建物買取請求権をわかりやすく:期間が終わったとき・借地上の建物を買った人・特約で外せる場合

建物買取請求権(たてものかいとりせいきゅうけん)は、借地の上に建てた建物を、地主に「時価(じか=そのときの値段)」で買い取らせる権利です(借地借家法13条・14条)。

ひとことで言うと、借地の期間が終わって更新がないとき、借りていた人は建物を取り壊して出ていく代わりに、地主に買い取らせることができます。地主が借地権の譲渡を認めないときは、建物を手に入れた第三者も同じ請求ができます。普通の借地では、この権利を特約でなくすことはできません。

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、借地借家法の借地が主な論点の問題は37問(37回)で、直近10回では10回すべてに1問ずつ出ていました。建物買取請求権は、この借地の問題の中の肢として出る論点です(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。

この記事では、建物買取請求権と、借家の造作買取請求権との違いを扱います。借地借家法の全体(期間・更新・対抗力・定期借地)は借地借家法の記事にまとめています。

身近な例で考えると

登場人物は3人です。地主=しげおさん、土地を借りて家を建てた人(借地権者)=なおきさん、なおきさんから家を買う人=りえさんです。

  1. なおきさんは、しげおさんから、家を建てる目的で土地を30年借りた(普通の借地)。家を建て、自分の名義で登記して住んでいる。
  2. 30年がたち、なおきさんは更新を求めた。しげおさんは、自分で土地を使う事情があるとして、正当の事由(せいとうのじゆう=もっともな理由)をそなえて異議を述べた。更新はされなかった。
  3. 家をこわして更地で返すと、まだ使える家がむだになる。そこで、なおきさんは、しげおさんに「家を時価で買い取ってください」と請求した(13条1項)。

別の場面です。

  1. 借地の期間の途中で、なおきさんは家をりえさんに売りたいと考えた。借地権が土地の賃借権のときは、家と一緒に賃借権も渡すことになるので、地主の承諾がいる(民法612条)。
  2. しげおさんは承諾しなかった。それでも、りえさんは家を買い取った。
  3. りえさんは、しげおさんに対して、家を時価で買い取るよう請求できる(14条)。

たとえるなら、借りた土地に置いた大きな荷物を「持って帰れないなら、地主が引き取ってお金を払う」仕組みです。ただし本物のルールでは、払うのは「時価」で、建てたときの値段ではありません。また、地代を払わずに解除された人は、この請求ができません。

条文ではこう決まっている

  • 期間満了の買取請求(13条1項):借地権の存続期間が満了し、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者(地主)に、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るよう請求できる。
  • 無断で建て直した建物(13条2項):期間満了の前に、地主の承諾なく、残りの期間を超えて残る建物を建てていたときは、裁判所は、地主の請求により、代金の全部または一部の支払に相当の期限を許すことができる。買取請求そのものはできる。
  • 転借地(13条3項):転借地権者(また借りした人)と地主の間にも準用する。
  • 第三者の買取請求(14条):第三者が、賃借権の目的である土地の上の建物などを取得した。地主が賃借権の譲渡や転貸を承諾しないときは、その第三者は、地主に建物などを時価で買い取るよう請求できる。
  • 特約で外せるか(16条):10条(対抗力)・13条・14条に反する特約で、借地権者や転借地権者に不利なものは無効。
  • 定期借地との関係:一般定期借地権(50年以上、22条1項)と、事業用定期借地権のうち30年以上50年未満のもの(23条1項)は、「買取りの請求をしない」と特約で定められる。事業用で10年以上30年未満のもの(23条2項)は、13条が法律上適用されない。一時使用の借地も13条が適用されない(25条)。

借地の種類ごとの扱い

借地の種類期間満了の買取請求条文
普通の借地できる。外す特約は無効13条・16条
一般定期借地(50年以上)特約で外せる22条1項
事業用(30年以上50年未満)特約で外せる23条1項
事業用(10年以上30年未満)法律上かからない23条2項
一時使用の借地かからない25条

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(期間満了・更新なし):なおきさんの例。正当の事由のある異議で更新がなかったので、13条1項で請求できる。
  2. 当てはまらない(地代の不払いで解除):なおきさんが地代を長く払わず、しげおさんが契約を解除した。13条は「期間が満了し、更新がない」場合の権利なので、使えない。最高裁判所第三小法廷昭和35年2月9日判決も、借地人の債務不履行で土地の賃貸借が解除された場合は、建物買取請求権がないとした(旧借地法4条2項の事案)。
  3. 当てはまらない(事業用・期間20年):コンビニの店舗のため、公正証書で期間20年の事業用定期借地権を設定した。特約を書いていなくても、23条2項で13条がかからない。
  4. ひっかけやすい(無断で建て直した建物):期間の途中で、しげおさんの承諾なく、残りの期間より長く残る家に建て直した。それでも期間満了のとき買取請求はできる。地主の請求で、裁判所が代金の支払を待たせることがある(13条2項)。
  5. ひっかけやすい(請求する人):14条で請求するのは、建物を手に入れた第三者のりえさん。売ったなおきさんではない。家を売る前なら、なおきさんが裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てる道がある(19条)。こちらは借地権の譲渡・転貸の記事で扱っています。

