管理組合法人をわかりやすく:法人になる条件と理事・監事、区分所有者の責任(令和8年4月施行の改正後)

管理組合法人(かんりくみあいほうじん)は、マンションの区分所有者の団体(管理組合)が、法人になったものです。区分所有法47条の決議をして、主たる事務所の所在地で登記すると、法人になります。

ひとことで言うと、法人になると、団体の名前で契約し、財産を持てるようになります。そのかわり、理事と監事を置かなければならず、法人でない管理組合の「管理者」は置きません。法人の財産で借金を払いきれないときは、区分所有者が持分(床面積)の割合で責任を負います。

区分所有法は令和7年に改正され、令和8年4月1日から改正後の条文が施行されています。宅建試験の出題の根拠は、試験の年の4月1日現在施行の法令です。法人になる決議は、改正後は「区分所有者と議決権の各過半数が出席し、出席者とその議決権の各4分の3以上」で決めます。改正前の「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」で覚えた人は、数え方を直してください。

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、区分所有法が主な論点の問題は37問(37回)で、直近10回では10回すべてに1問ずつ出ていました。管理組合法人は、この区分所有法の問題の中の肢として出る論点です(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。

この記事では、管理組合法人の成立・機関・責任・解散を扱います。集会や規約、決議の割合の全体は区分所有法の記事にあります。

身近な例で考えると

舞台は、30戸の分譲マンション「さくら台レジデンス」です。

人物立場したこと
よしえさん区分所有者・理事長法人化を提案し、理事になる
ごろうさん区分所有者監事になる
あおば工務店工事会社法人から外壁の修繕を請け負う
まいさん部屋を買った人法人の債務が残っている部屋を買う
  1. さくら台レジデンスの区分所有者は、法律上当然に1つの団体(管理組合)をつくっている(3条)。これまでは、管理者のよしえさんが団体を代表してきた。
  2. 大規模修繕の前に、団体の名前で口座を持ち、契約できるよう、法人になることにした。
  3. 集会には、30人のうち18人(議決権も過半数)が出席した。法人になること、名称を「さくら台レジデンス管理組合法人」とすること、事務所の場所を、出席者18人の4分の3以上(14人以上。議決権でも4分の3以上)の賛成で決めた(47条1項)。
  4. 主たる事務所の所在地で登記をして、法人が成立した。
  5. 法人には、理事(よしえさん)と監事(ごろうさん)を置いた。管理者という役は、法人ではなくなる。
  6. 法人は、あおば工務店と修繕の契約をした。工事代金の一部を、法人の財産で払いきれなくなった。区分所有者は、それぞれ床面積の割合で、残りを払う責任を負う(53条1項)。
  7. その後、まいさんが部屋を買った。まいさんも、買う前に生じた法人の債務について、前の持ち主と同じ責任を負う(54条)。

たとえるなら、法人化は、町内会が「会社のような名前」を持つことです。ただし本物のルールでは、法人の借金を払いきれないとき、区分所有者が床面積の割合で責任を負う点が、株式会社の株主とは違います。

条文ではこう決まっている

法人になる(47条・48条)

  • 成立(47条1項):区分所有者(議決権を持たない人を除く)の過半数で、議決権の過半数を持つ人が出席した集会で、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上の多数で、法人となる旨と名称・事務所を決め、主たる事務所の所在地で登記をすると法人になる。出席の割合は、規約で上げることができる。
  • 名称(47条2項・48条):名称は「管理組合法人」。名称に「管理組合法人」の文字を使わなければならず、管理組合法人でない者はこの文字を使えない。
  • 登記(47条4項):登記すべき事項は、登記した後でなければ第三者に対抗できない。
  • 成立前のこと(47条5項):法人になる前の集会の決議、規約、管理者が職務の範囲内でした行為は、法人について効力を生ずる。
  • 代理・訴訟(47条6項〜8項):法人は、事務に関し区分所有者を代理する。代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できない。規約か集会の決議で、区分所有者のために原告・被告になれる。
  • 管理者の規定は使わない(47条11項):管理者の節(25条〜29条)は、管理組合法人には適用しない。
  • 財産目録・区分所有者名簿(48条の2):設立のときと毎年1月から3月までの間(事業年度があれば毎事業年度の終わり)に財産目録を作り、事務所に備え置く。区分所有者名簿も備える。

