都市計画の提案制度:土地所有者やまちづくり団体が都市計画を提案できる要件と、提案のあとの手続(都市計画法21条の2〜21条の5)

ひとことで言うと、土地の所有者や、まちづくりNPOなどは、0.5ヘクタール以上のひとまとまりの土地について、都道府県や市町村に「この都市計画を決めてほしい(変えてほしい)」と提案できます(都市計画法21条の2)。提案には都市計画の素案(そあん=たたき台)を添え、区域の土地所有者等の3分の2以上の同意を、人数と面積の両方でそろえます。提案を受けた側は、遅滞なく決める必要があるかを判断し、決めないときは、審議会の意見を聴いたうえで理由を通知します(21条の3〜21条の5)。

この記事では、提案の要件と、提案のあとに都市計画が決まるまでの手続(16条〜20条)を流れで示します。どの都市計画をだれが決めるかの一覧は都市計画法の覚え方の記事、地区計画の届出は地区計画の記事に任せます。実際の提案の例や、自治体ごとの要綱は扱いません。条文は、令和8年4月1日時点の都市計画法・同施行令を e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

登場人物は、住宅地に土地を持つはるとさんたち6人と、都市計画を決めるA市です(架空の話です)。

人物立場したこと
はるとさん土地の所有者提案をまとめる
近所の5人土地の所有者・借地権者4人が賛成する
A市都市計画を決める市提案を受けて判断する
  1. A市の都市計画区域の中に、0.8ヘクタールのひとまとまりの住宅地がある。土地の所有者と、建物を持つために土地を借りて登記などを備えた人(借地権者)が、はるとさんを入れて6人いる。
  2. はるとさんたちは、まわりに高い建物が建たないよう、地区計画を定めてほしいと考えた。
  3. 6人のうち5人が賛成した。5人が持つ土地と借りている土地の面積も、全体の3分の2を超えている。
  4. はるとさんたちは、地区計画の素案を作って添え、A市に提案した。
  5. A市は、遅滞なく、その地区計画を決める必要があるかを判断する。必要と認めれば案を作り、公告・縦覧・審議会などの手続に進む。必要ないと判断すれば、市の都市計画審議会に素案を出して意見を聴き、その旨と理由を、はるとさんたちに通知する。

たとえると、提案制度は「住んでいる人や土地を持つ人から、市に企画書を出せる仕組み」です。ただし本物のルールでは、企画書を出せば決まるわけではありません。決めるのは市で、提案を受けた市には、判断し、決めないなら理由を知らせる義務があるという点が、ふつうの要望と違います。

条文ではこう決まっている

提案できる人(21条の2第1項・2項)

  • 土地所有者等:土地の所有者と、建物の所有を目的とする対抗要件を備えた地上権・賃借権(借地権)を持つ人。臨時の設備など一時使用のためと明らかなものは除く。「一人で、又は数人共同して」提案できる(1項)。
  • まちづくりの団体など:まちづくりの推進を図る活動を目的とする特定非営利活動法人(NPO法人)、一般社団法人・一般財団法人などの営利を目的としない法人、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、国土交通省令や条例で定める団体(2項)。都市緑地法の都市緑化支援機構についての定めもある(3項)。NPO法人・一般社団法人などの法人の種類の違いは公益法人とNPO法人の違いの記事で扱っています。

どこについて・何を提案できるか(21条の2第1項、施行令15条)

  • 区域:都市計画区域か準都市計画区域のうち、一体として整備・開発・保全すべき区域としてふさわしい、政令で定める規模以上の一団の土地の区域。
  • 規模:0.5ヘクタール(施行令15条)。特に必要があるときは、都道府県や市町村が条例で、0.1ヘクタール以上0.5ヘクタール未満の範囲で別に定められる。
  • 提案できる都市計画:都市計画の決定または変更。ただし、都市計画区域の整備、開発及び保全の方針と、都市再開発方針等に関するものは除く。
  • 添えるもの:提案に係る都市計画の素案。

提案の条件(21条の2第4項)

  • 素案の内容が、13条その他の法令に基づく都市計画の基準に適合していること(1号)。
  • 素案の対象の土地(国や地方公共団体の公共施設用の土地を除く)の土地所有者等の3分の2以上の同意があること。さらに、同意した人が持つ土地と、同意した人の借地権の目的の土地の地積の合計が、総地積の合計の3分の2以上であること(2号)。

提案を受けたあと(21条の3〜21条の5)

