建築基準法の単体規定をわかりやすく:建物の大きさで決まる設備のルール(宅建 単体規定)

建築基準法の単体規定(たんたいきてい)は、建物そのものの安全や衛生についてのルールです。建物の構造の強さ、部屋の明るさや風通し、避雷設備やエレベーターなどを決めています。

ひとことで言うと、単体規定は「どこに建てても守るルール」です。都市計画区域の外の山奥に建てる家にもかかります。これに対して、道路や用途地域、建ぺい率・容積率のような「町の中での建て方」のルール(集団規定)は、都市計画区域と準都市計画区域の中だけでかかります(41条の2)。

宅建試験では、この「全国か、区域の中だけか」の見分けと、高さ20メートル・31メートル、採光7分の1・換気20分の1などの数字が、正誤の分かれ目になりやすい所です。

身近な例で考えると

登場人物は2人です。家とマンションを建てる人=ともやさんと、設計を担当する建築士=さやかさんです。

ともやさんは、2つの建物を計画しています。一つは都市計画区域の外の山あいの村に建てる自宅、もう一つは市街地に建てる高さ25メートルのマンションです。さやかさんが、かかるルールを確かめます。

  1. 山あいの自宅:都市計画区域の外なので、道路に2メートル接する決まりや用途地域の制限(集団規定)はかからない。
  2. それでも、居室には採光と換気のための窓がいる(28条)。地下室を居室にするなら、防湿などの基準を守る(29条)。これらは単体規定で、区域に関係なくかかる。
  3. 市街地のマンション:高さ25メートルは20メートルを超えるので、避雷設備がいる(33条)。
  4. 非常用の昇降機は、高さ31メートルを超える建物に求められる(34条2項)。25メートルなので、この決まりはかからない。
  5. マンションは共同住宅なので、各戸の界壁(となりの住戸との壁)は、となりの生活音を減らす基準に合わせる(30条)。

たとえるなら、単体規定は「建物の健康診断」、集団規定は「町内会の決まり」です。健康診断は、どこに住んでいても受けます。ただし本物のルールでは、建物の用途や大きさで、かかる項目が変わります。

条文ではこう決まっている

単体規定は、建築基準法の第2章(19条〜41条)にあります。宅建試験で数字を取り違えやすいものを並べます。

ルールかかる建物中身条文
避雷設備高さ20mを超える建築物有効に避雷設備を設ける(周囲の状況で安全上支障がなければ不要)33条
非常用の昇降機高さ31mを超える建築物(政令で除くものあり)非常用の昇降機を設ける34条2項
採光住宅の居室・学校の教室・病院の病室など床面積に対し、住宅の居室は7分の1以上28条1項・施行令19条
換気居室床面積に対し20分の1以上の開口部28条2項
地階の居室住宅の居室・学校の教室など防湿などの技術的基準に適合29条
界壁長屋・共同住宅となりの住戸の音を低減する基準30条
便所下水道の処理区域内水洗便所にする31条1項

数字の細かい点です。

  • 採光(28条1項):法律は「5分の1から10分の1までの間」で政令に割合を任せています。施行令19条3項で、住宅の居住のための居室は7分の1、幼稚園・小学校などの教室は5分の1などと決まっています。照明設備を設けるなど、国土交通大臣の定める基準に従った措置をとれば、10分の1までの範囲で緩められます。地階の居室など、用途上やむを得ない居室は除かれます(28条1項ただし書)。
  • 換気(28条2項):居室には換気のための窓などを設け、換気に有効な部分を床面積の20分の1以上にします。政令の基準に従った換気設備を設けたときは、この限りではありません。
  • 構造の強さ(20条):建物の高さや大きさで、求められる確かめ方が段階的に重くなります。高さ60メートルを超える建物は国土交通大臣の認定が必要です(20条1項1号)。木造なら、地階を除く階数が3以上か、延べ面積が300平方メートルを超えるものは、政令の基準に従った構造計算で安全を確かめる段階に入ります(20条1項3号)。
  • 大規模な建物の主要構造部(21条1項):主要構造部(壁・柱・床などの主な部分)に木材などの燃えやすい材料を使った建物で、地階を除く階数が4以上、または高さ16メートルを超えるものなどは、主要構造部を、火災に耐えるための基準に合わせます。

