登記記録の見方:表題部と権利部(甲区・乙区)に何が載るか、登記事項証明書との関係

ひとことで言うと、登記記録は、土地や建物の姿を書く表題部(ひょうだいぶ)と、権利を書く権利部(けんりぶ)に分かれ、権利部はさらに甲区(こうく)と乙区(おつく)に分かれます。甲区には所有権に関する登記、乙区には抵当権・地上権・賃借権など所有権以外の権利に関する登記が載ります(不動産登記規則4条4項)。同じ区の中の前後は順位番号、甲区と乙区をまたぐ前後は受付番号で決まります(同規則2条1項)。

この記事では、自作の土地1筆の登記記録の見本を使って、①どこに何が載るか、②順位番号・受付番号・付記登記の読み方、③抹消された登記の残り方、④登記事項証明書の種類とだれが取れるか、を扱います。不動産登記法の全体は不動産登記法の記事、表題部の登記の申請は表示に関する登記の記事、権利の登記の申請のしかたは登記の申請の記事に任せます。証明書の取り方や費用の実務は書きません。条文は、令和8年4月1日時点の不動産登記法と不動産登記規則を e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

登場人物は、土地を買おうとしているあかねさんです。あかねさんは、売り主のしんじさんの土地について、登記事項証明書を取って読むことにしました(架空の話です)。

  1. 表題部を見る。所在・地番・地目(宅地か畑か)・地積(面積)が書いてある。買おうとしている土地と同じかを確かめる。
  2. 甲区を見る。今の所有者がしんじさんか、差押えなど所有権を縛る登記がないかを確かめる。
  3. 乙区を見る。抵当権などが付いていないか、付いていれば消えているかを確かめる。
  4. 甲区と乙区の両方に登記があれば、どちらが先かを受付番号で比べる。

たとえるなら、登記記録は「土地の通知表」です。表題部が身長・体重の欄、甲区が「持ち主の欄」、乙区が「借りや担保の欄」です。ただし本物の登記では、権利の欄は当事者が申請しなければ書かれません。記録が今の権利関係と食い違うこともあります。

登記記録の見本(当サイトの自作)

本物の登記事項証明書とは、欄の並びや書き方が違います。読み方の練習のために、要点だけを並べた見本です。人物と番号は架空です。

表題部(土地の表示)

欄見本分かること
所在・地番みどり市さくら町一丁目 15番3どの土地か
地目宅地使いみち
地積165.29㎡面積

権利部(甲区):所有権に関する登記

順位番号登記の目的受付権利者など
1所有権保存平成20年2月4日 第810号よしえ
2所有権移転(売買)令和元年5月7日 第3201号しんじ
3差押令和7年5月12日 第4000号債権者 こはる

権利部(乙区):所有権以外の権利に関する登記

順位番号登記の目的受付権利者など
1抵当権設定令和元年5月7日 第3202号みなと銀行
付記1号1番抵当権移転令和6年8月1日 第2600号そうま信用金庫
2抵当権設定令和7年6月2日 第4500号だいち銀行

読み方の例です。①今の所有者は、甲区2番で売買により所有権を取得したしんじさんです。②乙区1番の抵当権は、しんじさんが買ったのと同じ日に登記され、その後、付記1号でそうま信用金庫に移っています。移った後の順位も1番です。③甲区3番の差押え(第4000号)と、乙区2番の抵当権(第4500号)は区が違うので、受付番号で比べます。差押えのほうが先です。順位番号は乙区2番のほうが小さくても、区をまたいで順位番号を比べることはしません。なお、受付番号は1年ごとに付け直されます(不動産登記規則56条3項)。番号の大小だけで比べられるのは同じ年の受付どうしで、年が違えば受付の年月日を合わせて見ます。この見本の③は、どちらも令和7年の受付なので、番号で比べられます。

条文ではこう決まっている

登記記録の組み立て

  • 登記記録(不動産登記法2条5号):一筆の土地または一個の建物ごとに作られる電磁的記録(コンピュータの記録)。
  • 表題部と権利部(2条7号・8号):表題部は「表示に関する登記が記録される部分」、権利部は「権利に関する登記が記録される部分」。
  • 甲区と乙区(不動産登記規則4条4項):権利部は甲区と乙区に区分し、甲区には「所有権に関する登記の登記事項」、乙区には「所有権以外の権利に関する登記の登記事項」を記録する。

