契約不適合責任の特約:民法572条・宅建業法40条(引渡しから2年)・品確法の10年を比べる

契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)とは、売った物が契約の内容に合わないとき(雨漏りがある、など)に売主が負う責任です。この責任を軽くする特約が有効かどうかは、だれが売主かで変わります。①売主が宅建業者でなければ、民法のとおりで、「責任を負わない」特約も有効です。ただし、売主が知りながら告げなかった事実などについては、責任を免れません(民法572条)。②宅建業者が自ら売主で、買主が宅建業者でなければ、民法より買主に不利な特約は無効です。例外は「通知の期間を引渡しの日から2年以上とする」特約だけです(宅建業法40条)。③新築住宅の柱や基礎など大事な部分は、だれが売主でも引渡しから10年の責任があり、短くする特約は無効です(品確法95条)。

この記事では、同じ一戸建ての売買に、売主が「個人」「宅建業者(中古)」「宅建業者(新築)」の3通りを当てはめて、特約の有効・無効を比べます。民法の4つの手段(追完・代金減額・損害賠償・解除)の中身は契約不適合責任の記事、宅建業者が売主のときの8つの制限の全体は8種制限の記事で扱っています。

身近な例で考えると:同じ家を、3人の売主から買う

登場人物を紹介します。

人物立場したこと
はるなさん買主(会社員。宅建業者ではない)3,000万円の一戸建てを買う
まことさん売主(会社員。宅建業者ではない)住んでいた中古の家を売る
こはる不動産売主(宅建業者)中古の家と、新築の家を売っている

どの売主も、契約書に次の特約を入れたいと考えました。

  • 特約ア:「売主は、契約不適合責任を一切負わない。」
  • 特約イ:「買主は、不適合を引渡しの日から1年以内に通知しなければならない。」
  • 特約ウ:「買主は、不適合を引渡しの日から2年以内に通知しなければならない。」

まことさんが売主のとき(個人どうしの売買)は、民法のルールで決まります。民法の契約不適合責任の定めは、当事者の合意で変えられます。だから、ア・イ・ウのどれも有効です。ただし、まことさんが雨漏りを知りながら、はるなさんに黙っていた場合は、アの特約があっても、その雨漏りの責任は免れません(572条)。

こはる不動産が中古の家を売るときは、宅建業法40条がかかります。民法より買主に不利な特約は無効です。アとイは無効になります。ウだけが有効です。アやイが無効になると、民法566条に戻り、はるなさんは「不適合を知った時から1年以内」に通知すればよいことになります。

こはる不動産が新築の家を売るときは、さらに品確法がかかります。柱や基礎などの構造の部分と、雨水の浸入を防ぐ部分の欠陥は、引渡しから10年、売主が責任を負います。ウの特約は、それ以外の部分(たとえば室内の設備)には有効ですが、構造などの部分には効きません。

たとえると、民法は「当事者どうしで決めてよい初期設定」、宅建業法40条は「プロが売主なら、初期設定より悪くする変更を禁止。ただし通知期間だけは引渡しから2年まで縮めてよい」、品確法は「新築の骨組みは10年、変更禁止」です。ただし本物のルールでは、民法の初期設定でも、知りながら告げなかった事実の責任は特約で消せません。

条文ではこう決まっている

民法566条・572条

  • 566条:売主が種類または品質の点で契約に合わない物を引き渡した場合、買主が不適合を「知った時から一年以内に」売主に通知しないと、追完・代金減額・損害賠償・解除のどれも使えなくなります。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この期間の制限はかかりません。
  • 572条:責任を負わない旨の特約をしても、売主は、知りながら告げなかった事実と、自分で第三者のために設定したり第三者に譲り渡したりした権利については、責任を免れません。

