消費貸借をわかりやすく:書面でする消費貸借と、利息・返す時期のルール

消費貸借(しょうひたいしゃく)は、お金やお米のように「使えばなくなる物」を借りて、あとで同じ種類・品質・数量の別の物で返す契約です。借りたお金そのもの(同じお札)を返すわけではない点が、使用貸借や賃貸借とのいちばんの違いです。

ルールの柱は3つです。1つ目、口約束なら物を受け取ったときに成立し、書面で結べば受け取る前から成立する(民法587条・587条の2)。2つ目、利息は特約がなければ請求できない(589条)。3つ目、返す時期を決めなかったときは、貸主は相当の期間を決めて「返して」と催告する(591条)。

宅建試験での出題は多くありません。当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、消費貸借が主な論点の問題は2問(平成2年度・平成3年度)で、令和7年度に担保物権の問題の中で1回出ています(副の論点として。分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。住宅ローンの土台になる契約で、令和7年度のように担保の問題の中の1つの論点として出ることもあるので、要点だけを押さえておく論点です。

身近な例で考えると

登場人物は2人です。借りる人=会社員のゆうとさん、貸す人=姉のさくらさんです。

  1. ゆうとさんは引っ越しのお金が足りず、さくらさんに「50万円を貸して」と頼んだ。
  2. さくらさんは「来月の給料日のあとに貸すね」と口で約束した。
  3. 2人は念のため、「50万円を貸す。1年後に返す。利息は年1%」と書いた紙を作り、2人とも名前を書いた。
  4. 給料日の前に、ゆうとさんの会社が引っ越し費用を出してくれることになった。ゆうとさんは「やっぱり借りなくていい」と伝えた。
  5. もし借りていたら、ゆうとさんは50万円を使って家賃や引っ越し代を払い、1年後に別のお札で50万円と利息を返すことになる。

手順2の口約束だけなら、お金を受け取るまで契約は成立していません(587条)。手順3で書面を作ったので、受け取る前から契約は成立しています(587条の2第1項)。それでも、ゆうとさんは受け取る前なら解除できます(同条2項)。

たとえるなら、消費貸借は「となりの家からお米を1袋借りて、あとで同じ銘柄の新しい1袋を返す」ような契約です。ただし本物のルールでは、利息の約束や返す時期の決め方まで条文で決まっています。ご近所の気づかいとは違い、「お礼を上乗せするのが当たり前」ではありません。

条文ではこう決まっている

成立のしかた(587条・587条の2)

  • 口約束の消費貸借(587条):相手から金銭その他の物を「受け取ることによって」効力を生じます。物の受け渡しがないと成立しない契約を、要物契約(ようぶつけいやく)といいます。
  • 書面でする消費貸借(587条の2第1項):書面ですれば、貸す人が「引き渡す」と約束し、借りる人が「受け取った物と同じ種類・品質・数量の物で返す」と約束するだけで効力を生じます。メールなどの電磁的記録でした場合も書面とみなされます(同条4項)。
  • 受け取る前の解除(587条の2第2項):書面でした場合、借主は、物を受け取るまでは契約を解除できます。貸主がその解除で損害を受けたときは、借主に賠償を請求できます。
  • 受け取る前の破産(587条の2第3項):借主が受け取る前に、どちらかが破産手続開始の決定を受けると、書面でした消費貸借は効力を失います。

利息(589条)

  • 貸主は、特約がなければ、借主に利息を請求できません。
  • 特約があるときは、借主が物を受け取った日以後の利息を請求できます。書面を作った日からではありません。

返す時期(591条)

  • 返す時期を決めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返すよう催告できます。
  • 借主は、返す時期を決めていてもいなくても、いつでも返せます。
  • 返す時期を決めていて、借主が早く返したことで貸主が損害を受けたときは、貸主は賠償を請求できます。

渡された物に問題があったとき・返せないとき(590条・592条)