順位と番号

  • 権利の順位(不動産登記法4条1項):同じ不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後による。
  • 登記の前後(規則2条1項):同一の区にした登記どうしは「順位番号」、別の区にした登記どうしは「受付番号」による。
  • 受付番号(規則56条1項・3項):登記官は、申請を受け付けると、受付の年月日と受付番号を受付帳に記録する。受付番号は「一年ごとに更新する」。
  • 順位番号(規則147条):権利部の相当区に、記録した順序を示す番号を記録する。同じ順位の登記が二つ以上あるときは、番号に識別の符号を付ける。
  • 付記登記(不動産登記法4条2項・規則3条・148条):付記登記の順位は主登記(もとの登記)の順位により、同じ主登記の付記どうしはその前後による。順位番号は、主登記の番号に「付記何号」を付けて記録する。

付記登記でする登記は、規則3条に並んでいます。代表的なものは、登記名義人の氏名・住所の変更や更正、所有権以外の権利(抵当権など)の移転、所有権以外の権利を目的とする権利(抵当権の上の権利など)、買戻しの特約です。所有権の移転は付記ではなく、甲区に新しい順位番号で記録します。

抹消と証明書

  • 抹消(規則152条1項):権利の登記を抹消するときは、抹消の登記をするとともに、抹消すべき登記を抹消する記号を記録する。消した登記も、記号を付けて記録に残ります。
  • 登記事項証明書(不動産登記法119条1項):「何人も」、登記官に手数料を納めて、登記記録の全部または一部を証明した書面の交付を請求できる。
  • 登記事項要約書(119条2項):登記記録の事項の概要を書いた書面も、何人も請求できる。
  • ほかの登記所(119条5項):「第一項の交付の請求」、つまり登記事項証明書の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、その不動産を管轄する登記所以外の登記所の登記官にもできる。登記事項要約書(2項)は、この定めに入っていません。
  • 住所の扱い(119条6項):登記記録に記録されている個人の住所が明らかになると、生命・身体に危害が及ぶおそれがあるなどの場合に、本人の申出があれば、証明書・要約書に住所に代わる事項を記載する。
  • 附属書類(121条):申請のときに出された図面は何人も写しの交付・閲覧を請求できる。図面以外の附属書類の閲覧は、正当な理由があるときに、その部分に限る(登記を申請した本人は、自分が申請人の登記の書類を閲覧できる)。

甲区に載るもの・乙区に載るもの

登記載る場所考え方
所有権保存・所有権移転甲区所有権そのもの
所有権移転の仮登記甲区所有権に関する登記
差押え(所有権について)甲区所有権の処分を縛る登記
買戻しの特約甲区(所有権移転の付記)規則3条10号で付記登記
抵当権・根抵当権乙区所有権以外の権利
地上権・賃借権・地役権乙区所有権以外の権利
抵当権の移転乙区(主登記の付記)規則3条6号で付記登記

当てはまる例:あかねさんがしんじさんから土地を買えば、甲区4番に「所有権移転」が載ります。当てはまらない例:あかねさんが土地を担保にみなと銀行から借りれば、抵当権は甲区ではなく乙区です。ひっかけやすい例:買戻しの特約は「買い戻す権利」で所有権そのものではありませんが、所有権の移転の登記に付記してするので、甲区に載ります。抵当権の順位の譲渡や放棄のような処分も付記登記でします。中身は抵当権の処分の記事で扱っています。

似ているルールとの違い:証明書の主な種類

書面載るもの条文
全部事項証明書登記記録の事項の全部(抹消された登記も記号付きで)規則196条1項1号
現在事項証明書今効力のある事項だけ規則196条1項2号
何区何番事項証明書権利部の区のうち、請求した部分規則196条1項3号
登記事項要約書事項の概要(証明書ではない)法119条2項