単体規定と集団規定の分かれ目

  • 41条の2:「この章(第八節を除く。)の規定は、都市計画区域及び準都市計画区域内に限り、適用する。」ここでいう「この章」は第3章で、道路と接道、用途制限、建ぺい率・容積率、高さ制限、防火地域などが入っています。これが集団規定です。
  • 第2章の単体規定には、このような区域の限定がありません。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(区域の外の避雷設備):都市計画区域の外に、高さ22メートルの展望台つきの建物を建てる。避雷設備は単体規定なので、区域の外でも必要。
  2. 当てはまらない(区域の外の接道):同じ建物の敷地が、道路に2メートル接していない。接道義務は第3章の集団規定なので、都市計画区域・準都市計画区域の外ではかからない。
  3. ひっかけやすい(20mと31m):高さ25メートルの建物。避雷設備はいる(20m超)が、非常用の昇降機はいらない(31m超ではない)。
  4. ひっかけやすい(採光と換気の数字):住宅の居室の採光は7分の1、換気は20分の1。数字を入れかえた文に注意する。
  5. 当てはまらない(処理区域の外の便所):下水道の処理区域の外では、31条1項の「水洗便所にする」決まりはかからない。

似ているルールとの違い

比べる点単体規定集団規定
何を決めるか建物そのものの安全・衛生町の中での建て方
どこでかかるか全国都市計画区域・準都市計画区域の中(41条の2)
条文の場所第2章第3章
例構造、採光・換気、避雷設備、昇降機、界壁接道、用途制限、建ぺい率・容積率、高さ、防火地域

集団規定の中身は、それぞれの記事で扱っています。用途制限は用途地域の記事、道路と接道は道路と接道義務の記事、斜線制限や日影規制は高さの制限の記事です。

建築確認(工事の前に、計画がこれらのルールに合っているか確かめてもらう手続)は、単体規定・集団規定の両方をまとめて審査する入口です。確認がいる建物の範囲は建築確認の記事で確かめてください。

試験ではここをまちがえやすい

  • 区域の型:「都市計画区域外なので、避雷設備の規定は適用されない」は誤り。単体規定は全国でかかります。逆に「区域外でも接道義務がかかる」も誤りです。
  • 高さの数字の型:避雷設備は20メートル超、非常用の昇降機は31メートル超。「以上」ではなく「をこえる」です。
  • 採光と換気の型:住宅の居室の採光7分の1、換気20分の1。採光は照明などの措置で10分の1まで緩められます。
  • 界壁の型:界壁のルールは長屋と共同住宅です。一戸建てにはかかりません。
  • 集団規定に入れる型:採光や避雷設備を「用途地域ごとのルール」と書いた文に注意します。

宅建試験では、建築基準法の中で、単体規定の数字や、都市計画区域外での適用を押さえておきます。建築基準法全体のどこに単体規定が位置づくかは、建築基準法の覚え方の記事で地図にしています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
ともやさんは、都市計画区域および準都市計画区域の外に、高さ25メートルの建築物を建てようとしている。周囲の状況による例外に当たらないとき、この建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。

答え:○ 分かれ目は、ルールがかかる区域です。避雷設備は第2章の単体規定で、高さ20メートルを超える建築物に求められます(建築基準法33条。周囲の状況で安全上支障がない場合を除く)。区域の外なので建築基準法の規制はかからないように見えますが、区域の限定(41条の2)は第3章の集団規定の話です。取り違えの相手は、接道義務や用途制限などの集団規定です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
ともやさんが市街地に建てる高さ25メートルのマンションには、避雷設備に加えて、非常用の昇降機も設けなければならない。

答え:✕ 分かれ目は高さの数字です。非常用の昇降機が求められるのは、高さ31メートルを超える建築物です(34条2項)。正しくは、25メートルのマンションに34条2項はかかりません。避雷設備(20メートル超・33条)は必要です。取り違えの相手は、避雷設備の20メートルという数字です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
住宅の居室に設ける採光のための窓は、採光に有効な部分の面積が、その居室の床面積の20分の1以上あればよい。

答え:✕ 分かれ目は採光と換気の数字です。住宅の居住のための居室の採光は、床面積の7分の1以上が原則です(28条1項・施行令19条3項)。正しくは7分の1で、照明設備などの措置をとっても緩められるのは10分の1までです。取り違えの相手は換気で、換気に有効な部分が床面積の20分の1以上です(28条2項)。

まとめ

  • 単体規定は建物そのものの安全・衛生のルールで、全国でかかる。集団規定は都市計画区域・準都市計画区域の中だけ(41条の2)。
  • 高さ20メートル超は避雷設備、31メートル超は非常用の昇降機。
  • 住宅の居室の採光は7分の1(措置で10分の1まで)、換気は20分の1(換気設備があれば別)。
  • 地階の居室は防湿などの基準、長屋・共同住宅の界壁は遮音の基準、処理区域内の便所は水洗。
  • 構造計算や大規模建築物の主要構造部のルールも単体規定。

法令上の制限の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。単体規定だけの分野はないので、建築確認の肢とまぜて、どのルールがどの区域でかかるかを見分ける練習に使ってください。

次に読むなら、建築確認の記事がおすすめです。単体規定に合っているかを工事の前に確かめる手続で、2025年4月の改正で確認がいる建物の範囲が変わっています。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています。

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