根抵当権をわかりやすく:極度額と元本の確定

根抵当権(ねていとうけん)は、ひとことで言うと「これから何度も生まれる借りを、上限の金額までまとめて担保する抵当権」です。上限の金額を極度額(きょくどがく)といいます。借りが返されていったん0円になっても、根抵当権は消えません。

担保する借りが決まるのは、元本の確定(かくてい)が起きたときです。この記事では、民法398条の2から398条の22までのうち、試験で使う所を扱います。抵当権そのもの(順位・物上代位・法定地上権など)は抵当権の記事で先に確かめてください。条文は令和8年4月1日時点のものを e-Gov 法令検索で確かめています。

身近な例で考えると

人物立場したこと
だいちさん工務店の店主材木をつけで買い、土地に根抵当権を付けた
こだま材木店根抵当権者材木を売り、根抵当権を持つ
みどり銀行2番目の抵当権者だいちさんにお金を貸した
そらさん債権を買った人材木店から売掛金を買った
  1. だいちさんは、毎月こだま材木店から材木を「つけ」(後払い)で買います。つけの残りは、増えたり減ったりします。
  2. 普通の抵当権は、決まった1つの借りを担保します。つけのたびに抵当権を付けて登記し、払ったら消す、では手間がかかりすぎます。
  3. そこで、だいちさんは店の土地に根抵当権を付けました。担保する範囲は「材木の売買取引」、極度額は1,000万円です。登記もしました。
  4. ある月、だいちさんがつけを全部払い、残りが0円になりました。それでも根抵当権は残り、翌月からの新しいつけも担保されます。
  5. その後、みどり銀行がだいちさんにお金を貸し、同じ土地に2番目の抵当権を付けました。
  6. だいちさんの支払いが止まりました。材木店が競売(けいばい)を申し立て、手続が始まると、元本が確定します。このとき元本は800万円、利息と遅延の損害金は300万円でした。材木店が優先して受け取れるのは、極度額の1,000万円までです。

極度額は、クレジットカードの利用限度額に似ています。上限の金額があり、その中で何度でも使える点が同じです。ただし本物の極度額は、借りられる額の上限ではありません。取引はいくらしてもよく、根抵当権で優先して回収できるのが極度額まで、という意味です。

条文ではこう決まっている

根抵当権とは(398条の2・398条の3)

  • 398条の2第1項:抵当権は「一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する」ためにも設定できる。これを根抵当権という(2項)。
  • 2項:担保する債権の範囲は、債務者との特定の継続的な取引契約から生じるもの、または一定の種類の取引から生じるものに「限定して、定めなければならない」。範囲を限らずに「すべての債権」とすることはできません。
  • 3項:例外として、特定の原因で続けて生じる債権、手形・小切手上の請求権、電子記録債権も範囲に入れられる。
  • 398条の3第1項:確定した元本と、利息・遅延の損害金の「全部について、極度額を限度として」根抵当権を使える。

確定前に変えられること(398条の4〜398条の6)

  • 398条の4:元本の確定前なら、担保する債権の範囲と、債務者を変更できる。後順位の抵当権者など第三者の承諾はいらない。ただし、確定前に登記しなければ、変更しなかったものとみなす。
  • 398条の5:極度額の変更は、利害関係のある人の承諾がなければできない。この条文には「確定前」という限定がなく、確定の後でも同じです。
  • 398条の6:元本を確定させる期日(確定期日)を決めたり変えたりできる。後順位の抵当権者などの承諾はいらない。期日は、決めた日・変えた日から5年以内。変えた期日を元の期日より前に登記しないと、元の期日に確定する。

確定前の譲渡など(398条の7・398条の11〜398条の13)

  • 398条の7第1項:確定前に根抵当権者から債権を取得した人は、その債権について根抵当権を使えない。確定前に債務者に代わって払った人も同じ。2項:確定前に債務の引受けがあれば、引受人の債務について根抵当権は使えない。
  • 398条の11:確定前は、376条1項の処分(抵当権の譲渡・放棄、順位の譲渡・放棄)はできない。ただし、根抵当権を他の債権の担保にすること(転抵当=てんていとう)はできる。
  • 398条の12・398条の13:確定前は、根抵当権設定者の承諾を得て、根抵当権そのものを譲り渡せる(全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡)。

