直前1か月の復習の配分:新しい教材を増やさない理由と、宅建・行政書士の日割り

試験まで1か月を切ったら、新しい問題集や参考書は増やしません。時間の大半を、今の教材で✕(まちがえた)と△(迷った)になった問題の解き直しに回します。残りで、本番と同じ時間帯に通して解く練習(通し演習)を週に1回入れます。新しい教材は、1冊目の解説を読むところからやり直しになり、残りの時間では「読んだだけ」で終わりやすいからです。

令和8年度は、宅建試験が10月18日(日)、行政書士試験が11月8日(日)です。この記事では、時間の配分の考え方を説明したあと、10月10日(土)からそれぞれの試験日までの日割りの例を、日付で示します。読んでいる日が表の途中にあたるなら、その日の行から始めてください。両方を受ける人の切り替え方にもふれます。

直前1か月は、何にどれくらい時間を使うか

まず全体の割合です。次の表は、当サイトが考えた配分の一つの例です。正解の配分というわけではありません。自分の✕の量に合わせて変えてください。

やること割合の例中身
✕と△の解き直し約5〜6割今の問題集で間違えた・迷った問題だけ
通し演習と見直し約2〜3割本番と同じ時間で解き、✕を記録する
数字・期間の確認約1割すき間時間に短く何度も
手薄な分野の基本約1割基本の問題だけ。深追いしない

いちばん大きいのは「解き直し」です。ここでいう解き直しは、答えを見て「ああ、そうだった」と読むことではありません。問題を見て、答えと理由(どの条文のどの要件か)を自分で言えるかを試すことです。正解しても理由を言えなければ、その肢は△として、もう一度解き直す側に回します。○・△・✕の付け方は「できたつもり」を防ぐ記事でくわしく書いています。

「手薄な分野の基本」は、まだ手をつけていない分野をゼロから全部やる、という意味ではありません。今の教材のその分野の基本の問題だけを解き、正解できる問題を少し増やすことにとどめます。

なぜ新しい教材を増やさないほうがよいのか

理由は3つあります。

1つ目は、読み返しは「分かった気持ち」になりやすいのに、残りにくいことです。Roediger と Karpicke(2006年)の実験では、大学生が短い説明文(太陽やラッコについての文章)を覚えました。読む時間を4回とったグループと、1回読んだあと思い出して書くテストを3回したグループを比べています。5分後のテストでは、4回読んだグループのほうが多く思い出せました(83%と71%)。ところが1週間後には逆になり、4回読んだグループは40%、テストを3回したグループは61%でした。しかも、4回読んだグループは「1週間後もよく覚えていそうだ」という自己評価がいちばん高かったのです。

試験は数日〜数週間後です。新しい教材を読むと、内容が新鮮なぶん「進んだ」感じがします。けれども本番で点になるのは、問題を見たときに思い出せるかどうかです。この実験は短い文章を覚える条件なので、法律の試験にそのまま当てはまるとは言えません。それでも、「読んだ感じ」と「本番で思い出せること」はずれる、という点は直前期の判断に使えます。

2つ目は、1冊目の✕がまだ残っていることです。どちらの教材も同じ試験範囲(条文)を扱っているので、新しい教材の中身は、今の教材と重なる部分が大きいはずです。今の教材で✕になった問題を解けるようにするほうが、同じ時間で正解できる問題が増えやすくなります。新しい教材は、解説の書き方や用語のくせに慣れるところから始まり、その時間もかかります。

3つ目は、「まとめ直し」に時間をとられやすいことです。学習法の研究をまとめた Dunlosky ら(2013年)は、10のやり方を比べました。練習テスト(問題を解いて思い出す)と分散学習(間をあけてくり返す)を「効果が高い」としています。一方、読み返し・線を引く・要約は「効果が低い」と評価しています。新しい教材を買うと、その中身を自分のノートにまとめ直したくなります。直前期に、効果が低いと評価された作業に時間を使うのはもったいないことです。