宅建業法40条

  • 1項:宅建業者は、自ら売主となる宅地・建物の売買で、種類または品質の不適合の責任について、民法566条の期間を「目的物の引渡しの日から二年以上となる特約」をする場合を除き、民法の規定より買主に不利となる特約をしてはなりません。
  • 2項:1項に反する特約は無効です。
  • 40条は8種制限の1つで、宅建業者どうしの売買には適用されません(78条2項)。

品確法95条・97条(住宅の品質確保の促進等に関する法律)

  • 95条1項:新築住宅の売買では、売主は、買主に引き渡した時から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等(柱・基礎などの構造の部分と、雨水の浸入を防ぐ部分として政令で決めたもの)の瑕疵(かし=欠陥)について、追完・代金減額・損害賠償・解除の責任を負います。
  • 95条2項:これに反する特約で買主に不利なものは無効です。
  • 97条:この10年は、特約で引渡しから20年以内まで延ばせます。
  • 新築住宅とは、新たに建てた住宅で、まだ人が住んだことがなく、工事の完了から1年を過ぎていないものです(2条2項)。
  • 品確法95条は、売主が宅建業者かどうかを問いません。

売主ごとに当てはめる:特約の有効・無効の表

特約個人が売主業者が売主(中古)業者が売主(新築の構造部分)
責任を一切負わない有効(知りながら告げない事実は除く)無効→民法566条に戻る無効→10年
通知は引渡しから1年以内有効無効→民法566条に戻る無効→10年
通知は引渡しから2年以内有効有効(40条の例外)無効→10年
通知は契約の日から2年以内有効無効(ふつうは引渡しが契約より後なので、引渡しから2年に届かない)無効→10年
通知は知った時から2年以内有効有効(買主に有利)有効(買主に有利)
解除はできない(修補だけ)有効無効無効

表の「業者が売主」は、買主が宅建業者でない場合です。業者どうしの売買は、40条がかからないので「個人が売主」の列と同じ考え方になります。ただし新築住宅の構造部分は、業者どうしでも品確法95条がかかります。

いちばん大事なのは「無効になったら、どこに戻るか」です。業者が売主で特約が無効になると、民法566条の「知った時から1年以内に通知」に戻ります。「引渡しから2年」に直されるわけではありません。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例

  • こはる不動産が中古の家を売り、「通知は引渡しから3年以内」と特約した。→ 引渡しから2年以上なので有効です(40条1項)。
  • まことさんが「責任を負わない」と特約したが、床下の腐食を知らなかった。→ 知りながら告げなかったわけではないので、特約どおり責任を負いません(572条の反対の場合)。

当てはまらない例

  • こはる不動産が中古の家を売り、「責任を負わない」と特約した。→ 無効です(40条2項)。はるなさんは、雨漏りを知った時から1年以内に通知すれば、責任を問えます(566条)。
  • こはる不動産が、宅建業者のさくら住宅に中古の家を売り、「責任を負わない」と特約した。→ 業者どうしなので40条はかからず、特約は有効です(78条2項)。

ひっかけやすい例

  • 「引渡しから2年」は義務ではない:40条は、2年以上とする特約を「してもよい」と認めているだけです。特約を入れなければ、民法の「知った時から1年」のままです。
  • 新築の構造部分に「引渡しから2年」:40条の例外には当たっても、品確法95条2項で無効です。構造部分は10年になります。

似ているルールとの違い

ルール守る相手特約の扱い
民法566条・572条すべての買主原則として自由。知りながら告げない事実は免れない
宅建業法40条業者が売主、買主が業者でない不利な特約は無効。引渡しから2年以上の通知期間だけ例外
品確法95条新築住宅の買主すべて構造部分等の10年より不利な特約は無効

品確法の10年の責任を、売主が倒産しても果たせるように、お金を前もって用意させる仕組みが住宅瑕疵担保履行法です。保証金の供託など、その中身は住宅瑕疵担保履行法の記事にまとめています。また、特約の内容は契約後に渡す37条書面の記載事項にもなります(担保責任や、その履行のための措置の定めがあるとき)。書面の側から確かめるなら37条書面の記事へ。

