停止条件をわかりやすく:条件付きの契約はいつ効力が出るか(宅建 停止条件)

停止条件(ていしじょうけん)は、「〜したら、契約の効力が出る」という条件です。「転勤が決まったら、この家を売る」の「転勤が決まったら」がそれにあたります。民法は、停止条件が成就した(起きた)時から効力が生じると決めています(127条1項)。

ひとことで言うと、停止条件付きの契約は、条件が起きるまで効力が「止まっている」契約です。ただし、止まっている間も、何の権利もないわけではありません。相続でき、相手は権利を害してはいけません。

宅建試験では、民法の条件のルールとあわせて、宅建業法の「自分の物でない物件を売る契約の制限」(33条の2)で停止条件が出てきます。この記事では両方をつなげて整理します。

身近な例で考えると

登場人物は2人です。名古屋に家を持つ会社員=ゆきさん(売る人)と、その家を買いたい人=けんじさん(買う人)です。

ゆきさんは、東京への転勤の話が出ています。転勤が決まれば家はいりませんが、決まらなければ住み続けたい。そこで、けんじさんと次の約束をしました。

  1. 1月:「ゆきさんの東京への転勤が決まったら、この家を2,000万円でけんじさんに売る」という売買契約を結ぶ。
  2. 2月:まだ転勤は決まっていない。この間、契約の効力は止まっている。ゆきさんは、けんじさんが条件の成就によって得る利益を害してはいけない(128条)。
  3. 3月:けんじさんが亡くなった。条件が決まる前の買主の立場も、相続人が引き継ぐ(129条)。
  4. 4月:ゆきさんの転勤が正式に決まった。この時から売買の効力が出る(127条1項)。1月にさかのぼって効力が出るのは、当事者がそう決めていた場合だけ(127条3項)。

たとえるなら、停止条件は「スイッチの付いた契約」です。条件が起きた瞬間にスイッチが入ります。ただし本物のルールでは、スイッチが入る前の立場も、相続や担保に使える「権利」として扱われます。

条文ではこう決まっている

民法は、条件と期限を127条〜137条で決めています。

  • 成就の効果(127条):①停止条件付きの行為は、条件が成就した時から効力を生じる。②解除条件付きの行為は、条件が成就した時から効力を失う。③当事者が「成就より前にさかのぼらせる」と表示したときは、それに従う。
  • 未定の間の利益(128条):条件が成就するかどうか決まらない間、各当事者は、成就したときに相手が得る利益を害してはいけない。
  • 未定の間の権利(129条):条件が決まらない間の権利義務も、ふつうのルールに従って、処分・相続・保存し、担保にできる。
  • 成就の妨害(130条1項):条件が成就すると「不利益を受ける当事者」が、わざと成就を妨げたときは、相手方は、条件が成就したものとみなすことができる。
  • 不正な成就(130条2項):条件が成就すると「利益を受ける当事者」が、不正に成就させたときは、相手方は、条件が成就しなかったものとみなすことができる。
  • すでに決まっていた条件(131条):契約の時に条件がすでに成就していたら、停止条件なら無条件、解除条件なら無効。成就しないことがすでに決まっていたら、停止条件なら無効、解除条件なら無条件。
  • 不法・不能な条件(132条・133条):不法な条件を付けた行為は無効。できないことを停止条件にした行為は無効、解除条件にした行為は無条件。
  • 随意条件(134条):停止条件が「債務者の意思のみに係る」とき(約束を果たす側が、その気になったら、という条件)は、その行為は無効。
  • 期限(135条〜137条):始期(ここから)が来るまでは履行を請求できない。終期(ここまで)が来たら効力が消える。期限は債務者の利益のためと推定される。債務者が破産手続開始の決定を受けたときなどは、期限の利益を主張できない。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(成就した時から):4月にゆきさんの転勤が決まった。売買の効力は4月から。代金の支払いなども、特約がなければ4月以降の話になる。
  2. 当てはまらない(解除条件):「家を売る。ただし、けんじさんの住宅ローンが通らなかったら、契約は効力を失う」。これは、成就すると効力がなくなる解除条件(127条2項)。すでに効力が出ている契約に付いている点が、停止条件とちがう。
  3. ひっかけやすい(すでに成就していた):1月の契約の時、実はゆきさんの東京への転勤は、前日に会社で正式に決まっていた(2人とも知らなかった)。停止条件が契約の時にすでに成就していたので、無条件の契約になる(131条1項)。
  4. 当てはまらない(随意条件):「ゆきさんが売りたくなったら売る」。家を引き渡す義務を負うゆきさん(債務者)の気持ちだけで決まる停止条件なので、契約は無効(134条)。
  5. ひっかけやすい(成就の妨害):別の場面で、ゆきさんがおいに「宅建試験に合格したら、土地を1区画贈る」と約束した。その後、ゆきさんが惜しくなり、わざと受験の申込みを妨げた。成就すると不利益を受けるゆきさんが妨げたので、おいは、条件が成就したものとみなせる(130条1項)。
  6. ひっかけやすい(不正な成就):5の場面で、逆に、おいが不正な手段で合格を得た。成就で利益を受けるおいが不正に成就させたので、ゆきさんは、条件が成就しなかったものとみなせる(130条2項)。

似ているルールとの違い

まず、停止条件・解除条件・期限の違いです。条件は「起きるかどうか分からないこと」、期限は「いつか来ることが決まっていること」に結びつけます。

比べる点停止条件解除条件期限
起きるか分からない分からないいつか来る
起きたら効力が出る効力が消える請求できる(始期)・消える(終期)
例転勤が決まったら売るローンが通らなければ効力を失う4月1日に引き渡す
条文127条1項127条2項135条