増やしてもよいもの

  • 公式の過去問:通し演習の材料として使います。行政書士試験研究センターと不動産適正取引推進機構(以下「機構」)は、それぞれのサイトで過去の問題を公開しています。宅建の古い問題は、機構自身が「法改正により、現在の法律と一致しない場合があります」と注意しています。古い年度の答えをそのまま覚えないでください。
  • 今の教材の追補・訂正:法改正に合わせて出版社が出す追補(ついほ=あとから出す補足)は、今の教材の一部として確かめます。出題の対象は、どちらも試験の年度の4月1日(令和8年度なら令和8年4月1日)現在で施行されている法令です。
  • 模試や予想問題を1回分:本番の練習として通しで解くだけなら役に立ちます。間違えた所は、今の教材の該当ページに戻って確かめます。新しい論点を全部追いかけることはしません。

解き直しの間隔は、試験までの日数で変える

同じ問題を、どれくらい間をあけて解き直せばよいのでしょうか。手がかりになるのが Cepeda ら(2008年)の研究です。インターネットで集めた1,350人あまりの大人が、あまり知られていない雑学の事実32個を覚えました。1回目に覚えてから、0日〜105日の間をあけて2回目の勉強をします。そのあと7日・35日・70日・350日のいずれかの日数をおいてテストしました。

分かったのは、いちばんよい間隔は、テストまでの日数によって変わるということです。テストが1週間後なら、テストまでの日数の20〜40%ほどの間隔がよい成績でした。テストが1年後なら、5〜10%ほどでした。35日後にテストする条件では、1週間から10日あまりの間隔の成績がよくなっています。ただし、この実験は雑学を2回勉強しただけの条件です。法律の問題を何回も解き直す勉強に、数字をそのまま当てはめることはできません。使えるのは「試験が近いほど間隔は短く、遠いほど長く」という向きです。

これを試験までの日数に落とすと、次のようになります。

  • 宅建(10月18日)まで1週間ほどの時期:✕の問題は2〜3日おきに解き直す。試験までに2〜3回まわる計算です。
  • 行政書士試験(11月8日)まで3〜4週間ある時期:✕の問題は、翌日か翌々日に1回、そのあと1週間前後あけてもう1回。日をあけて2回続けて○になった問題は、試験前の最後の週まで外します。試験まで1週間を切ったら、宅建と同じく2〜3日おきに縮めます。

間隔の決め方そのものは間をあけて繰り返す復習の記事で扱っています。

宅建(10月18日)までの日割りの例

宅建試験は10月18日(日)の13時〜15時、50問を2時間で解きます。合格基準点は年によって違い、直近5年では50問中33点(令和7年度)〜37点(令和6年度)でした。1問の差が合否を分けることがあるので、試験までの日々は「取れるはずの問題を落とさない」ことに使います。次の表は、10月10日(土)から始めて、平日に1時間前後、週末にまとまった時間がとれる人の例です。

日やること時間の目安
10日(土)13時から2時間の通し演習。終わったら✕と△に印3時間
11日(日)通し演習の✕を分野ごとに解き直す。問題集の✕もまぜる2〜3時間
12日(月)〜14日(水)問題集の✕と△を1分野ずつ解き直す。すき間に数字の確認平日1時間
15日(木)〜16日(金)10〜11日に✕だった問題をもう一度。2回目も✕なら理由を一行メモ平日1時間
17日(土)一行メモと数字の見直しだけ。受験票・会場・持ち物を確認1〜2時間

この記事を読んだのが10日より後で、まだ一度も通し演習をしていない人は、次に休める日に1回だけ入れ、その✕を残りの日で解き直します。12日(月・スポーツの日)が休みの人は、この日にもう一度2時間の通し演習を入れてもかまいません。ただし、新しい通し演習を増やすより、10日の✕を解き直すほうを先にします。17日(土)は量を増やさず、早めに寝ます。眠ることと記憶の関係は寝る前の15分の記事にまとめています。

登録講習を修了して5問免除を受ける人は、試験時間が13時10分〜15時(1時間50分)・45問です。通し演習もこの時間で行います。受験票が届かないときの対処や当日の時刻の決まりは、宅建試験の日程の記事で確かめてください。

