仮設建築物と建築基準法85条:災害のときの応急仮設建築物、工事現場の事務所、仮設興行場で外れる規定と許可の期間

ひとことで言うと、仮設建築物(かせつけんちくぶつ)は、短い間だけ使う建物なので、建築基準法85条で規定の多くが外れる建物です。ただし、どの規定が外れるかは建物の種類で違います。災害のときの応急仮設建築物の一部は建築基準法令の規定がまるごと外れ、工事現場の事務所は建築確認などが外れ、仮設興行場は特定行政庁の許可を受けても建築確認の規定は外れません。

もう一つの柱は期間です。応急仮設建築物を工事の完了後3か月を超えて残すときは特定行政庁の許可が要り、許可の期間は2年以内。仮設興行場などの許可は1年以内です。この記事では、85条の8つの項を表にそろえます。建築確認の手続の全体は建築確認の記事、特定行政庁とはだれかは特定行政庁の記事に任せます。条文は令和8年4月1日時点の建築基準法・都市計画法を e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

人物立場建てるもの
こだま建設小学校の新校舎を建てる工事会社工事現場の事務所と材料置場
商店会駅前で秋の物産展を開く団体3か月だけ使う展示の建物
市大雨の被害を受けた地域の地方公共団体被災した人が住む応急の住宅
  1. こだま建設は、校舎の工事を始める前に、現場にプレハブの事務所と材料置場を建てた。85条2項の「工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場」に当たり、建築確認(6条)などの規定が外れる。
  2. 商店会の展示の建物は、85条6項の「博覧会建築物」などに当たる。特定行政庁が1年以内の期間を定めて許可すれば、集団規定(第3章)などが外れる。ただし、建築確認の規定は外れない。
  3. 市は、特定行政庁が指定した区域で、災害の日から1か月以内に応急の住宅の工事に着手した。85条1項で、建築基準法令の規定が適用されない(防火地域の中を除く)。
  4. 工事の完了から3か月がたっても、応急の住宅はまだ要る。3か月を超える日の前に特定行政庁の許可を受ければ、2年以内の期間で残せる(3項・4項)。

たとえるなら、85条は「期間限定の建物のための特別ルール」です。急いで建てる必要が大きいものほど、外れる規定が広くなります。ただし本物のルールでは、外れたままずっと使えるわけではなく、期間と許可で区切られています。仮設興行場のように、もとから計画して建てるものは、建築確認を受けたうえで許可の期間だけ使う、という作りです。

条文ではこう決まっている(85条)

85条の見出しは「仮設建築物に対する制限の緩和」で、全部で8項あります。

  • 1項:非常災害があった場合、非常災害区域等(災害が起きた区域かその隣の区域で、特定行政庁が指定するもの)の中で、災害が起きた日から1月以内に工事に着手する、①国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために建築するもの、②被災者が自ら使用するために建築する延べ面積30平方メートル以内のもの(応急仮設建築物)と、災害で破損した建築物の応急の修繕には、建築基準法令の規定は適用しない。ただし、防火地域内に建築する場合は別。
  • 2項:災害があった場合に建築する停車場・官公署その他の公益上必要な用途の応急仮設建築物と、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場などの仮設建築物には、6条から7条の6まで(建築確認・検査など)、12条1項〜4項、15条、19条、21条〜23条、37条などの規定と、第3章の規定は適用しない。ただし、防火地域・準防火地域にある延べ面積50平方メートルを超えるものには、62条(屋根)が適用される。
  • 3項:1項・2項の応急仮設建築物を建てた人が、工事の完了後3月を超えて残そうとするときは、超える日の前に特定行政庁の許可を受ける。
  • 4項:特定行政庁は、安全上・防火上・衛生上支障がないと認めるときは、2年以内の期間を限って許可できる。
  • 5項:被災者の需要に応ずるに足りる適当な建築物が不足することなどで、2年を超えて使う特別の必要がある応急仮設建築物は、公益上やむを得ないと認めるときに、さらに1年を超えない範囲で延長できる。延長した期間を超えて使う特別の必要があるときも、同じように延長できる(5項後段の「同様とする」)。
  • 6項:仮設興行場・博覧会建築物・仮設店舗などは、安全上・防火上・衛生上支障がないと認めるときに、1年以内の期間を定めて許可できる(建物の工事中に代わりに使う仮設店舗などは、工事の施工上必要と認める期間)。この場合、12条1項〜4項、21条〜27条、31条、34条2項、35条の2、35条の3、37条と、第3章の規定は適用しない。
  • 7項:国際的な規模の会議・競技会に使うなどの理由で1年を超えて使う特別の必要がある仮設興行場などは、公益上やむを得ないと認めるときに、使用上必要と認める期間を定めて許可できる。
  • 8項:5項の延長と7項の許可をするときは、特定行政庁は、あらかじめ建築審査会の同意を得る(官公署・病院・学校など省令で定める用途の応急仮設建築物の延長は除く)。6項の1年以内の許可は、8項に入っていない。

