ひとことで言うと、公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)は、国の行政機関などの文書を、作る→整理して保存する→保存期間が満了したら国立公文書館等に移すか廃棄する→移した文書を利用させる、という一連の流れを決めた法律です。目的の規定は、公文書等を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけています(1条)。
試験の準備では、条文の骨組み(だれが・何を・しなければならないか、努めなければならないか)を押さえれば足ります。個人情報保護法の記事の「情報公開法・公文書管理法には、どこまで触れておくか」と同じく、深追いはしません。この記事では、条文の流れと、情報公開法・個人情報保護法との違いを1枚の表にします。
身近な例で考えると
国の「くらし省」(架空の役所)で働く職員のたけるさんと、歴史を調べている研究者ののかさんが登場します。
- たけるさんは、ある政令の改正の検討を担当した。結論だけでなく、検討の経緯も文書にした(4条1号)。
- くらし省の大臣(行政機関の長)は、作った文書を分類して名前を付け、保存期間と満了する日を決めた(5条1項)。関係の深い文書は、一つの「行政文書ファイル」にまとめた(5条2項)。
- 大臣は、保存期間が満了したときに、国立公文書館等に移すか、廃棄するかを早めに決めた(5条5項)。歴史資料として重要な文書なら移管、それ以外は廃棄。
- ファイルの名前や保存期間は「行政文書ファイル管理簿」に書き、だれでも見られるようにインターネットなどで公表した(7条)。
- 保存期間が満了し、このファイルは国立公文書館に移された(8条1項)。移された文書は「特定歴史公文書等」になり、原則として永久に保存される(15条1項)。
- ののかさんは、国立公文書館に、このファイルの利用を請求した(16条1項)。情報公開法の開示請求ではなく、公文書管理法の利用請求の手続になる。
たとえ話と、本物との違い
会社の書類を「作る→棚に並べる→保存期限が来たら資料室に送るか捨てる」と決めた社内規程に似ています。ただし本物の公文書管理法では、捨てる(廃棄する)ときに、あらかじめ内閣総理大臣に協議して同意を得なければならず(8条2項)、各役所の判断だけでは捨てられません。
条文ではこう決まっている
目的と言葉の定義(1条〜3条)
- 目的(1条):公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、管理の基本的事項を定める。国などが諸活動を「現在及び将来の国民に説明する責務」が全うされるようにする。
- 行政文書(2条4項):行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書で、職員が組織的に用いるものとして行政機関が保有しているもの。官報・白書など販売目的の刊行物と、特定歴史公文書等などは除く。
- 歴史公文書等(2条6項):歴史資料として重要な公文書その他の文書。
- 特定歴史公文書等(2条7項):歴史公文書等のうち、国立公文書館等に移管されたものや、寄贈・寄託されたもの。
- ほかの法律との関係(3条):他の法律に特別の定めがある場合を除き、この法律による。
行政文書の管理(4条〜10条)
- 作成(4条):職員は、経緯も含めた意思決定に至る過程と事務・事業の実績を、合理的に跡付け、検証できるよう、処理する事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。対象の例として、法令の制定・改廃とその経緯、閣議の決定とその経緯、個人や法人の権利義務の得喪とその経緯、職員の人事などが挙がっている。
- 整理(5条):行政機関の長は、文書を分類し、名称を付け、保存期間と満了日を設定する。関係する文書を行政文書ファイルにまとめる。満了したときの措置(歴史公文書等は移管、それ以外は廃棄)を、できる限り早い時期に定めなければならない。保存期間は延長できる(4項)。
- 保存(6条):満了日まで、適切な場所と記録媒体で保存しなければならない。集中管理の推進に「努めなければならない」(2項)。
- 管理簿(7条):行政文書ファイル管理簿に記載し、事務所に備えて一般の閲覧に供し、インターネットなどでも公表しなければならない。情報公開法の不開示情報に当たるものは記載しない。
- 移管・廃棄(8条):満了したファイル等は、5条5項の定めに従って国立公文書館等に移管するか、廃棄しなければならない。廃棄するときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならず、同意が得られなければ新たに保存期間を設定しなければならない(2項)。内閣総理大臣は、特に保存の必要があると認めるときは、廃棄しないよう求めることができる(4項)。
