マインドマップは勉強に効くか:図にまとめる勉強の研究と、見ないで描くと効果が変わる理由

マインドマップ(中心のテーマから枝を放射状に伸ばして書くメモ)が勉強に効くかについて、それだけを調べた研究は多くありません。小さな実験では1週間後の記憶でややよい結果が出ていますが、差がはっきりしたとまでは言えない幅でした。教育研究でよく調べられているのは、言葉と言葉を矢印で結び、矢印に関係を書く概念地図のほうで、記憶に役立つ結果がまとまっています。

ただし大事なのは、図の形より作り方です。テキストを見ながら図を作った人は、テキストを閉じて思い出した人より、1週間後のテストの成績が低い結果でした。一方、テキストを閉じて、思い出しながら図を描くと、文章で思い出したのと同じくらい残りました。この記事では、図の作り方ごとの研究の結果を表にし、行政書士・宅建の勉強では「テキストを閉じて描き、あとで条文と照らす」形に落とします。アプリや本の紹介は扱いません。

マインドマップと概念地図は、どう違うのか

どちらも「図にまとめる」勉強ですが、形と書く中身が違います。

  • マインドマップ:紙の中心にテーマを置き、そこから枝を放射状に伸ばして、キーワードを書き足していきます。枝の先にさらに枝を出して、大きい話題から細かい話題へ広げていきます。
  • 概念地図:言葉を箱や丸で囲み、箱どうしを矢印で結びます。矢印には「〜の要件」「〜の例外」「〜と違って」のように、関係を表す言葉を書きます。研究では、このような「ノード(点)とリンク(線)の図」を学習に使う効果が調べられてきました。

法律の勉強に当てはめると、マインドマップは「行政不服審査法の全体に何があるか」のような見取り図に、概念地図は「この制度とあの制度は、どの要件で分かれるか」のような関係の整理に向いた形です。どちらの形でも、次の節以降の「どう作るか」の結果は共通して当てはまる、というのが当サイトの読み方です。

マインドマップの効果を調べた実験は、何を示したか

マインドマップを直接調べた研究として知られるのが、Farrand・Hussain・Hennessy(2002年)です。

  • どんな実験か:医学部の2・3年生50人が、約600語の文章について最初に短いテストを受けたあと、くじで2つの組に分かれました。30分の間をおいて、一方はマインドマップのやり方を教わってその文章に使い、もう一方は同じ文章を読み直して、ふだんのやり方で学びました。そのあと(別の作業をはさんで)と1週間後に、事実を思い出すテストをしました。
  • 何が分かったか:1週間後、最初の点の差をならすと、マインドマップの組がおよそ10%よい結果でした。ただし、この差の誤差の幅(95%信頼区間)は −1%〜22% で、「差がない」場合も含んでいます。2つの組のやる気が同じだったと仮定して計算し直すと、差はおよそ15%(95%信頼区間 3%〜27%)でした。
  • もう一つの結果:マインドマップの組は、自分で答えたやる気が、ふだんのやり方の組より低くなっていました。

著者は、マインドマップは文章の事実を覚える助けになると結論づけつつ、広く使う前に、使う人のやる気を高める工夫を考えるべきだと書いています。ただ、人数が少なく、文章も1本だけの実験で、主な差の誤差の幅は「差がない」場合も含んでいます。当サイトは、この1本から「ほかのやり方より効く」とまでは言い切れない、と読みます。

概念地図の研究では、何が分かっているか

概念地図は研究の数が多く、Nesbit と Adesope(2006年)がメタ分析(たくさんの実験の結果をまとめて計算し直す方法)をしています。

  • どんな研究か:小学4年生から大学生までが、概念地図を作る・直す・見る、のいずれかで学んだ55の研究(5,818人)をまとめました。分野は理科、心理学、統計、看護などです。
  • 何が分かったか:概念地図を使うことは、知識がより残ることと結びついていました。ただし効果の大きさは、地図をどう使ったか、何と比べたかによって、小さいものから大きいものまで分かれていました。多くの区分で、研究の間のばらつきも大きい結果でした。

「図にまとめると覚えやすい」は、概念地図については、条件つきで支えられています。では、どう作ると効くのか。それを調べたのが次の2つの実験です。

テキストを見ながら図を作ると、思い出す練習よりなぜ残らないのか

Karpicke と Blunt(2011年)は、理科の文章を学ぶ大学生で、概念地図づくりと思い出す練習を比べました。

  • 実験1(80人):①1回読む、②4回続けて読む、③読んだあと、文章を見ながら概念地図を作る、④読んだあと、文章を閉じて思い出して書き、もう一度読んでまた思い出す、の4つの組を比べました。③と④の学ぶ時間はそろえています。1週間後のテストでは、④が最もよく(正答の割合の平均0.67)、③(0.45)を大きく上回りました。③は、②の読み返しと意味のある差がありませんでした。
  • 実験2(120人):最後のテストを、文章で答える形と、概念地図を描く形の2種類にしました。概念地図を描くテストでも、学ぶときに思い出す練習をした場合のほうが、概念地図を作った場合より成績がよい結果でした。一人ひとりで見ても、120人中101人が、思い出す練習のほうでよい成績でした。
  • 学生の予想:実験2では、120人中90人が「概念地図づくりは、思い出す練習と同じかそれ以上に効く」と予想していました。結果は反対でした。

