建物の高さの制限をわかりやすく:道路斜線・隣地斜線・北側斜線・日影規制・絶対高さ

建物の高さには、いくつかの「上限の決まり」が重なってかかります。ひとことで言うと、①低層住居専用地域などで決まった高さを超えない(高さの限度)、②道路やとなり・北どなりの土地に向けた「斜めの線」の下におさめる(斜線制限)、③まわりに長い時間かげを落とさない(日影規制)、の3種類です(建築基準法55条・56条・56条の2)。ほかに、都市計画で決める高度地区もあります(58条)。

宅建試験で大事なのは、どの制限がどの用途地域にかかるかです。道路斜線制限はどの用途地域にもかかります。北側斜線制限は、低層住居専用地域・田園住居地域・中高層住居専用地域だけです。この記事では、この割りふりと、計算に使う数字を扱います。条文は、令和8年4月1日時点で施行されているものを e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

自分の土地に賃貸マンションを建てようとしている、けんじさんの話です。

人物立場したこと
けんじさん土地の持ち主5階建てのマンションを計画
さきさん設計をする建築士高さの制限を確かめる
みどりさん北どなりに住む人日当たりを気にしている
  1. けんじさんの土地は、第一種中高層住居専用地域にある。南側で幅6メートルの道路に接し、北どなりはみどりさんの家。
  2. さきさんは、まず道路斜線制限を確かめた。住居系の地域なので、道路の反対側の境界線からの水平距離に1.25を掛けた高さが上限になる。建物を道路の境界線ぎりぎりに建てると、その位置の上限は6×1.25=7.5メートル。
  3. そこで、建物を道路から2メートル下げた。すると、道路の反対側の境界線も2メートル外側にあるとみなされる。建物の道路側の壁から測ると2+6+2=10メートル。上限は10×1.25=12.5メートルに上がった。
  4. 次に日影規制。この市は、けんじさんの地域を日影規制の対象区域に指定していなかった。そのかわり、中高層住居専用地域なので北側斜線制限がかかる。
  5. 北側斜線制限は、真北方向の距離×1.25に10メートルを足す。北の境界線から4メートル離れた壁なら、10+4×1.25=15メートルが上限。もし市が条例でこの地域を日影規制の対象区域にしていたら、北側斜線はかからず、日影規制(高さ10メートル超の建物が、冬至の日にみどりさんの土地などへ一定時間以上かげを落とせない)を守ることになる。

たとえると、斜線制限は「道路やとなりの土地の上に、見えない斜めの屋根がかかっていて、建物はその下におさめる」決まりです。ただし本物のルールでは、道路斜線は道路から一定の距離(適用距離)の範囲だけにかかり、建物を下げると斜めの線そのものが外へずれます。屋根のように動かないものではありません。

条文ではこう決まっている

低層住居専用地域などの高さの限度(55条)

  • 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域では、建物の高さは10メートルか12メートルのうち、都市計画で決めた高さを超えてはならない(1項)。
  • 10メートルと決めた地域でも、敷地に政令で決める空地があり、敷地面積が政令の規模以上で、特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=建築のルールを受け持つ市や県)が低層住宅の環境を害するおそれがないと認めた建物は、12メートルまでよい(2項)。
  • まわりに広い公園・広場・道路などがある建物や、学校などで用途上やむを得ない建物は、特定行政庁の許可があればこの制限を使わない(4項)。

この3つの地域の性格は用途地域をわかりやすくで説明しています。

道路斜線制限(56条1項1号・別表第三)

  • 建物の各部分の高さは、そこから前面道路の反対側の境界線までの水平距離に、決まった数値を掛けた高さ以下にする。
  • 掛ける数値は、低層・中高層住居専用地域、田園住居地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域が1.25。近隣商業・商業・準工業・工業・工業専用地域が1.5(別表第三)。用途地域の指定のない区域は、1.25か1.5のうち特定行政庁が決めたもの。住居系でも、特定行政庁が指定した区域や高層住居誘導地区などでは1.5になる例外があります(別表第三の四の項・備考)。
  • かかるのは、道路の反対側の境界線から一定の距離(適用距離)までの範囲だけ。距離は用途地域と容積率で決まり、20メートルから50メートルまでの幅がある(別表第三)。
  • 建物を前面道路の境界線から下げたときは、下げた距離(後退距離)の分だけ、反対側の境界線も外側にあるとみなす(56条2項)。

隣地斜線制限(56条1項2号)

  • となりの土地との境界線(隣地境界線)からの水平距離に数値を掛け、決まった高さを足したもの以下にする。
  • 中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域:20メートル+距離×1.25(特定行政庁が指定した区域では別の数値)。
  • 近隣商業・商業・準工業・工業・工業専用地域:31メートル+距離×2.5。
  • 用途地域の指定のない区域:特定行政庁が、上の2つのどちらかに決める。
  • 第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域は、2号の対象に入っていない。

