重要事項説明の「物件の状態」:登記された権利・法令上の制限・私道負担・水道やガス・未完成物件の形

重要事項説明(宅建業法35条)のうち、物件そのものの状態を説明するのが、35条1項1〜5号と6号の2です。登記された権利、法令上の制限、私道の負担、水道やガスなどの整備の状況、工事が終わる前の物件の完成時の形、そして既存の建物の建物状況調査と書類の保存の状況を、契約の前に宅建士が説明します。

まちがえやすいのは、「どの契約で、どの号がいらなくなるか」です。建物の貸借では、私道の負担の説明がいりません。法令上の制限も、建物の貸借では3つの法律の制限だけになります。既存の建物の書類の保存の状況は、売買と交換の住宅だけの事項です。

この記事では、物件の状態の号だけを扱います。お金と契約の条件の号(7〜13号)は重要事項説明の「取引条件」に、説明の全体(誰が・いつ・誰に)は重要事項説明(35条)の記事にあります。マンションの敷地や管理規約の号(6号)はマンションの重要事項説明で、災害の区域や石綿などの事項は災害と調査の重要事項説明で整理しています。

身近な例で考えると

登場人物は次のとおりです。

人物立場したこと
あおば不動産宅建業者売買と賃貸の媒介をする
たなかさんあおば不動産の宅建士重要事項を説明する
ゆいさん会社員(宅建業者ではない)築20年の木造の一戸建てを買う
そうたさんゆいさんの同僚駅前の賃貸マンションの一室を借りる

ゆいさんが買う一戸建てについて、たなかさんは契約の前に次のことを説明します。

  1. 土地と建物に銀行の抵当権が登記されていること。登記名義人が売主本人であること(1号)。
  2. 土地が第一種低層住居専用地域にあり、建蔽率と容積率、高さの制限がかかること(2号)。
  3. 家の前の道路は私道で、その一部が敷地に含まれていること(3号)。
  4. 水道と電気は使えるが、下水道はまだ整備されていないこと。整備の見通しと、整備のときにかかる負担金のこと(4号)。
  5. 10か月前に建物状況調査が行われていて、その結果の概要。検査済証などの書類が残っているかどうか(6号の2)。

そうたさんが借りる部屋では、説明する事項が減ります。部屋の前の通路が私道かどうかの説明はいりません。法令上の制限も、建物の貸借で説明する3つの法律の制限に限られます。建物状況調査の結果の概要は説明しますが、検査済証などの書類の保存の状況は説明しません。

条文ではこう決まっている

宅建業法35条1項のうち、物件の状態の号は次のとおりです(令和8年4月1日施行の条文で確かめました)。

  • 1号:登記された権利の種類と内容。登記名義人(所有権の登記がない物件では、表題部に所有者として記録された人)の氏名。
  • 2号:都市計画法・建築基準法など、法令に基づく制限で政令で定めるものの概要。政令は、宅地か建物か、売買・交換か貸借かの別に応じて決めています(施行令3条)。
  • 3号:建物の貸借以外の契約では、私道に関する負担。
  • 4号:飲用水・電気・ガスの供給と、排水のための施設の整備の状況。整備されていないときは、整備の見通しと、整備についての特別の負担。
  • 5号:工事が終わる前の宅地・建物では、完了したときの形状・構造など。宅地は、接する道路の構造と幅員。建物は、主要構造部、内装と外装の構造・仕上げ、設備の設置と構造です(施行規則16条)。
  • 6号の2イ:既存の建物では、建物状況調査(専門家による建物の状態の調査)を実施しているかどうかと、実施しているときは結果の概要。対象は実施から1年以内のもので、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等は2年以内です(施行規則16条の2の2)。
  • 6号の2ロ:既存の建物では、設計図書・点検記録など、建物の建築と維持保全の状況に関する書類の保存の状況。対象の書類は、売買または交換の契約に関する住宅の書類で、建築確認の確認済証、検査済証、建物状況調査の報告書などです(施行規則16条の2の3)。

2号の政令(施行令3条)は、3つに分かれています。売買・交換などの貸借以外の契約は1項で、都市計画法・建築基準法・農地法など多くの法令の制限が並びます。宅地の貸借は2項で、1項の制限から一部を除いたものです。建物の貸借は3項で、新住宅市街地開発法・新都市基盤整備法・流通業務市街地の整備に関する法律の3つの規定だけです。

売買と貸借、宅地と建物で、どの号がいるか

号売買・交換宅地の貸借建物の貸借
1号 登記された権利いるいるいる
2号 法令上の制限いる1項から一部を除く3つの法律だけ
3号 私道の負担いるいるいらない
4号 水道・電気・ガス・排水いるいるいる
5号 未完成物件の形いるいるいる
6号の2イ 建物状況調査既存の建物ならいる(建物がない)既存の建物ならいる
6号の2ロ 書類の保存既存の住宅ならいる(建物がない)いらない

表から読み取れる取り違えやすい所は3つです。

  • 私道の負担がいらないのは「建物の貸借」だけです。宅地の貸借ではいります。
  • 4号と5号は、貸借でも説明します。借りる人にとっても、水道やガスが使えるか、完成したらどんな部屋になるかは大事だからです。
  • 建物状況調査の結果の概要(イ)は貸借でも説明しますが、書類の保存の状況(ロ)は売買・交換の住宅だけです。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例(説明がいる)

