開発許可(かいはつきょか)は、土地の区画や形を変えて建物を建てられるようにする工事(開発行為)について、都道府県知事が出す許可です(都市計画法29条)。この記事では、許可がいるかどうかの話ではなく、許可の前後の手続を扱います。
ひとことで言うと、流れは「申請の前に公共施設の管理者と協議・同意 → 申請 → 許可の通知と開発登録簿への登録 → 工事中の変更・廃止の手続 → 完了検査と工事完了公告 → 公告のあとの建築制限」です。建物を建てられない時期が、公告の前(37条)と公告の後(42条)で、制限の中身が変わるのが分かれ目です。
当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、開発許可が主な論点の問題は56問で、40回すべてに出ていました。直近10回でも10問で、毎回出ています(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。許可がいる面積や許可がいらない開発行為が中心ですが、この記事の手続も同じ問題の中の肢として出ます。
許可がいるかどうか(区域ごとの面積、許可がいらない開発行為)は開発許可の記事、都市計画法の全体の地図は都市計画法の覚え方の記事にあります。
身近な例で考えると
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| みらい開発 | 開発業者 | 市街化区域で住宅地を造る開発許可を受ける |
| A市 | 道路や水路の管理者 | みらい開発と協議し、同意する |
| さとるさん | 開発区域の中の土地の持ち主 | 開発に同意していない |
| はなまる住宅 | 住宅会社 | 工事の途中で、みらい開発から土地を買う |
- みらい開発は、申請の前に、開発区域につながる市道や水路を管理するA市と協議し、同意を得た。新しく造る道路を将来管理することになるA市とも協議した(32条1項・2項)。
- 同意を得たことを証する書面などを付けて、知事に申請した(30条)。
- 知事は、許可を文書で通知し、開発登録簿に登録した(35条・47条)。
- 工事の途中で、区画の割り方を変えることになった。許可の内容を変えるので、変更の許可を受けた(35条の2第1項)。軽微な変更なら届出でよい。
- はなまる住宅が、みらい開発から開発区域の土地を買い、工事を引き継ぐことにした。知事の承認を受けて、許可を受けた地位を引き継いだ(45条)。
- 工事が終わり、知事に届け出た。検査に合格して検査済証が交付され、工事完了の公告がされた(36条)。
- 公告の翌日から、新しい道路は原則としてA市が管理する(39条)。公告のあとは、許可のときの予定建築物以外の建物は、原則として建てられない(42条)。
たとえるなら、開発許可は「工事の許可証」で、工事完了公告は「完成検査の合格発表」です。ただし本物のルールでは、合格発表の前は原則として建物を建てられず、発表のあとも、許可のときに予定した建物以外は原則として建てられません。
条文ではこう決まっている
申請から許可まで
- 同意と協議(32条):申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない(1項)。開発行為で設置される公共施設を管理することとなる者などとは、あらかじめ協議しなければならない(2項)。
- 申請(30条):開発区域の位置・区域・規模、予定建築物等の用途、設計、工事施行者などを書いた申請書を出す。32条1項の同意を得たことを証する書面と、2項の協議の経過を示す書面などを付ける。
- 許可・不許可の通知(35条):知事は、申請があったときは、遅滞なく、許可か不許可の処分をし、文書で申請者に通知する。
- 知事とは(29条1項):指定都市・中核市(指定都市等)の区域では、その市の長。
- 建蔽率などの指定(41条):用途地域の定められていない土地の区域で許可をするとき、知事は、必要なら建蔽率・高さ・壁面の位置などの制限を定められる。
許可のあと工事中
- 変更の許可(35条の2):30条1項の事項を変えるときは、知事の許可を受ける。許可がいらない開発行為にあたる変更や、軽微な変更は除く。軽微な変更をしたときは、遅滞なく届け出る。
- 公告前の建築制限(37条):工事完了の公告があるまでは、開発区域内で建物を建てたり特定工作物を造ったりしてはならない。例外は、①その開発行為の工事用の仮設建築物などを建てるときや、そのほか知事が支障がないと認めたとき、②開発行為に同意していない土地の権利者が、その権利の行使として建てるとき。
- 廃止(38条):工事をやめたときは、遅滞なく知事に届け出る。
