共用部分と敷地利用権:持分の決まり方・保存と管理と変更・専有部分と分けて売れない理由

共用部分(きょうようぶぶん)は、マンションの廊下・階段・外壁のように、部屋の持ち主みんなで使う部分です。持ち主(区分所有者)全員の共有で、一人ひとりの持分は、原則として自分の部屋(専有部分)の床面積の割合で決まります。持分は部屋と一緒に動き、部屋と切り離して売ることはできません(区分所有法11条・14条・15条)。

マンションの土地を使う権利(敷地利用権)も、規約に別の定めがなければ部屋と切り離して売れません(22条)。共用部分の工事は、「保存」なら1人で、ふつうの「管理」なら集会の普通の決議で、形や働きを大きく変える「変更」なら特別の決議で決めます(17条・18条)。

区分所有法は令和7年に改正され、令和8年4月1日から改正後の条文が施行されています。共用部分の変更は、集会に出席した人の4分の3で決めるしくみに変わり、その割合を規約で下げられるようにもなりました。令和8年度の宅建試験は、改正後の条文が基準です。

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、区分所有法が主な論点の問題は37問で、37回に出ていました。直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月と12月の2回ずつ)では毎回1問、いつも問13です(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。肢ごとの論点までは数えていません)。

この記事は、共用部分と敷地利用権に絞ります。集会の招集や決議の割合の全体は区分所有法をわかりやすく、建替え決議と復旧は建替え決議と復旧の記事で扱っています。

身近な例で考えると

舞台は、30戸の分譲マンション「みなと坂レジデンス」です。1階には店舗が2つ入っています。

人物立場したこと
はるとさん502号室の区分所有者部屋を売ろうとする
かずやさん1階の店舗の区分所有者店舗用の搬入口を使う
さとみさん管理者(理事長)集会を開き、工事を進める
みゆさん502号室を買いたい人敷地の権利が気になる
  1. 台風で共用廊下の窓ガラスが割れ、はるとさんがすぐに業者を呼んで直した。「保存行為」なので、集会を開かなくても1人でできる(18条1項ただし書)。
  2. さとみさんは、古くなった外壁を同じ色で塗り直す案を集会に出した。形や働きを大きく変えないので「管理」にあたり、出席者の過半数で決まった(18条1項本文、39条1項)。
  3. 次に、エントランスを広げて自動ドアと宅配ボックスを置く大きな工事の案を出した。形や働きを大きく変える「変更」にあたるので、区分所有者と議決権の過半数が出席したうえで、出席者の4分の3以上の賛成で決めた(17条1項)。
  4. 1階の店舗だけが使う搬入口の扉の取替えは、店舗の区分所有者のかずやさんたちで決めた(16条)。
  5. はるとさんが502号室をみゆさんに売ると、共用部分の持分と敷地利用権も一緒に移る。「部屋だけ売って土地の持分は残す」ことは、規約に定めがなければできない(15条・22条)。

たとえるなら、共用部分の持分は「部屋に付いてくる会員権」で、会員権だけを売ることはできません。ただし本物のルールでは、持分は「1部屋1口」ではなく床面積の割合です。

条文ではこう決まっている

共用部分には2つの種類がある(2条・4条)

  • 共用部分(2条4項):専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物(配管など)、4条2項で共用部分とされた附属の建物をいう。
  • 法定共用部分(4条1項):数個の専有部分に通じる廊下や階段室など、構造上、区分所有者の全員か一部の共用に供されるべき部分。そもそも区分所有権の目的にならない(だれか1人の部屋にはできない)。
  • 規約共用部分(4条2項):本来は部屋として独立できる部分(集会室・管理人室など)や附属の建物(物置・車庫の建物など)を、規約で共用部分にしたもの。この場合は「その旨の登記をしなければ」第三者に対抗できない。

共用部分の持ち主と持分(11条・13条・14条・15条・19条)

