仕事・家族と両立しながら勉強する人の気持ちの整え方:罪悪感と、まわりへの頼み方

仕事や家族と両立しながら資格の勉強をしていて罪悪感があるときは、気持ちを抑え込むより、勉強の時間を「まわりと決めた時間」に変えます。罪悪感は、だれかの時間を黙って取っているように感じるときに強まります。伝えて、頼んで、取り決めにすれば、その時間は勝手に取った時間ではなくなります。

伝えるのは5つです。試験の日、勉強したい時間帯、頼みたいこと、代わりに自分がすること、そしてこの生活が終わる日。そのうえで、予定が崩れた週は1日ではなく1週間で数え、両立のために「やらないこと」を期間を決めて選びます。この記事では、その伝え方の例と取り決めの作り方を、行政書士試験・宅建試験の受験に合わせて書きます。

両立の罪悪感は、どこから来るのか

暮らし方は人によって違います。パートナーや子どもと暮らす人、親と同居している人、一人暮らしで離れた親の用事を手伝っている人、仕事の責任が重い時期の人。どの場合も、罪悪感の元を次の3つに分けて考えると、手当てを選びやすくなります。

罪悪感の元頭に浮かぶことこの記事で扱う手当て
黙って時間を取っている家のことを押しつけている気がする伝え方と頼み方
終わりが見えないいつまでこの生活が続くのか試験日と終わる日を共有する
決めたことが守れない家族の予定で勉強も家事も中途半端取り決めと、崩れた週の数え方

罪悪感の中には、相手に確かめていない想像も混じります。「迷惑だと思われているはずだ」と感じていても、相手は試験の日程さえ知らず、手伝い方が分からないだけ、ということもあります。まず、相手に伝わっているかを確かめるところから始めます。

家族や一緒に暮らす人に、何をどう伝えるか

伝える5つのこと

  1. 試験の日:令和8年度は、宅建試験が10月18日、行政書士試験が11月8日です。カレンダーに書いて、相手にも見える所に貼ります。
  2. 勉強したい時間帯:「平日の夕食の片づけのあと21時から22時」「土曜の午前」のように、曜日と時刻で伝えます。
  3. 頼みたいこと:その時間に声をかけないでほしい、テレビの音を小さくしてほしい、土曜の午前は子どもを公園に連れて行ってほしい、など、具体的な行動で伝えます。
  4. 代わりに自分がすること:朝のゴミ出しと朝食づくりは自分がする、日曜の午後は勉強しない、など。
  5. 終わる日:「試験の日まで」「合格発表までは週末の午前だけ」のように、この形がいつまで続くかを伝えます。

言い方の例

パートナーに伝えるときの例です。

「11月の行政書士試験まで、平日は21時から22時、土曜は午前中に勉強したい。その時間は声をかけないでもらえると助かる。急ぎのときは遠慮なく呼んで。かわりに朝のゴミ出しと日曜の夕食は私がやる。試験が終わったら、週末は元に戻すね。」

同居している親に伝えるときの例です。

「10月の試験まで、夜9時から1時間は部屋で勉強させてほしい。そのあいだに電話や来客があったら、メモを残してくれると助かる。通院の送り迎えは今までどおり私がするから、日にちが決まったら早めに教えて。」

子どもに伝えるときは、年齢に合わせて短くします。「この時計の針がここに来るまで、お勉強の時間。終わったら一緒に本を読もう。」のように、終わりの時刻と、そのあとの約束をセットにします。

離れて暮らす親や、きょうだいと用事を分担している場合は、「10月までは、平日の夜は電話に出られないことがある。土曜の夕方ならゆっくり話せる」と、連絡のつく時間を先に伝えておきます。

頼むのは、思っているより受け入れられやすい

頼みごとをためらう人に参考になる研究があります。

どんな研究か:Flynn と Lake(2008年)は、大学のキャンパスで、参加者に見知らぬ人への頼みごとをしてもらいました。携帯電話を貸してもらう、アンケートに答えてもらう、大学のジムまで一緒に歩いてもらう、などです。頼む前に、「何人に頼めば引き受けてもらえるか」を予想してもらい、実際の数と比べました。

何が分かったか:参加者は、決まった人数に引き受けてもらうまでに頼む必要のある人数を、実際より50%ほど多く見積もっていました。頼む側は、手伝う側の手間ばかりを考え、頼まれた側が断るときに感じる気まずさを軽く見ているため、と説明されています。