- 報告(9条):行政機関の長は、毎年度、管理の状況を内閣総理大臣に報告しなければならない。内閣総理大臣は概要を公表する。
- 規則(10条):行政機関の長は、行政文書管理規則を設けなければならず、設けるときはあらかじめ内閣総理大臣に協議して同意を得る。
規則の作り方の目安として、内閣総理大臣決定の「行政文書の管理に関するガイドライン」があります(平成23年4月1日決定。その後改正されています)。保存期間の細かな決め方などは政令とガイドラインにありますが、試験の準備では法律の条文の流れで足ります。
国立公文書館等での保存と利用(15条〜27条)
- 保存(15条1項):特定歴史公文書等は、25条により廃棄される場合を除き、「永久に保存しなければならない」。
- 利用請求(16条1項):国立公文書館等の長は、利用の請求があったときは、不開示情報が記録されている場合などを除き、利用させなければならない。
- 時の経過(16条2項):利用させてよいかを判断するときは、作成・取得からの時の経過を考慮する。
- 不服申立て(21条):利用請求への処分に不服がある人は、国立公文書館等の長に審査請求でき、長は原則として公文書管理委員会に諮問しなければならない。
- 利用の促進(23条):一般の利用に積極的に供するよう「努めなければならない」。
- 廃棄(25条):歴史資料として重要でなくなったと認めるときは、内閣総理大臣に協議し、その同意を得て廃棄できる。
地方公共団体と罰則(34条ほか)
- 地方公共団体(34条):この法律の趣旨にのっとり、保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、実施するよう「努めなければならない」。4条〜10条が直接かかるのは国の行政機関です。
- 罰則:本則(1条〜34条)に、罰則を定めた規定はありません。改善の手段として、内閣総理大臣の勧告(31条)や、管理状況の報告・実地調査(9条)が置かれています。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:法令の改正を検討した職員が、結論に加えて検討の経緯も文書にする。4条1号は「法令の制定又は改廃及びその経緯」を挙げています。
- 当てはまる例:国立公文書館に移された文書の閲覧を、研究者が利用請求で求める。移管後の文書は特定歴史公文書等で、利用請求の対象です(16条1項)。
- 当てはまらない例:保存期間が満了した行政文書ファイルを、各省が自分の判断だけで廃棄する。あらかじめ内閣総理大臣に協議し、同意を得なければなりません(8条2項)。
- 当てはまらない例:市役所の文書の保存期間を、公文書管理法5条に従って市長が設定する義務がある、と考えること。地方公共団体は34条の努力義務で、自分たちの施策(条例など)で管理を決めます。
- ひっかけやすい例:国立公文書館に移された文書を、情報公開法で開示請求する。情報公開法の「行政文書」から、特定歴史公文書等は除かれています(情報公開法2条2項2号)。
- ひっかけやすい例:公文書管理法に違反して文書を廃棄すると、この法律の罰則で処罰される、と考えること。この法律の本則には罰則の規定がありません。
似ているルールとの違い
3つの法律の比べ方
| 項目 | 公文書管理法 | 情報公開法 | 個人情報保護法 |
|---|---|---|---|
| 何を決めるか | 文書の作成・保存・移管・廃棄 | 行政文書の開示請求 | 個人情報の扱いと自分の情報の開示請求 |
| 対象 | 行政文書・法人文書・特定歴史公文書等 | 行政文書(特定歴史公文書等は除く) | 保有個人情報(行政文書等に記録されたもの) |
| だれが請求できるか | 特定歴史公文書等の利用請求(16条) | 「何人も」(3条) | 「何人も」自己を本人とする情報(76条) |
| 地方公共団体 | 努力義務(34条) | 努力義務(25条) | 地方公共団体の機関に直接適用(議会を除く) |
地方公共団体の扱いが、3つの法律で違う点に注意します。個人情報保護法は、「行政機関等」に地方公共団体の機関(議会を除く)を含めていて(2条11項2号)、地方公共団体にも直接かかります。公文書管理法と情報公開法は、地方公共団体には努力義務です。情報公開法の不開示情報や開示の期限は情報公開法の記事、行政機関等への開示請求は行政機関等の個人情報保護の記事で扱っています。
文書の段階と、使う手続
| 段階 | 呼び名 | 見たいとき |
|---|---|---|
| 役所が保存している間 | 行政文書(2条4項) | 情報公開法の開示請求 |
| 国立公文書館等に移管した後 | 特定歴史公文書等(2条7項) | 公文書管理法の利用請求(16条) |