試験ではここをまちがえやすい

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、担保責任の特約の制限(40条)が主な論点の問題は5問、ほかの論点の問題の中に10問でした。8種制限をまとめて問う「総合」型の問題が35問あり、40条はその中の1肢として出ることが多い論点です。民法の売買・契約不適合責任が主な論点の問題は22問で、直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月・12月の2回ずつ)では7問出ています(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。取り違えやすい形は次のとおりです。

  • 戻り先の取り違え:無効になった特約は「引渡しから2年」ではなく、民法の「知った時から1年以内に通知」に戻る。
  • 起算点:40条の例外は「引渡しの日から」2年以上。「契約の日から2年」は、契約の後に引渡しがあるふつうの売買では引渡しから2年に満たないので無効。
  • 業者どうし:40条はかからない(78条2項)。「業者間でも責任を負わない特約は無効」は誤り。
  • 個人どうし:「責任を負わない」特約は有効。ただし知りながら告げなかった事実は免れない(572条)。
  • 新築の構造部分:だれが売主でも10年。業者どうしでも品確法はかかる。延ばすなら20年まで。

業者どうしの取引で外れるルールの一覧は、業者間取引の記事で確かめられます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者でない買主Bに中古住宅を売る契約で、「不適合の通知は引渡しの日から1年以内」と特約した。この特約は無効となり、Bは引渡しの日から2年以内に通知すればよいことになる。

答え:✕ 分かれ目は、特約が無効になったときの戻り先です。引渡しから2年未満の通知期間は買主に不利なので無効です(宅建業法40条1項・2項)。正しくは、民法566条に戻り、Bは不適合を知った時から1年以内に通知すればよくなります。「引渡しから2年」は、40条が例外として許す特約の中身で、無効になった特約の置きかえ先ではありません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者でない個人Aが、宅建業者でない個人Bに中古住宅を売り、「売主は契約不適合責任を一切負わない」と特約した。Aが雨漏りを知りながらBに告げていなかったときは、Aは、この雨漏りについて責任を免れない。

答え:○ 分かれ目は、個人どうしの特約にも限界がある点です。宅建業法40条はかからないので、責任を負わない特約そのものは有効です。それでも、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れません(民法572条)。「個人どうしなら特約は全部有効」と考えると✕にしてしまいます。業者が売主なら、特約そのものが40条2項で無効になる点とあわせて覚えます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが、宅建業者Bに新築住宅を売る契約で、構造耐力上主要な部分の瑕疵について「売主の責任は引渡しから5年まで」と特約した。この特約は無効である。

答え:○ 分かれ目は、業者どうしでも品確法がかかる点です。業者どうしの売買なので宅建業法40条は適用されません(78条2項)。しかし、新築住宅の売主は、構造耐力上主要な部分等の瑕疵について引渡しから10年の責任を負い、買主に不利な特約は無効です(品確法95条1項・2項)。品確法は売主・買主が宅建業者かどうかを問いません。「業者間取引だから特約は自由」と考えると✕にしてしまいます。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「宅建業法」で続けて解けます。

まとめ

  • 個人が売主なら民法どおり。「責任を負わない」特約も有効だが、知りながら告げなかった事実は免れない(572条)。
  • 業者が売主(買主は業者でない)なら、民法より買主に不利な特約は無効。例外は「通知は引渡しの日から2年以上」だけ(40条)。
  • 無効になった特約は、民法566条の「知った時から1年以内に通知」に戻る。
  • 新築住宅の構造部分等は、だれが売主でも引渡しから10年。不利な特約は無効、20年まで延ばせる(品確法95条・97条)。
  • 業者どうしの売買に40条はかからないが、品確法はかかる。

次に読むなら、住宅瑕疵担保履行法の記事がおすすめです。新築の10年の責任を、業者がどうやって果たせるようにしているかがつながります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

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