特定行政庁と建築主事の違い:建築確認・許可・指定はだれがするか(建築基準法)

ひとことで言うと、特定行政庁(とくていぎょうせいちょう)は「建築主事を置く市町村ではその市町村長、それ以外の市町村では都道府県知事」です(建築基準法2条35号)。建築主事は、建築確認や完了検査をする役所の担当者です。建物の計画が法律に合うかを確かめる「確認・検査」は建築主事等か民間の指定確認検査機関、ルールの例外を認める「許可」や道路・角地の「指定」、違反への「命令」は特定行政庁、という分担になっています。

この記事では、この権限の割り振りと、建築審査会(けんちくしんさかい)の同意が要る許可・指定を扱います。確認がいる建物の範囲と手続は建築確認の記事、2項道路の測り方は道路と接道義務の記事に任せます。どの市町村が特定行政庁かの一覧は、各都道府県・市町村が公表しているので、ここには載せません。条文は令和8年4月1日時点の建築基準法を e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

登場人物は、家を建てるみさきさん(建築主)と、設計を頼まれた建築士のこうじさんです。舞台は、建築主事を置いているB市と、置いていないC町で、どちらもA県の中にあります。

  1. みさきさんは、B市内の土地に木造2階建ての家を建てることにした。土地は幅3メートルの古い道に面していて、B市長がこの道を2項道路に指定している。
  2. こうじさんは、工事の前に、建築確認の申請書をB市の建築主事に出すか、民間の指定確認検査機関に出すかを選んだ。どちらで確認を受けても、確認済証の扱いは同じ。
  3. 土地は道路の角にあり、B市長が建蔽率を10分の1増やせる角地に指定していた。この指定をしたのは、B市の特定行政庁であるB市長。
  4. 同じころ、みさきさんの兄はC町に家を建てる準備をしていた。C町は建築主事を置いていないので、C町の区域の特定行政庁はA県知事。確認は、A県の建築主事か指定確認検査機関がする。
  5. 完成後に違反が見つかったときに、建築主へ直すよう命令するのは、B市ならB市長、C町ならA県知事(特定行政庁)。

たとえるなら、建築主事等は「答案が決まりどおりに書けているかを採点する係」、特定行政庁は「決まりの例外を認めたり、違反した人に直すよう命じたりする責任者」です。ただし本物のルールでは、採点係(建築主事等)も特定行政庁と同じ役所の中にいることが多く、建築主事を置く市町村か、置かない市町村かで、特定行政庁が市町村長か知事かが変わります。

条文ではこう決まっている

特定行政庁と建築主事(2条35号・4条)

  • 2条35号:特定行政庁は、「この法律の規定により建築主事又は建築副主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。」ただし書で、97条の2・97条の3の規定により建築主事等を置く市町村の区域では、政令で定める建築物について都道府県知事とする、と分けています。
  • 4条1項:政令で指定する人口25万以上の市は、建築主事を置かなければならない。
  • 4条2項・3項:それ以外の市町村も、建築主事を置くことができる。置こうとするときは、前もって都道府県知事に協議する。
  • 4条5項:都道府県は、建築主事を置く市町村の区域の外の確認などの事務のために、建築主事を置かなければならない。
  • 4条6項〜8項:建築主事は、一級建築基準適合判定資格者として登録された職員から任命する。必要なら、二級の資格者から建築副主事を置ける。条文では、建築主事と建築副主事を合わせて「建築主事等」と呼びます(6条1項)。

確認・検査・命令・審査(6条・6条の2・7条・9条・78条・94条)

  • 6条1項:建築主は、工事の前に「確認の申請書を提出して建築主事又は建築副主事(以下「建築主事等」という。)の確認」を受け、確認済証の交付を受けなければならない。同じかっこ書の続きで、建築副主事の確認は大規模建築物以外の建築物に限られています。
  • 6条の2第1項:国土交通大臣や知事の指定を受けた者(指定確認検査機関)の確認は、6条1項の確認とみなし、その確認済証は6条1項の確認済証とみなす。
  • 6条の2第5項・6項:指定確認検査機関は、確認の審査の報告書を特定行政庁に出す。特定行政庁が、その計画は法令に合わないと認めて建築主と機関に通知すると、確認済証は効力を失う。
  • 7条・7条の2:工事が終わったあとの完了検査も、建築主事等か、検査を引き受けた指定確認検査機関がする。
  • 9条1項:「特定行政庁は、建築基準法令の規定」などに違反した建築物について、建築主・工事の請負人・所有者などに、除却・移転・改築・修繕・使用禁止などの措置を命ずることができる。
  • 78条1項:建築審査会は、「建築主事を置く市町村及び都道府県」に置く。この法律に定める同意と、審査請求の裁決の議決をする。
  • 94条1項:特定行政庁・建築主事等・指定確認検査機関などの処分への審査請求は、建築審査会にする。

