家事・子育てをしながら行政書士を独学で受ける:1年をどう分け、記述式をいつ始めるか

家事や子育てをしながら行政書士試験を独学で受けるなら、科目を細切れの時間で回せるものと、まとまった時間がないと進まないものに分けて、1年の計画を組みます。行政書士試験は範囲が広く、法令等・基礎知識・全体の3つの基準をすべて満たす必要があります。細切れの時間だけで受かる、という計画にはしません。

  • 細切れの時間に置く:行政手続法・行政不服審査法の条文の穴埋め、基礎知識の条文(行政書士法・個人情報保護)、前日にまちがえた肢の解き直し、文章理解を1問。
  • まとまった時間に置く:新しい単元を読んで解く、民法の事例問題、記述式を書いて答え合わせをする、3時間の通し練習。
  • 記述式は、早い時期から細切れの時間で「条文の要件を口で言う」準備をし、書く練習は試験の約6か月前から週1〜2問にする。

この記事は、試験の約1年前に始める場合で組みます。1年で足りるかどうかは、法律の勉強の経験や取れる時間で変わります。その判断のしかたは行政書士は働きながら受かるかの「時間を測って比べる」手順が、家事・子育ての生活でもそのまま使えます。

細切れの時間で回せる科目と、回せない科目はどれか

分ける基準は、「1問、1条を、それだけで完結して解けるか」です。行政手続法の条文は、1条ずつ要件と効果を確かめられます。民法の事例問題は、売主・買主・第三者のような人物の関係を整理してから解くので、途中で手が止まると最初からやり直しになります。

科目・中身細切れ(10〜15分)まとまった時間
行政手続法・行政不服審査法の条文向く(1条ずつ穴埋め)新しい章を読むとき
行政事件訴訟法・国家賠償法の判例結論の確認は向く事案と理由を読むとき
民法の事例問題向かない人物の関係を図にして解く
基礎知識(行政書士法・個人情報保護)向く(条文と数字)最初に範囲を見渡すとき
文章理解1問なら向く通し練習の中で
記述式要件を口で言う準備だけ書いて答え合わせまで

(この振り分けは当サイトの考えで、研究にもとづく分け方ではありません。)

科目ごとのやり方は、行政書士を独学で受けるにはで教材と科目の順番を、科目別の勉強法の記事で中身を扱っています。ここでは、家事の合間とまとまった時間への置き方に絞ります。

細切れの時間は「読む」より「思い出す」に使う

10〜15分しかないと、テキストを読み返したくなります。ですが、短い時間ほど、答えを見ずに思い出す練習に使うほうが残ります。

Roediger と Karpicke(2006年)の実験では、学生が教育的な内容の文章を読んだあと、①もう一度読む、②何も見ずに思い出して書く(答え合わせなし)、のどちらかをしました。5分後のテストでは読み返したほうが成績がよく、2日後と1週間後のテストでは、思い出して書いたほうが大きく上回りました。読み返したほうが、覚えているという自信は高かったことも報告されています。実験の材料は試験の条文ではなく、一般的な文章です。それでも、読み返したときの「わかった」という感覚が当てにならない、という点は条文の勉強にも当てはまります。

行政書士の勉強では、たとえば次のように使います。

  • 条文の穴埋め(5分):行政手続法の条文の写しで、「義務」「努力義務」の言葉や期間を付箋で隠し、何が入るかを言ってから付箋をめくる。
  • 前日の✕の解き直し(5分):まとまった時間にまちがえた肢を、解説を見ずにもう一度判定する。
  • ○✕を数問(5分):このサイトの行政書士の5分○✕ドリルのように、数分で区切れる練習を使う。

付箋を貼った条文の写しは、台所や洗面所など、家事の途中で目に入る場所に置いておくと、始めるまでの手間が減ります。

まとまった時間には、民法の事例と記述式を置く

行政書士の勉強で、まとまった時間にしか置けないのは次の3つです。どの曜日のどの時間に置くかは、家族の予定が分かった時点で先に押さえます。

  • 民法の事例問題:人物と時間の流れを紙に書き、どの条文を当てはめるかを決めてから肢を判定する。1単元を読んで、その場で分野別の過去問を解く。
  • 記述式の練習:問題を読み、40字程度で書き、正解例と比べて足りない要素を直す。書くだけで終えず、答え合わせまでを1回とする。
  • 3時間の通し練習(後半):本番は13時から16時までの3時間です。休日の午後に家族の協力を頼める日を、早めに押さえておきます。

まとまった時間の確保のしかたや、家族への頼み方で気持ちがすり減るときの整え方は、仕事・家族と両立しながら勉強する人の気持ちの整え方で扱っています。

1年をどう分けるか

行政書士試験は、毎年11月の第2日曜日に行われます。その日から逆算して、1年を4つの時期に分けます。科目の順番は、このサイトの勉強スケジュールの記事の「残り1年」と同じで、行政法と民法から入ります(当サイトが公開問題から数えた内訳では、この2科目で配点の多くをしめます。公式の内訳ではありません)。そのうえで、細切れとまとまった時間に何を置くかを時期ごとに変えます。