注意すること:調べたのは、見知らぬ人への小さな頼みごとです。家族への長い期間の頼みごとが、同じように受け入れられるとは限りません。それでも、「頼んだら嫌がられる」という予想は、実際より悲観的になりやすい、という点は参考になります。

頼むときは、断る余地も残しておきます。「無理な日は言ってね」と添えると、相手は引き受けやすくなり、引き受けたあとも続けやすくなります。

職場には、どこまで伝え、何を頼むか

職場に受験を伝えるかどうかは、自分で決めてかまいません。業務に関係する資格で会社がすすめている場合もあれば、私生活のこととして伝えずにおきたい場合もあります。伝えるなら、相手は直属の上司か、予定を調整する立場の人に絞ります。

伝えるなら、頼みごとは予定の調整に絞ります。

  • 「10月の宅建試験を受けます。その前の週は、できれば残業の少ない予定にしていただけると助かります。」
  • 「11月の試験が終わるまで、水曜日は定時で上がれる日にしたいのですが、調整できますか。そのぶん、ほかの曜日で対応します。」
  • 「月末の締めの時期は勉強を減らすつもりです。繁忙期の見通しを早めに教えていただけると、計画が立てやすいです。」

職場で頼むときも、「代わりにすること」をセットにします。そして、試験休暇の制度や有給休暇の取り方は会社ごとに違うので、就業規則や担当の部署で確かめます。

伝えない場合でも、できることはあります。仕事の予定表に、勉強の時間帯を「予定あり」として入れておく。繁忙期が分かったら、その週は先に勉強を「保つ週」にしておく。こうしておくと、職場の予定に押されて毎回崩れる、ということが減ります。

勉強時間を守るための取り決めは、どう作るか

伝えたことは、口約束で終わらせず、短い取り決めにして、見える所に置きます。

決めること例見直す時期
勉強の時間平日は火・水・木の21〜22時、土曜は9〜12時月1回
その時間の例外急ぎ・体調・子どもの用事は声をかけてよい月1回
代わりにすること朝のゴミ出し、日曜の夕食づくり月1回
試験後の約束試験の翌週末は家族の行きたい所へ試験の1か月前

作るときのポイントは3つです。

  • 勉強の時間は「毎日」にしない:毎晩にすると、家族の予定と毎日ぶつかります。曜日を決めて、ほかの日は通勤や昼休みのすき間で進めます。平日・すき間・休日に何をやるかの分け方は、働く人の1日の勉強の流れで例を示しています。
  • 例外を先に書く:「その時間はどんなことがあっても声をかけないで」という取り決めは、守れない日に双方が気まずくなります。声をかけてよい場面を先に書いておくと、声をかけられても「取り決めどおり」です。
  • 月に1回、見直す日を決める:実際にやってみると、合わない曜日や時間が出てきます。見直す日を決めておけば、不満がたまる前に話せます。

予定が崩れた週は、どう考えるか

家族の行事、子どもの発熱、親の通院、急な出張。両立していれば、予定が崩れる週は来ます。考え方は2つです。

1日ではなく、1週間で数える

「火・水・木の夜と土曜の午前」という取り決めなら、そのうち1回が家族の用事でなくなっても、週の残りで進めれば足ります。家族の用事を優先した日は、カレンダーに「家」と書いて、計画どおりの日として数えます。勉強ができなかった日ではなく、家族を優先すると決めていた日です。

毎日の目標に「週2日までの予備日」をつけておく方法は、しんどいときの立て直し方で研究とあわせて説明しています。両立している人は、予備日をはじめから多めに置いておくと、家族の予定が入っても崩れたと感じにくくなります。

計画は、崩れる前提で見積もる

人は、自分の作業にかかる時間を短く見積もりがちだということが知られています。

どんな研究か:Buehler、Griffin、Ross(1994年)は、卒業論文に取り組んでいる大学生に、論文を出し終えるまでの日数を予想してもらい、実際にかかった日数と比べました。

何が分かったか:学生の予想は平均で約34日でしたが、実際には平均で約56日かかりました。予想した日までに終えられたのは3割ほどで、「いちばんうまくいかなかった場合」として出してもらった日までに終えた人も、半分ほどでした。別の実験では、過去に似た作業でどれだけかかったかを思い出し、それを今回の予想に結びつけてもらうと、短く見積もるかたよりが小さくなりました。