  • 利息のない消費貸借では、贈与の551条が準用され、貸主は特定した時の状態で渡すと約束したものと推定されます(590条1項)。
  • 利息の有無にかかわらず、渡された物の種類や品質が契約に合わないときは、借主は、その物の価額を返すことができます(590条2項)。
  • 同じ種類・品質・数量の物で返せなくなったときは、その時の物の価額を返します(592条)。

今ある借金を消費貸借に切り替える(588条)

  • 売買代金など、すでにお金を払う義務がある人が、そのお金を消費貸借の目的にすると約束すると、消費貸借が成立したものとみなされます。これを準消費貸借(じゅんしょうひたいしゃく)といいます。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる例:ゆうとさんが書面で借りる約束をし、受け取る前に「やめます」と伝えた。→ 解除できます(587条の2第2項)。さくらさんが借りるお金を用意するために損をしていれば、その賠償を求められることがあります。
  • 当てはまる例:利息を年1%と書面で決め、4月1日に書面を作り、4月25日に50万円を受け取った。→ 利息は受け取った4月25日以後の分です(589条2項)。
  • 当てはまらない例:口約束だけで、まだお金を渡していない。さくらさんが「やっぱり貸さない」と言った。→ そもそも消費貸借は成立していません(587条)。成立していない契約の解除や債務不履行を考える場面ではありません。
  • 当てはまらない例:さくらさんの車を、ゆうとさんがただで1か月借りる。→ 借りた車そのものを返すので、消費貸借ではなく使用貸借です。
  • ひっかけやすい例:利息の約束をしないまま貸した。1年後、返す時期に「利息も付けて」と言われた。→ 特約がないので利息は請求できません(589条1項)。「お金を貸せば法定利率の利息が付く」と思うと誤ります。ただし、返す時期を過ぎて遅れた分は、利息とは別に遅延損害金(遅れたことの損害)を請求できます(419条1項)。
  • ひっかけやすい例:返す時期を決めずに貸し、ある日さくらさんが「今すぐ全部返して」と言った。→ 591条1項は「相当の期間を定めて」催告できるとしています。その日にすぐ返さなければならないわけではありません。

使用貸借・賃貸借とはどう違うか

物を貸し借りする契約は、民法に3つあります。宅建では、使用貸借・賃貸借と並べると混ざりやすいので、表で比べます。

比べる点消費貸借使用貸借賃貸借
返す物同じ種類・品質・数量の別の物借りた物そのもの借りた物そのもの
成立物を受け取って成立。書面なら約束だけで成立約束だけで成立(593条)約束だけで成立(601条)
お金利息は特約があるときだけ払わない賃料を払う
受け取る前の解除書面のとき、借主ができる書面でなければ、貸主ができる(593条の2)このような定めはない
期間を決めないとき貸主は相当の期間を定めて催告目的も決めなければ貸主はいつでも解除(598条2項)いつでも解約の申入れ。土地1年・建物3か月で終了(617条)

「受け取る前の解除」は、向きが反対になる点に注意します。消費貸借は、書面でしたときに借主が解除できます。使用貸借は、書面でないときに貸主が解除できます。どちらも「書面」と「受け取る前」がキーワードなので、だれが解除できるかを入れ替えた肢が作りやすい組み合わせです。なお、表の賃貸借の「期間を決めないとき」は民法の数字で、建物の賃貸借や、建物の所有を目的とする土地の賃貸借には、借地借家法の別のルールがあります。使用貸借のくわしいルールは使用貸借の記事、賃貸借は民法の賃貸借の記事で確かめてください。

住宅ローンと抵当権の場面では

宅建の問題で消費貸借が出てくるのは、多くは住宅ローンの場面です。銀行が家を買う人にお金を貸す契約は、金銭の消費貸借です。銀行は、返してもらえないときに備えて、買った家に抵当権を付けます。

このとき、抵当権で守られているのは「消費貸借で生まれた、お金を返してもらう権利」です。お金を返せば、守る相手がなくなるので抵当権も消えます。抵当権のしくみや、抵当権が付いた家を買う人の立場は、抵当権の記事で説明しています。消費貸借そのものの細かいルールより、「ローン=消費貸借、その担保=抵当権」という組み合わせを押さえておくと、問題文の場面が読みやすくなります。