  • 判断と案の作成(21条の3):遅滞なく、提案を踏まえた都市計画を決める(変える)必要があるかを判断し、必要と認めるときは、その案を作成しなければならない。
  • 素案も審議会へ(21条の4):提案の素案の内容を全部は実現しない都市計画を決めようとするときは、審議会に付議する案に併せて、提案の素案を提出しなければならない。
  • 決めないとき(21条の5):必要がないと判断したときは、遅滞なく、その旨と理由を提案した人に通知する(1項)。通知の前に、あらかじめ都道府県都市計画審議会(市町村に市町村都市計画審議会があるときは、その審議会)に素案を出して意見を聴かなければならない(2項)。
項目決まり条文
提案できる人土地所有者等(所有権、建物所有目的で対抗要件のある借地権)、まちづくりNPOなど21条の2第1項・2項
区域の規模都市計画区域・準都市計画区域の0.5ha以上の一団の土地。条例で0.1haまで下げられる1項、施行令15条
提案できないもの整備・開発・保全の方針、都市再開発方針等1項
添えるもの都市計画の素案1項
条件基準に適合し、土地所有者等の3分の2以上が同意(人数と面積)4項

都市計画が決まるまでの流れ

提案を受けて案を作ったあとは、提案がないときと同じ決定の手続に進みます。

  1. 案を作る:必要があると認めるときは、公聴会の開催など住民の意見を反映させるための措置を講ずる(16条1項)。地区計画等の案は、条例で定めるところにより、利害関係を有する者の意見を求めて作る(16条2項)。
  2. 公告・縦覧:案を公告し、公告の日から2週間、理由を書いた書面を添えて公衆の縦覧に供する(17条1項)。
  3. 意見書:関係市町村の住民と利害関係人は、縦覧期間満了の日までに、意見書を出せる(17条2項)。
  4. 審議会など:都道府県は、関係市町村の意見を聴き、都道府県都市計画審議会の議を経て決める(18条1項)。国の利害に重大な関係がある政令の都市計画は、国土交通大臣に協議し、同意を得る(18条3項)。市町村は、市町村都市計画審議会(置かれていないときは都道府県都市計画審議会)の議を経て決め(19条1項)、都市計画区域・準都市計画区域の都市計画は、あらかじめ知事に協議する(19条3項。地区計画等では政令で定める事項に限られる。同意までは求められていない)。
  5. 告示・効力:決めたら告示し(20条1項)、都市計画は告示があった日から効力を生ずる(20条3項)。

当てはまる例・当てはまらない例

例1:一人で持つ0.6ヘクタール(当てはまる例)

準都市計画区域の中に、はるとさんが一人で持つ0.6ヘクタールの一団の土地がある。借地権の設定はない。土地所有者等ははるとさん一人なので、同意の条件も満たし、一人で提案できます。準都市計画区域も対象です。

例2:0.3ヘクタールの土地(当てはまらない例)

条例で別の規模を定めていない市で、0.3ヘクタールの区域について提案しようとする。0.5ヘクタールに届かないので、提案の要件を満たしません。市が条例で0.3ヘクタール以下に下げていれば、提案できます。

例3:無償で借りた土地の家(ひっかけやすい例)

ゆいさんは、知人から無償で借りた土地(使用貸借)に家を建てて住んでいる。土地所有者等の「借地権」は、建物の所有を目的とする地上権か賃借権で、対抗要件を備えたものです。使用貸借はどちらでもないので、ゆいさんは土地所有者等に当たりません。

例4:整備・開発・保全の方針(当てはまらない例)

都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(いわゆる区域マスタープラン)を変えてほしい、という提案。21条の2第1項のかっこ書きで除かれているので、提案制度では提案できません。

例5:提案の一部だけを決める(当てはまる例)

A市は、はるとさんたちの素案のうち、建物の高さの部分だけを地区計画に入れることにした。素案の全部は実現しないので、市の都市計画審議会に案を付議するとき、はるとさんたちの素案も一緒に出します(21条の4)。

似ているルールとの違い

地区計画には、提案制度とは別に、住民などが案の内容を「申し出る」方法を、市町村が条例で定められる仕組みがあります(16条3項)。

比べる点計画提案(21条の2)申出(16条3項)
だれが土地所有者等、まちづくりNPOなど住民、利害関係人
対象都市計画(方針などを除く)地区計画等
要件0.5ha以上、3分の2以上の同意、素案市町村が条例で定める方法による
仕組みの根拠法律が要件と手続を決めている市町村が定めることが「できる」