  • 持ち主(11条1項):区分所有者全員の共有。一部の人だけが使う一部共用部分は、それを使う区分所有者の共有。
  • 規約で別の定めもできる(11条2項)。ただし、区分所有者以外の人を共用部分の所有者と定めることはできない(管理者が所有者になる27条1項の場合を除く)。
  • 民法177条の不適用(11条3項):「民法第百七十七条の規定は、共用部分には適用しない。」177条は、不動産の権利の得喪は登記がないと第三者に対抗できない、という規定です。共用部分の持分は部屋と一緒に動き、部屋の登記で足りるので、持分だけの登記はしません。
  • 持分の割合(14条):各共有者の専有部分の床面積の割合による。床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積(真上から見た広さ)で測る。規約で別の定めもできる(14条4項)。
  • 部屋と一緒に動く(15条):持分は、専有部分の処分に従う。法律に別の定めがある場合を除き、専有部分と分離して持分を処分できない。
  • 費用と利益(19条):規約に別の定めがなければ、持分に応じて負担をし、共用部分から生じる利益を受け取る。

一部共用部分(3条・14条2項・16条)

  • 一部の区分所有者だけの共用に供されることが明らかな共用部分を、一部共用部分という(3条後段)。店舗専用の搬入口や、住宅部分だけが使うエレベーターなど。
  • 床面積のある一部共用部分は、それを使う区分所有者の専有部分の床面積の割合で分け、その人たちの床面積に入れて持分を計算する(14条2項)。
  • 管理は、区分所有者全員の利害に関係するもの、または全員の規約に定めがあるものは全員で行い、それ以外は、その一部共用部分を使う区分所有者だけで行う(16条)。

保存・管理・変更の決め方(17条・18条)

  • 保存行為(18条1項ただし書):各共有者が1人でできる。
  • 管理(18条1項本文):17条の変更にあたるものを除き、集会の決議で決める。決議の割合は、規約などに別の定めがなければ、出席した区分所有者とその議決権の各過半数(39条1項)。規約で別の定めもできる(18条2項)。
  • 変更(17条1項):形状か効用の著しい変更を伴う変更。区分所有者(議決権のない人を除く)の過半数で、議決権の過半数を持つ人が出席し、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上で決める。
  • 規約で変えられる範囲(17条1項のかっこ書き):出席の割合(定足数)は、過半数を上回る割合に上げることだけができる。4分の3は、2分の1を超える割合まで規約で下げられる。
  • 3分の2でよい変更(17条5項):共用部分の欠陥で他人の権利を侵害している(おそれがある)ものを取り除く工事と、高齢者・障害者などの移動の負担を軽くし、便利さと安全を高める工事は、4分の3が3分の2になる。
  • 特別の影響(17条2項・18条3項):変更や管理が、ある専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、その部屋の所有者の承諾がいる。
  • 専有部分の保存行為等(17条3項・18条4項、令和8年4月施行で新設):規約に特別の定めがあるときは、共用部分の変更や管理に伴って必要になる専有部分の保存行為や、専有部分の性質を変えない範囲の利用・改良の行為も、集会の決議で決められる。たとえば、共用部分の配管の取替えに合わせて、部屋の中の配管も工事する場面です。費用の分担などは、区分所有者の間の利害の衡平が図られるように決める(17条4項・18条5項)。

敷地と敷地利用権(2条・5条・22条〜24条)