理事と監事(49条〜52条)

  • 理事(49条):法人は理事を置かなければならない。理事が数人あるときは、規約に別段の定めがなければ、法人の事務は理事の過半数で決める。理事は法人を代表し、数人あるときは各自が代表する。ただし、規約か集会の決議で代表理事を定めたり、共同で代表させたり、規約にもとづき理事の互選で代表理事を定めたりできる。任期は2年で、規約で3年以内の別の期間を定められる。選任・解任は、管理者の25条を準用する(規約に別段の定めがなければ集会の決議)。
  • 仮理事(49条の4):理事が欠けて損害が生じるおそれがあるときは、裁判所が利害関係人などの請求で仮理事を選ぶ。
  • 監事(50条):法人は監事を置かなければならない。監事は、理事や法人の使用人を兼ねられない。法人の財産の状況と理事の業務の執行を監査し、不正などがあれば集会に報告し、そのために必要なら集会を招集する。任期は理事と同じ。
  • 利益相反(51条):法人と理事の利益が相反する事項は、監事が法人を代表する。
  • 事務の執行(52条):法人の事務は、原則として集会の決議で行う。特別の定数が定められた事項などを除き、規約で理事その他の役員に決めさせることができる。保存行為は理事が決められる。

責任と解散(53条〜56条)

  • 区分所有者の責任(53条):法人の財産で債務を完済できないときは、区分所有者は、14条の割合(床面積の割合)で弁済の責任を負う。規約で管理費用の負担割合を定めているときは、その割合。法人の財産への強制執行がうまくいかなかったときも、同じ責任を負う(2項)。ただしこの場合、区分所有者が、法人に資力があり執行が容易であることを証明したときは、責任を負わない(3項)。
  • 部屋を買った人の責任(54条):区分所有者の特定承継人(部屋を買った人など)は、承継前に生じた法人の債務について、前の区分所有者と同じ責任を負う。
  • 解散(55条):建物の全部の滅失、建物に専有部分がなくなったこと、集会の決議の3つで解散する。決議は、法人になるときと同じく、過半数の出席と、出席者とその議決権の各4分の3以上。
  • 清算と残余財産(55条の2〜56条):解散した法人は清算の目的の範囲で存続し、原則として理事が清算人になる。残った財産は、規約に別段の定めがなければ、14条の割合で各区分所有者に帰属する。

集会の決議の割合(令和8年4月1日施行の条文)

決めること必要な賛成条文
法人になる(名称・事務所も)過半数の出席+出席者の4分の3以上47条1項
法人が区分所有権や土地を取得する過半数の出席+出席者の4分の3以上52条の2第1項
法人を解散する過半数の出席+出席者の4分の3以上55条2項
理事・監事の選任・解任規約に別段の定めがなければ集会の決議49条8項・50条4項(25条を準用)

表の「過半数の出席」は、区分所有者(議決権のない人を除く)の過半数と、議決権の過半数の両方が出席していることです。「出席者の4分の3以上」も、人数と議決権の両方で数えます。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(法人化の決議):さくら台レジデンスの例。18人が出席し、14人以上(議決権でも4分の3以上)が賛成すれば決議できる。
  2. 当てはまらない(決議だけで登記していない):集会で決議したが、まだ登記していない。法人は、主たる事務所の所在地で登記をして初めて成立する。
  3. 当てはまる(成立前の契約):法人になる前に、管理者のよしえさんが職務の範囲内で結んだ清掃の契約は、法人についても効力を生ずる(47条5項)。
  4. ひっかけやすい(理事が法人から物を買う):理事のよしえさんが、法人の持つ駐車場用の土地を買う。法人と理事の利益が相反するので、法人を代表するのは監事のごろうさん(51条)。
  5. ひっかけやすい(責任の割合):法人の財産で工事代金を払いきれないとき、あおば工務店は、区分所有者の一人に全額を請求することはできない。各区分所有者の責任は、床面積の割合(規約で負担割合を定めていればその割合)まで(53条1項)。

似ているルールとの違い

比べる点法人でない管理組合の管理者管理組合法人の理事
置くかどうか置くことができる(3条)置かなければならない(49条1項)
選び方規約に別段の定めがなければ集会の決議(25条)同じ(49条8項で25条を準用)
任期区分所有法に定めなし2年(規約で3年以内)(49条6項)
監事置く定めなし置かなければならない(50条1項)
第三者への債務区分所有者が14条の割合で責任(29条)まず法人の財産。払いきれないとき14条の割合(53条)