元本の確定(398条の8・398条の9・398条の19・398条の20)

  • 398条の19第1項:根抵当権設定者は、設定の時から3年たてば、元本の確定を請求できる。元本は、請求の時から2週間たって確定する。
  • 2項:根抵当権者は、いつでも確定を請求できる。元本は請求の時に確定する。3項:確定期日を決めてあれば、1項・2項の請求はできない。
  • 398条の20第1項:次のときなども元本が確定する。根抵当権者が競売などを申し立てた(手続の開始などがあった場合に限る)。根抵当権者が滞納処分で差し押さえた。ほかの人の競売や差押えを根抵当権者が知ってから2週間たった。債務者か設定者が破産手続開始の決定を受けた。
  • 398条の8:確定前に根抵当権者や債務者が亡くなったら、相続の時にある借りに加え、合意で決めた相続人が相続の後に取得する債権(または負う債務)も担保できる。この合意を相続開始から6か月以内に登記しないと、相続開始の時に確定したとみなす。
  • 398条の9:確定前に会社の合併があると、合併後の取引も担保する。設定者は確定を請求できるが、合併を知った日から2週間、または合併の日から1か月たつとできない(債務者の合併で、その債務者が設定者自身なら請求できない)。

確定した後(398条の21・398条の22)

  • 398条の21:確定後、設定者は極度額を減らすよう請求できる。減らせるのは「今ある債務の額+その後2年間の利息・損害金」までです。
  • 398条の22:確定後、今ある債務が極度額を超えているとき、他人の借りのために根抵当権を付けた人(物上保証人)や、土地を買った人などは、極度額の分を払うか供託して、根抵当権を消すよう請求できる。

当てはまる例・当てはまらない例

例1(当てはまる例):範囲に「建材の取引」を加える

だいちさんは、材木店から建材も買うことにしました。そこで、担保する範囲に「建材の売買取引」を加えます。確定前なので、2番目のみどり銀行の承諾はいりません(398条の4第2項)。ただし、確定前に登記をしないと、変更しなかったことになります(同条3項)。

例2(当てはまらない例):極度額を1,500万円に増やす

取引が増えたので、極度額を1,000万円から1,500万円に増やしたいとします。これは範囲の変更と違い、みどり銀行などの利害関係人の承諾がなければできません(398条の5)。極度額が増えると、2番目のみどり銀行が受け取れる分が減るおそれがあるからです。範囲は承諾不要、極度額は承諾必要。ここが一番のひっかけです。

例3(ひっかけやすい例):確定前に売掛金を譲った

確定前に、材木店がだいちさんへの売掛金200万円をそらさんに売りました。そらさんは、その200万円について根抵当権を使えません(398条の7第1項)。普通の抵当権なら、借りを譲ると抵当権もついていきます。確定前の根抵当権は「借り」ではなく「取引の枠」にくっついている、と考えると覚えやすくなります。

例4(ひっかけやすい例):だいちさんからの確定請求

設定から3年たったので、だいちさんは確定を請求しました。元本が確定するのは、請求の時ではなく、そこから2週間たった時です(398条の19第1項)。反対に、材木店からの請求なら、請求の時に確定します(2項)。また、確定期日を決めてあった場合は、どちらからも請求できません(3項)。

例5(ひっかけやすい例):利息は何年分まで?

場面の6番目では、元本800万円と利息・損害金300万円で、合計1,100万円でした。普通の抵当権なら、利息などは「最後の2年分」まで(375条)という制限があります。根抵当権にはこの年数の制限がなく、全部が極度額まで担保されます(398条の3第1項)。ですから、材木店が優先して受け取れるのは1,000万円で、残り100万円は優先されない借りとして残ります。

似ているルールとの違い

比べる点普通の抵当権根抵当権(確定前)
担保する借り決まった借り範囲内の不特定の借り
借りが0円になると抵当権も消える消えない
利息など最後の2年分まで(375条)極度額まで全部(398条の3)
借りを譲ると抵当権もついていくついていかない(398条の7)
順位の譲渡などできる(376条)できない(398条の11)

元本が確定すると、新しい借りは担保されなくなります。そこからは、確定した借りを担保する抵当権として扱われ、極度額の減額請求(398条の21)や消滅請求(398条の22)が使えるようになります。