時期まとまった時間細切れの時間
12〜9か月前行政法と民法の1周目行政手続法の条文、前日の✕
9〜6か月前行政法・民法の2周目、憲法行政不服審査法の条文、判例の結論、文章理解1問
6〜3か月前記述式を週1〜2問、商法・会社法、基礎知識の範囲を見渡す基礎知識の条文、記述の要件を口で言う
3か月前〜当日3時間の通し練習、まちがえた所通し練習の✕の解き直し

この表のねらいは、細切れの時間にも「その時期に増える知識」を回すことです。1周目のうちは行政手続法、2周目からは行政不服審査法や判例の結論、と細切れの中身も少しずつ広げます。3か月前の時点で全科目に一度手が付いていれば、最後の期間を通し練習と見直しに使えます。

記述式はいつ始めるか

記述式は、40字程度で答えを書く問題です。令和7年度の合否判定基準では、記述式の配点は1問20点、3問で60点でした。採点基準や部分点の付け方は公表されていません。だからといって最後に回すと、書く練習の回数が足りなくなります。当サイトでは、2段階で始めることをすすめます。

  1. 1周目から(細切れ):民法や行政法の条文を読むたびに、「どんなときに(要件)」「どうなる(効果)」を一文で口に出す。書かなくてよいので、家事の合間でもできます。これが、あとで40字にまとめるときの材料になります。
  2. 試験の約6か月前から(まとまった時間):行政法と民法の2周目が終わるころから、週1〜2問を書いて答え合わせをする。書いた問題は、翌日ではなく1〜2週間あけてもう一度書きます。

間をあけて書き直すのは、復習の間隔の研究にもとづく使い方です。Cepeda ら(2006年)は、184本の論文の317の実験を集めて分析し、記憶がいちばん残る復習の間隔は、テストまでの期間が長いほど長くなることを示しました。集めた実験は言葉や事実を思い出す課題で、記述式の答案づくりそのものを調べたものではありません。試験まで数か月ある時期なら、同じ問題を毎日書くより、間をあけて書き直すほうが、この結果に沿った使い方になります。書き方の型は記述式の書き方で、自作の例題とあわせて説明しています。

まとまった時間が消えた週に、どの科目を残すか

家族の体調や行事で、まとまった時間がなくなる週はあります。行政書士は範囲が広いので、崩れた週に何を残すかを先に決めておきます。

  • 民法の新しい単元は止める:事例問題は細切れでは進まないので、その週は新しい単元に入らない。
  • 行政法の条文の穴埋めは続ける:細切れで回せる行政手続法・行政不服審査法だけは、1日1回でも続ける。
  • 記述式の時期なら、1問だけ残す:書く時間がなければ、その週の問題の要件と効果を口で言うところまでにする。
  • 止まった単元は後ろへずらす:翌週に2週分を詰めこまず、計画の終わりの側へ送る。

崩れた週が続いたら、取れた時間の実績で見積もりを直し、その年度で受けるか、2年に分けるかを考えます。2年に分けるときに1年目で固める科目は、上で紹介した「働きながら受かるか」の記事にまとめています。

申込・受験地・試験当日の段取り

  • 申込:令和8年度は、インターネットが7月21日(火)午前9時から8月24日(月)午後5時まで、郵送が8月17日(月)の消印有効まででした。夏休みの時期と重なるので、家族の予定表に先に書き込みます。受験手数料は10,400円です。
  • 受験する場所:住所と関係なく、全国どこの都道府県の試験場でも受験できます。ただし、申込みのあとに転居などを理由に試験場を変えることはできません。子どもを預ける先の近くで受けるなど、申込みの時点で決めておきます。
  • 試験当日:令和8年度は11月8日(日)の午後1時から4時までです。受験票(圧着はがき)は10月19日(月)に発送予定とされています。会場までの移動を含めると、昼前から夕方まで家を空けることになります。

次の年度の日程は、その年の試験案内で確かめます。

今日からやること

  • 家族の1週間の予定を書き出して、毎週ほぼ決まって空く「まとまった時間」の枠を3〜4つ探す。
  • 行政手続法の条文を数条写し、義務・努力義務・期間の言葉に付箋を貼って、家事の途中で目に入る場所に置く。
  • 試験日(11月の第2日曜日)から逆算して、自分の「12〜9か月前」「6か月前」がいつかをカレンダーに書く。
  • 条文を読んだら、要件と効果を一文で口に出す習慣を今日から始める。

1年より短い期間で始める場合の組み方は、行政書士の勉強スケジュールで、残り6か月・3か月・1か月ごとに確かめられます。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)