抵当権がいったん付いて消えた経緯まで見たいときは、全部事項証明書です。現在事項証明書には、抹消された抵当権は出てきません。どちらも「何人も」請求でき、利害関係は問われません。利害関係が問題になるのは、図面以外の附属書類の閲覧(121条3項の正当な理由)です。請求先も分けます。登記事項証明書は原則としてほかの登記所でも請求できますが(119条5項)、登記事項要約書はこの定めの外です。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、不動産登記法が主な論点の問題は53問、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では10問でした。登記記録の見方だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 区をまたいで順位番号で比べる形:別の区の登記どうしは受付番号で比べます(規則2条1項)。
  • 付記登記の順位を付記した時で決める形:付記登記の順位は主登記の順位によります(法4条2項)。抵当権の移転は付記登記です。
  • 甲区と乙区の入れ替え:所有権の仮登記・差押え・買戻しの特約は甲区。抵当権・地上権・賃借権は乙区です。
  • 証明書に利害関係が要るとする形:登記事項証明書は何人も請求できます(119条1項)。正当な理由が要るのは、図面以外の附属書類の閲覧です(121条3項)。
  • 消した登記は記録から消える、とする形:抹消する記号を付けて残します(規則152条1項)。全部事項証明書には出てきます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
しんじさんの土地の登記記録には、甲区3番に受付番号第4000号のこはるさんの差押えの登記、乙区2番に受付番号第4500号のだいち銀行の抵当権設定の登記がある(どちらも令和7年の受付)。順位番号は抵当権のほうが小さいが、差押えの登記のほうが先にされたものとして扱われる。

答え:○ 分かれ目は、区が違う登記の前後を何で比べるかです。不動産登記規則2条1項は、登記の前後を、同一の区にした登記どうしは順位番号、別の区にした登記どうしは受付番号によるとしています。甲区と乙区なので受付番号で比べ、どちらも令和7年の受付なので、第4000号の差押えが先です(受付番号は1年ごとに付け直されます。規則56条3項)。順位番号が2番の抵当権のほうが先だと考えると✕に見えます。順位番号で比べるのは、同じ区の中の登記どうし(たとえば乙区1番と乙区2番の抵当権)です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
しんじさんの土地の乙区1番に登記されたみなと銀行の抵当権が、そうま信用金庫に移転し、その登記がされた。この移転の登記は乙区に新しい順位番号の主登記としてされ、そうま信用金庫の抵当権の順位は、移転の登記をした時を基準に決まる。

答え:✕ 分かれ目は、抵当権の移転の登記が主登記か付記登記かです。所有権以外の権利の移転の登記は付記登記でします(不動産登記規則3条6号)。付記登記の順位は主登記の順位によるので(不動産登記法4条2項)、正しくは「1番付記1号」として記録され、そうま信用金庫の抵当権は1番の順位のままです。新しい順位番号で記録されるのは、甲区にする所有権の移転の登記で、それと取り違えた文です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
あかねさんは、しんじさんの土地を管轄する登記所から遠い町に住んでいる。あかねさんは、近くの別の登記所の登記官にも、原則として、その土地の登記事項証明書の交付を請求できる。一方、登記事項要約書の交付は、管轄する登記所の登記官に請求する。

答え:○ 分かれ目は、管轄する登記所以外でも請求できるのはどの書面かです。不動産登記法119条5項は、法務省令で定める場合を除き、「第一項の交付の請求」、つまり登記事項証明書の交付の請求を、管轄する登記所以外の登記所の登記官にもできるとしています。登記事項の概要を記載した書面(登記事項要約書。同条2項)は、5項の対象に入っていません。どちらも「何人も」請求できる書面なので、請求先も同じだと考えると✕に見えます。利害関係が要らない点(1項・2項)は両方に共通で、違うのは請求先です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。

まとめ

  • 登記記録は表題部(表示の登記)と権利部(権利の登記)。権利部は甲区(所有権)と乙区(所有権以外の権利)。
  • 前後は、同じ区なら順位番号、別の区なら受付番号(規則2条1項)。
  • 付記登記の順位は主登記の順位による(法4条2項)。抵当権の移転・買戻しの特約は付記登記。
  • 抹消した登記は記号を付けて残る。全部事項証明書には出て、現在事項証明書には出ない。
  • 登記事項証明書は何人も、原則としてほかの登記所でも請求できる(119条1項・5項)。登記事項要約書は5項の対象外。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の不動産登記法と不動産登記規則を確かめました。

このサイトで次に読むなら、宅建の不動産登記法の問題です。申請する人・期限・仮登記の順位を、場面の問題で確かめられます。

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