3項の言葉は「前二項の応急仮設建築物」です。2項の後半の工事現場の事務所などは、条文では「仮設建築物」と書かれ、3項の対象の言葉には入っていません。

85条を1枚にすると

どんな建物外れる規定建築確認許可と期間
災害救助・被災者用30㎡以内(1項)建築基準法令の規定(防火地域を除く)要らない3か月を超えて残すなら許可。2年以内(特別の必要があれば1年以内ずつ延長)
公益上必要な応急仮設(2項)確認・検査、第3章など要らない同上
工事現場の事務所など(2項)確認・検査、第3章など要らない3項の許可の対象外(応急仮設建築物ではない)
仮設興行場・博覧会建築物・仮設店舗(6項)第3章、21条〜27条など外れない1年以内(特別の必要があれば7項)

表の読み方のこつは3つです。①第3章(用途地域・建蔽率・容積率・道路などの集団規定)は、表のどの建物でも外れる(ただし、1項は防火地域内を除き、2項は防火地域・準防火地域の50平方メートル超に62条がかかる)。②建築確認が外れるのは1項と2項で、6項の仮設興行場などは外れない。③期間は「3か月を超えたら許可、許可は2年以内」が応急仮設、「1年以内」が仮設興行場。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例:被災者が自分で建てる小さな建物

指定された非常災害区域等(防火地域ではない)で、被災者が自ら使うため、延べ面積25平方メートルの建物を災害の日から3週間後に着工した場合は、1項の応急仮設建築物で、建築基準法令の規定は適用されません。

当てはまらない例:40平方メートルの建物、2か月後の着工

被災者が自ら使う建物でも、延べ面積が30平方メートルを超えるときや、災害の日から1か月を過ぎて着工したときは、1項には当たりません。国・地方公共団体・日本赤十字社が建てるもの(1項1号)には、面積の限定がありません。

ひっかけやすい例:防火地域の中の応急仮設建築物

1項は、防火地域内に建築する場合を除いています(1項ただし書)。2項でも、防火地域・準防火地域にある延べ面積50平方メートル超のものには62条(屋根の性能)が適用されます。火への備えは、仮設でも残る部分があります。

ひっかけやすい例:仮設興行場の許可と建築確認

商店会の展示の建物が6項の許可を受けても、6項が適用しないとする規定に6条(建築確認)は入っていません。許可と確認は別の手続です。

似ているルールとの違い

決まり何についてか中身
建築基準法85条仮設建築物を建てること規定の多くが外れる。期間と許可
都市計画法29条1項11号・施行令22条1号仮設建築物の建築のための開発行為開発許可が要らない

