交換は、当事者が互いに金銭以外の財産権を移す契約です(民法586条1項)。たとえば土地と土地を取り替える契約で、価値の差を埋めるために払うお金を交換差金(こうかんさきん)といいます。交換差金には、売買の代金の規定が準用されます(同条2項)。
宅建試験では、交換が民法・宅建業法・法令上の制限・税の各分野に出てきて、分野ごとに扱いが違います。ひとことで言うと、宅建業法では交換は売買とほぼ同じに扱うが、8種制限だけはかからない。報酬は高い方の価額で計算。国土法の事後届出はいる。印紙税は高い方の価額、不動産取得税は課税。譲渡所得には交換の特例があります。この記事は、それを1本の表と事例で並べる地図です。各分野の細部は、それぞれの記事に渡します。
身近な例で考えると
| 人物 | 立場 | 土地 |
|---|---|---|
| はるきさん | 個人 | 甲地(価額3,000万円)を10年持つ |
| さきさん | 個人 | 乙地(価額2,500万円)を10年持つ |
| みどり不動産 | 宅建業者 | はるきさんから媒介を頼まれた |
- はるきさんとさきさんは、甲地と乙地を交換することにした。価値の差の500万円は、さきさんがはるきさんに交換差金として払う。
- みどり不動産は、はるきさんと媒介契約を結んだ。交換の媒介契約にも、売買と同じ書面の規定がかかる。
- 契約の前に、みどり不動産は重要事項説明をした。契約の後には37条書面に、交換差金の額と支払いの時期・方法を書いた。
- はるきさんから受け取れる報酬は、高いほうの3,000万円を基準に計算した額が上限。
- 甲地・乙地が市街化区域で、それぞれ2,000平方メートル以上なら、はるきさんもさきさんも、取得した土地について国土法の事後届出をする。
たとえるなら、交換は「物々交換に、足りない分のお小遣いを足す」取引です。ただし本物のルールでは、お金が少なくても「対価のある取引」として扱われる場面が多く、贈与のように「ただでもらった」扱いにはなりません。
分野ごとの扱い(1本の表)
| 分野 | 交換の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 民法 | 互いに金銭以外の財産権を移す。交換差金には売買の代金の規定を準用 | 民法586条 |
| 宅建業(免許) | 自ら交換するのも「取引」に当たる(自ら貸借は当たらない) | 宅建業法2条2号 |
| 報酬 | 価額に差があれば、多い方の価額で計算 | 報酬告示(第二・第三) |
| 媒介契約 | 売買と同じく書面の規定がかかる | 宅建業法34条の2 |
| 35条・37条 | 売買と同じく対象。37条は交換差金の額・時期・方法を書く | 35条1項・37条1項3号 |
| 8種制限 | かからない(自ら売主の売買だけ) | 33条の2・37条の2〜43条 |
| 国土法 | 対価を得て行う移転なので事後届出の対象 | 国土法14条1項・23条 |
| 印紙税 | 不動産の譲渡の契約書。記載金額は高い方の価額 | 印紙税法基本通達23条(1)ロ |
| 不動産取得税 | 課税される(非課税の一覧にない) | 地方税法73条の7 |
| 譲渡所得 | 条件を満たせば交換の特例 | 所得税法58条 |
条文ではこう決まっている
宅建業法
- 取引の範囲(2条2号):宅建業は、宅地・建物の「売買若しくは交換」、または売買・交換・貸借の「代理若しくは媒介」を業として行うこと。自分が当事者になる交換は入り、自分が当事者になる貸借は入りません。
- 媒介契約(34条の2第1項):「売買又は交換の媒介の契約」を結んだら、遅滞なく書面を作って依頼者に交付する。貸借の媒介には、この規定はかかりません。
- 35条:売買・交換・貸借の相手方などに、契約が成立するまでの間に重要事項を説明する。7号は「代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭」の額と目的。
- 37条1項:売買または交換で書く事項の3号は「代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法」。6号は「代金及び交換差金以外の金銭」の授受の定めがあるとき。
- 8種制限:33条の2・37条の2・38条・39条・40条・41条・41条の2は「自ら売主となる…売買」、42条・43条は「割賦販売」が対象です。交換は入っていません。
- 報酬:国土交通大臣の告示は、交換の媒介では、交換する宅地・建物の価額(消費税等相当額を含まない)を基準にし、価額に差があるときは多い方の価額によるとしています。代理は、その計算の2倍以内です。
国土法・印紙税・税
- 国土法:「土地売買等の契約」は、土地の権利の移転・設定(対価を得て行われるものに限る)をする契約(予約を含む)(14条1項)。対価が金銭以外のものなら、時価を基準として金銭に見積もった額で考えます(同項)。交換は相手の土地という対価があるので、事後届出の対象です。届け出るのは、権利を取得する人(23条1項)。交換では、双方が相手の土地を取得します。
- 印紙税:国税庁は、第1号文書(不動産の譲渡に関する契約書)の例に「不動産交換契約書」を挙げています。記載金額は、交換対象物の双方の価額が書いてあればいずれか高い方(等価交換ならいずれか一方)、交換差金だけが書いてあれば交換差金です(印紙税法基本通達23条(1)ロ)。
- 不動産取得税:交換は、相続・合併などの非課税の取得(地方税法73条の7)に入っていないので、取得した人に課税されます。
- 譲渡所得(所得税法58条):個人が、1年以上持っていた固定資産を、相手が1年以上持っていた同じ種類の固定資産(交換のために取得したものを除く)と交換し、交換前と同じ用途に使ったときは、譲渡がなかったものとみなす。ただし、2つの価額の差額が、高い方の価額の20%を超えるときは使えない(2項)。受け取った交換差金に当たる部分は、この特例の外です。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:会社が、自分の持つ土地を何度も他人の土地と交換して事業にする。→自ら交換は「取引」なので、業として行えば宅建業の免許がいります(2条2号)。自分のマンションを何室も人に貸すだけなら、自ら貸借なので免許はいりません。
