ひとことで言うと、法定利率(ほうていりりつ)は、利率を決めていないときに法律が代わりに当てはめる利率で、いまは年3%です(民法404条2項)。3年ごとに見直すしくみですが、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期も3%のまま変わりません(法務大臣が告示した基準割合による。法務省の案内)。
数字と合わせて押さえたいのは、どの時点の法定利率を使うかと、約束した利率との関係です。この記事では、①404条の変動のしくみ、②利息・遅延損害金・中間利息の控除で使う時点、③約束した利率が法定利率より低いとき・高いとき、④商事法定利率がなくなったこと、を扱います。条文は、令和8年4月1日時点の民法を e-Gov 法令検索で確かめています。
身近な例で考えると
登場人物は、お金を貸すまいさんと、借りるそうすけさんです。貸す人=まいさん、借りる人=そうすけさんです。
- そうすけさんは、店の改装のため、まいさんから100万円を借りた。返す日は1年後。
- 「利息は付けます」と約束したが、何%かは決めなかった。この場合の利率は、利息が生じた最初の時点の法定利率になる(404条1項)。
- 返す日が来たが、そうすけさんは返さなかった。まいさんは、遅れた期間の損害賠償(遅延損害金=ちえんそんがいきん)を請求できる。
- 遅延損害金の額は、そうすけさんが遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率で決まる(419条1項)。まいさんは、損害が出たことを証明しなくてよい(同条2項)。
利息を付けるとも言わなかったなら、まいさんは利息を請求できません。消費貸借(お金などを借りて同じ額を返す契約)では、特約がなければ利息を請求できないからです(589条1項)。それでも、返す日を過ぎた後の遅延損害金は、利息の約束がなくても請求できます。
たとえるなら、法定利率は「値段を決めずに注文したときの定価」です。注文した時の定価で決まり、あとで定価表が書き換わっても、その注文の値段は変わりません。ただし本物のルールでは、「注文した時」に当たる時点が、利息・遅延損害金・中間利息で別々に決まっています。
条文ではこう決まっている
年3%と3年ごとの見直し(404条)
- 1項:利息を生ずべき債権で、別段の意思表示(利率の約束)がないときは、利息が生じた最初の時点の法定利率による。
- 2項:「法定利率は、年三パーセントとする。」
- 3項:法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに変動する。
- 4項:各期の法定利率は、直近に変動した期(直近変動期)の基準割合と、今の期の基準割合の差(1%未満の端数は切り捨て)を、直近変動期の法定利率に足すか引いて決める。
- 5項:基準割合は、各期の初日が属する年の6年前の1月から前々年の12月までの5年間(60か月)の、銀行の短期貸付けの平均利率を平均した割合(0.1%未満は切り捨て)として、法務大臣が告示する。
つまり、基準割合が1%以上動かないと、法定利率は変わりません。法務省の案内によれば、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期(第3期)の基準割合は年0.4%と告示されました。第1期の基準割合0.7%からの変動が1%未満なので、法定利率は3%のままです(令和7年法務省告示第73号)。法定利率は、令和2年3月31日までは年5%で、令和2年4月1日からは年3%です。
どの時点の法定利率を使うか
| 場面 | 使う法定利率の時点 | 条文 |
|---|---|---|
| 利息(利率の約束なし) | 利息が生じた最初の時点 | 404条1項 |
| お金の支払の遅れ(遅延損害金) | 債務者が遅滞の責任を負った最初の時点 | 419条1項 |
| 将来の利益・費用の賠償の中間利息の控除 | 損害賠償の請求権が生じた時点 | 417条の2 |
- 419条1項ただし書:「約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」約束の利率が高いときだけ約束の利率で、低いときは法定利率です。
- 417条の2:将来受け取るはずだった利益(働いて得るはずだった収入など)の賠償をいま受け取るときは、それまでの利息に当たる分(中間利息)を差し引く。そのときの利率は、損害賠償の請求権が生じた時点の法定利率。将来負担する費用の賠償も同じ(2項)。
- 722条1項:417条と417条の2は、不法行為の損害賠償にも準用される。交通事故の賠償なら、事故の時点(請求権が生じた時点)の法定利率で中間利息を差し引きます。
商事法定利率はなくなった
改正の前は、商行為による債務には年6%の商事法定利率がありました(商法514条)。今の商法514条は「削除」で、商人どうしの取引でも民法の法定利率を使います。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(約束の利率が高い):まいさんが年5%の利息で貸していた。遅延損害金も年5%で計算します(419条1項ただし書)。
- 当てはまる(約束の利率が低い):まいさんが年1%の利息で貸していた。遅延損害金は、約束の1%ではなく、遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率(いまは3%)です。ただし書が使えるのは、約束の利率が法定利率を「超える」ときだけです。
- 当てはまらない(利息の約束がない):利息について何も決めずに貸した場合、返す日までの利息は請求できません(589条1項)。法定利率は、利息を「付ける」と決めたのに率を決めなかったときの穴埋めです。
- 当てはまらない(遅延損害金の率を別に決めた):「遅れたら年10%の遅延損害金」と約束していれば、損害賠償の額の予定(420条1項)として、その約束によります。損害賠償の額の予定と、宅建業者が売主のときの上限は損害賠償額の予定と違約金の記事にあります。
