不動産広告の二重価格・おとり広告・特定用語:「新築」「新発売」「最寄駅」の使い方

不動産の広告で、値下げ前の価格と今の価格を並べる二重価格表示は、表示規約の施行規則12条の5つの要件をすべて満たし、実際にその価格で売っていたことを資料で示せる場合でなければ、不当な二重価格表示になります。5つの要件は、①過去の価格の公表日と値下げした日を書く、②比べる価格は値下げの直前の価格で、値下げ前2か月以上公表していたもの、③値下げした日から6か月以内の表示、④その間、物件の価値が同じ、⑤土地(現況有姿分譲地を除く)か建物の表示、です。

ひとことで言うと、不動産の広告の言葉には「使ってよい条件」が決まっています。「新築」は完成後1年未満で誰も住んだことがないもの、「新発売」は初めて購入の申込みを勧誘すること、「最高級」「格安」は根拠の資料を持ち、根拠の事実も書くときだけ、「完売」「厳選」は根拠の資料を持っているときだけ使えます。売る気のない物件や、もう売れた物件を広告するのは、おとり広告として禁止されています(表示規約18条・21条)。

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、景品表示法・表示規約が主な論点の問題は39問で、39回に出ていました。直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月と12月の2回ずつ)では毎回1問、いつも問47です。39問のうち38問、直近10回では10問すべてが「正しいもの」を選ぶ形でした(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。問47は、登録講習修了者が免除される問46〜50の中にあります。

景品表示法の不当表示と措置命令、徒歩の分数の計算、景品の上限は景品表示法と不動産の表示のルールで扱っています。この記事は、二重価格・おとり広告・特定の言葉・物件名と最寄駅の表示を、広告の文例で判定することに絞ります。

身近な例で考えると

不動産会社で広告を作る、ななみさんのチラシの下書きです。

人物立場したこと
ななみさん宅建業者の広告担当チラシの文案を作る
ともきさん上司表示規約にそって見直す

ななみさんの文案と、ともきさんの見直しです。

  1. 「新発売!第2期分譲」:第2期として初めて購入の申込みを受け付けるなら、期ごとの勧誘なので「新発売」と書ける(規約18条1項)。
  2. 「築1年半・未入居の新築住宅」:完成後1年未満でないので「新築」とは書けない。未入居でも同じ。
  3. 「3,800万円→3,500万円」:値下げ前に3,800万円で2か月以上公表して販売していたか、値下げから6か月以内か、公表日と値下げ日を書いているかなどを確かめる(施行規則12条)。
  4. 「地域最高級の仕上げ」:最上級を意味する言葉は、合理的な根拠の資料を持ち、その根拠の事実を広告に併せて書くときだけ使える(規約18条2項)。
  5. 「完売御礼・第1期」:人気が高く売れ行きがよいという印象を与える言葉なので、本当に完売したことを示す資料を持っているときだけ使える。
  6. 物件名「ひかり公園ガーデン」:公園から直線距離で300メートル以内なら、公園の名前を物件名に使える(規約19条)。
  7. 「新駅徒歩5分(予定)」:新設予定の駅は、鉄道会社など路線の運行主体が公表したものに限り、新設予定時期を明示して表示できる(施行規則9条)。
  8. 「リフォーム済み」:増改築や改装をしたことを書くときは、その内容と時期を明示する(施行規則9条)。

たとえるなら、表示規約は「広告に使う言葉の辞書」です。辞書に載っている意味でしか、その言葉は使えません。ただし本物のルールでは、言葉によって条件の重さが違い、「資料を持っていればよい言葉」と「資料に加えて根拠の事実も書く言葉」があります。

規約ではこう決まっている

表示規約(不動産の表示に関する公正競争規約)は、景品表示法にもとづき、内閣総理大臣と公正取引委員会の認定を受けた業界の自主ルールです(景品表示法36条)。守るのは、規約に参加する事業者です。

特定用語(規約18条1項)

  • 新築:建築工事完了後1年未満で、居住の用に供されたことがないもの。
  • 新発売:新たに造成された宅地、新築の住宅(工事完了前のものを含む)、一棟リノベーションマンションについて、一般消費者に初めて購入の申込みの勧誘を行うこと。数期に分けて売るときは期ごとの勧誘、申込みに一定の期間を設けるときはその期間内の勧誘をいう。
  • DK・LDK:台所と食堂(LDKは居間も)の機能が1室にあり、居室の数に応じた広さ・形・機能をもつ部屋。
  • 宅地の造成工事の完了:宅地の上に建物をすぐに建てられる状態になったこと。建物の建築工事の完了:建物をその用途どおりにすぐ使える状態になったこと。