- 当てはまる例:みどり不動産が自ら当事者として、宅建業者でない人と土地を交換する。→35条の説明と37条書面はいりますが、手付の2割の制限(39条)などの8種制限はかかりません。
- 当てはまらない例:交換契約書に「甲地3,000万円、乙地2,500万円」と書いた。→印紙税の記載金額は差額の500万円ではなく、高い方の3,000万円です。
- ひっかけやすい例:交換差金なしの等価交換で、市街化区域の3,000平方メートルの土地どうしを交換した。→お金のやりとりがなくても対価のある契約なので、双方が事後届出をします。
報酬の計算の手順は報酬の上限をわかりやすく、37条書面の記載事項は37条書面をわかりやすく、事後届出の面積と一団の土地は国土利用計画法の届出、印紙税の記載金額のほかの決め方は印紙税と登録免許税をわかりやすくで確かめてください。
試験ではここをまちがえやすい
「交換」は論点の名前ではないので、当サイトの出題集計(不動産適正取引推進機構が公開している昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問を1問ずつ読んで分けたもの。分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)では、交換だけの問数は数えていません。交換が肢に出てくる論点の問数は、主な論点として、報酬34問、37条書面38問(直近10回で18問)、国土利用計画法38問、印紙税18問でした。
- 報酬の基準を差額や低い方にする型:価額に差があれば多い方。
- 8種制限を交換に広げる型:8種制限は自ら売主の売買(と割賦販売)だけ。
- 自ら交換を自ら貸借と同じにする型:自ら交換は取引に当たり、自ら貸借は当たらない。
- お金がないから届出不要とする型:国土法の対価は金銭に限らない。
- 印紙税を差額とする型:双方の価額が書いてあれば高い方。差額で見るのは交換差金だけが書いてあるとき。
- 交換の特例の20%:差額が高い方の価額の20%を超えたら、特例そのものが使えない。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者のみどり不動産は、はるきさんの甲地(価額3,000万円)とさきさんの乙地(価額2,500万円)の交換について、はるきさんから媒介を頼まれた。はるきさんから受け取れる報酬の上限は、3,000万円を基準に計算する。
答え:○ 分かれ目は、交換の報酬の基準になる価額です。国土交通大臣の報酬の告示は、交換の媒介では、交換する宅地・建物の価額を基準とし、価額に差があるときは多い方の価額によるとしています(宅建業法46条、報酬告示第二)。差額の500万円や、はるきさんが受け取る乙地の2,500万円で計算すると考えると✕にしてしまいます。印紙税の記載金額も、双方の価額が書いてあれば高い方ですが、こちらは国税庁の通達による別のルールです。
問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者のみどり不動産が自ら当事者として、宅建業者でないさきさんと、みどり不動産の土地とさきさんの土地を交換する契約を結ぶ。この場合も、手付の額を代金の2割以内とする宅建業法39条の制限が適用される。
答え:✕ 分かれ目は、8種制限が交換にかかるかどうかです。39条1項は「自ら売主となる宅地又は建物の売買契約」の手付の制限で、交換は対象に入っていません。正しくは、交換には39条の制限は適用されません。ほかの8種制限も、自ら売主となる売買か割賦販売が対象です(33条の2・38条・40条など)。35条・37条・34条の2のように「交換」を書いている規定と同じだと考えた取り違えです。
問3(このサイトのオリジナル問題)
個人のはるきさんは、10年持つ土地(価額5,000万円)を、さきさんが10年持つ土地(価額3,800万円)と交換し、交換差金1,200万円を受け取った(どちらも交換のために取得した土地ではなく、はるきさんは同じ用途に使う)。この場合、はるきさんは固定資産の交換の特例を受けられる。
答え:✕ 分かれ目は、2つの土地の価額の差です。交換の特例は、交換の時の価額の差額が、いずれか多い方の価額の20%に相当する金額を超えるときは適用されません(所得税法58条2項)。差額1,200万円は、多い方5,000万円の20%(1,000万円)を超えています。正しくは、ほかの条件を満たしていても特例は受けられません。差額が20%以内のときに「受け取った交換差金の部分だけが課税される」ことを、20%を超えた場合にも当てはめた取り違えです。
まとめ
- 交換は互いに金銭以外の財産権を移す契約。差を埋めるお金が交換差金。
- 宅建業法:自ら交換は取引。媒介契約・35条・37条は売買と同じく対象。8種制限はかからない。報酬は多い方の価額。
- 国土法:対価のある契約なので事後届出の対象。双方が取得者。
- 印紙税は高い方の価額(交換差金だけなら差金)。不動産取得税は課税。
- 譲渡所得の交換の特例は、1年以上・同種・同じ用途・差額が高い方の20%以内。
宅建業法の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「宅建業法」で続けて解けます。次に読むなら、宅建業の免許をわかりやすくで、「自ら交換は取引、自ら貸借は取引でない」が免許の要否の判断にどう効くかを確かめるのがおすすめです。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。
- e-Gov法令検索「民法」(586条)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(2条、33条の2、34条の2、35条、37条、37条の2、38条、39条、40条、41条、41条の2、42条、43条、46条)
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
- e-Gov法令検索「国土利用計画法」(14条、23条)
- 国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)、印紙税法基本通達(第23条)
- e-Gov法令検索「地方税法」(73条の7)
- e-Gov法令検索「所得税法」(58条)
- 不動産適正取引推進機構「宅建試験の問題及び正解番号表」(出題数を数えるのに使った過去の試験問題)
働く人の法律試験ノート