景品表示法(けいひんひょうじほう)は、お客さんをだますような広告(不当表示)と、行き過ぎたおまけ(景品)を取り締まる法律です。正式な名前は「不当景品類及び不当表示防止法」です。
ひとことで言うと、「実際よりずっと良く見せる広告はだめ」「おまけは決められた上限まで」というルールです。不動産の業界は、この法律にもとづいて国の認定を受けた自主ルール(公正競争規約)を持っています。徒歩の分数の数え方や、「新築」と書ける条件まで、そこで細かく決まっています。
この記事では、景品表示法の基本と、不動産の表示規約・景品規約の主なルールを扱います。宅建業法の広告のルール(誇大広告の禁止・広告を始められる時期)は宅建業の広告のルールでくわしく説明しています。
身近な例で考えると
登場人物は2人です。不動産会社で広告を作る人=あかりさん、マンションを探している会社員=けんじさんです。
あかりさんは、駅の近くの分譲マンションの広告を作っています。次の順に考えてみます。
- 駅からマンションまで、道を歩くと650メートルあります。あかりさんは「徒歩8分」と書こうとしました。
- マンションは1年半前に完成し、まだ誰も住んでいません。あかりさんは「新築」と書こうとしました。
- 売れ残った部屋を3,800万円から3,500万円に値下げします。「3,800万円→3,500万円」と並べて書きたいと考えました。
- 先月売れた部屋の写真が人気なので、そのまま広告に残しておこうと考えました。
けんじさんの立場で見ると、どれも部屋を選ぶときの大事な判断材料です。だから表示規約は、それぞれに決まりを置いています。
- 徒歩の分数:道路の距離80メートルを1分として計算し、1分未満の端数は1分に切り上げます。650÷80=8.125なので、正しくは「徒歩9分」です。
- 新築:建築工事が終わってから1年未満で、まだ誰も住んだことがない物件だけです。1年半たっているので、誰も住んでいなくても「新築」とは書けません。
- 値下げの表示:前の価格を比べて見せる「二重価格表示」には条件があります。条件を満たさないと、不当な二重価格表示になります。
- 売れた部屋:もう取引できない物件の広告は「おとり広告」です。してはいけません。
たとえるなら、規約は「業界のみんなで決めた広告の作り方の約束」です。ただし本物のルールでは、守る義務があるのは規約に参加している事業者です。また、景品表示法そのものは法律なので、規約に参加していない事業者にも適用されます。
条文ではこう決まっている
景品表示法(法律)
- 目的(1条):商品やサービスの取引で、不当な景品や表示でお客さんを誘うことを防ぐ。そして、一般消費者の利益を守る。
- 景品類・表示(2条3項・4項):どちらも、取引にからめてお客さんを誘うためのもので、内閣総理大臣が指定するもの。不動産の広告やチラシは「表示」にあたります。
- 景品の制限(4条):内閣総理大臣は、必要があると認めるとき、景品の額の上限などを決めたり、景品を禁止したりできる。
- 不当表示の禁止(5条):次の3つの型の表示をしてはならない。
- 優良誤認(ゆうりょうごにん):品質や中身を「実際のものよりも著しく優良であると示し」て、お客さんに誤解させる表示(1号)。例:日当たりが悪いのに「全室南向き」と書く。
- 有利誤認(ゆうりごにん):価格などの取引条件を、実際より「著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」(2号)。例:ほかの物件と同じ値段なのに「地域最安値」と書く。
- 上の2つのほかに、誤解されるおそれがあるとして内閣総理大臣が指定する表示(3号)。
- 措置命令(7条1項):4条や5条に違反する行為があると、内閣総理大臣は、その行為の差止めや、再発を防ぐための措置などを命じられる。
- 根拠の資料(7条2項):優良誤認かどうかを判断するため、期間を決めて、表示の根拠となる資料を出すよう求められる。出さないと、優良誤認の表示とみなされる。
- 課徴金(8条):優良誤認や有利誤認の表示をした事業者には、対象の売上額の「百分の三」(3%)にあたる課徴金の納付が命じられる。ただし、その額が150万円未満なら命じられない。表示が不当だと知らず、知らないことに相当の注意を怠っていなかった事業者にも命じられない。なお、過去10年以内に課徴金の納付を命じられたことがある事業者がくり返したときは、率が「百分の四・五」(4.5%)に上がる(8条5項)。
- 公正競争規約(36条):事業者や事業者の団体は、「内閣総理大臣及び公正取引委員会の認定を受けて」、景品や表示について自主的なルール(協定・規約)を作れる。
不動産の表示規約・景品規約(業界の自主ルール)
不動産公正取引協議会連合会などが運用する規約です。表示規約は2022年9月1日施行の版、景品規約は2025年8月26日施行の版が現在のものです(景品の上限を決めた3条は、2025年の改正で変わっていません)。
- 守る人(表示規約4条4項の「事業者」):宅建業の免許を持つ事業者のうち、公正取引協議会の構成団体に所属する人と、規約に個別に参加した人。
- 広告を始める時期(表示規約5条):宅地の造成や建物の建築の工事が終わる前は、宅建業法33条の許可などの処分があった後でないと広告できない。
