準法律行為的行政行為をわかりやすく:確認・公証・通知・受理と、法律行為的行政行為との違い

ひとことで言うと、準法律行為的行政行為(じゅんほうりつこういてきぎょうせいこうい)は、役所が「こういう効果を生じさせたい」という意思を示すのではなく、確かめた・証明した・知らせた・受け取ったという判断や認識を示す行為で、その効果は法律が決めているものです。伝統的な教科書では、確認・公証・通知・受理の4つに分けられます。

この分け方は学問上のもので、条文の言葉ではありません。行政手続法や行政事件訴訟法には「準法律行為的行政行為」という言葉は出てきません。試験で点になるのは、分類の名前そのものより、条文の仕組み(申請と受理、届出)と判例(通知の処分性)に結びつけた理解です。許可・特許・認可の見分けと附款は行政行為の種類と附款の記事で扱っているので、この記事では準法律行為的行政行為の側を中心にします。

身近な例で考えると

登場するのは、小さな会社で食品の輸入をしているりなさんです。りなさんが役所とやりとりする場面を、時間の順に並べます。

  1. りなさんは、食品を売る店の営業の許可を申請した。申請書が役所の事務所に着いた。役所は、遅滞なく審査を始めなければならない(行政手続法7条)。
  2. 役所は許可を出した。これは「営業してよい」という効果を生じさせる行為で、学問上は許可(法律行為的行政行為)。
  3. りなさんは、海外の食品を輸入する届出をした。検疫所長は、その食品が食品衛生法に違反すると判断し、その旨を通知した。
  4. この通知を受けると、輸入の手続が先に進まなくなる。りなさんは、通知そのものを取消訴訟で争えるか知りたい。
  5. 別の年、りなさんの会社は税金を納め忘れ、税務署長から督促(とくそく=早く納めるよう求めること)を受けた。

2の許可は、役所が「営業してよい状態をつくる」という効果をめざして出すものです。これに対して、3の通知や5の督促は、役所が判断した結果や事実を知らせる行為です。知らせたあとに何が起きるか(輸入の手続が進まない、差押えができるようになる)は、役所が決めるのではなく、法律の仕組みで決まっています。これが「準」法律行為的、と呼ばれる理由です。

たとえるなら、法律行為的行政行為は「先生が席替えを決めて発表する」こと、準法律行為的行政行為は「先生がテストの点を確かめて成績表に書く」ことです。席替えは先生の決め方しだいですが、成績表に書いたあと何が起きるか(進級できるか)は学校の規則で決まっています。ただし本物の行政では、どちらも法律の根拠にもとづいて行われ、「意思か認識か」の線引きは教科書による説明です。

伝統的な分類(教科書での整理)

代表的な教科書に共通する分け方と、よく使われる例は次のとおりです。例のあてはめは教科書による説明で、条文が決めているものではありません。

大きな分け方種類中身教科書の例
命令的行為下命・禁止義務を課す違法建築物の除却命令、営業停止
命令的行為許可禁止を解く飲食店の営業許可、運転免許
命令的行為免除義務を解く納付義務などの免除
形成的行為特許権利を与える公有水面の埋立免許
形成的行為認可私人の行為の効力を完成させる農地の権利移転の許可
形成的行為代理役所が代わりに行う教科書により例が分かれる
準法律行為的行為確認事実や法律関係を確かめて決める当選人の決定、建築確認
準法律行為的行為公証公に証明する選挙人名簿への登録、証明書の交付
準法律行為的行為通知知らせる納税の督促、代執行の戒告
準法律行為的行為受理受け取る届出・申請書の受理

命令的行為と形成的行為をまとめて法律行為的行政行為と呼びます。役所の意思(こういう効果を生じさせたい)を中身とし、その意思どおりの効果が生じる、と説明されます。準法律行為的行政行為は、判断・認識の表示に対して、法律が効果を結びつけるものです。

附款を付けられるか(教科書での説明)

伝統的な説明では、附款(ふかん=条件・期限・負担など)は役所の意思で効果を制限するものなので、意思を中身としない準法律行為的行政行為には付けられない、とされます。ただし、これは学説の説明です。実際に附款を付けられるかは、根拠になる法律が認めているか、裁量があるかで考えます。試験の正誤をこの学説だけで決める問題にはしない、というのが当サイトの立場です。

条文と判例ではこう決まっている

受理:行政手続法は「到達」で動かす(2条・7条・37条)