提案は、都市計画法が要件と、提案を受けた側の義務(判断・理由の通知)まで決めています。申出は、市町村が条例で方法を定めたときに使える仕組みです。どちらも、出しただけで都市計画が決まるわけではありません。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、都市計画の決定手続が主な論点の問題は3問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では0問でした。提案制度だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。条文の数字と主体で取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 同意を全員とする形:要るのは土地所有者等の3分の2以上の同意で、面積でも3分の2以上です。
  • 規模の数字:政令は0.5ヘクタール。条例で下げられるのは0.1ヘクタール以上0.5ヘクタール未満の範囲です。
  • 借りている人ならだれでもとする形:借地権は、建物の所有を目的とし、対抗要件を備えた地上権・賃借権です。
  • 決めないなら手続はないとする形:決めないときも、審議会に素案を出して意見を聴き、旨と理由を通知します。
  • 縦覧と効力の時点:縦覧は公告の日から2週間、意見書は縦覧期間満了の日まで、効力は告示の日から。
  • 市町村の決定に知事の同意が要るとする形:19条3項は協議です。同意まで求められるのは、都道府県が国の利害に重大な関係がある都市計画を決めるときの国土交通大臣です(18条3項)。

決定の手続をふくむ都市計画法の○✕は、都市計画法の問題の記事の問11〜14でも解けます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
準都市計画区域内に、はるとさんが一人で所有する0.6ヘクタールの一団の土地がある。この土地に借地権は設定されておらず、条例で別の規模の定めもない。はるとさんは、ほかの人と共同しなくても、基準に適合した素案を添えて、一人でこの区域の都市計画の決定を提案できる。

答え:○ 分かれ目は、一人で提案できるか、準都市計画区域も入るかです。都市計画法21条の2第1項は、都市計画区域または準都市計画区域のうち政令で定める規模(0.5ヘクタール、施行令15条)以上の一団の土地について、土地所有者等が「一人で、又は数人共同して」提案できるとしています。同意の条件(4項2号)も、土地所有者等がはるとさん一人なら満たします。提案には複数の人がそろう必要がある、または都市計画区域に限られる、と考えると✕に見えます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
A市には市町村都市計画審議会が置かれている。A市は、はるとさんの計画提案を踏まえた都市計画の決定をする必要がないと判断した。この場合、A市は、その旨と理由をはるとさんに通知する前に、市町村都市計画審議会に提案の素案を提出して、その意見を聴かなければならない。

答え:○ 分かれ目は、決めないときにも審議会の手続があるかです。21条の5第1項は、必要がないと判断したときは遅滞なく旨と理由を通知するとし、2項は、その通知をしようとするときは、あらかじめ都道府県都市計画審議会(市町村都市計画審議会が置かれているときは、その審議会)に素案を出して意見を聴かなければならないとしています。審議会の議を経るのは都市計画を決めるとき(19条1項)だけ、と考えると✕に見えます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
ゆいさんは、A市の都市計画区域内で、知人から無償で借りた土地(使用貸借)の上に自宅を建てて住んでいる。ゆいさんは、この土地を含む0.5ヘクタール以上の一団の土地の区域について、都市計画の決定を提案できる「土地所有者等」に当たる。

答え:✕ 分かれ目は、土地所有者等に入る借りている人の範囲です。21条の2第1項の土地所有者等は、土地の所有者と、建物の所有を目的とする対抗要件を備えた地上権または賃借権(借地権)を持つ人です。使用貸借による権利は、地上権でも賃借権でもありません。正しくは、ゆいさんは土地所有者等に当たらず、提案できるのは土地の所有者などです。地区計画等について「住民又は利害関係人」が申し出る方法を条例で定める仕組み(16条3項)と取り違えた文です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。

まとめ

  • 土地所有者等(所有者・建物所有目的で対抗要件のある借地権者)とまちづくりNPOなどは、都市計画の決定・変更を提案できる。一人でもよい(21条の2)。
  • 区域は都市計画区域・準都市計画区域の0.5ヘクタール以上の一団の土地。条例で0.1ヘクタールまで下げられる(施行令15条)。
  • 素案を添え、基準に適合し、土地所有者等の3分の2以上の同意(人数と面積)が要る。区域マスタープランなどの方針は提案できない。
  • 受けた側は遅滞なく判断する。決めないときは、審議会に素案を出して意見を聴き、旨と理由を通知する(21条の3〜21条の5)。
  • 決定の手続は、公告・2週間の縦覧・意見書・審議会・告示。効力は告示の日から(17条〜20条)。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の都市計画法と都市計画法施行令を確かめました。出題数は、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験問題を当サイトが数えたものです。

このサイトで次に読むなら、地区計画の記事です。提案の対象にもなる地区計画が、どの区域に定められ、決まったあとにどんな届出がかかるかを確かめられます。

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