特定行政庁がする許可・指定と、建築審査会の同意

宅建試験の範囲に出てくる主なものを並べます。「同意」の欄は、特定行政庁が前もって建築審査会の同意を得る必要があるかです。

特定行政庁がすること建築審査会の同意条文
違反建築物への是正の命令不要9条1項
位置指定道路の指定不要42条1項5号
2項道路の指定幅1.8m未満なら要る42条2項・6項
接道義務の例外1号の認定(幅4m以上の道に2m以上接する小規模な建物)は不要、2号の許可は要る43条2項
道路内の公衆便所などの許可要る44条1項2号
壁面線の指定要る(公開の意見聴取も)46条1項
用途制限の例外の許可要る(公開の意見聴取も)48条15項
容積率を超える許可(機械室など)要る52条14項・15項
角地の指定不要53条3項2号
建蔽率を超える許可(壁面線・公園内など)要る53条4項・5項・6項3号・9項

用途制限の例外の許可(48条各項のただし書)には、例外の例外があります。すでに許可を受けた建物の増築などで政令に当たる場合は意見聴取も同意も要りません(48条16項1号)。住居系の地域(48条1項〜7項)のただし書の許可で、日常生活に必要な政令の建物に、騒音などで住まいの環境が悪くならないための措置がとられているものは、同意だけが要りません(同項2号)。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる(町長ではなく知事):C町の古い道を2項道路に指定するのはA県知事です。C町は建築主事を置いていないので、2条35号の「その他の市町村の区域」に当たります。「町の道だから町長」とは決まりません。
  • 当てはまらない(確認の申請先):みさきさんの確認申請の相手は、B市長(特定行政庁)ではなく、B市の建築主事等か指定確認検査機関です(6条1項・6条の2第1項)。特定行政庁は確認そのものはしません。
  • 当てはまらない(町に建築審査会):建築審査会は、建築主事を置く市町村と都道府県に置かれます(78条1項)。C町には置かれず、C町の区域で同意が要る許可は、A県知事がA県の建築審査会の同意を得てします。
  • ひっかけやすい(民間の確認済証):指定確認検査機関の確認済証を受けていても、特定行政庁が報告書を見て法令に合わないと認め、通知すれば、確認済証は効力を失います(6条の2第6項)。工事のあとに違反が分かれば、特定行政庁は是正を命じられます(9条1項)。
  • ひっかけやすい(指定ならすべて同意が要る、ではない):角地の指定(53条3項2号)や位置指定道路の指定(42条1項5号)には、建築審査会の同意の定めがありません。同意が要るのは、幅1.8メートル未満の道を2項道路にする指定や、壁面線の指定のように条文に書かれたものです。

似ているルールとの違い

建築基準法には、名前の似た4つの役が出てきます。だれが何をするかで分けます。

役どんな人・組織主な仕事
建築主事等市町村・都道府県の資格を持つ職員建築確認、完了検査
指定確認検査機関大臣・知事が指定した民間の機関建築確認、完了検査(建築主事等と同じ扱い)
特定行政庁建築主事を置く市町村の長、ほかは知事許可・指定・是正の命令
建築審査会建築主事を置く市町村と都道府県の合議の機関許可などへの同意、審査請求の裁決