都市計画法の側でも、施行令22条1号が「仮設建築物の建築」の用に供する目的で行う開発行為を、29条1項11号の許可の要らない行為に挙げています。開発許可の面積の基準とその例外は開発許可の記事で扱っています。建物の側の85条と、土地の造成の側の29条を、別々に確かめるのがこつです。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、建築基準法の総合(1問に論点が混ざる問)が主な論点の問題は50問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では20問でした。建築確認が主な論点の問題は12問(直近10回は0問)、副の論点として含むものは6問(直近10回で2問)です。仮設建築物だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 期間の入れ替え:応急仮設建築物の許可を「1年以内」とする形。1年以内は6項の仮設興行場などで、応急仮設は2年以内(4項)です。
  • 起算の取り違え:「3か月」を災害の日から数える形。3項は「建築工事を完了した後三月」です。1か月は、1項の着工の期限(災害が起きた日から)です。
  • 確認の扱いの広げすぎ:仮設興行場も確認が要らないとする形。6項の適用しない規定に6条は入っていません。
  • 面積の条件の付け足し:国・地方公共団体・日本赤十字社が建てる応急仮設建築物にも「30平方メートル以内」をかける形。30平方メートルは被災者が自ら使うもの(1項2号)の条件です。
  • 防火地域の見落とし:防火地域内でも1項で全部外れるとする形(1項ただし書)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
商店会Aが、3か月だけ使う博覧会建築物を建てるため、特定行政庁から建築基準法85条6項の許可を受けた。この許可を受ければ、この建物には建築確認の規定(6条)も適用されなくなる。

答え:✕ 分かれ目は、6項で外れる規定に建築確認が入っているかです。85条6項が適用しないとするのは、12条1項〜4項、21条〜27条、31条、34条2項、35条の2、35条の3、37条と第3章の規定で、6条は入っていません。正しくは、許可を受けても建築確認の規定は外れません。取り違えの相手は、6条から7条の6までを外す85条2項(工事現場の事務所など)です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
非常災害があり、特定行政庁が指定した非常災害区域(防火地域ではない)で、被災者Bが自ら使うため、延べ面積25平方メートルの建物を、災害が起きた日から3週間後に着工した。この建物には、建築基準法令の規定は適用されない。

答え:○ 分かれ目は、1項の3つの条件(区域・着工の時期・面積)に当てはまるかです。85条1項は、非常災害区域等の中で災害の日から1月以内に着工する、被災者が自ら使用する延べ面積30平方メートル以内の応急仮設建築物には、防火地域内を除き、建築基準法令の規定を適用しないとしています。確認だけは要ると考えると✕にしてしまいます。面積が30平方メートルを超えるか、着工が1か月を過ぎれば、1項には当たりません。

問3(このサイトのオリジナル問題)
問2の建物を、工事の完了から3か月を超えて残すため、Bが特定行政庁の許可を申請した。特定行政庁がこの許可で認めることのできる期間は、仮設興行場の許可と同じく1年以内である。

答え:✕ 分かれ目は、許可の期間の数字です。85条3項・4項は、応急仮設建築物を工事の完了後3月を超えて残すときは特定行政庁の許可を受けるとし、安全上・防火上・衛生上支障がないときに2年以内の期間を限って許可できるとしています。正しくは2年以内です。1年以内は、仮設興行場・博覧会建築物・仮設店舗などの許可(6項)の期間です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。

まとめ

  • 1項:非常災害区域等で、災害の日から1か月以内に着工する災害救助用・被災者用(30㎡以内)の応急仮設建築物は、建築基準法令の規定が外れる(防火地域内を除く)。
  • 2項:公益上必要な応急仮設建築物と工事現場の事務所などは、建築確認・検査と第3章などが外れる。
  • 応急仮設建築物を工事の完了後3か月を超えて残すなら特定行政庁の許可。許可は2年以内(特別の必要があれば1年以内ずつ延長)。
  • 6項:仮設興行場・博覧会建築物・仮設店舗は1年以内の許可。第3章などは外れるが、建築確認は外れない。
  • 仮設建築物の建築のための開発行為は、開発許可が要らない(都市計画法29条1項11号・施行令22条1号)。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の建築基準法・都市計画法・都市計画法施行令を確かめました。

このサイトで次に読むなら、建築確認の記事です。仮設興行場で外れない建築確認が、どんな工事で要るのかを確かめ直せます。

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