更新しないためには、満了の1年前から6か月前までに正当の事由のある通知をする必要があります。更新しない契約が有効になるのは、書面などでの契約と事前の書面などでの説明の要件を満たした定期建物賃貸借(38条)の場合で、これと取り違えた形です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。

まとめ

  • 期間のある借家は、満了の1年前から6か月前までに通知しないと、同じ条件で更新。更新後は期間の定めなし。
  • 通知をしても、満了後の使い続けに貸主が遅滞なく異議を述べないと更新。転借人の使い続けも同じ。
  • 期間の定めがない借家は、貸主の解約の申入れから6か月で終わる(正当の事由が要る)。借主からは民法で3か月。
  • 正当の事由は、使う必要の事情を中心に、経過・使い方・建物の状態・立退料の申出をあわせて考える。
  • 1年未満の期間は期間の定めなし。借主に不利な特約は無効。転借人へは通知から6か月。

次に読むなら、借地借家法の記事がおすすめです。借地の更新や定期建物賃貸借と並べると、借家のルールの位置がはっきりします。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

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