「確認」と「許可」の違いも押さえます。確認は、計画が法令に合っているかを確かめる手続で、合っていれば確認済証が出ます。許可は、本来は建てられない建物などを、特定行政庁が支障がないと認めて例外として認めるものです。許可を受けた建物も、工事の前には別に確認が要ります。用途制限の例外の許可の中身は用途地域の記事、建蔽率の角地の計算は建ぺい率と容積率の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、建築基準法の「総合」型(1問に論点が混ざる問題)が主な論点の問題は50問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では20問でした。建築確認が主な論点の問題は12問(直近10回では0問)です。特定行政庁だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 確認の主体のすり替え:確認をするのは建築主事等か指定確認検査機関。特定行政庁が確認をする、とする形は誤りです。
  • 特定行政庁の決め方:市か町かではなく、建築主事を置いているかで決まります。置いていれば市町村長、置いていなければ知事(2条35号)。
  • 同意の要る・要らない:1.8メートル未満の2項道路の指定、43条2項2号の許可、壁面線の指定、用途・容積率・建蔽率の例外の許可は同意が要ります。角地の指定、位置指定道路の指定、43条2項1号の認定には同意の定めがありません。
  • 公開の意見聴取:用途制限の例外の許可と壁面線の指定は、同意に加えて、利害関係を持つ人の出頭を求めた公開の意見聴取が要ります(48条15項・46条1項)。
  • 審査請求の行き先:特定行政庁や建築主事等の処分への審査請求は、建築審査会にします(94条1項)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
A県のC町は、建築主事を置いていない。C町の区域内にある幅3メートルの古い道を、建築基準法42条2項の道路として指定するのは、C町長である。

答え:✕ 分かれ目は、特定行政庁がだれかです。特定行政庁は、建築主事等を置く市町村の区域では市町村長、それ以外の市町村の区域では都道府県知事です(建築基準法2条35号)。正しくは、建築主事を置いていないC町の区域で2項道路を指定するのはA県知事です。町長が特定行政庁になるのは、その町が建築主事を置いた場合(4条2項)で、市か町かで決まると考えると取り違えます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
B市長は、B市の特定行政庁である。指定確認検査機関から確認済証の交付を受けて建てられた住宅であっても、建築基準法令の規定に違反していれば、B市長は、その建築主に対し、違反を是正するために必要な措置を命ずることができる。

答え:○ 分かれ目は、民間の確認済証があると特定行政庁が命令できなくなるかです。特定行政庁は、建築基準法令の規定に違反した建築物について、建築主などに除却・改築・修繕・使用禁止などの措置を命ずることができます(建築基準法9条1項)。指定確認検査機関の確認は建築主事等の確認とみなされますが(6条の2第1項)、違反を直させる命令の権限は特定行政庁に残ります。「確認済証があれば適法と確定する」と考えると✕にしてしまいます。確認や検査をする建築主事等・指定確認検査機関と、命令をする特定行政庁は別の役です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
建築主事を置くD市の市長が、街区の角にある敷地を、建蔽率に10分の1を加える敷地(角地)として指定する場合には、あらかじめ、D市の建築審査会の同意を得なければならない。

答え:✕ 分かれ目は、その指定に建築審査会の同意が要るかです。角地の指定は、特定行政庁が指定するものと書かれているだけで(建築基準法53条3項2号)、同意の定めはありません。正しくは、D市長は建築審査会の同意なしに角地を指定できます。同意が要るのは、壁面線による建蔽率の緩和や公園の中の建物などの「許可」(53条4項・5項・6項3号。同意は9項)や、幅1.8メートル未満の道を2項道路にする指定(42条6項)で、これらと取り違えた形です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。

まとめ

  • 特定行政庁は、建築主事等を置く市町村なら市町村長、それ以外は都道府県知事(2条35号)。
  • 建築確認・完了検査は、建築主事等か指定確認検査機関(6条・6条の2・7条・7条の2)。
  • 許可・指定・違反への命令は特定行政庁。確認済証があっても、違反なら是正を命じられる(9条1項)。
  • 建築審査会の同意が要るのは条文に書かれたものだけ。角地の指定・位置指定道路の指定には同意の定めがない。
  • 建築審査会は建築主事を置く市町村と都道府県に置き、審査請求の裁決もする(78条・94条)。

このサイトで次に読むなら、特定道路による容積率の緩和の記事です。特定行政庁の指定とは関係なく、道路の幅と距離だけで容積率が変わる場面を、計算で確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov 法令検索(法令API)で令和8年4月1日時点の建築基準法を確かめました。宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。

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