似ているルールとの違い

借家(建物の賃貸借)には、よく似た「造作買取請求権」があります(33条)。造作(ぞうさく)は、借りた建物に付けた畳・建具(たてぐ=ふすまや戸)などです。

比べる点建物買取請求(借地)造作買取請求(借家)
請求する人借地権者・転借地権者/建物を取得した第三者建物の賃借人・転借人
対象建物その他の附属物貸主の同意を得て付けた造作、貸主から買った造作
いつ期間満了で更新がない(13条)/譲渡の承諾がない(14条)期間満了か解約の申入れで終わるとき
特約で外すできない(16条。定期借地は別)できる(37条に挙がっていない)

どちらも値段は「時価」です。造作買取請求も、条文は「期間の満了又は解約の申入れ」で終わるときと書いています。借りる人に不利な特約を無効にする37条は、31条・34条・35条だけを挙げていて、33条は入っていません。そのため、借家では「造作の買取りは請求しない」という特約が有効です。借家が期間の満了や解約の申入れで終わるまでの流れ(通知の期間・正当事由・法定更新)は、借家の更新と終わり方で扱っています。民法の賃貸借の基本(敷金・転貸・修繕)は賃貸借の記事にあります。

試験ではここをまちがえやすい

  • 特約の有効・無効の入れかえ:普通の借地で建物買取請求をなくす特約は無効(16条)。借家で造作買取請求をなくす特約は有効。
  • 定期借地の「特約で外す」と「法律上かからない」:一般定期借地と、30年以上50年未満の事業用は、特約で外す。10年以上30年未満の事業用は、特約がなくてもかからない。
  • 解除の場面に広げる型:地代の不払いなどで解除されたときは、建物買取請求はできません。期間満了で更新がないときの権利です。
  • 請求する人の型:14条の請求は、建物を取得した第三者がします。借地権を売った人ではありません。
  • 無断の建て直しの型:承諾なく建て直しても、買取請求そのものは失いません。裁判所が代金の支払に期限を許すことがある、という形で調整されます。

宅建試験では、借地の問題(直近10回は毎回1問)の中で、定期借地の種類と特約の関係や、造作買取請求との比べを、肢の一つとして確かめておく範囲です。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
建物の所有を目的とする普通の借地で、借地権者Aが地代を長く払わず、地主Bが債務不履行を理由に契約を解除した。Aは、Bに対し、借地上の建物を時価で買い取るよう請求できる。

答え:✕ 分かれ目は、借地がどうやって終わったかです。13条1項の建物買取請求は、存続期間が満了し、更新がないときの権利です。正しくは、債務不履行で解除されたときは請求できず、最高裁判所第三小法廷昭和35年2月9日判決も、旧借地法の同じ規定について、借地人の債務不履行による解除の場合は買取請求権がないとしました。期間満了で更新がない場合や、建物を取得した第三者の買取請求(14条)と取り違えた文です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
Aは、Bから、事業用の倉庫を所有する目的で、公正証書により期間20年の事業用定期借地権の設定を受けた。契約に建物買取請求について何も書いていなくても、期間が満了したとき、AはBに建物の買取りを請求できない。

答え:○ 分かれ目は、特約がいる定期借地か、法律上かからない定期借地かです。10年以上30年未満の事業用定期借地権には、13条が法律上適用されません(23条2項)。一般定期借地権(22条1項)や30年以上50年未満の事業用(23条1項)は、「買取りの請求をしない」と特約で定めて初めて外れるので、その形と混ぜると✕にしてしまいます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
AがBから建物の所有を目的として土地を30年借りる普通の借地で、「期間満了のとき、Aは建物の買取りを請求しない」と特約した。この特約は、借家で造作の買取りを請求しないとする特約と同じく有効である。

答え:✕ 分かれ目は、借地借家法のどの強行規定に入っているかです。13条に反する借地権者に不利な特約は、16条で無効です。正しくは、この特約は無効で、Aは期間満了で更新がなければ買取請求ができます。造作買取請求(33条)は、借家の強行規定の37条に挙がっていないので、なくす特約が有効になります。借地と借家の条文の扱いを入れかえた文です。

まとめ

  • 建物買取請求は、期間満了で更新がないとき(13条)と、地主が借地権の譲渡を承諾しないときの第三者(14条)。値段は時価。
  • 普通の借地では、なくす特約は無効(16条)。債務不履行で解除されたときは使えない。
  • 一般定期借地と30年以上50年未満の事業用は、特約で外せる。10年以上30年未満の事業用と一時使用は、法律上かからない。
  • 無断で建て直しても請求はできるが、裁判所が代金の支払に期限を許すことがある(13条2項)。
  • 借家の造作買取請求は、なくす特約が有効(37条に挙がっていない)。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。借地と借家の肢をまぜて解くと、どちらの条文かを見分ける練習になります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています。判例は裁判所ウェブサイトで確かめました。

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