- 必要な表示事項(表示規約8条):媒体と物件の種類ごとに、決められた事項(広告をした会社、所在地、価格など)を見やすく表示する。
- 徒歩の所要時間(施行規則9条):「道路距離80メートルにつき1分間」で計算し、1分未満の端数は1分にする。
- 自転車の所要時間(施行規則9条):道路の距離を示して、走るのに通常かかる時間を書く。
- 電車などの所要時間(施行規則9条):朝の通勤ラッシュ時の所要時間を示す。乗換えがいるときはその旨を示す。
- 面積(施行規則9条):メートル法で書く。畳の数で広さを示すときは、1畳あたり1.62平方メートル以上という意味で使う。
- 新築(表示規約18条1項):「建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないもの」。
- 一番・格安などの言葉(表示規約18条2項):「最高」のような一番を意味する言葉、「日本一」のようにほかの会社より優れていることを意味する言葉、「格安」「掘出」のような安さを強調する言葉、「完全」「万全」のように欠けるところがないことを意味する言葉などは、裏づけとなる合理的な根拠の資料を持っていなければ使えない。さらに、「最高」などの一番を意味する言葉と「格安」などの安さを強調する言葉は、資料を持っているだけでは足りず、その根拠となる事実を広告に併せて書く場合に限って使える。
- 不当な二重価格表示(表示規約20条):事実と違う、または実際より有利と誤解されるおそれのある二重価格表示をしてはならない。
- おとり広告(表示規約21条):次の3つの表示をしてはならない。①物件が存在しないので、実際には取引できない物件。②物件は存在するが、実際には取引の対象になりえない物件。③物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件。
- 景品の上限(景品規約3条):懸賞(くじなどで当たる人を決める方法)の景品は「取引価額の20倍又は10万円のいずれか低い価額」まで。景品の総額は、取引予定総額の100分の2以内。懸賞によらない景品(全員にあげるもの)は「取引価額の10分の1又は100万円のいずれか低い価額」まで。
- 取引価額(景品規約施行規則5条):事業者が売主のときは売買代金。媒介(仲介)のときは、受け取れる報酬の額。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(優良誤認):あかりさんが、北向きの部屋もあるのに「全戸南向き」と書いた。品質を実際より著しく良く見せる表示なので、景品表示法5条1号の不当表示にあたります。
- 当てはまらない(新築):完成から10か月で、モデルルームとして見せていただけの部屋。誰も住んだことがないので、「新築」と書けます。人が住んだことがあれば、10か月でも「新築」とは書けません。
- 当てはまる(おとり広告):先月売れた部屋を「まだ空いています」と広告に残した。存在はしても取引の対象になりえない物件なので、おとり広告です。わざとでなくても、広告を直さずに残せば同じ問題が起きます。
- ひっかけやすい(端数の扱い):道路距離500メートル。500÷80=6.25なので、切り捨てて「6分」ではなく、切り上げて「7分」です。直線距離ではなく、道路の距離で測る点にも注意します。
- ひっかけやすい(二重価格):値下げの前に、3,800万円で2か月以上売り出していた。値下げから6か月以内に、公表日と値下げした日を書いて「3,800万円→3,500万円」と表示する。この形なら、施行規則12条の条件にそった表示になりえます。前の価格で売り出していた期間が1か月だけなら、条件を満たしません。
- ひっかけやすい(景品):3,000万円の住戸を買った人全員に、100万円の家具をプレゼントした。懸賞によらない景品の上限は「取引価額の10分の1(300万円)」と「100万円」の低いほうなので、100万円までは上限の内側です。くじ引きで当たる人を決める場合は、上限が「20倍か10万円の低いほう」に下がります。
似ているルールとの違い
広告のルールは、3つの層で重なっています。どれも「実際より良く見せてはいけない」という点は同じですが、根拠と、違反したときの手続がちがいます。
| ルール | 根拠 | 主な中身 | 守る人 |
|---|---|---|---|
| 宅建業法32条 | 法律 | 著しく事実と違う・著しく優良や有利と誤解させる広告の禁止 | 宅建業者 |
| 景品表示法5条 | 法律 | 優良誤認・有利誤認などの不当表示の禁止 | 事業者全般 |
| 表示規約 | 業界の自主ルール(国の認定) | 徒歩分数・新築・おとり広告などの細かい基準 | 規約に参加する事業者 |
宅建業法32条の対象や、違反したときの扱いは、宅建業の広告のルールで扱っています。
「広告を始めてよい時期」も、宅建業法33条と表示規約5条の両方にあります。表示規約5条は、宅建業法33条の許可などの処分を基準にしています。つまり、開発許可や建築確認などの前は、どちらの面から見ても広告できません。
景品のルールも区別しておきます。宅建業法は報酬の上限を決めています(報酬の上限)。これに対して景品規約は、お客さんにあげるおまけの上限です。媒介の場合、景品の上限を考える「取引価額」は報酬の額です。物件の価格ではありません。