行政書士試験(11月8日)までの週ごとの配分の例

行政書士試験は11月8日(日)の13時〜16時、3時間です。令和7年度の合否判定基準では、法令等122点・基礎知識24点・全体180点の3つをすべて満たす必要がありました(基準は補正されることがあります)。直前期の配分でも、基礎知識の足切り(14問中6問)に届かない、ということがないようにします。

週平日休日
10/10〜10/18✕と△の解き直し(行政法から)。文章理解を1日1問13時から3時間の通し演習を1回
10/19〜10/25通し演習の✕の解き直し。記述式を週2〜3問25日(日)13時から通し演習
10/26〜11/1✕の2回目。行政書士法の改正点と個人情報保護を確認1日(日)13時から通し演習
11/2〜11/72回✕だった問題と数字の一行メモだけ。新しい問題は解かない7日(土)は軽く。持ち物と行き方を確認

宅建もあわせて受ける人は、最初の週(10/10〜10/18)は宅建を優先し、この表は10/19から始めます。そのぶん、通し演習は25日と1日の2回になります。11月3日(火・文化の日)が休みの人は、この日を最後の通し演習にあててもかまいません。読み始めたのが表の途中なら、その週の行から始め、それより前の週の分は取り返そうとしなくてかまいません。

行政書士法は令和7年の改正が2026年1月1日に施行され、令和8年度の試験範囲に入っています。業務の条文が第1条の3に移るなど、条番号も変わりました(行政書士法の改正の記事)。古い教材を使っている人は、この部分だけは確かめておきます。受験票は10月19日(月)に発送される予定です。当日の時刻・持ち物・解く順番は行政書士試験の当日の記事にまとめています。

両方を受ける人は、どこで切り替えるか

10月18日までは宅建を中心にします。その間も、行政書士試験の勉強をゼロにはしません。文章理解を1日1問と、行政法の✕を1日5問くらいだけ続けます。間があきすぎると、19日から戻るときの立ち上がりに時間がかかるからです。

宅建の試験が終わったら、なるべく早く行政書士試験に切り替えます。宅建の正解番号が機構のサイトに載るのは、合格発表の11月25日(水)です。11月8日より後なので、宅建の自己採点にこだわっても、その結果は行政書士試験の準備には使えません。

民法は両方の試験に出ます。宅建の勉強で✕になった民法の問題は、そのまま行政書士試験の解き直しリストに移せます。行政書士試験では民法の記述式もあるので、宅建で覚えた要件を「40字程度で書けるか」に変えて練習すると、むだがありません。

直前期にやりがちな、時間のわりに得の少ないこと

  • まとめノートを作り直す:きれいに作るほど時間がかかり、作っている間は問題を解いていません。足りない所は、問題集の余白か一行メモに書き足すだけにします。
  • ○の問題を全部やり直す:1周目から○だった問題は、もう一度解いても点は増えにくい問題です。時間は✕と△に回します。
  • 通し演習の点だけを見て落ちこむ:通し演習は、時間の使い方と✕を見つけるための練習です。点数は、どの分野で落としたかを見る材料にします。
  • 睡眠を削って量を増やす:試験は午後です。前の晩に遅くまで勉強して当日に頭が働かないと、それまでの準備を生かせません。

今日からやること

  • 新しい問題集・参考書を買う予定があれば、いったん止める。
  • 今の問題集の✕と△に印が付いているか確かめ、付いていなければ今日から付ける。
  • 本番と同じ時間帯の通し演習を、手帳に書きこむ(宅建は2時間、行政書士試験は3時間)。
  • 2回✕だった問題だけを集めた一行メモを作り、試験前の最後の2日はそれだけを見る。

このサイトで次に読むなら、働く人の1日の勉強の流れがおすすめです。ここで決めた配分を、平日の朝・昼・夜・寝る前にどう置くかの例を載せています。疲れて予定どおりにいかない日があったら、疲れた日の最低ラインの記事も参考にしてください。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

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