テキストを見ながら図を作ると、手は動いていても、中身は目の前の文字から写しています。頭から取り出す作業が少ないぶん、残りにくい、と読めます。テキストを閉じて思い出すこと全体の効果は、読むより思い出すほうが覚える記事で扱っています。

図を見ないで描くと、どうなるのか

では、図を「テキストを閉じて、思い出しながら」描いたらどうなるか。Blunt と Karpicke(2014年)がこれを調べました。

  • 実験1(32人):文章を読んだあと、文章を閉じて10分で、①概念地図を描く、②文章で書き出す、の2つを、同じ人が別々の文章で行いました。1週間後のテストの成績は、ほぼ同じでした。文章で書いたほうが思い出した中身の量は多かったものの、概念地図のほうが大事な中身を多く含んでいました。
  • 実験2(80人):「文章を閉じて思い出す」か「文章を見ながら作る」かと、「概念地図」か「文章」かを組み合わせて比べました。1週間後のテストでは、閉じて思い出した組が、見ながら作った組を上回りました。閉じて思い出した組の中では、概念地図と文章の差はほとんどありませんでした。
  • 手ごたえとのずれ:実験2では、「どれくらい覚えたか」の自己評価は、見ながら作った組のほうがやや高めでした(差は統計的に意味のある大きさではありません)。著者は、文字が目の前にあると中身がすらすら入ってくる感じがして、覚えた量を高く見積もりやすい、と説明しています。

著者は、効いているのは書く形式ではなく、思い出すこと自体だ、と結論づけています。図にするか文章にするかは、好みや中身に合わせて選んでよい、ということです。

図の作り方ごとに、効果を並べると

4つの研究を、図の作り方ごとに並べます。右の列は、研究の結果をもとにした当サイトの目安です。

図の作り方研究の結果試験勉強での扱い
マインドマップで学ぶふだんのやり方より1週間後にややよいが、差は不確か。やる気は低かった(Farrand ら 2002)見取り図として1枚だけ。時間をかけて清書しない
概念地図を作る・見る(全体)知識が残ることと結びつく。効果の大きさは使い方で分かれる(Nesbit と Adesope 2006)関係を書く矢印の言葉を中心にする
概念地図を、文章を見ながら作る読み返しと差がなく、思い出す練習に大きく及ばなかった(Karpicke と Blunt 2011)まとめ図づくりを勉強の中心にしない
概念地図を、文章を閉じて描く文章で思い出すのと同じくらい残った(Blunt と Karpicke 2014)閉じて描き、あとでテキスト・条文と照らす

研究の参加者は主に学生で、覚えたのは理科などの読み物です。法律の条文で同じ結果になるかを直接調べた研究は、当サイトが確かめた範囲では見つかりませんでした。それでも「見ながら作ると残りにくく、閉じて描くと残る」という向きは、思い出す練習の記事で紹介した研究と同じです。

行政書士・宅建の勉強では、どう描けばよいか

図は「まとめノートをきれいに作る」ためではなく、「閉じて思い出す」ための形として使います。手順の例です。

  1. テーマを1つに絞る:たとえば宅建の民法の「代理」、行政書士の行政法の「行政不服審査の流れ」のように、テキストの数ページ分にします。
  2. テキストを閉じて、5〜10分で描く:中心に制度の名前を置き、枝か矢印で「要件」「効果」「例外」「似た制度との違い」を書きます。矢印には「〜ならば」「ただし」のように関係の言葉を添えます。思い出せない所は空けておきます。
  3. テキストと条文で照らす:開いて、抜けた要件、逆にした主体、あいまいな数字を、色を変えて書き込みます。書き込んだ所が、次に覚える所です。
  4. 数日あけて、白紙から描き直す:前の図は見ずに、もう一度描きます。前回色を変えた所が描けたかを確かめます。

制度をまたいで比べる所は、図より表のほうが比べやすいこともあります。たとえば「辞めるときに何がいるか」のように制度を横に並べる比べ方は、宅建の民法の横断問題の記事の比較表が参考になります。閉じて図を描いたあと、こうした表と照らすと、どの要件で分かれるかが見えます。

気をつけたいのは、図を色分けして清書する時間です。研究で効いていたのは思い出す作業で、図の見た目ではありません。まとめノートに時間をかけすぎる問題は時間のわりに効果が薄い勉強のしかたの記事で、照らして見つかった抜けの残し方は間違いノートの記事で扱っています。また、試験の○✕は数字や「できる・しなければならない」の一語で分かれるので、図を描いたあとは、その分野の問題で確かめます。

今日からやること

  • テキストを見ながら図やまとめを作るのをやめ、「閉じて描く」に切り替える。
  • 今日の範囲から制度を1つ選び、閉じて5〜10分で「要件・効果・例外・似た制度との違い」を図にする。
  • テキストと条文を開いて、抜けと取り違えを色を変えて書き込む。
  • 数日後に、前の図を見ずに白紙から描き直し、そのあとで同じ分野の問題を解く。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

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