| 保存期間が満了して廃棄 | (なくなる) | 内閣総理大臣の同意が前提(8条2項) |
試験ではここをまちがえやすい
- 目的の言葉:「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」「現在及び将来の国民に説明する責務」(1条)。
- 作成の範囲:結果だけでなく「経緯も含めた意思決定に至る過程」。除かれるのは軽微な事案だけ(4条)。
- 廃棄の同意:行政文書ファイル等の廃棄も、特定歴史公文書等の廃棄も、内閣総理大臣に協議して同意を得る(8条2項・25条)。
- 義務と努力義務:保存・管理簿の公表・報告は「しなければならない」。集中管理(6条2項)、利用の促進(23条)、地方公共団体(34条)は「努めなければならない」。
- 移管後の手続:特定歴史公文書等は情報公開法の行政文書から除かれ、利用請求で見る。
- 罰則:本則に罰則の規定はない。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
B市は、市の文書の管理について独自の条例を定めていない。この場合でも、B市長は、公文書管理法の行政文書の管理の規定(4条〜10条)に直接従う義務を負う。
答え:✕ 分かれ目は、地方公共団体への公文書管理法の効き方です。34条は、地方公共団体は法律の趣旨にのっとり、文書の適正な管理に必要な施策を策定し実施するよう「努めなければならない」と定めています。正しくは、4条〜10条が直接かかるのは国の行政機関で、B市は努力義務を負うにとどまります。個人情報保護法は地方公共団体の機関に直接かかる(2条11項2号)ので、それと混ぜると○に見えます。情報公開法も、地方公共団体には努力義務です(25条)。
問2(このサイトのオリジナル問題)
くらし省から国立公文書館に移管された文書について、研究者Cがその内容を見たいと考えた。Cは、情報公開法の開示請求ではなく、公文書管理法の利用請求によって求めることになる。
答え:○ 分かれ目は、移管後の文書がどの法律の対象かです。国立公文書館等に移管された文書は特定歴史公文書等になり(公文書管理法2条7項)、情報公開法の「行政文書」から除かれています(情報公開法2条2項2号)。利用は、公文書管理法16条1項の利用請求によります。国の文書ならいつでも情報公開法で請求できると考えると✕に見えます。移管前、役所が保存している間は、情報公開法の開示請求の対象です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
くらし省の職員Dは、ある政令の改正の検討を担当した。Dは、改正の結論を文書に記録すれば足り、改正に至った検討の経緯を文書にする義務はない。
答え:✕ 分かれ目は、作成しなければならない文書の範囲です。4条は、経緯も含めた意思決定に至る過程を合理的に跡付け、検証できるよう、軽微な事案を除き文書を作成しなければならないとし、1号で「法令の制定又は改廃及びその経緯」を挙げています。正しくは、Dは経緯も文書にしなければなりません。政令の改正は、4条1号が名指しする事項です。結果を記録すれば足りると考えると○に見えます。
この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「基礎知識」で続けて解けます。
まとめ
- 目的:公文書等は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」(1条)。
- 流れ:作成(4条:経緯も)→整理・保存(5条・6条)→管理簿の公表(7条)→移管か廃棄(8条:廃棄は内閣総理大臣の同意)。
- 移管後は特定歴史公文書等。原則として永久保存(15条)で、利用請求の対象(16条)。情報公開法の行政文書からは除かれる。
- 地方公共団体は努力義務(34条)。本則に罰則の規定はない。
次に読むなら、基礎知識の範囲と対策の記事がおすすめです。個人情報保護・情報公開の分野を、基礎知識の足切りとあわせてどこまで勉強するかを整理しています。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「公文書等の管理に関する法律」(第1条〜第10条、第15条、第16条、第21条、第23条、第25条、第31条、第34条)
- e-Gov法令検索「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(第1条〜第3条、第25条)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(第2条第11項、第60条第1項、第76条第1項)
- 内閣府「行政文書の管理に関するガイドライン」(内閣総理大臣決定)
働く人の法律試験ノート