注意すること:調べたのは大学生の論文や課題で、働きながらの資格の勉強ではありません。

試験勉強ではこう使う:翌週の計画は、理想の週ではなく、先週と先々週に実際にできた量から立てます。家族の用事が月に何回くらい入るかも、先月の実績から見込んでおきます。

崩れた週のあとに、遅れを一気に取り返そうとしないことも大事です。取り返そうとして家族との約束の時間まで削ると、罪悪感がまた強くなります。遅れは、浅くしてよい分野を浅くすることで吸収します。

両立のために「やらないこと」は、どう決めるか

時間は増やせないので、両立するには何かをやめる必要があります。やめることを決めずにいると、勉強か家族のどちらかが、そのつど削られます。先に、期間を決めて選んでおきます。

勉強の中でやらないこと

  • 全部の分野を同じ深さでやること:配点が小さく範囲の広い分野は、基本だけにとどめます。どこを浅くしてよいかは、行政書士の捨てる・捨てない・宅建の捨てる・捨てないで、配点と足切りの仕組みから考えています。
  • 教材を増やすこと:不安になると新しい問題集を買いたくなりますが、今の問題集の✕の見直しを先にします。
  • まとめノートをきれいに作ること:書くのは、間違えた肢のどこが違ったかの1行で足ります(勉強の中身で完璧を求めて止まる型は、しんどいときの立て直し方の記事でまとめています)。

生活の中で、期間限定でやらないこと

次は例です。自分の生活に合うものを、家族と話して選びます。

  • 家事の基準を一時的に下げる(例:平日の夕食は作り置きか買ったものでよい日を決める)。
  • 付き合いの集まりは、試験の日まで月1回までにする。
  • 寝る前にスマホで動画を見る時間に、上限(たとえば15分)を決める。

削らないもの

一方で、削らないものも先に決めます。睡眠の時間、体調が悪い日の休み、そして家族と決めた時間(たとえば週に1回の夕食や、子どもと過ごす時間)です。ここまで削ると、勉強は続いても、罪悪感と疲れで長くはもちません。

やらないことは、紙に書いて「試験の日まで」と期限を添えます。期限があると、自分にとっても家族にとっても、「ずっとこのまま」ではないと分かります。

罪悪感がふくらんだときは、どうするか

取り決めを作っても、罪悪感がふくらむ日はあります。そのときは、次の順で確かめます。

  1. 事実を確かめる:「迷惑をかけている」と感じたら、相手に「今のやり方で困っていることはある?」と聞きます。困りごとがあれば、取り決めを直します。なければ、それは想像だったと分かります。
  2. 「ごめん」を「ありがとう」に変える:勉強の時間を守ってもらったら、謝るより、具体的にお礼を言います。「土曜の午前、子どもを見てくれてありがとう。おかげで民法が1単元進んだ」のように、何ができたかまで伝えると、相手も手伝った意味が分かります。
  3. 進み具合を見せる:どこまで進んだかを1枚で見られる「範囲の地図」(モチベーションの記事で作り方を説明しています)を、月に1回見せます。まわりから見ても、時間が何に使われているかが分かります。

なお、眠れない日や気分の落ち込みが長く続く、体に強い不調が出ている、というときは、勉強も家のことも一人で抱え込まず、医療機関や身近な相談窓口に相談してかまいません。

今日からやること

  • 一緒に暮らす人(または予定を合わせる相手)に、試験の日・勉強したい時間帯・頼みたいこと・代わりにすること・終わる日の5つを伝える。
  • 勉強の時間、例外、代わりにすること、試験後の約束を4行の取り決めにして、見える所に貼る。
  • 家族を優先した日は「家」と書き、計画どおりの日として数える。
  • 翌週の計画は、先週と先々週に実際にできた量から立てる。
  • 「試験の日までやらないこと」と「削らないもの」を、それぞれ3つずつ書く。

このサイトで次に読むなら、社会人の資格勉強がしんどいときの立て直し方がおすすめです。両立していると、予定どおりにいかない週が続くことがあります。崩れた日に全部やめてしまわないための手順と、予備日のつけ方を先に用意しておくと、取り決めも長続きします。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)