  • 申請(2条3号):法令に基づき、許可・認可・免許その他の自分に利益を与える処分(許認可等)を求める行為で、行政庁が諾否(だくひ=よいか、だめか)の応答をすべきこととされているもの。
  • 申請の審査(7条):「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず」。形式上の要件に合わない申請は、速やかに補正を求めるか、許認可等を拒否する。
  • 届出(2条7号・37条):形式上の要件に合う届出が、提出先の事務所に到達したときに、届出の義務が果たされたものとされる。

行政手続法は、申請も届出も「到達」を基準にしていて、役所が受理するかどうかを決める段階を置いていません。窓口で申請書を受け取らずに返す扱いをなくす趣旨と説明されています。教科書の「受理」は、受け取ったことに法律が効果を結びつける場面を説明する言葉で、行政手続法の申請・届出では、受理という行為を待たずに効果が生じます。届出の効果は行政手続法の届出の記事でくわしく説明しています。

なお、行政手続法2条7号の届出は「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為」と定義されています。これは私人が役所に知らせる行為で、役所が私人に知らせる準法律行為的行政行為の「通知」とは向きが逆です。言葉が同じなので混ぜないようにします。

通知:知らせる行為でも処分になることがある(最高裁平成16年4月26日)

最高裁判所第一小法廷平成16年4月26日判決(平成15年(行ヒ)第206号)は、輸入の届出をした人に対して検疫所長がした、食品が食品衛生法に違反する旨の通知は、「抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる」としました。理由の要点は次のとおりです。

  • 当時の食品衛生法の輸入の届出の規定は、届出をした人に、違反するかどうかの判断の結果を知らせ、応答することを予定している。通知は、その応答を具体化したもの。
  • 違反する旨の通知を受けると、届出の手続が終わったことを税関に証明できず、関税法70条によって輸入の許可を受けられなくなる。
  • そのため、通知は届出をした人の権利義務に直接影響する法的効力を持つ。

「通知は知らせるだけだから処分ではない」と一律に考えると、この判例で落とします。決め手は、通知によって法律の仕組み上、相手の法的な立場が直接変わるかです。通知・通告の処分性の判例(税関長の通知や、交通反則金の通告など)は、処分性の判例の記事で組にして整理しています。

通知のもう一つの例:督促と差押え(国税通則法37条・国税徴収法47条)

  • 納税者が納期限までに国税を完納しないときは、税務署長は、督促状によって督促しなければならない(国税通則法37条1項)。督促状は、原則として納期限から50日以内に出す(同条2項)。
  • 滞納者が督促を受け、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、滞納者の財産を「差し押えなければならない」(国税徴収法47条1項1号)。

督促は「納めてください」と知らせる行為ですが、督促があったことに、法律が「差押えをする」という次の段階を結びつけています。効果を決めているのは督促をした役所の意思ではなく、国税徴収法の条文です。教科書が督促を「通知」の例に挙げるのは、この形のためです。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例(通知):税務署長の督促。知らせる行為で、差押えに進む効果は国税徴収法47条が決めています。
  • 当てはまる例(確認):建築確認。建築計画が法令に合っているかを確かめる行為として、教科書で確認の例に挙げられます。名前に「確認」とある例です。
  • 当てはまる例(公証):選挙人名簿への登録や、証明書の交付。ある事実を公に証明する行為として説明されます。
  • 当てはまらない例:飲食店の営業許可。「営業してよい」という効果を生じさせる行為なので、法律行為的行政行為(許可)です。
  • 当てはまらない例:農地法3条の許可。条文の呼び名は「許可」ですが、売買などの効力を完成させるので、学問上は認可(法律行為的行政行為)とされます。
  • ひっかけやすい例:届出の「受理」。行政手続法の届出は、形式が整って到達すれば義務が果たされます(37条)。役所が受理しないと言っても、そのことで効果が止まるわけではありません。
  • ひっかけやすい例:食品衛生法違反の通知。知らせる行為でも、判例は処分に当たるとしました(平成16年4月26日)。「通知だから処分ではない」とは言えません。

似ているルールとの違い

比べる点法律行為的行政行為準法律行為的行政行為
中身役所の意思(効果をめざす)判断・認識(確かめた・知らせた)
効果を決めるもの役所の意思(法律の範囲内)法律
種類下命・禁止・許可・免除・特許・認可・代理確認・公証・通知・受理
附款(教科書の説明)付けられる付けられない
試験での押さえ方許可と認可の見分け(受けずにした行為の効力)条文の仕組みと処分性の判例

