定期借地権の3種類をわかりやすく:一般定期・事業用・建物譲渡特約付の期間と契約の方式

定期借地権(ていきしゃくちけん)は、期間が来たら更新されずに終わる借地権です。借地借家法は3種類を用意しています。50年以上の一般定期借地権(22条)、事業用の建物だけのための事業用定期借地権等(23条。10年以上50年未満)、30年以上たったら建物を地主に売る約束を付けた建物譲渡特約付借地権(24条)です。

3種類は「期間」「建てられる建物」「契約の方式」「更新・建物買取請求の扱い」の4つで見分けます。とくに方式は、公正証書(こうせいしょうしょ=公証人が作る公の文書)が欠かせないのは事業用だけです。一般定期借地権は書面(電子データでも可)でよく、建物譲渡特約付借地権には書面の定めがありません。

この記事では、3種類を普通の借地権と並べて表にします。普通の借地の期間・更新・対抗力は借地借家法の全体図、期間が終わったときの建物買取請求の細かい扱いは建物買取請求権の記事、建物を借りる側の定期契約は定期借家の記事で扱います。条文は令和8年4月1日時点のものです。

身近な例で考えると:ふくださんの土地を3人に貸す

登場人物を紹介します。

人物立場したこと
ふくださん地主3か所の土地を持っている
ゆいさん借りる人(個人)自宅を建てるために土地を借りる
あさひ商事借りる人(会社)コンビニの店舗を建てるために土地を借りる
みどり不動産借りる人(会社)賃貸マンションを建てるために土地を借りる

ふくださんは「土地はいずれ自分の家族に戻したい。ずっと返ってこないのは困る」と考えています。普通の借地権だと、期間が来ても、ふくださんに正当の事由(せいとうのじゆう=返してもらうのももっともだと言える理由)がなければ更新を断れません。そこで、3人とはそれぞれ定期借地権で契約することにしました。

  1. ゆいさんとは、期間55年の一般定期借地権。書面で「更新しない、建て直しても期間を延ばさない、建物の買取りを求めない」と決めます。55年たったら、ゆいさんは建物を取り壊して土地を返します。
  2. あさひ商事とは、期間20年の事業用定期借地権。公正証書で契約します。20年たったら、更新も建物の買取りもなく終わります。
  3. みどり不動産とは、30年たったらマンションをふくださんに「相当の対価」で売る、という特約を付けます。売った時点で借地権は消え、マンションはふくださんのものになります。

たとえるなら、普通の借地権は「借りる人が望めば続く長い契約」、定期借地権は「最初から終わり方が決まっている契約」です。ただし本物のルールでは、建物譲渡特約付借地権の終わり方は期間の満了ではなく、建物を地主に売ることです。そこが残りの2つと違います。

条文ではこう決まっている

一般定期借地権(22条)

  • 期間:50年以上。
  • 付けられる特約:①契約を更新しない(更新の請求や、使い続けることによる更新も含む)、②建物を建て直しても期間を延ばさない、③13条の建物買取請求をしない。
  • 方式:特約は「公正証書による等書面によってしなければならない」(1項後段)。電磁的記録(電子データ)でした特約も、書面でしたものとみなされます(2項)。
  • 建物の用途:条文に制限はありません。自宅でも店舗でもかまいません。

事業用定期借地権等(23条)

  • 建物の用途:「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)」の所有が目的。人が住む建物は対象外です。
  • 期間30年以上50年未満(1項):一般定期借地権と同じ3つの特約を付けられます。
  • 期間10年以上30年未満(2項):3条〜8条(期間・更新・建て直しによる延長など)、13条(建物買取請求)、18条は、そもそも適用されません。特約を書かなくても、更新も買取請求もありません。
  • 方式(3項):1項・2項の借地権の設定は、公正証書によってしなければなりません。

建物譲渡特約付借地権(24条)