使い方が限られる言葉(規約18条2項)

言葉の種類例使える条件
最上級を意味する最高、最高級、極、特級根拠の資料を持ち、根拠の事実を併せて書く
著しく安い印象を与える格安、掘出、激安、破格根拠の資料を持ち、根拠の事実を併せて書く
欠けるところがない完全、完ぺき、万全根拠の資料を持っている
ほかより優位日本一、業界一、当社だけ根拠の資料を持っている
一定の基準で選んだ特選、厳選根拠の資料を持っている
人気が高い完売根拠の資料を持っている

物件の名称(規約19条)

  • 物件のある市区町村内の町や字の名前、地理上の名前は使える。
  • 慣例で使われている地名や歴史上の地名、最寄りの駅・停留場・停留所の名前も使える。
  • 公園・庭園・旧跡などの施設や、海(海岸)・湖沼・河川の岸や堤防から、直線距離で300メートル以内なら、その名前を使える。
  • 直線距離で50メートル以内にある街道などの道路の名前(坂の名前を含む)を使える。
  • 別荘地には、駅名は直線距離5,000メートル以内(超えるときは距離を明記すれば使える)、海や温泉地などは直線距離1,000メートル以内など、別の基準がある。

交通・距離・リフォーム(施行規則9条)

  • 新設予定の駅・停留所:路線の運行主体が公表したものに限り、新設予定時期を明示して表示できる。
  • 距離や所要時間の起点:物件の区画のうち駅などに最も近い地点。マンション・アパートは建物の出入口。団地は、施設に最も近い区画からの数値と、最も遠い区画からの数値の両方を書く。
  • リフォーム:増築・改築・改装・改修をしたことを書くときは、その内容と時期を明示する。

二重価格とおとり広告(規約20条・21条、施行規則12条・13条)

  • 不当な二重価格表示(規約20条):価格や賃料について二重価格表示をするときに、事実と違う表示や、実際より有利と誤認されるおそれのある表示をしてはならない。
  • 過去の販売価格と比べる要件(施行規則12条):冒頭の①〜⑤をすべて満たし、その期間その価格で実際に販売していたことを資料で客観的に明らかにできる場合を除き、不当な二重価格表示にあたる。
  • 割引(施行規則13条):一定の条件にあう相手に、価格や賃料から一定の率か額を割り引くときは、条件を明示して、割引率・割引額・割引後の額のいずれかを書けば、不当な二重価格表示にあたらない。
  • おとり広告(規約21条):①物件が存在しないため、実際には取引できない物件、②物件は存在するが、実際には取引の対象になりえない物件、③物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件、の表示をしてはならない。

広告の文例で○✕判定する

ここまでの基準で、文例を判定します。「○」は規約の基準にそう表示、「✕」はそわない表示です。

文例判定決め手
完成8か月・モデルルームだけ使った住戸を「新築」○1年未満で居住なし
完成10か月・社員が住んだ住戸を「新築」✕居住の用に供された
第3期として初めて受け付ける住戸に「新発売」○期ごとの勧誘
「最高級の眺望」とだけ書き、根拠を書かない✕根拠の事実の併記がない
資料を持ったうえで「厳選物件」○選別の言葉は資料でよい
海岸から直線400mのマンションに海岸の名前✕300m以内ではない
運行主体が公表済みの新駅を時期を明示して表示○公表したものに限り可
値下げ前の価格の公表は1か月だけで二重価格✕2か月以上の公表がいる
値下げから7か月後に二重価格✕6か月以内に限る
売れた後も募集中のまま掲載を続けた✕取引の対象になりえない物件
会員だけ5%引きと条件を書き、割引後の額も表示○割引の条件と額を明示
リフォームの時期を書かずに「リフォーム済み」✕内容と時期の明示がいる

「売れた後も募集中のまま掲載」は、わざとでなくても、取引できない物件の表示になる点に注意します。

似ているルールとの違い

広告のルールは、宅建業法32条(誇大広告の禁止)と、景品表示法・表示規約の2つの層で重なっています。

比べる点宅建業法32条表示規約
根拠法律景品表示法にもとづく業界の自主ルール
守る人宅建業者規約に参加する事業者
中身著しく事実に違う・著しく有利と誤認させる表示の禁止言葉の意味、二重価格の要件、物件名の距離などの細かい基準