どちらの分類に入るかと、取消訴訟で争えるか(処分性)は別の問いです。法律行為的行政行為の多くは処分ですが、準法律行為的行政行為でも、通知の判例のように処分に当たるものがあります。逆に、行政の行為が処分かどうかは、分類の名前ではなく、相手の権利義務を直接・具体的に決めるかで判断されます。行政行為の効力(公定力・不可争力)と取消し・撤回は行政行為の記事にまとめています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 受理の段階:「申請書が到達しても、行政庁が受理するまでは審査を始める義務はない」とする形。7条は「到達したときは遅滞なく」審査を始めるとしています。
  • 通知と処分性:「通知は事実を知らせるだけなので、取消訴訟の対象にならない」と一律に言い切る形。食品衛生法違反の通知は処分に当たるとした判例があります。
  • 督促後の差押え:差押えを「することができる」、または10日の起算を「督促状を受け取った日から」とする形。国税徴収法47条1項は「発した日から起算して」、効果は「差し押えなければならない」です。
  • 届出の「通知」:行政手続法2条7号の「通知」を、役所がする準法律行為的行政行為の通知と混ぜる形。届出は私人が役所に知らせる行為です。
  • 条文の呼び名で分類する:農地法3条の「許可」を学問上の許可とする形。効果で見ると認可です。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
Aは、法律に基づく営業の許可の申請書を、B県知事の事務所に提出した。行政手続法によれば、B県知事は、申請書を受理するかどうかを決めた後でなければ、その申請の審査を開始する義務を負わない。

答え:✕ 分かれ目は、審査を始める基準が「受理」か「到達」かです。行政庁は、申請がその事務所に到達したときは、遅滞なく審査を開始しなければなりません(行政手続法7条)。正しくは、受理という段階を待たずに、到達の時点で審査を始める義務が生じます。形式上の要件に合わないときも、受け取らずに返すのではなく、補正を求めるか許認可等を拒否します。教科書の「受理」の説明や、窓口の受付の感覚と取り違えると○に見えます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
C社は、食品を輸入するため食品衛生法に基づく輸入の届出をしたところ、検疫所長から、その食品が同法に違反する旨の通知を受けた。判例によれば、この通知は、判断の結果を知らせるものであっても、取消訴訟の対象となる処分に当たる。

答え:○ 分かれ目は、通知によって相手の法的な立場が直接変わるかです。最高裁判所第一小法廷平成16年4月26日判決は、検疫所長の食品衛生法違反の通知を受けると、届出の手続の完了を税関に証明できず、関税法70条により輸入の許可を受けられなくなるので、通知は抗告訴訟の対象となる処分に当たるとしました。準法律行為的行政行為の「通知」は処分ではない、と分類だけで考えると✕に見えます。通知・通告でも、処分性が否定された例(交通反則金の通告など)があるので、仕組みで見ます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
D社は国税を納期限までに完納せず、税務署長から督促状による督促を受けた。D社がその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、D社の財産を差し押さえなければならない。

答え:○ 分かれ目は、起算点と、差押えが義務か裁量かです。国税徴収法47条1項1号は、滞納者が督促を受け、督促状を「発した日から起算して十日を経過した日まで」に完納しないときは、徴収職員は財産を「差し押えなければならない」と定めています。督促は知らせる行為ですが、その後の差押えは法律が結びつけた効果です。差押えは「できる」にとどまる、または「受け取った日から」数える、と考えると✕に見えます。督促状そのものは、原則として納期限から50日以内に出します(国税通則法37条2項)。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「行政法」で続けて解けます。

まとめ

  • 準法律行為的行政行為は、判断・認識を示し、効果は法律が決める行為。確認・公証・通知・受理の4つ(学問上の分類)。
  • 法律行為的行政行為は、命令的行為(下命・禁止・許可・免除)と形成的行為(特許・認可・代理)。
  • 行政手続法は「到達」が基準。申請は到達で審査開始(7条)、届出は到達で義務履行(37条)。
  • 通知でも処分に当たることがある(食品衛生法違反の通知、平成16年4月26日)。分類の名前でなく仕組みで判断する。

次に読むなら、処分性の判例の記事がおすすめです。この記事の通知の判例を、条例・計画・勧告などの判例と並べて、処分に当たるかどうかの物差しをそろえられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。判例は、裁判所ウェブサイトで裁判年月日・法廷・事件番号・判示事項・裁判要旨と判決全文を確かめました。行政行為の分類と例は、条文の定義ではなく学問上の整理です。

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