  • 建物の敷地(2条5項):建物が建っている土地と、5条1項で規約により建物の敷地とされた土地。
  • 規約敷地(5条1項):庭・通路など、建物や建物の土地と一体として管理・使用する土地は、規約で建物の敷地にできる。
  • 敷地利用権(2条6項):専有部分を所有するための、建物の敷地に関する権利。土地の所有権の共有持分や、借地権の準共有持分など。
  • 分離処分の禁止(22条1項):敷地利用権が数人で持つ権利のときは、専有部分と敷地利用権を分離して処分できない。ただし、規約に別段の定めがあるときは別。部屋を全部持つ1人が土地の権利を単独で持つ場合も同じ(22条3項)。
  • 1人が何部屋も持つとき(22条2項):各部屋の敷地利用権の割合は、14条1項〜3項の割合(床面積の割合)による。規約で違う割合も決められる。
  • 無効の主張の制限(23条):分離処分の禁止に違反した処分でも、その無効を善意の相手方(禁止を知らなかった相手)に主張できない。ただし、不動産登記法の定めにより、分離して処分できない専有部分と敷地利用権であることを登記した後に処分されたときは、無効を主張できる。
  • 民法255条の不適用(24条):持分の放棄や相続人なしの死亡でほかの共有者に持分が移る民法255条は、分離処分が禁止される敷地利用権には適用しない。

保存・管理・変更を見分ける表

民法の共有(共有をわかりやすく)と並べると、区分所有法の特徴が見えます。

すること例区分所有法の共用部分民法の共有
保存割れた窓の修理1人でできる1人でできる
管理・軽い変更同じ色の塗り直し出席者の過半数持分の価格の過半数
変更自動ドアを付ける工事定足数+出席者の4分の3全員の同意
持分だけ売る―できないできる

いちばん大きな違いは「変更」です。民法の共有では、形や働きを大きく変える変更に共有者全員の同意がいります(民法251条1項)が、マンションでは集会の多数決で決められます。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(規約共用部分の登記):1階の集会室は、登記簿の上では分譲会社の部屋のままだった。規約で共用部分にしたが、その旨の登記をしないうちに、分譲会社が集会室を第三者に売ってしまった。区分所有者の側は、登記がないので、その第三者に「共用部分だ」と対抗できない(4条2項)。
  2. 当てはまらない(廊下の登記):共用廊下は、構造上みんなで使う法定共用部分なので、そもそもだれかの部屋にはならない。規約共用部分のような登記は問題にならない(4条1項)。
  3. ひっかけやすい(分離処分と善意の相手方):規約に定めがないのに、はるとさんが部屋だけを売り、土地の持分は自分に残す契約をした。分離して処分できない旨の登記がされる前で、買った人がそのことを知らなかったなら、はるとさんは「この処分は無効だ」と買った人に言えない(23条)。
  4. ひっかけやすい(一部共用部分の管理):店舗の搬入口の扉の取替えでも、建物全体の防火のように全員の利害に関係する内容なら、全員で決める(16条)。「一部共用部分なら、いつも使う人だけで決める」わけではない。

改正前の説明との違い

令和8年3月31日時点と4月1日時点の条文を比べると、共用部分の変更の決め方は次のように変わっています。

比べる点改正前改正後(令和8年4月1日から)
数える母数区分所有者全体集会に出席した人
必要な賛成区分所有者と議決権の各4分の3出席者とその議決権の各4分の3
規約で下げられるもの区分所有者の数(過半数まで)4分の3(2分の1を超える割合まで)
専有部分の工事規定なし規約があれば決議できる

古い教材や過去問の解説には「区分所有者及び議決権の各4分の3以上(区分所有者の定数は規約で過半数まで減らせる)」とあります。令和8年度の試験は改正後の形で答えます。変更の4分の3を「区分所有者全体の4分の3」とする肢は、改正前の数え方です。

試験ではここをまちがえやすい

  • 登記がいる共用部分の入れ替え:登記をしないと第三者に対抗できないのは、規約共用部分です。廊下などの法定共用部分には、この登記の話はありません。また、共用部分には民法177条を適用しない(11条3項)ので、「部屋を買った人が共用部分の持分を第三者に主張するには、持分の登記がいる」とする形も誤りです。
  • 持分の割合:床面積の割合で、床面積は壁の内側線で測ります(14条3項)。壁の中心線で測るとする形に注意します。規約で別の定めもできます。
  • 分離処分の例外:部屋と共用部分の持分は、法律に別の定めがない限り分離できません(15条)。一方、部屋と敷地利用権は「規約に別段の定めがあるとき」は分離できます(22条1項ただし書)。規約で外せるかどうかが、2つで違います。
  • 保存と管理の入れ替え:1人でできるのは保存行為だけで、ふつうの管理は集会の決議です。