試験ではここをまちがえやすい
- 徒歩分数の端数を切り捨てる型:1分未満は「1分」に切り上げます。距離は道路距離で、80メートルで1分です。
- 「新築」の条件を1つ落とす型:「完成から1年未満」と「誰も住んだことがない」の両方が必要です。1年未満でも人が住めば新築ではありません。
- おとり広告を「存在しない物件」だけとする型:存在しても、取引できない物件・取引する気がない物件の広告もおとり広告です。
- 最上級・安さの言葉の条件をずらす型:「最高」「格安」などは、合理的な根拠の資料を持ち、しかもその根拠となる事実を併せて表示すれば使えます(規約18条2項)。使ってよい場合があるのに「一切使えない」とする選択肢と、「資料を持っていれば根拠の事実は書かなくてよい」とする選択肢の両方に注意します。
- 畳の広さの型:1畳は1.62平方メートル「以上」という意味で使います。
- 電車の所要時間の型:朝の通勤ラッシュ時の時間を示します。日中のすいた時間だけで書くのは基準にそいません。
- 景品の上限を取り違える型:懸賞は「20倍か10万円の低いほう」、懸賞によらないものは「10分の1か100万円の低いほう」です。
- 課徴金の型:率は売上額の3%(10年以内のくり返しは4.5%)。額が150万円未満なら命じられません。
宅建試験では、出題範囲(施行規則8条)でいうと、5号の「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務」にあたる分野と考えられます。5号は登録講習修了者の免除範囲に入ります(5問免除。問ごとの公式の内訳は公表されていません)。表示規約の数字や言葉の条件を、選択肢の中で少しずらす形が考えられます。規約は数字が多いので、ここで挙げた「80メートル・1分未満は切上げ・1年未満で未入居・2か月と6か月・1.62平方メートル」から押さえるのが効率的です。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
駅から物件まで道路距離で520メートルある。表示規約にそって徒歩の所要時間を表示するときは、「徒歩6分」と表示する。
答え:✕ 徒歩の所要時間は、道路距離80メートルにつき1分で計算し、1分未満の端数は1分にします。520÷80=6.5なので、「徒歩7分」です。
問2(このサイトのオリジナル問題)
建築工事が完了してから8か月たったマンションの住戸で、売主の社員が2か月住んだことがある。この住戸は完成から1年未満なので、「新築」と表示できる。
答え:✕ 「新築」と書けるのは、建築工事完了後1年未満で、しかも居住の用に供されたことがないものです(表示規約18条1項)。人が住んだことがあるので、1年未満でも「新築」とは表示できません。
問3(このサイトのオリジナル問題)
不動産会社が、すでに契約が決まって取引できなくなった物件の広告を、集客のためにホームページに残しておいた。物件そのものは存在するので、おとり広告にはあたらない。
答え:✕ 表示規約21条は、物件が存在しない場合だけでなく、存在しても実際には取引の対象になりえない物件や、取引する意思がない物件の表示もおとり広告として禁止しています。
まとめ
- 景品表示法は、優良誤認・有利誤認などの不当表示と、行き過ぎた景品を規制する。違反には措置命令、優良誤認・有利誤認には売上額の3%の課徴金(150万円未満は命じない)。
- 不動産の表示規約は、景品表示法にもとづき認定を受けた業界の自主ルール。守るのは規約に参加する事業者。
- 徒歩は道路距離80メートルで1分、端数は切上げ。新築は「完成後1年未満」かつ「未入居」。
- おとり広告は3つの型(存在しない・取引の対象になりえない・取引する意思がない)。二重価格は「2か月以上公表」「値下げから6か月以内」など条件つき。
- 景品は、懸賞なら「20倍か10万円の低いほう」、懸賞なしなら「10分の1か100万円の低いほう」。
次に読むなら、宅建業の広告のルールがおすすめです。同じ「広告」の場面を、宅建業法の側(誇大広告の禁止と広告開始時期の制限)から整理でき、この記事の表示規約とあわせて並べると混同が減ります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
法律の条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。規約は、不動産公正取引協議会連合会が公開している版で確かめています。
- e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法」(1条、2条、4条、5条、7条、8条、36条)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(32条)
- 不動産公正取引協議会連合会「公正競争規約の紹介」
- 同「規約集」(表示規約・同施行規則を収録、PDF、2025年8月26日改正反映)(規約1条、4条、5条、8条、18条、20条、21条、施行規則9条、12条)
- 同「景品規約・同施行規則」(PDF、2025年8月26日施行)(規約3条、施行規則5条)
- 同「新 景品規約が2025年8月26日に施行されました」
働く人の法律試験ノート