試験ではここをまちがえやすい

消費貸借が主な論点になった問題は平成3年度が最後で、令和7年度は担保物権の問題の中の1つの論点として出ています。迷いやすいのは次の点です。

  • 成立の時期:「消費貸借は、約束だけで成立する」は、書面でなければ誤り。口約束の消費貸借は、物を受け取って成立します。
  • 受け取る前の解除の主体:書面の消費貸借で受け取る前に解除できるのは借主。使用貸借(受け取る前に貸主が解除できる)と入れ替えた肢に注意します。
  • 利息:特約がなければ請求できない。特約があっても、利息は受け取った日以後の分。
  • 返す時期を決めないとき:貸主は「相当の期間を定めて」催告。「いつでも直ちに返還を請求できる」は誤り。借主のほうは、いつでも返せます。
  • 書面の範囲:メールなどの電磁的記録でした消費貸借も、書面でしたものとみなされます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
さくらさんとゆうとさんは、さくらさんがゆうとさんに50万円を貸す契約を書面で結んだ。ゆうとさんは、50万円を受け取る前であれば、この契約を解除することができる。

答え:○ 分かれ目は、書面でした消費貸借で、受け取る前の解除がだれに認められているかです。書面でする消費貸借は約束だけで成立しますが、借主は物を受け取るまで契約を解除できます(民法587条の2第2項)。「契約が成立したのだから一方的にはやめられない」と考えると✕にしてしまいます。解除で貸主に損害が出たときは、借主が賠償します(同項)。受け取る前に解除できるのが貸主になるのは、書面によらない使用貸借です(593条の2)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
さくらさんは、利息について何も取り決めずに、ゆうとさんに50万円を貸した。ゆうとさんが約束の返す時期に元金を返したとき、さくらさんは、法定利率による利息も支払うよう請求できる。

答え:✕ 分かれ目は、利息の特約の有無です。消費貸借の貸主は、特約がなければ借主に利息を請求できません(589条1項)。正しくは、利息の約束をしていない以上、期限どおりに元金を返せば利息は払わなくてよい、です。法定利率(404条)は、利息を払う約束があって利率を決めていないときに使う率で、利息がつくかどうかを決める規定ではありません。返す時期に遅れたときの遅延損害金(419条1項)とも区別します。

問3(このサイトのオリジナル問題)
さくらさんは、返す時期を決めずに、ゆうとさんに50万円を貸した。この場合、さくらさんは、いつでも直ちに全額を返すよう請求でき、ゆうとさんはその請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

答え:✕ 分かれ目は、返す時期を決めなかった消費貸借の催告のしかたです。貸主は「相当の期間を定めて」返還の催告をすることができます(591条1項)。正しくは、さくらさんは相当の期間を決めて催告し、その期間を過ぎてはじめてゆうとさんは遅れたことになる、です。「請求を受けた時から遅滞」は、期限を定めなかった債務一般のルール(412条3項)で、消費貸借には591条1項が別に置かれています。期間を決めない使用貸借で貸主がいつでも解除できる(598条2項)ことと混ぜないようにします。

まとめ

  • 消費貸借は、借りた物を使い、同じ種類・品質・数量の別の物で返す契約。
  • 口約束なら物を受け取って成立。書面(電磁的記録を含む)なら約束だけで成立し、借主は受け取る前なら解除できる。
  • 利息は特約があるときだけ。特約があっても受け取った日以後の分。
  • 返す時期を決めなければ、貸主は相当の期間を定めて催告。借主はいつでも返せる。
  • 住宅ローンは金銭の消費貸借で、その担保が抵当権。

民法の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。次に読むなら、使用貸借の記事がおすすめです。この記事の表で比べた「受け取る前の解除」や「期間を決めないとき」を、使用貸借の側からもう一度確かめると、入れ替えのひっかけに強くなります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。

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