- ひっかけやすい(途中で法定利率が変わったら):仮に次の期で法定利率が変わっても、すでに利息が生じている債権は、利息が生じた最初の時点の利率のままです(404条1項)。期ごとに利率が切り替わるわけではありません。
似ているルールとの違い
| お金 | 何の代わりか | 率の決まり方 |
|---|---|---|
| 利息 | 返す日まで借りている間の使用料 | 約束の率。約束がなければ法定利率(404条)。利息の特約がなければ請求できない(589条) |
| 遅延損害金 | 返す日を過ぎた遅れの損害 | 法定利率。約束の利率が高ければそちら(419条) |
| 損害賠償の額の予定 | 遅れなどの損害を前もって決めた額 | 当事者の約束(420条) |
利息の約束と返す時期のルールは消費貸借の記事にあります。遅延損害金が「いつから」生じるかは、遅滞の始まりで決まります。日付で決めた返す日ならその日から、返す時期を決めなかった貸し借りなら、相当の期間を定めて催告し、その期間が過ぎた時からです(412条1項・591条1項)。くわしくは履行遅滞の記事で確かめられます。
試験ではここをまちがえやすい
当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、債務不履行・解除が主な論点の問題は19問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では4問でした。法定利率だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。
- 改正前の数字:民法の5%、商事の6%は改正前。いまは年3%で、商事法定利率の条文は削除されています。
- ただし書の向き:約束の利率を使うのは、法定利率を超えるときだけ(419条1項ただし書)。低い約束の利率で遅延損害金を計算する形は誤りです。
- 時点の入れ替え:利息は利息が生じた最初の時点、遅延損害金は遅滞の責任を負った最初の時点、中間利息は請求権が生じた時点。「判決の時点」「支払う時点」はどれにも当たりません。
- 変動の幅:基準割合の差が1%以上になったときに、1%単位で変わります(1%未満の端数は切り捨て)。毎年変わるのでも、0.1%単位で変わるのでもありません。
- 利息の約束がないのに法定利率で利息を請求する形:消費貸借では、特約がなければ利息は請求できません(589条1項)。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
まいさんは、そうすけさんに100万円を年1%の利息で貸した(遅延損害金の約束はない)。そうすけさんが返す日に返さなかった場合、遅れた期間の損害賠償の額は、約束した年1%で計算する。
答え:✕ 分かれ目は、419条1項ただし書の向きです。金銭債務の不履行の損害賠償は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率で決まり、約定利率を使うのは「約定利率が法定利率を超えるとき」だけです(民法419条1項)。正しくは、年1%ではなく、その時点の法定利率(令和2年4月以降は年3%)で計算します。約束の利率が法定利率より高い場合(たとえば年5%)と取り違えると○にしてしまいます。
問2(このサイトのオリジナル問題)
まいさんは、利息を付ける約束で、利率は決めずに、そうすけさんにお金を貸した。仮にその後の期で法定利率が見直されて変わったとしても、この貸金の利息の利率は、利息が生じた最初の時点の法定利率のままである。
答え:○ 分かれ目は、法定利率の見直しがすでにある債権にも及ぶかです。利息を生ずべき債権で利率の約束がないときは、「その利息が生じた最初の時点における法定利率」によります(民法404条1項)。法定利率は3年ごとに変動するので、利率も期ごとに切り替わると考えると✕にしてしまいます。見直しで変わるのは、その期に新しく利息が生じる債権の利率です。
問3(このサイトのオリジナル問題)
そうすけさんは、まいさんの運転する車にぶつけられ、働いて得るはずだった将来の収入の賠償を求めて裁判を起こした。この賠償額から中間利息を差し引くときは、判決の時点の法定利率を使う。
答え:✕ 分かれ目は、中間利息の控除に使う法定利率の時点です。将来取得すべき利益の賠償から利息相当額を控除するときは、「損害賠償の請求権が生じた時点」の法定利率によります(民法417条の2第1項)。この規定は不法行為にも準用されます(722条1項)。正しくは、請求権が生じた事故の時点の法定利率を使います。遅延損害金の「遅滞の責任を負った最初の時点」(419条1項)とも区別します。
この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。
まとめ
- 法定利率は年3%。3年を1期として、基準割合の差が1%以上になると1%単位で変わる(404条)。
- 令和8年4月1日〜令和11年3月31日の期も3%(法務大臣が告示した基準割合による)。商事法定利率の6%はなくなった。
- 利息は利息が生じた最初の時点、遅延損害金は遅滞の責任を負った最初の時点、中間利息は請求権が生じた時点の法定利率。
- 遅延損害金は、約束の利率が法定利率を超えるときだけ約束の利率(419条1項ただし書)。
- 消費貸借は、特約がなければ利息を請求できない(589条1項)。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の民法・商法を確かめました。法定利率の見直しは、法務省の案内で確かめました。
- e-Gov法令検索「民法」(404条、412条、417条の2、419条、420条、589条、591条、722条)
- e-Gov法令検索「商法」(514条 削除)
- 法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」(第3期の基準割合と法定利率、令和7年法務省告示第73号)
このサイトで次に読むなら、消費貸借の記事です。利息の特約、書面でする消費貸借、返す時期を決めなかったときの催告を、お金の貸し借りの流れの中で確かめられます。
働く人の法律試験ノート