  • 特約(1項):借地権を消すため、設定から30年以上たった日に、借地の上の建物を地主に「相当の対価で譲渡する」と決められます。23条2項の借地権(10年以上30年未満の事業用)には付けられません。
  • 方式:書面でしなければならない、という定めは24条にありません。
  • 譲渡の後に建物を使っている人(2項):借地権が消えた後も建物を使い続けている借地権者や建物の借主が請求したときは、その時に、地主との間で期間の定めのない建物の賃貸借をしたものとみなされます。借地権者が請求し、借地権の残りの期間があるときは、その期間を賃貸借の期間とします。家賃は、当事者が請求すれば裁判所が決めます。
  • 定期建物賃貸借を結んだとき(3項):建物について38条1項の定期建物賃貸借の契約をしたときは、2項ではなくその契約に従います。

3種類に共通すること

  • 一時使用(工事の仮設事務所など、一時的に使うだけだとはっきりしている借地)には、22条〜24条を含め、期間や更新の規定が適用されません(25条)。詳しくは一時使用目的の賃貸借の記事にあります。
  • 22条・23条1項は「第九条及び第十六条の規定にかかわらず」特約を認めています。普通の借地権でこれらの特約を付けても、借地権者に不利なので無効です(9条・16条)。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例

  • ゆいさんの契約を、期間60年、公正証書ではない書面で結び、3つの特約を書いた。→ 一般定期借地権として有効です。公正証書に限られません(22条1項)。
  • あさひ商事の契約(公正証書、期間20年)に、建物買取請求について何も書かなかった。→ 23条2項で13条が適用されないので、期間満了で買取りを求めることはできません。

当てはまらない例

  • ゆいさんの自宅のための借地を、期間30年、「更新しない」特約付きで結んだ。→ 一般定期借地権は50年以上で、30年では足りません。事業用定期借地権は居住用の建物を除くので、これにも当たりません。特約は借地権者に不利なので無効になり(9条)、期間30年の普通の借地権として扱われます。
  • みどり不動産が賃貸マンションのために、期間35年の事業用定期借地権を設定しようとした。→ 人に貸して住んでもらう建物は「居住の用に供するもの」なので、事業用定期借地権にはできません。使えるのは一般定期借地権(50年以上)か、建物譲渡特約です。
  • あさひ商事との事業用定期借地権の契約を、公正証書にせず、ふつうの契約書だけで結んだ。→ 23条3項の方式を満たさないので、事業用定期借地権にはなりません。

ひっかけやすい例

  • 期間50年の一般定期借地権に、「30年たったら建物を地主に譲渡する」特約も付けた。→ 24条1項が除いているのは23条2項の借地権だけなので、組み合わせられます。
  • あさひ商事の契約が期間35年なら、事業用でも1項の借地権です。この場合、更新や建物買取請求をなくすには特約が要ります。10年以上30年未満の2項の借地権とは、扱いが違います。

似ているルールとの違い:普通の借地権と3種類を並べる

まず、期間・用途・方式です。

種類期間建物の用途方式
普通の借地権30年以上(定めなしは30年)制限なし定めなし
一般定期(22条)50年以上制限なし公正証書等の書面(電子も可)
事業用(23条1項)30年以上50年未満事業用だけ(居住用を除く)公正証書
事業用(23条2項)10年以上30年未満事業用だけ(居住用を除く)公正証書
建物譲渡特約付(24条)設定から30年以上で譲渡制限なし書面の定めなし

次に、期間が終わるときの扱いです。

種類更新建て直しでの延長建物買取請求
普通の借地権あり(断るには正当の事由)あり(7条)あり(外す特約は無効)
一般定期・事業用(1項)特約でなくす特約でなくす特約でなくす
事業用(2項)法律上ない法律上ない法律上ない