宅建業法の広告のルール(誇大広告の禁止と、広告を始めてよい時期)は宅建業の広告のルールで扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 二重価格の2つの期間:値下げ前に公表していた期間は「2か月以上」、表示できるのは値下げから「6か月以内」。2つの数字を入れ替えた形に注意します。
  • 二重価格の対象:土地(現況有姿分譲地を除く)と建物の表示です。
  • 新築の2つの条件:完成後1年未満と、居住の用に供されたことがないことの両方。
  • 新発売:初めての購入の申込みの勧誘。期ごとに分けて売るときは、期ごとに新発売と書けます。
  • 言葉の条件の重さ:最上級と安さの言葉は「資料+根拠の事実の併記」、完全・優位・選別・人気の言葉は「資料」。
  • 物件名の距離:公園・海などは直線距離300メートル以内、道路は50メートル以内。道路距離ではなく直線距離です。
  • 新設予定の駅:運行主体が公表したものに限り、新設予定時期を明示して表示できます。
  • おとり広告の3つの型:存在しない物件だけでなく、取引の対象になりえない物件、取引する意思がない物件も入ります。

宅建試験では、問47は直近10回すべてが「正しいもの」を選ぶ形でした。4つの肢のうち3つは規約の基準と食い違う文なので、数字(2か月・6か月・300メートル・1年)や、言葉ごとの条件の違いで、ずれを見つける練習が役に立ちます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
鉄道会社がまだ公表していない新設予定の駅を、物件の最寄駅として広告に表示することはできないが、鉄道会社がその駅の新設を公表した後であれば、新設予定時期を明示して表示することができる。

答え:○ 分かれ目は、新設予定の駅を表示できる条件です。表示規約施行規則9条は、新設予定の駅や停留所は、その路線の運行主体が公表したものに限り、新設予定時期を明示して表示できるとしています。まだできていない駅は一切書けない、と考えると✕にしてしまいます。公表前の駅を書いたり、時期を書かずに書いたりすると、基準にそいません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
分譲マンションの広告で「最高級の仕上げ」という言葉を使う場合、事業者がその表示を裏づける合理的な根拠の資料を持っていれば、根拠となる事実を広告に併せて表示する必要はない。

答え:✕ 分かれ目は、言葉の種類ごとの条件の重さです。表示規約18条2項は、最上級を意味する言葉と、著しく安いという印象を与える言葉は、合理的な根拠の資料を持っていることに加え、根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使えるとしています。正しくは、「最高級」は根拠の事実も書かなければ使えません。資料を持っていれば足りるのは「完全」「業界一」「厳選」「完売」などの言葉で、そちらの条件と取り違えた文です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
値下げの前に3か月間、実際に販売のために公表していた土地の価格を比較対照価格にして、値下げした日から8か月後の広告で、過去の価格の公表日と値下げした日を明示すれば、二重価格表示をすることができる。

答え:✕ 分かれ目は、二重価格表示ができる期間です。表示規約施行規則12条は、過去の販売価格を比較対照価格にする二重価格表示を、値下げの日から6か月以内に行うものに限っています。正しくは、8か月後の広告では、ほかの要件を満たしていても二重価格表示はできません。「2か月以上」は値下げ前に価格を公表していた期間の要件で、3か月の公表はその点では足りています。2つの期間を取り違えた文です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「税・その他」で続けて解けます。

まとめ

  • 過去の価格と比べる二重価格は、公表日と値下げ日の明示、値下げ前2か月以上の公表、値下げから6か月以内、価値の同一性、土地か建物、の5つと、販売の実績を示す資料がそろったときだけ。
  • おとり広告は、存在しない・取引の対象になりえない・取引する意思がない、の3つの型。
  • 新築は完成後1年未満かつ未入居、新発売は初めての購入の申込みの勧誘(期ごと)。
  • 最上級と安さの言葉は資料と根拠の事実の併記、完全・優位・選別・人気の言葉は資料。
  • 物件名は、公園や海などは直線300メートル以内、道路は50メートル以内。新設予定の駅は運行主体が公表したものだけ、時期を明示して。

次に読むなら、景品表示法と不動産の表示のルールがおすすめです。徒歩の分数の計算や景品の上限など、問47で並んで出る残りの基準を確かめられます。登録講習修了者の免除の範囲は宅建試験の5問免除で扱っています。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

法律の条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。規約は、不動産公正取引協議会連合会が公開している規約集で確かめています。

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