- 地位の承継(44条・45条):相続人その他の一般承継人は、許可を受けた地位を当然に引き継ぐ。土地の所有権などを買った人は、知事の承認を受けて引き継げる。
工事完了とそのあと
- 完了検査と公告(36条):工事が全部終わったら、知事に届け出る。知事は遅滞なく検査し、許可の内容に合っていれば検査済証を交付し、遅滞なく工事完了の公告をする。
- 公共施設の管理(39条):開発行為で設置された公共施設は、公告の翌日から、原則としてその所在の市町村が管理する。ほかの法律の管理者や、32条2項の協議で別に定めた管理者がいれば、その者。
- 公告後の建築制限(42条1項):公告のあとは、開発区域内で、予定建築物等以外の建物を新築したり、改築・用途の変更で予定建築物等以外にしたりしてはならない。例外は、知事が支障がないと認めて許可したとき、開発区域内に用途地域等が定められているとき。
- 市街化調整区域の開発区域外(43条1項):市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域では、知事の許可がなければ、建物の新築・改築・用途の変更などをしてはならない。都市計画事業、非常災害の応急措置、仮設建築物の新築などは除く。
- 開発登録簿(46条・47条):知事は開発登録簿を作って保管する。許可の年月日、予定建築物等の用途、公共施設の種類・位置などを登録し、完了検査の結果も附記する。登録簿は常に公衆の閲覧に供し、請求があれば写しを交付する。
- 不服申立て(50条):開発許可などの処分への審査請求は、開発審査会にする。開発審査会は、審査請求がされた日(補正を命じたときは補正された日)から2か月以内に裁決をする。
申請から公告のあとまでの流れ
- 申請の前:関係のある公共施設の管理者と協議・同意。新しい公共施設の管理者と協議(32条)。
- 申請:同意の書面などを付けて知事へ(30条)。
- 処分:許可・不許可を遅滞なく文書で通知(35条)。許可したら開発登録簿に登録(47条1項)。
- 工事中:変更は許可(軽微なら届出)、廃止は届出(35条の2・38条)。公告の前は建築できない(37条)。
- 地位の承継:相続は当然に、土地を買った人は知事の承認で(44条・45条)。
- 工事完了:届出→検査→検査済証→工事完了公告(36条)。登録簿に附記(47条2項)。
- 公告の後:公共施設は原則として市町村が管理(39条)。予定建築物等以外は原則として建てられない(42条)。
知事に何を出すか
| 場面 | 知事への手続 | 条文 |
|---|---|---|
| 許可の内容を変える | 変更の許可 | 35条の2第1項 |
| 軽微な変更をした | 遅滞なく届出 | 35条の2第3項 |
| 工事をやめた | 遅滞なく届出 | 38条 |
| 工事が終わった | 届出→検査→公告 | 36条 |
| 土地を買って地位を引き継ぐ | 承認 | 45条 |
| 相続で引き継ぐ | 手続なし(当然に承継) | 44条 |
建物を建てられるか(3つの制限)
| 時期・場所 | 原則 | 主な例外 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 開発区域・公告の前 | 建てられない | 工事用の仮設建築物、知事が支障がないと認めた、同意していない権利者 | 37条 |
| 開発区域・公告の後 | 予定建築物等以外は建てられない | 知事の許可、用途地域等がある | 42条1項 |
| 調整区域の開発区域外 | 知事の許可がいる | 都市計画事業、非常災害、仮設建築物など | 43条1項 |
開発許可とは別に、建物を建てるときは、建築基準法の建築確認がいる場合があります。建築確認の手続は建築確認の記事で扱っています。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(同意していない権利者):さとるさんは開発に同意していない。公告の前でも、自分の土地の権利を使って建物を建てられる(37条2号)。
- 当てはまらない(用途地域がある開発区域):市街化区域で用途地域が定められた開発区域なら、公告の後に予定建築物等以外の建物を建てても、42条の許可はいらない。建物の用途は、用途地域のルール(建築基準法)で決まる。
- ひっかけやすい(地位の承継):はなまる住宅のように土地を買った人は、知事の承認を受けて地位を引き継ぐ。相続人なら承認はいらない。
- ひっかけやすい(新しい公共施設の管理者):新しく造る道路を将来管理するA市とは「協議」。今ある市道の管理者としてのA市からは「協議して同意」。同じA市でも、立場で必要なものが違う。
- ひっかけやすい(登録簿の閲覧):開発登録簿は公衆の閲覧に供される。利害関係がある人に限られない。
