地区計画(ちくけいかく)は、市町村が、ひとつの地区のまちなみを守ったり整えたりするために決める、都市計画のルールです。「この住宅地では、建物の高さを10メートルまでにする」「道路ぞいは生け垣にする」のように、用途地域よりも細かい決まりを地区ごとに定めます。
ひとことで言うと、地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域)で建物を建てるなら、工事に着手する日の30日前までに、市町村長に届け出ます(都市計画法58条の2)。計画に合わないときは、市町村長が設計の変更などを勧告します。許可ではなく、届出と勧告のしくみです。
宅建試験では、この「届出・30日前・市町村長・勧告」の組み合わせと、地区計画を定められる区域の条件が、正誤の分かれ目になりやすい所です。
身近な例で考えると
登場人物は2人です。古い家を建て替える人=まいさんと、住宅会社の担当=りょうさんです。
まいさんの家は、市の郊外の住宅地「みどりが丘」にあります。この住宅地には、市が都市計画で地区計画を定めていて、地区整備計画で「建物の高さは10メートルまで」「道路側の垣やさくは生け垣にする」と決まっています。
- まいさんは、3階建ての家に建て替える計画を立てた。高さは11メートル。
- りょうさんが調べると、みどりが丘は地区整備計画が定められている地区計画の区域だった。
- 建築物の建築をするので、まいさんは、工事に着手する日の30日前までに、行為の種類・場所・設計などを市長に届け出る(58条の2第1項)。
- 市長は、高さ11メートルが地区計画に合わないと考え、設計を変えるよう勧告した(同条3項)。
- まいさんは、高さを10メートルに収める設計に変えた。設計を変えるときも、変更の届出を、着手の30日前までに出す(同条2項)。
たとえるなら、地区計画は「マンションの管理規約の町内版」です。ただし本物のルールでは、決めるのは住民の多数決ではなく、市町村が都市計画の手続で決めます。住民が合意して結ぶ建築協定とは、ここがちがいます。
条文ではこう決まっている
だれが・どこに定めるか
- 決める人(15条):都道府県が決める都市計画は15条1項に並んでいて、「その他の都市計画は市町村が定める」とされています。地区計画はこの「その他」に入り、市町村が定めます。
- 定められる区域(12条の5第1項):①用途地域が定められている土地の区域。②用途地域が定められていない土地の区域のうち、次のどれかに当たる区域。イ:住宅市街地の開発などの事業が行われる(行われた)区域。ロ:建築や造成が無秩序に行われ、不良な街区の環境ができるおそれがある区域。ハ:健全な住宅市街地で、良い街区の環境ができている区域。
- そのため、用途地域が原則として定められない市街化調整区域でも、②の条件に当たれば地区計画を定められます。
何を定めるか
- 地区施設と地区整備計画(12条の5第2項):地区計画では、地区施設(地区の中の道路・公園など)と、建築物などの整備や土地の利用についての計画(地区整備計画)を定めます。目標や方針は、定めるよう努めるものとされています。
- 地区整備計画で決められること(12条の5第7項):建築物などの用途の制限、容積率の最高限度または最低限度、建ぺい率の最高限度、敷地面積または建築面積の最低限度、壁面の位置、高さの最高限度または最低限度、形態や色などの意匠、緑化率の最低限度など。垣やさくの構造の制限も、政令で定める事項として決められます(都市計画法施行令7条の6)。
- 市街化調整区域での例外(同項):市街化調整区域の地区整備計画では、容積率の最低限度、建築面積の最低限度、高さの最低限度の3つは定められません。市街化を抑える区域の性格に合わせた例外として押さえます。
- 再開発等促進区・開発整備促進区(12条の5第3項・4項):大きな再開発のための区域です。再開発等促進区は用途地域が定められている区域、開発整備促進区は第二種住居地域・準住居地域・工業地域、または用途地域が定められていない区域(市街化調整区域を除く)に定めます。
届出と勧告(58条の2)
- 届出(1項):地区計画の区域(地区整備計画などが定められている区域に限る)で、土地の区画形質の変更、建築物の建築、その他政令で定める行為をする人は、着手する日の30日前までに、行為の種類・場所・設計または施行方法・着手予定日などを市町村長に届け出ます。
- 届出がいらない行為(1項各号):通常の管理行為・軽易な行為など、非常災害のための応急措置、国または地方公共団体が行う行為、都市計画事業の施行として行う行為など、開発許可(29条1項)を要する行為など。
- 変更(2項):届け出た事項のうち一定のものを変えるときも、着手の30日前までに届け出ます。
- 勧告(3項):市町村長は、届出の行為が地区計画に適合しないと認めるときは、設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告できます。
地区整備計画の内容は、市町村が条例で建築物の制限として定めることもできます(建築基準法68条の2)。条例になれば、建築基準法にもとづく制限として守ることになります。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(建て替え):みどりが丘で家を建て替える。地区整備計画が定められている区域なので、着手の30日前までに市長へ届け出る。
- 当てはまらない(地区整備計画がない):地区計画は定められているが、地区整備計画がまだ定められていない区域。58条の2の届出の区域は「地区整備計画…が定められている区域に限る」ので、この届出はいらない。
- 当てはまらない(開発許可がいる行為):地区計画の区域内で、開発許可を受けて行う宅地の造成。29条1項の許可を要する行為なので、58条の2の届出はいらない(1項各号)。
- ひっかけやすい(市街化調整区域):市街化調整区域でも、用途地域が定められていない区域の条件に当たれば地区計画を定められる。さらに、地区整備計画に適合する建築物のための開発行為は、市街化調整区域で開発許可を受けられる場合の一つになっている(34条10号)。