もう一つまぎらわしいのが、保証の「根保証」です。個人が保証人になる根保証契約(個人根保証契約)は、極度額を定めなければ効力を生じません(465条の2第2項)。根抵当権は「物」、根保証は「人」を当てにする担保ですが、どちらも「上限の金額」が要になります。保証の基本は保証と連帯保証の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 「範囲や債務者の変更には、後順位抵当権者の承諾がいる」→誤り。承諾はいらない。ただし確定前の登記が必要(398条の4)。
  • 「極度額の変更は、当事者の合意だけでできる」→誤り。利害関係人の承諾がいる(398条の5)。
  • 「確定期日は、決めた日から10年以内」→誤り。5年以内(398条の6第3項)。
  • 「設定者の確定請求で、請求の時に確定する」→誤り。2週間たって確定。請求の時に確定するのは根抵当権者からの請求(398条の19)。
  • 「確定前に債権を買った人も、根抵当権を使える」→誤り(398条の7第1項)。
  • 「確定前でも、設定者の承諾なしに根抵当権を譲渡できる」→誤り。設定者の承諾がいる(398条の12第1項)。
  • 「根抵当権でも利息は最後の2年分まで」→誤り。極度額まで全部(398条の3第1項)。

宅建試験で問われやすい形は、普通の抵当権との違いと、承諾がいるかどうかの区別です。「範囲・債務者の変更は承諾不要」「極度額の変更は利害関係人の承諾」「根抵当権の譲渡は設定者の承諾」の3つを、だれの承諾かまで言えるようにしておきます。確定請求の「3年」と「2週間」も数字で問われやすい所です。

行政書士試験では、5肢択一式で条文の細部を変えた選択肢が、問われやすい形の一つです。確定前の債権譲渡(398条の7)、相続の6か月(398条の8)、確定後の消滅請求(398条の22)のように、「確定の前か後か」で答えが分かれる所を整理しておくと迷いません。民法全体の中での優先度は民法の勉強法で確かめられます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題):はるかさんの土地に、ひかり商店の根抵当権(1番)と、たかし銀行の抵当権(2番)が付いている。元本の確定前に、根抵当権で担保する債権の範囲を変更するには、たかし銀行の承諾を得なければならない。

答え:✕。確定前の範囲の変更には、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾はいりません(398条の4第2項)。ただし、確定前に登記をしないと、変更しなかったものとみなされます(同条3項)。

問2(このサイトのオリジナル問題):問1と同じ場面で、根抵当権の極度額を増やすには、たかし銀行の承諾を得なければならない。

答え:○。極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければできません(398条の5)。極度額が増えると、2番のたかし銀行が受け取れる分が減るおそれがあります。

問3(このサイトのオリジナル問題):確定期日の定めがない根抵当権について、設定から3年たった後、設定者のはるかさんが元本の確定を請求した。元本は、この請求の時に確定する。

答え:✕。設定者からの請求では、請求の時から2週間たって確定します(398条の19第1項)。請求の時に確定するのは、根抵当権者からの請求です(同条2項)。

まとめ

  • 根抵当権は、範囲内の不特定の借りを極度額まで担保する(398条の2)。範囲は限定して決める。利息なども極度額まで全部(398条の3)。
  • 確定前の範囲・債務者の変更は承諾不要で、登記が必要(398条の4)。極度額の変更は利害関係人の承諾がいる(398条の5)。確定期日は5年以内(398条の6)。
  • 確定前に債権を譲っても、根抵当権はついていかない(398条の7)。根抵当権の譲渡には設定者の承諾がいる(398条の12)。
  • 確定請求:設定者は3年たてば請求でき、2週間後に確定。根抵当権者はいつでも請求でき、すぐ確定(398条の19)。

根抵当権は、普通の抵当権との違いで問われます。違いを比べるには、もとになる抵当権の順位・利息2年・物上代位をはっきりさせておくのが近道です。まだ不安があれば、抵当権の記事を読み直してから、この記事の表に戻ってください。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点(行政書士試験・宅建試験の出題の基準日)の内容を e-Gov 法令検索で確かめています。この記事では判例は取り上げず、条文の説明にとどめています。