次に、ほかの分野での出方です。宅建試験では、民法の条件のルールそのものより、宅建業法や農地法の中で「条件付き」が効いてくる形があります。

分野条件のかかり方どうなるか
宅建業法33条の2業者が物件を手に入れる契約が停止条件付き例外にならず、自ら売主として売れない
農地法3条許可を受けないでした売買効力を生じない(3条6項)
民法130条条件の成就を妨げた・不正に成就させた成就・不成就とみなせる

宅建業法33条の2は、業者が自分の物でない土地や建物を、自ら売主として売る契約(予約を含む)を原則禁止しています。例外の一つは、業者がその物件を手に入れる契約(予約を含む)を結んでいるときですが、条文は「その効力の発生が条件に係るものを除く」としています。手に入るかどうかが条件しだいの契約では、買主に物件を渡せる保証がないからです。この論点は8種制限の記事と他人物売買の記事でもくわしく扱います。

農地を農地のまま売るときは、農業委員会の許可を受けなければ、売買の効力が生じません(農地法3条1項・6項)。「許可が出るまで効力が出ない」点は停止条件付きの契約に似ていますが、これは当事者が付けた条件ではなく、法律が決めたしくみです。農地法の許可の種類は農地法の記事で確かめてください。

試験ではここをまちがえやすい

  • さかのぼるかどうかの型:停止条件の効力は「成就した時から」。契約の時にさかのぼるのは、当事者がそう表示したときだけです。
  • 130条の1項と2項を入れかえる型:わざと妨げたのが「不利益を受ける側」なら、相手は「成就した」とみなせる。不正に成就させたのが「利益を受ける側」なら、相手は「成就しなかった」とみなせる。だれが何をしたか、の組み合わせで答えが決まります。
  • 相続できないとする型:条件が決まる前の権利も、相続・処分・担保の対象になります(129条)。
  • 随意条件の型:無効になるのは「停止条件」が「債務者の意思のみ」にかかるときです。
  • 宅建業法の型:予約は例外に入りますが、条件付きの取得契約は入りません。「予約でもよいのだから、停止条件付きでもよい」と広げた肢に注意します。

宅建試験では、権利関係の条件の効果を押さえ、宅建業法の8種制限では、取得契約が条件付きかどうかが分かれ目になる点に気をつけます。条件を見たら、まず「それが成就するまで効力が出ないのは、どの契約か」を確かめます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
ゆきさんとけんじさんは、「ゆきさんの東京への転勤が決まったら、ゆきさんの家をけんじさんに売る」という売買契約を結んだ。転勤が決まる前にけんじさんが亡くなった場合でも、けんじさんの相続人は、この契約の買主の地位を引き継ぐ。

答え:○ 分かれ目は、条件が決まる前の権利も財産として扱われるかです。条件の成否が未定の間の権利義務も、一般の規定に従って相続できます(民法129条)。まだ効力が出ていないので消えるように見えますが、転勤が決まれば、相続人との間で売買の効力が生じます。取り違えの相手は、「成就するまでは何の権利もない」という読み方で、127条1項は効力の出る時期を決めているだけです。

問2(このサイトのオリジナル問題)
問1の契約で、けんじさんは、ゆきさんの上司に不正なはたらきかけをして、ゆきさんの東京への転勤を決めさせた。この場合、けんじさんは、条件が成就したものとして、ゆきさんに家の引渡しを求めることができる。

答え:✕ 分かれ目は、だれが何をしたかです。条件の成就で利益を受けるけんじさんが不正に成就させたので、相手方のゆきさんは、条件が成就しなかったものとみなせます(130条2項)。正しくは、けんじさんは引渡しを求められません。取り違えの相手は130条1項で、「成就したとみなす」のは、不利益を受ける側がわざと成就を妨げた場合です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aは、農地の持ち主Bとの間で、農地法5条の許可を受けることを条件として、その農地を買う契約を結んだ。Aは、許可が出る前でも、宅建業者でないCとの間で、その土地を自ら売主として売る契約を結ぶことができる。

答え:✕ 分かれ目は、業者が手に入れる契約が条件付きかどうかです。自分の物でない物件を自ら売主として売る契約は原則禁止で、例外の「取得する契約」から「その効力の発生が条件に係るもの」が除かれています(宅建業法33条の2第1号)。正しくは、許可を条件とする取得契約しかないAは、Cと売買契約を結べません。取り違えの相手は、条件の付かない取得契約や予約で、こちらは例外として売れます。

まとめ

  • 停止条件は「〜したら効力が出る」。成就した時から効力が出て、さかのぼるのは当事者が表示したときだけ。
  • 解除条件は「〜したら効力が消える」。期限は「いつか来ることが決まっている」ことに結びつける。
  • 条件が決まる前の権利も、相続・処分・担保にできる。相手の利益を害してはいけない。
  • わざと妨げたら成就とみなせる(130条1項)。不正に成就させたら不成就とみなせる(2項)。
  • 宅建業法33条の2では、停止条件付きの取得契約は例外にならない。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「宅建業法」の8種制限(自己の所有に属しない物件)の問題で続けて解けます。

次に読むなら、他人物売買の記事がおすすめです。民法では他人の物の売買も有効なのに、宅建業法では原則だめになる理由が、この記事の33条の2とつながります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています。

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