試験ではここをまちがえやすい
- 同意と協議の入れかえ:既存の公共施設の管理者は「協議+同意」、新しく設置される公共施設の管理者は「協議」です(32条)。
- 変更の手続:変更は許可、軽微な変更は届出(事後に遅滞なく)。廃止も遅滞なく届出です。廃止に許可はいりません。
- 公告前と公告後の入れかえ:公告前(37条)は原則として何も建てられず、同意していない権利者の例外があります。公告後(42条)は予定建築物等以外が原則だめで、用途地域等があれば制限がかかりません。
- 43条の場所:43条は市街化調整区域の、開発区域の外の話です。開発区域の中の42条と混ぜた選択肢に注意します。
- 承継の手続:一般承継(相続など)は当然、特定承継(土地を買った人)は知事の承認です。
宅建試験では、開発許可の問題の中で、手続の順番や、公告の前後の建築制限を肢として確かめておく範囲です。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為やその工事によって新たに設置される公共施設を管理することとなる者と協議し、その同意を得なければならない。
答え:✕ 分かれ目は、相手が「今ある公共施設の管理者」か「新しく設置される公共施設を管理することとなる者」かです。新しく設置される公共施設を管理することとなる者とは、あらかじめ協議しなければなりませんが、同意までは求められていません(都市計画法32条2項)。正しくは、協議だけです。協議して同意を得なければならないのは、開発行為に関係がある公共施設の管理者(同条1項)で、その相手と取り違えた文です。
問2(このサイトのオリジナル問題)
開発区域内に土地を持つCは、その開発行為に同意していない。Cは、工事完了の公告の前であっても、その土地の権利の行使として、開発区域内で建築物を建築できる。
答え:○ 分かれ目は、37条の例外にあたるかです。公告の前は開発区域内で建築できないのが原則ですが、37条2号は、開発行為に同意していない権利者が、その権利の行使として建築するときを例外にしています。「公告の前は一切建てられない」と覚えていると✕にしてしまいます。もう一つの例外は、工事用の仮設建築物を建てるときや、そのほか知事が支障がないと認めたとき(同条1号)です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
市街化区域内で用途地域が定められた開発区域において、工事完了の公告の後に、許可のときの予定建築物以外の建築物を新築するときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。
答え:✕ 分かれ目は、開発区域に用途地域等が定められているかです。42条1項は、公告の後に予定建築物等以外の建築物を新築することを原則として禁じていますが、開発区域内に用途地域等が定められているときは、この制限がかかりません(同項ただし書)。正しくは、知事の許可はいらず、用途地域のルールの範囲で建てられます。用途地域がない区域なら知事の許可がいるので、その場合や、市街化調整区域の開発区域外の建築許可(43条1項)と取り違えた文です。
まとめ
- 申請の前に、関係のある公共施設の管理者と協議・同意、新しく設置される公共施設の管理者と協議(32条)。
- 許可・不許可は遅滞なく文書で通知(35条)。許可は開発登録簿に登録され、登録簿は公衆の閲覧に供される(47条)。
- 変更は許可、軽微な変更と廃止は遅滞なく届出。承継は、相続は当然、土地を買った人は知事の承認。
- 工事完了の届出→検査→検査済証→公告(36条)。公告前は原則として建築できない(例外:仮設建築物など、同意していない権利者)。
- 公告後は予定建築物等以外は原則だめ(用途地域等があればかからない)。市街化調整区域の開発区域外の建築は43条の許可。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。開発許可の要否の肢と手続の肢をまぜて解くと、どの段階の話かを見分ける練習になります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています。
- e-Gov法令検索「都市計画法」(29条1項、30条、32条、33条1項14号、35条、35条の2、36条〜47条、50条)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(出題の根拠となる法令は、試験を行う年度の4月1日現在施行のもの)
- 不動産適正取引推進機構(宅建試験の問題と正解の公開。出題数は当サイトが数えたもの)
働く人の法律試験ノート