建物譲渡特約付借地権は、建物を地主に売ったときに借地権が消える仕組みなので、この表の「期間が終わるとき」の形とは別に覚えます。建物を借りる側の定期建物賃貸借(38条)は、期間の下限がなく、契約とは別の書面による事前の説明が要る別の制度です。宅建業者が宅地の貸借を媒介するときは、一般定期借地権(22条1項)であることが重要事項説明の事項になっています(宅建業法施行規則16条の4の3第9号)。説明する事項の全体は貸借の重要事項説明の記事で確かめてください。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが数えた宅建試験の全40回(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の問題、2,000問)では、借地借家法の借地が主な論点の問題は37問で、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)は10回とも1問ずつでした。定期借地権だけの問数は数えていません(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。数え方は宅建の出題論点ランキング)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 数字:一般定期は50年以上。事業用は10年以上50年未満で、30年を境に1項と2項に分かれます。建物譲渡特約付は設定から30年以上。「事業用は50年以上でもよい」は誤りです。
  • 公正証書:公正証書が必須なのは事業用だけです。一般定期は「公正証書による等書面」なので、ふつうの書面や電子データでもかまいません。建物譲渡特約付には書面の定めがありません。
  • 居住用の除外:事業用は「居住の用に供するもの」を除きます。賃貸マンションや社員寮は、事業として建てても人が住む建物です。
  • 特約でなくすか、法律上ないか:事業用の1項(30年以上)は特約が要り、2項(30年未満)は特約がなくても更新・買取請求がありません。
  • 建物譲渡は有償:24条は「相当の対価で」譲渡すると定めています。譲渡の後も建物を使っている借主は、請求すれば賃貸借が続いたものとみなされます(2項)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
ゆいさんは、自宅を建てる目的で、ふくださんから期間40年で土地を借りることにした。公正証書で「契約の更新をしない、建物の買取りを請求しない」と定めれば、この特約は定期借地権の特約として有効である。

答え:✕ 分かれ目は、期間と建物の用途です。一般定期借地権は期間50年以上が要件です(借地借家法22条1項)。40年は事業用定期借地権(23条1項。30年以上50年未満)の範囲ですが、事業用は居住の用に供する建物を除くので、自宅には使えません。正しくは、この特約は借地権者に不利なので無効で(9条・16条)、期間40年の普通の借地権になります(3条ただし書)。公正証書で結べば足りる、と事業用定期借地権の方式(23条3項)と取り違えた形です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
あさひ商事は、コンビニの店舗を所有する目的で、公正証書により期間20年の事業用定期借地権の設定を受けた。期間が満了した後、あさひ商事が店舗を置いたまま土地を使い続け、ふくださんが異議を述べなかったとしても、契約は更新されたものとはみなされない。

答え:○ 分かれ目は、期間10年以上30年未満の事業用定期借地権に、更新の条文がかかるかです。この借地権には3条〜8条が適用されません(借地借家法23条2項)。普通の借地なら、建物がある土地を使い続け、地主が遅滞なく異議を述べなければ更新とみなされるので(5条2項)、✕にしやすい肢です。更新しない特約を書いていなくても、法律上、更新はありません。

問3(このサイトのオリジナル問題)
建物譲渡特約付借地権の「30年以上たったら建物を地主に譲渡する」という特約は、一般定期借地権の特約と同じく、公正証書などの書面でしなければ効力を生じない。

答え:✕ 分かれ目は、方式の定めがあるかどうかです。借地借家法24条1項は、設定後30年以上を経過した日に建物を相当の対価で譲渡する特約を認めていますが、書面でしなければならないとは定めていません。正しくは、書面の定めがあるのは一般定期借地権(22条1項後段「公正証書による等書面」)と、公正証書を求める事業用定期借地権(23条3項)です。この2つの方式を、建物譲渡特約付借地権にも広げて取り違えた形です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。

まとめ

  • 定期借地権は3種類。一般定期(50年以上)、事業用(10年以上50年未満・居住用を除く)、建物譲渡特約付(30年以上で建物を地主に譲渡)。
  • 公正証書が必須なのは事業用だけ。一般定期は書面か電子データ。建物譲渡特約付には書面の定めがない。
  • 事業用は、30年以上なら特約で、30年未満なら法律上、更新と建物買取請求がない。
  • 一般定期と事業用(30年以上)は、3つの特約(更新しない・延長しない・買取請求しない)を付けて成り立つ。
  • 一時使用の借地には、定期借地権の規定も含めて期間・更新の規定がかからない。

次に読むなら、定期借家(定期建物賃貸借)の記事がおすすめです。建物を借りる側の「更新しない契約」は、期間の決まりも手続も定期借地権と違います。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を e-Gov 法令検索(法令API)で確かめました。