マンションの売買や賃貸の仲介では、管理を任されている人や会社の名前と住所などを、重要事項として説明します。説明する項目はマンションの重要事項説明の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 改正前の割合:法人になる決議・解散の決議は、令和8年4月1日からは「過半数の出席+出席者の4分の3以上」です。「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」は改正前の形です。
  • 登記の要否:決議だけでは法人になりません。主たる事務所の所在地での登記で成立します。
  • 代表と事務の決定の入れかえ:理事が数人いるとき、事務は理事の過半数で決め、代表は各理事がします。代表理事は、規約や集会の決議などで定めたときだけです。
  • 任期と兼任:理事の任期は2年(規約で3年以内)。監事は理事や使用人を兼ねられません。
  • 責任の割合:区分所有者の責任は床面積の割合で、連帯して全額を負うのではありません。法人に資力があり執行が容易なことを証明すれば、強制執行がうまくいかなかった場合の責任を免れます。

宅建試験では、区分所有法の問題の肢の一つとして、法人化の決議と登記、理事・監事の定め、区分所有者の責任を確かめておく範囲です。改正の年なので、古い教材や過去問の解説の割合をそのまま覚えないようにします。過去問は機構自身が「法改正により、現在の法律と一致しない場合があります」と注記しています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
区分所有者20人(議決権は各人同じ)のマンションの集会に12人が出席し、出席者のうち9人が賛成して、法人となる旨と名称・事務所を決議した。主たる事務所の所在地で登記をすれば、管理組合法人となる(令和8年4月1日施行の条文による)。

答え:○ 分かれ目は、4分の3を出席者で数えるか、全体で数えるかです。改正後の47条1項は、区分所有者と議決権の各過半数が出席した集会で、出席者とその議決権の各4分の3以上の多数で決議し、登記で法人になるとしています。12人は20人の過半数で、9人は12人の4分の3です。改正前は区分所有者全体の4分の3(15人)が必要だったので、古い知識だと✕にしてしまいます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
管理組合法人に理事が3人いる場合、規約に別段の定めがなく、集会の決議でも代表理事を定めていないときは、理事の過半数で選んだ代表理事だけが法人を代表する。

答え:✕ 分かれ目は、代表のしかたです。理事は法人を代表し、数人あるときは各自が法人を代表します(49条3項・4項)。正しくは、代表理事を定めていなければ、3人の理事がそれぞれ法人を代表します。代表理事は、規約や集会の決議、規約にもとづく理事の互選で定めたときに置かれます(同条5項)。「理事の過半数」は、法人の事務を決めるときのルール(同条2項)で、代表と取り違えた文です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
管理組合法人Aが工事会社Bに負う工事代金を、Aの財産で完済できない。この場合、Bは、区分所有者の一人であるCに対し、残りの工事代金の全額を請求できる(規約に負担割合の定めはないものとする)。

答え:✕ 分かれ目は、区分所有者の責任の範囲です。53条1項は、法人の財産で債務を完済できないとき、区分所有者は14条の割合(専有部分の床面積の割合)で弁済の責任を負うとしています。正しくは、BがCに請求できるのは、Cの床面積の割合に応じた額までです。区分所有者が連帯して全額を負う、とする連帯債務と取り違えた文です。

まとめ

  • 法人化は、過半数の出席+出席者の4分の3以上の決議と、主たる事務所の所在地での登記で成立する(令和8年4月1日施行の47条1項)。
  • 法人には理事と監事を置かなければならない。管理者の節(25条〜29条)は使わない。
  • 理事が数人なら、事務は過半数で決め、代表は各自。任期は2年(規約で3年以内)。監事は理事・使用人を兼ねられない。利益相反は監事が代表。
  • 法人の財産で払いきれない債務は、区分所有者が床面積の割合で責任を負う。部屋を買った人も同じ責任。
  • 解散は、建物の全部滅失・専有部分がなくなる・集会の決議(過半数の出席+出席者の4分の3以上)。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。区分所有法の肢をまとめて解くと、改正前と改正後の割合の違いに気づきやすくなります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています(改正後の条文の節の並びで、管理組合法人は第1章第8節)。

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