  • ゆいさんの家に、売主が引渡しまでに消すと約束した抵当権が登記されている。1号は「登記された権利」の種類と内容を説明事項としていて、引渡しまでに抹消する予定のものを除く定めはありません。説明の時点で登記されている抵当権は、1号の説明事項です。
  • ゆいさんの家の前の私道について、私道の持分があり、通行や維持の負担がある。売買なので3号の説明がいります。
  • 宅地を借りて店を建てる契約で、その宅地の一部が私道になっている。建物の貸借ではないので、3号の説明がいります。
  • 工事中の新築マンションの一室を買う。完成時の主要構造部、内装・外装の仕上げ、設備を、図面を使って説明します(5号、施行規則16条)。

当てはまらない例(説明がいらない)

  • そうたさんの部屋の前の通路が私道でも、建物の貸借なので3号の説明はいりません。
  • そうたさんの部屋が市街化調整区域にあっても、都市計画法の建築の制限は、建物の貸借で説明する法令上の制限に入っていません(施行令3条3項)。
  • 1年6か月前に建物状況調査をした木造の一戸建て。木造の一戸建ては1年以内の調査が対象なので、6号の2イの説明の対象になりません(施行規則16条の2の2)。

ひっかけやすい例

  • 鉄筋コンクリート造のマンションの一室で、1年6か月前に建物状況調査をしていた。鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等は2年以内が対象なので、説明の対象です。木造の一戸建てとは期間が違います。
  • 書類の保存の状況(6号の2ロ)は、書類が残っているかどうかを説明する事項です。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、書類に書かれた内容の説明までを業者に義務づけるものではないとし、書類がないときはその旨を説明することが望ましいとしています。
  • 下水道が整備されていないとき、説明するのは「整備の見通し」と「整備についての特別の負担」の両方です。見通しだけでは足りません。

似ているルールとの違い

物件の状態の号は、契約の後に渡す37条書面にはほとんど出てきません。37条書面は、決まった契約の中身を書く書面だからです。

事項35条(契約前に説明)37条(契約後に書く)
登記された権利1号で説明書く事項にない
法令上の制限・私道の負担2号・3号で説明書く事項にない
水道・ガスなどの整備4号で説明書く事項にない
建物の構造耐力上主要な部分等の状況6号の2イで調査の結果の概要既存の建物の売買・交換では当事者の双方が確認した事項

既存の建物の状態は、35条では「建物状況調査の結果の概要」を説明し、37条書面では「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項」を書きます(37条1項2号の2)。建物状況調査そのものは、媒介契約の書面に「調査をする者のあっせんに関する事項」を書く段階から始まります(34条の2第1項4号)。3つの場面の全体は建物状況調査の記事にあります。

試験ではここをまちがえやすい

35条書面(重要事項説明)は、当サイトが数えた宅建試験の全40回すべてで主な論点として出ており(計81問)、直近10回でも主な論点で29問、ほかの問の中の肢として3問ありました(数え方は宅建の出題論点ランキング)。物件の状態の号は、次の形で取り違えやすい所です。

  • 貸借での要・不要:私道の負担を「建物の貸借でも説明する」、または「宅地の貸借でも不要」とする形。
  • 法令上の制限の範囲:建物の貸借で、都市計画法や建築基準法の制限まで説明するとする形。
  • 建物状況調査の期間:1年と2年を入れ替える形。どの建物が2年かを落とす形。
  • 書類の保存:貸借でも書類の保存の状況を説明する、とする形。
  • 4号の中身:未整備のとき「見通し」だけでよいとする形。
  • 35条と37条の入れ替え:登記された権利や法令上の制限を37条書面の事項にする形。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aは、Bが所有する宅地をCが店舗を建てるために借りる賃貸借契約を媒介する。この宅地の一部が私道となっていて、その負担があるとき、Aは、Cに対し、私道に関する負担を重要事項として説明しなければならない。

答え:○ ○です。分かれ目は「宅地の貸借」か「建物の貸借」かです。35条1項3号は、私道に関する負担を「建物の貸借の契約以外の契約」で説明する事項としています。除かれるのは建物の貸借だけなので、宅地の貸借では説明がいります。「貸借なら私道は不要」と覚えていると✕に見えますが、それは建物の貸借の場合です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが媒介する既存の木造一戸建て住宅の売買で、売主が1年6か月前に建物状況調査を実施していた。Aは、買主に対し、この調査を実施していることと、その結果の概要を説明しなければならない。

答え:✕ 分かれ目は、説明の対象になる調査の期間です。35条1項6号の2イの建物状況調査は、実施から1年以内のものが対象です(施行規則16条の2の2)。正しくは、1年6か月前の調査は説明の対象ではありません。2年以内が対象になるのは、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等で、その期間と取り違えた文です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが媒介する建物の賃貸借で、その建物が市街化調整区域にある。Aは、借主に対し、都市計画法による建築の制限を、法令上の制限として説明する必要はない。

答え:○ ○です。分かれ目は、建物の貸借で説明する法令上の制限の範囲です。35条1項2号の制限は政令で契約の種類ごとに決まり、建物の貸借では、新住宅市街地開発法・新都市基盤整備法・流通業務市街地の整備に関する法律の3つの規定だけです(施行令3条3項)。売買なら説明する都市計画法の制限も、建物の貸借では入りません。売買・交換の制限(施行令3条1項)と取り違えると✕にしてしまいます。

まとめ

  • 物件の状態の説明は35条1項1〜5号と6号の2。登記された権利・法令上の制限・私道の負担・水道やガス・未完成物件の形・既存の建物の状況。
  • 私道の負担がいらないのは建物の貸借だけ。法令上の制限は、建物の貸借では3つの法律だけ。
  • 建物状況調査は1年以内(鉄筋コンクリート造などの共同住宅等は2年以内)。書類の保存の状況は売買・交換の住宅だけ。
  • 未整備の水道やガスなどは、整備の見通しと特別の負担の両方を説明する。
  • 重要事項説明の○✕は、宅建の5分○✕ドリルで続けて解けます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

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