北側斜線制限(56条1項3号)

  • 前面道路の反対側の境界線か隣地境界線までの「真北方向」の水平距離に1.25を掛け、決まった高さを足したもの以下にする。
  • 低層住居専用地域・田園住居地域:5メートル+距離×1.25。
  • 中高層住居専用地域:10メートル+距離×1.25。ただし、日影規制の条例で別表第四の二の項の号が指定されている中高層住居専用地域は除く。
  • それ以外の用途地域には、北側斜線制限はない。

なお、斜線制限の位置で確保される採光や通風などと同じ程度以上が確保される建物として政令の基準に合うものには、その斜線制限を使いません(56条7項)。

日影規制(56条の2・別表第四)

  • 別表第四に書かれた地域のうち、地方公共団体が条例で指定した区域(対象区域)だけにかかる。法律だけで自動的にかかるわけではない。
  • 冬至日の午前8時から午後4時まで(北海道の区域内は午前9時から午後3時まで)に、敷地境界線から5メートルを超える範囲へ、条例で決めた時間以上のかげを落としてはならない。
  • 特定行政庁が周囲の住環境を害するおそれがないと認め、建築審査会の同意を得て許可したときは例外(1項ただし書)。
  • 同じ敷地に建物が2つ以上あるときは、まとめて1つの建物とみなす(2項)。
  • 対象区域の外にある高さ10メートル超の建物でも、冬至日に対象区域の中へかげを落とすなら、対象区域内の建物とみなす(4項)。
地域(別表第四)対象になる建物かげを測る高さ
低層住居専用・田園住居軒の高さ7m超か、地階を除き3階以上地面から1.5m
中高層住居専用高さ10m超4mか6.5m
第一種・第二種住居、準住居、近隣商業、準工業高さ10m超4mか6.5m
用途地域の指定のない区域軒7m超・3階以上か、高さ10m超1.5mか4m
商業・工業・工業専用表にない(対象区域にできない)―

「かげを測る高さ」は、平均地盤面(へいきんじばんめん=建物が接する地面の平均の高さ)からの高さです。その高さの水平な面に落ちるかげの時間で判定します。

高度地区(58条)

高度地区の中では、建物の高さは、都市計画で決めた内容に合わなければなりません(建築基準法58条1項)。高度地区は、用途地域の中で、建物の高さの最高限度か最低限度を決める地区です(都市計画法9条18項)。

用途地域ごとに、どの制限がかかるか

道路斜線制限は、すべての用途地域と、用途地域の指定のない区域にかかります。残りを表にまとめます。日影規制は、上の表の地域で、条例の指定があるときだけです。

地域高さの限度隣地斜線北側斜線
低層住居専用・田園住居10mか12mなし5m+1.25
中高層住居専用なし20m+1.2510m+1.25(除外あり)
第一種・第二種住居、準住居なし20m+1.25なし
近隣商業・商業・準工業・工業・工業専用なし31m+2.5なし
用途地域の指定のない区域なしどちらかなし

低層住居専用地域では、高さの限度で原則10メートルか12メートルまでしか建てられません。20メートルから効く隣地斜線は置かれていない、と結びつけると覚えやすくなります(理由を条文が書いているわけではありません)。なお、これらの制限は建築基準法の第3章のルールなので、都市計画区域と準都市計画区域の中だけで使われます(41条の2)。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:都市計画で高さの限度が10メートルの第一種低層住居専用地域に、高さ11メートルの家を建てたい。55条1項で原則として建てられません。2項の要件を満たして特定行政庁が認めれば、12メートルまでになります。
  2. ひっかけやすい例:第一種住居地域で、北どなりの家に配慮して北側斜線制限を確かめる。名前に「住居」が入っていても、北側斜線制限がかかるのは低層・中高層住居専用地域と田園住居地域だけです。第一種住居地域にはかかりません。
  3. 当てはまらない例:商業地域に高さ8メートルの建物を建てる。商業地域は日影規制の対象区域にできず、建物も10メートル以下なので、日影規制はかかりません。北側斜線もありません。道路斜線(1.5)はかかります。
  4. ひっかけやすい例:商業地域に高さ30メートルのビルを建て、そのかげが、となりの日影規制の対象区域に落ちる。商業地域の中だから関係ない、とはなりません。高さ10メートル超で対象区域にかげを落とすので、対象区域内の建物とみなされます(56条の2第4項)。
  5. ひっかけやすい例:けんじさんが同じ敷地に、高さ12メートルの棟と高さ6メートルの棟を建てる(中高層住居専用地域の対象区域内)。日影規制では、2つの棟をまとめて1つの建物とみなします(56条の2第2項)。6メートルの棟のかげも合わせて測るので、「6メートルの棟は10メートル以下だから関係ない」とはなりません。ただし、まとめても高さは足し算になりません。9メートルの棟が2つだけなら、高さ10メートル超の建物はないので対象外です。
  6. 当てはまる例:けんじさんの土地が高度地区にも入っている。斜線制限や日影規制に加えて、都市計画で決めた高さの最高限度にも合わせる必要があります(58条1項)。