宅建試験では、直近10回の問13のうち8回が「誤っているもの」を選ぶ形でした。正しい肢を3つ読むことになるので、条文どおりの文を正しいと判断できるかが問われます。区分所有建物の売買で宅建業者が説明する事項は重要事項説明の区分所有建物の事項で扱っています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
区分所有者40人のマンションで、規約に「共用部分の変更は、出席した区分所有者及びその議決権の各3分の2以上の多数で決する」と定めている。区分所有者25人(議決権も過半数)が出席した集会で、出席者とその議決権の各3分の2以上が賛成すれば、形状と効用の著しい変更を伴う共用部分の変更を決議できる(令和8年4月1日施行の条文による)。

答え:○ 分かれ目は、変更の4分の3を規約で下げられるかどうかです。改正後の区分所有法17条1項は、4分の3について「これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合」はその割合によるとしています。3分の2は2分の1を超えるので有効で、25人の出席は定足数(40人の過半数)も満たします。改正前は規約で減らせるのが区分所有者の数だけだったので、古い知識だと✕にしてしまいます。出席の割合(定足数)のほうは、規約で上げることしかできません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
マンションの1階の集会室は、構造上は独立した部屋だが、規約で共用部分とされている。この場合、共用部分の持分の得喪には民法177条が適用されないので、集会室が共用部分であることは、その旨の登記をしなくても第三者に対抗できる。

答え:✕ 分かれ目は、規約共用部分であることの対抗に登記がいるかどうかです。区分所有法4条2項は、規約で共用部分とした場合は「その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない」としています。正しくは、登記をしなければ第三者に対抗できません。民法177条を共用部分に適用しないとする11条3項は、共用部分の共有関係(部屋と一緒に動く持分)についての規定で、規約で共用部分にしたことを第三者に対抗する場面は4条2項が別に定めています。2つの規定を取り違えた文です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
規約に別段の定めがないマンションで、区分所有者Aが、専有部分だけをBに売り、敷地利用権は自分に残した。分離して処分できない専有部分と敷地利用権である旨の登記がされる前の売買で、Bがその禁止を知らなかった場合、Aは、この処分の無効をBに主張することができる。

答え:✕ 分かれ目は、相手方が善意か、登記の前か後かです。区分所有法23条は、分離処分の禁止に違反した処分の無効を「善意の相手方に主張することができない」としています。正しくは、登記の前の処分で、Bが知らなかったのですから、AはBに無効を主張できません。無効を主張できるのは、分離して処分できない旨の登記がされた後に処分された場合(23条ただし書)で、その場面と取り違えた文です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。

まとめ

  • 共用部分には、廊下などの法定共用部分と、規約で決めた規約共用部分がある。規約共用部分は、登記をしないと第三者に対抗できない。
  • 共用部分は区分所有者全員の共有で、持分は専有部分の床面積(壁の内側線)の割合。持分は部屋と分離して処分できず、共用部分には民法177条を適用しない。
  • 保存は1人で、管理は出席者の過半数、変更は「過半数の出席+出席者の4分の3」(令和8年4月から。改正前は区分所有者全体の4分の3)。4分の3は規約で2分の1を超える割合まで下げられ、一定の工事は3分の2。
  • 敷地利用権は、規約に別段の定めがない限り部屋と分離して処分できない。違反の無効は、登記の前なら善意の相手方に主張できない。

次に読むなら、建替え決議と復旧の記事がおすすめです。共用部分の変更は「出席者の4分の3」になりましたが、建替えは今も区分所有者全体で数えます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。改正前の17条・18条は、基準日2026-03-31の条文と比べました。

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