- ひっかけやすい(勧告の強さ):まいさんが勧告に従わなかった場合でも、58条の2が定めるのは勧告まで。「工事の中止を命じる」「許可を取り消す」というしくみではない。
似ているルールとの違い
地区計画と同じように「地区のまちなみ」を守るしくみに、建築協定があります。手続の重さで比べると見分けやすくなります。
| 比べる点 | 地区計画 | 建築協定 | 開発許可 |
|---|---|---|---|
| 決める・認める人 | 市町村(都市計画) | 土地所有者等の合意+特定行政庁の認可 | 都道府県知事等 |
| 手続の種類 | 着手30日前の届出 | 協定に従う | 事前の許可 |
| 合わないとき | 市町村長の勧告 | 協定の効力で守る | 許可されない |
| 条文 | 都市計画法58条の2 | 建築基準法69条〜 | 都市計画法29条 |
建築協定は、土地の持ち主たちが全員で合意して結ぶ約束を、特定行政庁が認可するしくみです。くわしくは建築協定の記事で比べています。開発許可の面積や例外は開発許可の記事、区域区分と用途地域の関係は都市計画区域の記事で扱っています。
試験ではここをまちがえやすい
- 届け出る先の型:市町村長です。都道府県知事にした肢に注意します。地区計画を決めるのが市町村なので、届出も市町村長、と結びつけると覚えやすくなります。
- 時期の型:着手する日の30日前まで。事後届出(国土利用計画法の契約後2週間)と混ぜないようにします。
- 許可・命令にする型:58条の2は届出と勧告です。「許可を受けなければならない」「中止を命じることができる」は条文と合いません。
- 届出の区域の型:届出がいるのは「地区整備計画などが定められている区域」に限られます。
- 定められる区域の型:用途地域が定められていない区域にも、一定の条件で定められます。「用途地域の中にしか定められない」は誤りです。一方、再開発等促進区は用途地域が定められている区域だけです。
宅建試験では、地区計画の届出の主体・時期・相手を入れかえた肢に引っかからないよう、整理して覚えます。数字は「30日前」だけなので、相手(市町村長)と効果(勧告)をセットで覚えます。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
まいさんは、地区整備計画が定められている地区計画の区域内で、家を建て替える。まいさんは、工事に着手する日の30日前までに、行為の種類や場所などを都道府県知事に届け出なければならない。
答え:✕ 分かれ目は届け出る先です。地区計画の区域内での建築物の建築は、着手する日の30日前までに市町村長に届け出ます(都市計画法58条の2第1項)。正しくは都道府県知事ではなく市町村長です。30日前という時期は合っているので○に見えます。取り違えの相手は開発許可(29条)で、こちらは都道府県知事等の許可です。
問2(このサイトのオリジナル問題)
市街化調整区域内の、用途地域が定められていない土地の区域であっても、条文の定める一定の条件に当たる区域には、地区計画を定めることができる。
答え:○ 分かれ目は、定められる区域に用途地域が要るかです。地区計画は、用途地域が定められている区域のほか、用途地域が定められていない区域のうち一定の条件に当たる区域にも定められます(12条の5第1項2号)。市街化調整区域は市街化を抑える区域なので✕に見えますが、除かれていません。取り違えの相手は再開発等促進区(用途地域が定められている区域に限る)と、開発整備促進区(市街化調整区域を除く)です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
まいさんが地区計画の区域内で届け出た建築の計画が、地区計画に適合しない。この場合、市町村長は、まいさんに対し、工事の中止を命ずることができる。
答え:✕ 分かれ目は、市町村長がとれる措置の強さです。届出の行為が地区計画に適合しないとき、市町村長は「設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができる」とされています(58条の2第3項)。正しくは勧告で、命令ではありません。取り違えの相手は、許可制の規制(開発許可や53条の建築の許可など)で、許可がなければ行為そのものができません。
まとめ
- 地区計画は、市町村が都市計画で定める地区ごとのまちづくりのルール。中身の具体的な決まりは地区整備計画に書く。
- 用途地域がある区域のほか、用途地域がない区域でも一定の条件で定められる(市街化調整区域も除かれない)。
- 地区整備計画が定められた区域で建築などをするなら、着手の30日前までに市町村長へ届出。変更も30日前。
- 合わないときは勧告。許可や命令ではない。
- 市街化調整区域の地区整備計画では、容積率・建築面積・高さの最低限度は定められない。
法令上の制限の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」の都市計画法(地区計画)の問題で続けて解けます。
次に読むなら、都市計画法の覚え方の記事がおすすめです。地区計画が、区域区分・用途地域・開発許可・都市計画制限とどうつながるかを1枚の地図にしています。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています。
- e-Gov法令検索「都市計画法」(12条の5、15条、29条、34条、58条の2)
- e-Gov法令検索「都市計画法施行令」(7条の6)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(68条の2、69条〜77条)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(出題の根拠となる法令は、試験を行う年度の4月1日現在施行のもの)
働く人の法律試験ノート