似ているルールとの違い

高さの制限は、どこから測るか、だれが中身を決めるかで分けると整理できます。

制限どこから測るか中身を決めるもの
高さの限度(10m・12m)地面からの高さ都市計画(10mか12m)
道路斜線前面道路の反対側の境界線法律(別表第三)
隣地斜線隣地境界線法律
北側斜線真北方向の境界線法律
日影規制敷地境界線から5m超の範囲のかげ条例で区域と時間を指定
高度地区都市計画の内容による都市計画

名前の似た「高度利用地区」は別のものです。高度利用地区は、容積率の最高・最低限度などを決めて、土地を高く有効に使わせる地区です(都市計画法9条19項)。高さの上限を決める高度地区と入れかえる形に注意します。容積率そのものの計算は建ぺい率と容積率をわかりやすくで扱っています。

また、道路斜線の「前面道路の反対側の境界線」は、2項道路では道の中心線から2メートルの線をもとに考えます。道路の決まりは道路と接道義務をわかりやすくで説明しています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 北側斜線の地域:低層住居専用・田園住居・中高層住居専用だけ。第一種・第二種住居地域や準住居地域にもかかるように書く形が典型です。また、中高層住居専用地域でも、日影規制の条例で指定された区域では北側斜線がかかりません。
  • 隣地斜線の地域:低層住居専用地域と田園住居地域にはかからない。「すべての用途地域にかかる」のは道路斜線のほうです。
  • 数字の組み合わせ:道路斜線は1.25と1.5。隣地斜線は20メートル+1.25と31メートル+2.5。北側斜線は5メートルと10メートル(どちらも1.25)。数字の入れかえに注意します。
  • 日影規制は条例しだい:法律だけでかかるのではなく、地方公共団体の条例で対象区域を指定したときだけ。商業・工業・工業専用地域は指定できない。
  • 日影規制の対象建物:低層住居専用地域は「軒の高さ7メートル超か3階以上」、それ以外の地域は「高さ10メートル超」。対象区域の外の建物でも、10メートル超で区域内にかげを落とせば対象。
  • 高さの限度:10メートルか12メートルのどちらかを都市計画で決める。「12メートルを超えてはならない」と一つに決めつける形や、中高層住居専用地域にもかかるとする形に注意します。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
第一種住居地域内の建物には、北側斜線制限がかかる。

答え:✕
北側斜線制限がかかるのは、第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域だけです(56条1項3号)。第一種住居地域は入っていません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
第二種中高層住居専用地域(日影規制の条例による除外はないものとする)で、建物のある部分から真北方向の隣地境界線までの水平距離が3メートルのとき、北側斜線制限によるその部分の高さの上限は13.75メートルである。

答え:○
中高層住居専用地域は「10メートル+真北方向の距離×1.25」です(56条1項3号)。10+3×1.25=13.75メートルになります。

問3(このサイトのオリジナル問題)
商業地域にある建物は、どんな高さであっても日影規制を受けることはない。

答え:✕
商業地域は対象区域にできません。しかし、高さ10メートルを超える建物が冬至日に対象区域の中へかげを落とすときは、対象区域内の建物とみなされ、日影規制を受けます(56条の2第4項)。

まとめ

  • 高さの限度:低層住居専用・田園住居地域で10メートルか12メートル(都市計画で決める)。
  • 道路斜線:すべての地域。住居系1.25、それ以外1.5。下げた分だけ反対側の境界線も外へずれる。
  • 隣地斜線:低層住居専用・田園住居地域以外。20メートル+1.25か31メートル+2.5。
  • 北側斜線:低層住居専用・田園住居(5メートル+1.25)と中高層住居専用(10メートル+1.25)だけ。
  • 日影規制:条例で指定した区域だけ。商業・工業・工業専用地域は指定できないが、区域外の10メートル超の建物も対象になりうる。

このサイトで次に読むなら、建ぺい率と容積率をわかりやすくがおすすめです。高さの制限と容積率は、どちらも「どれだけ大きな建物を建てられるか」を決めるルールで、用途地域ごとの数字を並べて覚えると混ざりにくくなります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)